頑張っているわりに、なかなか貯金が増えず悩んでいる共働き夫婦は意外と多いものです。コロナ禍で出費傾向が変わっても、生活を見直していない夫婦は要注意。ありがちな「貯金できない理由」に当てはまっているかもしれません。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん監修のもと、20・30代の共働き夫婦を対象に、貯金額の平均や目標とすべき貯金額の目安、共働きにありがちな貯金できない理由、そして共働き夫婦ならではの貯金術について、具体的に解説します。

【関連記事】「20代で貯金なし」でもまだ間に合う、貯金術についてはコチラ

※この記事は、2022年5月31日に更新しています。

この記事の監修者

画像: 共働き夫婦の平均貯金額は20代103万・30代380万円!お金が貯まるコツと家計管理を解説

高山 一恵(たかやま かずえ)

株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。

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共働き夫婦の平均貯金額は20代で103万円、30代で380万円

画像: 画像:iStock.com/utah778

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貯金について考える際に一番気になるのは、自分と同世代の共働き夫婦が、どれくらい貯金をしているかではないでしょうか。そこでまずは、20・30代共働き夫婦の貯金額の平均を知る上で参考になる資料をご紹介しましょう。

年代別の共働き世帯のみの貯金額・貯蓄額に関する公的なデータはありませんが、金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」1)を見てみると、共働き以外も含む2人以上の世帯が保有する「貯金」「金融資産」は以下のようになっています。

〈表〉世帯主の年齢別・貯金額、金融資産保有額(2人以上の世帯)

世帯主の年齢貯金額
(平均値)
金融資産保有額
(平均値)
金融資産保有額
(中央値)
20歳代103万円212万円63万円
30歳代380万円752万円238万円
40歳代406万円916万円300万円
50歳代577万円1,386万円400万円
60歳代997万円2,427万円810万円
70歳以上959万円2,209万円1,000万円
※金融資産を保有していない世帯を含む

平均貯金額について見てみると、20代が103万円、30代が380万となっています。

しかし、貯金額のほか株式や投資信託などの金額も含まれる金融資産保有額(=貯蓄額)を見てみると、20代が212万円、30代が752万円と平均がより高くなっています。このことから、貯金のほかにも金融資産を保有している世帯が多いことが考えられます。

この調査に協力した世帯で、共働き(世帯主と配偶者のみ就業、その他就業者あり)と回答したのは、約57%と半数を超えています。誤差はあるでしょうが、共働き夫婦の場合の平均貯金額・貯蓄額と、ほぼ同様と考えてもよいでしょう。

ただし、ここで注意したいのが、「平均」には金額が極端に多い一部の世帯が含まれていることです。リアルな金額という点では、「中央値」を参考にしたほうがよいでしょう。貯金額については中央値のデータがありませんが、金融資産保有額について見てみると、20代では63万円、30代では238万円となります。こちらの金額のほうが、より実感に近い数字といえるでしょう。

ちなみに、総務省の「家計調査 貯蓄・負債編(2021年)」2)によると、全年代を合わせた共働き世帯の貯金額は868万円、貯蓄額は1,372万円となっています(平均年齢48.8歳)。上記の金融広報中央委員会の調査と併せて、参考にしてみてください。

コロナ禍で貯蓄額に変化も

2020年、2021年はコロナ禍で大きく生活が変わった年でした。前出の調査の令和元年(2019年)版では、貯蓄額の平均は20代が世帯主の家庭では165万円、30代では529万円。調査の母数が少なく数値が変わりやすいとはいえ、令和3年(2021年)の調査では貯蓄額が大きく増えています。

理由としては、コロナ禍という未曽有の事態で貯蓄への意識が高まったことや、外出制限によりレジャーへの出費が減ったこと、株価の上昇で「資産」の保有額が上がったことなどが考えられます。

一方で、どちらかまたは夫婦両方が職を失った世帯や収入が減った世帯も多かったはずです。平均額は上がっていますが、貯蓄が多い世帯、少ない世帯の二極化が進んでいると予想できます。

20・30代世帯で「貯蓄しなかった」と回答したのは約2割

一方、貯蓄額の平均値や中央値とともに気になるのが、同世代の人たちが収入のうちどれくらいを貯蓄にまわしているのかということです。同じく「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」によれば、ボーナスなどの臨時収入を含む、手取り年収からの貯蓄割合は、以下のようになっています。

