【INDEX】
■手取り年収の5~15%が目安。20・30代共働き夫婦の平均的な貯蓄額は?
平均貯蓄額は20代で165万円、30代で529万円
20・30代世帯の2割が「貯蓄しなかった」と回答
■実は共働きのほうが貯蓄が少ないというデータも。3つの原因をチェック
原因(1)財布のひもが緩くなりがち
原因(2)互いの収支を把握できていない
原因(3)家計費を分担制にしている
【ステップ1】生活費専用の口座を開設する
【ステップ2】家計簿アプリで家計の収支を把握する
【ステップ3】定期的に家計について一緒に話しあう
【ステップ4】夫婦ならではのお得なサービスや制度を活用する
【ステップ5】貯金専用の口座を開設する
■これなら貯められる!年代・収入別 実践型貯蓄シミュレーション
【パターンA】世帯年収500万円/正社員&契約社員の20代夫婦
【パターンB】世帯年収700万円/正社員&正社員の20代後半夫婦
【パターンC】世帯年収1,000万円/管理職&正社員の30代夫婦
手取り年収の5~15%が目安。20・30代共働き夫婦の平均的な貯金額は?

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貯金について考える際にいちばん気になるのは、自分と同世代の共働き夫婦が、どれくらい貯金をしているかではないでしょうか。そこでまずは、20・30代共働き夫婦の貯金額の平均を知る上で参考になる資料をご紹介しましょう。
平均貯蓄額は20代で165万円、30代で529万円
金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査」(令和元年版)1)によると、共働き以外も含む2人以上の世帯が保有する「金融資産」は以下のようになっています。
〈表〉世帯主の年齢別・金融資産保有額(2人以上の世帯)
世帯主の年齢 | 金融資産保有額 (平均) | 金融資産保有額 (中央値) |
20歳代 | 165万円 | 71万円 |
30歳代 | 529万円 | 240万円 |
40歳代 | 694万円 | 365万円 |
50歳代 | 1,194万円 | 600万円 |
60歳代 | 1,635万円 | 650万円 |
70歳以上 | 1,314万円 | 460万円 |
「金融資産」には、株式や投資信託などの金額も含まれているため、銀行口座などへの貯金額とは同額になりませんが、20代が世帯主の家庭では165万円、30代では529万円が平均額となっています。
この調査に協力した世帯で、共働き(世帯主と配偶者のみ就業)と回答したのは、20代では54.2%、30代では61.6%と半数を超えています。誤差はあるでしょうが、共働き夫婦の場合の平均貯蓄額と、ほぼ同様と考えても良いでしょう。
ただし、ここで注意したいのが、「平均」には保有する金融資産額が極端に多い一部の世帯が含まれていることです。リアルな金額という点では、「中央値」を参考にしたほうが良いでしょう。中央値をみると、20代が世帯主の世帯では71万円、30代では240万円となります。こちらの金額のほうが、より実感に近い数字と言えるでしょう。
20・30代世帯の2割が「貯蓄しなかった」と回答
一方、貯蓄額の平均値や中央値とともに気になるのが、同性代の人たちが収入のうちどれくらいを貯蓄に回しているのかということです。同じく「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、ボーナスなどの臨時収入を含む、年間手取り年収からの貯蓄割合は、以下のようになっています。
〈表〉年間手取り年収に対する貯蓄割合(%)
貯蓄割合 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 |
---|---|---|---|
5%未満 | 18.9 | 8.8 | 9 |
5~10%未満 | 8.1 | 19.4 | 20.4 |
10~15%未満 | 24.3 | 14.8 | 23.8 |
15~20%未満 | 2.7 | 6.4 | 5.4 |
20~25%未満 | 5.4 | 8.5 | 6 |
25~30%未満 | 2.7 | 2.5 | 1.6 |
30~35%未満 | 2.7 | 4.9 | 2.4 |
35%以上 | 5.4 | 4.2 | 2.4 |
貯蓄しなかった | 21.6 | 19.1 | 18.2 |
無回答 | 8.1 | 11.3 | 10.6 |
平均 | 10 | 11 | 9 |
平均値を見ると、20代が世帯主の世帯では手取り年収の10%、30代の場合は11%を貯蓄に回していることがわかります。ゾーン別の回答を見ると、20代・30代が手取り年収から貯蓄に回す割合は5~15%の間がもっとも多いため、まずはこの5~15%を貯蓄に回す金額の目安と考えてみてはいかがでしょうか。
ただし、「貯蓄しなかった」と回答している人の割合が、20・30代では2割近くになっているのも気になるところ。やはり、貯蓄ができないという人も一定数いるわけなのです。
実は共働きのほうが貯蓄が少ないというデータも。3つの原因をチェック