〈表〉手取り年収に対する貯蓄割合(%)

貯蓄割合20歳代30歳代40歳代
5%未満6.56.49.1
5~10%未満10.313.614.9
10~15%未満13.119.120.8
15~20%未満5.67.45.2
20~25%未満15.011.011.4
25~30%未満1.91.81.1
30~35%未満8.48.15.4
35%以上15.010.37.9
貯蓄しなかった24.322.224.2
平均171412
※金融資産保有世帯のみ

平均値を見ると、20・30代が世帯主の世帯では手取り年収の15%前後を貯蓄にまわしていることがわかります。ゾーン別の回答を見ると、20代・30代が手取り年収から貯蓄にまわす割合は、貯蓄しなかったという回答を除くと、一番多いのが5~15%、次いで20〜25%の間のため、まずはこの5~15%を貯蓄にまわす金額の目安と考えてみてはいかがでしょうか。

ただし、20・30代では「貯蓄しなかった」と回答している人も2割以上いるのが気になるところ。やはり、貯蓄ができないという人も一定数いるということです。

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【共働きの貯金額】年代・収入別シミュレーション

平均額がわかったところで、20・30代の共働き夫婦の貯金シミュレーションをしてみましょう。3つのパターンから、自分に近いものを参考にしてみてください。

【パターンA:20代前半夫婦】世帯年収500万円/目標貯金額90万円

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●プロフィール

世帯年収500万円
夫(正社員)の収入月給21.4万円(手取り約17万円)
年収300万円(手取り約239万円)
※賞与年2回(各1カ月分)
妻(契約社員)の収入月給16.7万円(手取り約13.5万円)
年収200万円(手取り約162万円)

●目標貯金額と達成期間

目標とする貯金額90万円
達成期間の目安2年程度

【貯金額を設定する上での考え方】
世帯年収が少ない20代前半の共働き夫婦の場合、貯金の目的としてまず考えたいのは、ケガや病気で働けなくなった場合の備えです。

ライフプランに加えて、今後の日本の状況を考えると、早いうちから老後の費用を準備しておいたほうがよいのは確かですが、20代のうちはまだ考えなくても間に合うと思います。貯金の習慣がない夫婦なら、まずは生活の基盤となるお金を貯めることを考えてください。基盤となる貯金ができれば、それをベースにほかの目的の貯金を始めることができるでしょう。

ケガや病気で働けなくなった場合に備えておく金額の目安は、一般的に手取り月収の3カ月~1年分といわれています。20代前半は収入が少ないほか、ケガや病気のリスクも比較的低いので、世帯収入の3カ月分を目標にしてみましょう。

パターンAの共働き夫婦の場合、手取りの世帯月収は約30万円となるので、まずは90万円が目標の貯金額ということになります。

たとえば、1年で貯める目標にした場合、月々7.5万円が貯金額の目安となりますが、これでは世帯手取り月収の25%に達するので、生活にも影響が出てしまうかもしれません。

前述したとおり、20・30代が収入から貯蓄にまわす割合の平均値は、約10%です。また、ファイナンシャルプランナーの間では、無理せず貯蓄できる割合は、手取り月収の5~15%が目安と考えられています。とはいえ、手取りが少ないうちは仕方ないですが、最終的に20%を目指しましょう。

そこで手取り月収から貯金にまわす割合を5%きざみでシミュレーションしてみましょう。90万円の貯金を達成するためには、以下の期間が必要になります。

〈表〉90万円の貯金を達成するために必要な期間

月々の貯金額達成までの期間
手取り月収の5%1.5万円60カ月(5年)
手取り月収の10%3万円30カ月(2年6カ月)
手取り月収の15%4.5万円20カ月(1年8カ月)

もしもの時への備えを5年かけて貯めるのは少し心配かもしれませんが、一方で毎月4.5万円を貯金にまわすのも大変でしょう。

そこで、間をとって2年を目安に90万円を貯めてみてはいかがでしょう? この場合は、毎月だいたい3.7万円(手取り月収の約12%)を貯めれば目標額が達成されます。

家計や小遣いの見直しを検討すれば、これくらいの金額は意外と捻出できるでしょう。この夫婦の場合は夫にボーナスがあるので、毎回半額を貯金にまわすことにすれば、もっと早く目標額を達成できる可能性は十分にあります。

【パターンB:20代後半夫婦】世帯年収700万円/目標貯金額120〜220万円

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●プロフィール

世帯年収700万円
夫(正社員)の収入月給21.4万円(手取り約17万円)
年収300万円(手取り約239万円)
※賞与年2回(各1カ月分)
妻(正社員)の収入月給28.6万円(手取り約22.6万円)
年収400万円(手取り約316万円)
※賞与年2回(各1カ月分)

●目標貯金額と達成期間

目標とする貯金額120~220万円
達成期間の目安1~3年程度

【貯金額を設定する上での考え方】
夫婦ともに正社員として働いており収入もそれなりにある、いわゆるパワーカップルと呼ばれるパターンです。

●ケガや病気で働けなくなった場合の備え

まったく貯金がないという場合は、パターンAの夫婦と同様に、まずはケガや病気で働けなくなった場合の備えとして、手取りの世帯月収の3カ月分(約120万円)を目標額とすることをおすすめします。世帯の手取り月収(約40万円)の5~15%を貯金にまわした場合の達成シミュレーションは、次のようになります。

〈表〉120万円の貯金を達成するために必要な期間

月々の貯金額達成までの期間
手取り月収の5%2万円60カ月(5年)
手取り月収の10%4万円30カ月(2年6カ月)
手取り月収の15%6万円20カ月(1年8カ月)

目標達成にかかる期間の比率はパターンAの夫婦と同じですが、パターンBの夫婦の場合は世帯の収入がある程度高いので、家計の見直しを行えば、毎月15%を貯金にまわすこともそこまで大変ではないと思います。

また夫婦ともにボーナスがあるため、ボーナスから貯金へまわすことを予定に含めれば、1年ちょっとで目標額を達成することもできるのではないでしょうか。

●出産・初期の育児への備え

すでにもしもの時への備えに近い金額を貯金できているという場合には、そろそろ次の目的の貯金を始めてもよいと思います。いずれ出産を考えているなら、出産から初期の育児にかかる費用を準備しておくべきでしょう。

少し古い資料になりますが、内閣府が公表した「インターネットによる子育て費用に関する調査」(平成21年度)3)によれば、0歳児1人あたりの年間子育て費用は、約93万円となっています。

出産にまつわる費用は、公的医療制度である程度まかなうことができますが、出産後は子育てに時間を多く割くようになるので、それまでのように働くことが難しくなる場合が多いものです。保育園などに預けることができるようになるまでの間は収入が減ることを想定して、最低でも100万円は用意しておいたほうがよいでしょう。

パターンBの夫婦の場合、100万円の貯金の捻出方法として、もっとも簡単なのはボーナスから貯金にまわすことです。思い切ってボーナスを全額、子育ての準備費用に充てることができれば、1年間で目標額に近づきます。

ボーナスを貯金にまわさない場合は、子育て費用の100万円も月々貯めていきましょう。前述した「手取り月収3カ月分の貯金」を達成した後も、同じ割合で貯金を継続するとよいでしょう。

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教育資金シミュレーション
老後資金シミュレーション

【パターンC:30代夫婦】世帯年収1,000万円/目標貯金額2,000万円

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●プロフィール

世帯年収1,000万円
夫(管理職)の収入月給42.9万円(手取り約33万円)
年収600万円(手取り約463万円)
※賞与年2回(各1カ月分)
妻(正社員)の収入月給28.6万円(手取り約22.6万円)
年収400万円(手取り約316万円)
※賞与年2回(各1カ月分)

●目標貯金額と達成期間

目標とする貯金額2,000~3,000万円
達成期間の目安30~35年

【貯金額を設定する上での考え方】
夫婦ともに正社員として働いており、さらに夫は管理職となっている、なかなか高収入な共働き夫婦のパターンです。

30代を迎え、ある程度もしもの時への備えになる貯金はできていると仮定すると、次に心配なのは老後資金になるはずです。

●貯金・節約による老後への備え

幸い、パターンCの夫婦は年収もかなり多いので、老後資金を貯めることを考えるなら、手取りの世帯月収の20%(約11万円)を貯金にまわしてもよいと思います。ただし、子どもがいる家庭の場合は育児にかかる費用を考慮し、15%程度にしておいたほうが安心だと思います。

一般的に老後に必要な貯蓄額は、夫婦で2,000万円という説が出回っていますが、これはあくまでも2017年時点での総務省「家計調査報告」4)の発表から算出されたものであり、現在の生活水準を維持することを想定した場合の試算です。最新データである2021年「家計調査報告」5)をもとに試算した場合には、800万円ほどに減少します。コロナ禍を機に支出が減った結果ではありますが、人々の消費意識に変化があったことは確かでしょう。

しかしながら、これから先はこの数字が続くのか、はたまた2,000万円必要になるほどの水準に戻るのか未知数です。また、こちらのデータは持ち家率が高いデータとなっており、賃貸暮らしの場合にはもっとお金が必要になります。さらに、実際にいくらあれば安心かという感覚は、その人の価値観によっても異なるでしょう。

そこでパターンCのような高収入の共働き夫婦が、老後資金について話しあう際に特に検討してほしいのが、現在の生活レベルの見直しです。

高収入の世帯ほど家計が放漫で、生活レベルも高めになっているケースが多いため、そのままのレベルを維持しながら老後の生活をイメージすると、貯金がいくらあっても足りない、ということになりかねません。

今のうちに、自分たちの生活レベルを見直し、老後に備えて徐々に生活の規模を縮小させることを念頭に置いた貯金のプランを立てれば、夫婦で2,000万円を貯めて余裕がある老後を過ごせる可能性は十分にあります。

●資産運用を視野に入れた貯蓄計画を

とはいえ、貯金だけでこの金額を達成するのは、貯金の習慣が身についた世帯でも難しいと思います。そこで検討してほしいのが、銀行口座への貯金とあわせ、投資信託などへの投資です。もちろんリスクはありますが、銀行口座の利息に比べ、高いリターンが期待できるので、まとまった老後資金を貯めたい人なら、挑んでみる価値があると思います。

特に、最近注目されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」なら小額から始めることができます。たとえば、「つみたてNISA」の場合には1人年間40万円、夫婦なら年間80万円までが非課税枠となるので、節税対策としても有効でしょう。

老後のための貯蓄は、30代の夫婦でも30~35年という長期間をかけて達成することになります。先ほどおすすめした生活レベルの見直しを含め、夫婦でよく話しあいながら、お互いに納得できる無理のないプランを立ててください。

共働きの理想貯金額と老後資金

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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共働きの理想貯金額

前述のシミュレーションでもご紹介しましたが、現在貯金があまりできていない夫婦の場合は、ケガや病気で働けなくなった場合に備えて、まずは手取り月収の3カ月~1年分を最低限貯金しておきましょう。

貯金のペースは毎月手取り月収の5~15%程度が無理のない目安です。あまり余裕がない場合には、まず5%からはじめて、節約や家計の見直しができるようになったら、徐々に貯金にまわすお金を増やしていきましょう。

老後資金から見る貯金額

貯金の目的は「結婚資金」「教育資金」「老後資金」など様々ですが、誰もが必要になるお金は「老後資金」です。

前述したように2017年に総務省が公表した「家計調査報告」4)の結果から「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、最新のデータでは、夫婦で800万円あれば、老後の生活費はまかなえることが試算できます。また、もしも介護が必要になった際に必要な金額を足したとしても、約1,400万円ほどです。

一般的に年金を受け取り始める65歳までに、この金額を一から貯めることを考えると、20代や30代から毎年必要な貯金額は、以下のようになります。

〈表〉老後資金1,400万円を貯めるために必要な毎年の貯金額

年齢毎年必要な貯金額
20歳32万円
25歳35万円
30歳40万円
35歳47万円
※千円以下切り上げ

【関連記事】老後資金はいくら必要? 詳しくはコチラ

月額にすると2〜4万円程度のため、決して難しすぎる金額ではないでしょう。ただ、早いうちから準備をすればその分毎年、毎月の負担が軽くなることは確かです。また、ある程度の金額を貯めたあとに投資を始めるにしても、長期で運用するほうが複利効果を享受することができるので、メリットとなる部分は多いでしょう。できるだけ早いうちから貯金をしていくことが、将来の自分のためにもなるのです。

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共働き夫婦なのに貯金ができない3つの原因

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一般的に、どちらか1人が働くのに比べ、共働きのほうが世帯収入は多くなります。すべての世代を対象とした調査結果ですが、総務省が公表している「家計調査」(2021年版)2)を見ても、夫のみの収入の世帯に比べ、共働き世帯のほうが、平均で130万円以上も年間収入が多くなっていることがわかります。

〈表〉年間収入と貯蓄(平均)

項目共働き世帯夫のみの収入の世帯
世帯主の年齢48.8歳49.8歳
年間収入821万円684万円
貯蓄1,372万円1,578万円
※総務省 家計調査(2021年)貯蓄・負債編 第8-9表2)より

しかし、ここで注目したいのが貯蓄額です。夫のみの収入の世帯の平均額が1,578万円なのに対して共働き世帯では1,372万円。その差額は206万円にも上ります。

共働き世帯のほうが高収入にもかかわらず、貯蓄が少ないのは不思議ですよね? これには、いくつかの原因が考えられます。ファイナンシャルプランナーとして多くの共働き夫婦の家計をチェックしてきた経験上、「貯金ができないという共働き夫婦に共通する行動パターン」があると感じています。なかなか貯金ができない夫婦なら、思い当たることがあるのではないでしょうか? 主に考えられる原因をご紹介しましょう。

原因(1)財布のひもが緩くなりがち

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特に、2人とも正社員でバリバリと稼いでいる共働き夫婦の場合、「2人分の収入があるのだから、そこまで節約をしなくても大丈夫」と考えてしまう人たちが多いようです。

もちろん、お金は使うために稼いでいるともいえるわけですから、自分たちの頑張りに応じた“ご褒美”も必要ですが、財布のひもが緩くなり全体的に出費が増えてしまうようなら問題でしょう。派手に使ったつもりはないのになぜか財布の中身が減っている…と感じることが多い場合には、まず自分の収支を把握する習慣を身につけるべきでしょう。

原因(2)互いの収支を把握できていない

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共働き夫婦から家計相談を受けていて意外と多いのが、お互いの収支を把握していないケースです。

パートナーのプライバシーを尊重するという方針から、あえて互いの収支をチェックしていないという夫婦もいるようですが、世帯として貯金を考えた場合、収支に不透明な部分があるのは、あまりおすすめできません。

貯金が増えないことに悩んでいる共働き夫婦の相談を受けてみると、「パートナーが貯金をしてくれていると思っていた」「いざチェックしてみたら、パートナーが貯金をしていなかった」という話が出てくる場合がよくあり、中にはそのことが原因で深刻な夫婦喧嘩に発展することもあります。

すべての収支を透明化する必要はありませんが、ある程度は互いの収支を把握しておいたほうが、貯金を成功させることはもちろん、夫婦関係を円満に保つことにもつながるのではないでしょうか。

【関連記事】共働き家庭の平均年収はいくら?貯金額やおすすめの節税対策も紹介

原因(3)生活費を分担制にしている

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家賃は夫が担当、食費は妻が担当というように、生活費を項目ごとに分担制で支払っている共働き夫婦も多いと思います。

生活費の分担制自体は悪いことではないのですが、それによって「自分は家賃を払っているのだから、他の生活費を気にする必要はない」というように、家計全体に対する関心が低くなってしまうのは、貯金の観点から考えれば問題といえます。

特に、水道光熱費や食費のように、毎月変動する可能性が高い項目を片方だけが把握していると、夫婦の間で生活費に対する認識がズレる原因にもなり得ます。互いの収支を把握する第一歩として、まずは家計の全体像を共有できるしくみづくりについて話しあってみるとよいでしょう。

【関連記事】貯金できない人に共通する3つの原因。ズボラでも確実に貯められる方法とは?

<コラム>【共働き夫婦のお財布事情】共通と別々どっちが貯まる?

共働き夫婦の家計管理は、収入をすべてひとまとめにしたり、それぞれお財布を別に持ったりと様々な方法があります。

よくある3種類の家計スタイルそれぞれのメリットとデメリットは以下のとおりです。

〈表〉共働き夫婦の家計管理方法別メリット・デメリット

特徴メリットデメリット
共通型夫婦の収入をひとつにまとめて管理する。自由に使えるお金はお小遣い制のことが多い無駄遣いを減らしやすいので、効果的に貯金できる自由に使えるお金に制限がある
別々型お互い決まった金額を生活費に出しあい、それ以外はそれぞれが自由にお金を使えるそれぞれ自由に使えるお金が多い貯金額を各人に任せているので、互いの金額を把握しにくい
項目別型生活費は夫、貯金は妻というように、項目別で負担する安定して貯金できる。収入差による負担の割合を考えなくてよい支出と貯金のバランスを考えづらい

それぞれにメリット・デメリットがありますが、結論としては、夫婦それぞれ自分用の貯金と、共有の貯金口座を作っておくような、上記の「共通型」と「別々型」のハイブリッドが、無理なく効果的に貯金できる方法としておすすめです。

【関連記事】夫のお小遣いは、手取りの何割にするのが正解?家計管理と金額設定のコツを解説

貯金ができる共働き夫婦になるための5つのステップ

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「共働き夫婦なのに貯金ができない原因」に当てはまる項目が多く、ショックを受けている人もいることでしょう。ここからは、貯金ができる共働き夫婦になるために実践してほしい事柄を、5つのステップに分けてご紹介しましょう。

それぞれ特に難しいものではありませんが、ステップを重ねていくことで、節約や貯金に対する共通意識が芽生えてくるでしょう。

【ステップ1】生活費専用の口座を開設する

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共働きなのに貯金ができていない夫婦において、特に問題なのが、世帯全体の収支を把握していないことです。

そこで、まず実践してほしいのが、世帯における収支の核となる生活費を「見える化」することです。

具体的には、生活費専用の口座を開設し、各自で負担している分の金額を給料日などに自動振替するように設定しておきましょう。もちろん家賃や水道光熱費などの固定費も、この口座から引き落とされるようにしてください。そうすれば、その口座をチェックすることで、家計の収支がすぐに把握できるようになります。

また生活費専用の口座を開設すれば、自分の小遣い分については各自で管理することになるため、互いのプライバシーもある程度は尊重できるのもメリットといえるでしょう。

【ステップ2】家計簿アプリで家計の収支を把握する

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生活費専用の口座を開設しても、収支をチェックしていなければ意味がありません。そこで、次に実践してほしいのが、家計の収支を簡単にチェックできるしくみをつくることです。

その際におすすめしたいのが、銀行口座と連携できるタイプの家計簿アプリです。銀行口座の収支情報を自動的に取り込んで管理してくれるので、アプリを開けば家計の収支がすぐにチェックできるようになります。

さらに個人の銀行口座や、個人で利用しているキャッシュカードやキャッシュレス決済サービスとも連携しておけば、世帯の家計と合わせて自分の収支を把握する役にも立ちます。

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【ステップ3】定期的に家計について一緒に話しあう

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次のステップとして実践してほしいのが、家計の状況や収支の問題点を把握したり、貯金へ向けた互いの意識をひとつにしたりするために、定期的な話しあいの機会を設けることです。

理想をいえば、月に1度は収支を見ながら意見を交わしてほしいところですが、はじめのうちは、賞与が出たり給与額が変わったりといったタイミングだけでも構いません。

いずれにしても大切なのは、夫婦で一緒に家計の収支をチェックすることです。互いに家計を把握することで信頼感も増し、貯金に向けた課題解決に対する意識が高まっていくことでしょう。

【ステップ4】夫婦ならではのお得なサービスや制度を活用する

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互いに家計を把握し貯金に対する意識が高まれば、自然と節約にも関心が向いてくるはずです。とはいえ、いきなり大きな改革を行うのは難しいと思いますので、まずは以下に挙げるもののように、簡単にできる節約テクニックから実践してみてはいかがでしょうか。

(1)スマホや携帯電話
同じ通信会社に契約し、家族割引のサービスを受ければ通話や通信代が節約できます。夫婦間の通話が無料になる場合も多いので、連絡手段に電話をよく使っているなら、大きな節約も期待できるでしょう。

【関連記事】もしかしたら払い過ぎ…? スマホ・携帯電話の平均月額と節約方法を解説! 詳しくはコチラ

(2)クレジットカード
家族会員のカードを利用すれば、ポイントをひとまとめにできるほか、クレジットカードの収支を把握しやすくなるというメリットもあります。年会費の節約にもなりますし、指定の飲食店で割引サービスが受けられるといった特典のあるカードもあるので、2人で外食する機会が多い夫婦にもおすすめです。

(3)各種のネット配信サービス
動画や音楽の定額配信サービスには、ひとつのアカウントで複数人数が利用できる家族向けの料金プランが用意されているものがあります。2つのアカウントを持つよりも割安になるので、同じサービスを個別のアカウントで利用しているなら、ぜひ料金プランの見直しを行ってください。

(4)ふるさと納税制度
互いに一定額以上の収入がある共働き夫婦の場合には、節税にも注意する必要があります。そこでおすすめしたいのが、居住している自治体以外の場所へ任意の金額を寄付する「ふるさと納税制度」の利用です。

寄付した金額から2,000円を引いた額がそのまま寄付金控除の対象となるため、主に住民税の節税につながります。さらに、ふるさと納税を行った自治体から特産物などの返礼品をもらうこともできるので、節税+αのお得にもなります。クレジットカード決済でふるさと納税を行えば、クレジットカードのポイントを貯めることもできます。

このほかにも、夫婦ならではのメリットが得られるサービスや制度はいくつもありますので、一緒に探してみるのも楽しいでしょう。

【ステップ5】貯金専用の口座を開設する

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互いに家計を把握しあい、収支の状況や節約のポイントが見えてきたら、貯金に対する意識もかなり共有できるようになると思います。この段階で、あらためて貯金についての話しあいを行えば、より効率的なプランを立てることができるでしょう。

貯金について話しあう際に必ず押さえておきたいのは、何のために貯金をするのかという目的の確認です。貯金の経験がない人ほど、「とりあえず100万円貯めてみよう」というようにアバウトな目標を立てがちですが、目的が明確になってないと、小額でも目標達成は難しくなります。

ライフプランにもよりますが、共働き夫婦の場合なら貯金の主な目的として、大きく以下の3つが考えられます。目標額と達成期間の目安は人それぞれかとは思いますが、ファイナンシャルプランナーとして相談を受けた際に提案することが多い、一般的な数値をあてはめてみました。

〈表〉目的に応じた金額・貯金期間の目安

目的金額の目安貯金する期間
レジャーや趣味の買い物10~30万円程度1年程度
ケガや病気などへの備え家計費の3カ月~1年分1年~3年程度
老後生活への備え1,000~2,000万円程度10年~30年程度

このように、目的によって金額や達成期間は大きく異なりますが、可能であればこれらのすべてに備えておきたいことでしょう。

その場合におすすめしたいのが、目的別に個別の銀行口座を用意することです。これにより、目的ごとの貯金状況がわかりやすくなるので、お金の割り振りが簡単になるほか、貯金の取り崩し予防にもつながります。

今までにご紹介したように、夫婦で共有する「生活費用の口座」に加え、「目的別の貯金用口座」や「自分の小遣いを管理するための口座」というように、それぞれ準備してみましょう。

銀行口座の数が増えるのが面倒と思うかもしれませんが、銀行口座と連携できるタイプの家計簿アプリを活用すれば、それぞれの収支を簡単に把握することができます。貯金と真面目に向きあいたいなら、ここまでにご紹介したステップをぜひ実践してみてください。

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まとめ

いかがでしたか? 共働きなのになかなか貯金ができないと感じていた夫婦でも、これなら貯金と真面目に向きあうことができると思えたのではないでしょうか。

たとえ夫婦であっても、特に共働きの場合には、互いの収入やお金の使い道について話しあうことに抵抗があるという人は多いと思います。

しかし、これまでファイナンシャルプランナーとして、様々な夫婦の相談を受けてきた経験からいわせていただけば、金銭感覚のすり合わせができていない夫婦ほど、夫婦仲も悪化しがちな傾向がありました。逆にいえば、金銭感覚のすり合わせができている夫婦は、普段の夫婦仲も良好な場合が多いように思えます。

お金に対する意識のすり合わせは、一見難しいように思えるかもしれませんが、互いに腹を割って意見を交わす材料として、じつはもっとも具体的でわかりやすいものともいえます。

長い人生を仲睦まじく暮らしていくためにも、これを機会に、ぜひ貯金についての話しあいをしてみてはいかがでしょうか?

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