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一般的に、どちらか1人が働くのに比べ、共働きのほうが世帯収入は多くなります。すべての世代を対象とした調査結果ですが、総務省が公表している「家計調査」(2019年版)2)を見ても、夫のみの収入の世帯に比べ、共働き世帯のほうが、平均で120万円以上も年間年収が多くなっていることがわかります。
〈表〉年間収入と貯蓄(平均)
項目 | 共働き世帯 | 夫のみの収入の世帯 |
世帯主の年齢 | 48.2歳 | 48.6歳 |
年間収入 | 809万円 | 688万円 |
貯蓄 | 1,318万円 | 1,466万円 |
しかし、ここで注目したいのが貯蓄額です。夫のみの収入の世帯の平均額が1,446万円なのに対して共働き世帯では1,318万円。その差額は128万円にも上ります。
共働き世帯のほうが高収入にもかかわらず、貯蓄が少ないのは不思議ですよね? これには、いくつかの原因が考えられます。ファイナンシャル・プランナーとして多くの共働き夫婦の家計をチェックしてきた経験上、「貯金ができないという共働き夫婦に共通する行動パターン」というものがあるのです。なかなか貯金ができない夫婦なら、思い当たることがあるのではないでしょうか?
共働き夫婦なのに貯金ができない3つの原因
原因(1)財布のひもが緩くなりがち

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特に、2人とも正社員でバリバリと稼いでいる共働き夫婦の場合、「2人分の収入があるのだから、そこまで節約をしなくても大丈夫」と考えてしまう人たちが多いようです。
もちろん、お金は使うために稼いでいるともいえるわけですから、自分たちの頑張りに応じた“ご褒美”も必要ですが、財布のひもが緩くなり全体的に出費が増えてしまうようなら問題でしょう。派手に使ったつもりはないのになぜか財布の中身が減っている…と感じることが多い場合には、まず自分の収支を把握する習慣を身につけるべきでしょう。
原因(2)お互いの収支を把握できていない

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共働き夫婦から家計相談を受けていて意外と多いのが、お互いの収支を把握していないケースです。
パートナーのプライバシーを尊重するという方針から、敢えて互いの収支をチェックしていないという夫婦もいるようですが、世帯として貯金を考えた場合、収支に不透明な部分があるのは、あまりおすすめできません。
貯金が増えないことに悩んでいる共働き夫婦の相談を受けてみると、「パートナーが貯金をしてくれていると思っていた」、「いざチェックしてみたら、パートナーが貯金をしていなかった」という愚痴が出てくる場合がよくあり、なかにはそのことが原因で深刻な夫婦喧嘩に発展することもあります。
すべての収支を透明化する必要はありませんが、ある程度は互いの収支を把握しておいたほうが、貯金を成功させることはもちろん、夫婦関係を円満に保つことにも繋がるのではないでしょうか。
原因(3)生活費を分担制にしている

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家賃は夫が担当、食費は妻が担当というように、生活費を項目ごとに分担制で支払っている共働き夫婦も多いと思います。
生活費の分担制自体は悪いことではないのですが、それによって「自分は家賃を払っているのだから、他の生活費を気にする必要はない」というように、家計全体に対する関心が低くなってしまうのは、貯金の観点から考えれば問題といえます。
特に、水道光熱費や食費のように、毎月変動する可能性が高い項目を片方だけが把握していると、夫婦の間で生活費に対する認識がズレる原因にもなり得ます。互いの収支を把握する第1歩として、まずは家計の全体像を共有できるしくみづくりについて話しあってみると良いでしょう。
貯金ができる共働き夫婦になるための5つのステップ

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「共働き夫婦なのに貯金ができない原因」に当てはまる項目が多く、ショックを受けている人もいることでしょう。ここからは、貯金ができる共働き夫婦になるために実践してほしい事柄を、5つのステップにわけて紹介します。
それぞれ特に難しいものではありませんが、ステップを重ねていくことで、節約や貯蓄に対する共通意識が芽生えてくるのではないでしょうか。
【ステップ1】生活費専用の口座を開設する

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共働きなのに貯金ができていない夫婦において、特に問題なのが、世帯全体の収支を把握していないことです。
そこで、まず実践してほしいのが、世帯における収支の核となる生活費を「見える化」することです。
具体的には、生活費専用の口座を開設し、各自で負担している分の金額を給料日などに自動振替するように設定しておきましょう。もちろん家賃や水道光熱費などの固定費も、この口座から引き落とされるようにしてください。そうすれば、その口座をチェックすることで、家計の収支がすぐに把握できるようになります。
また生活費専用の口座を開設すれば、自分の小遣い分については各自で管理することになるため、互いのプライバシーもある程度は尊重できるのもメリットといえるでしょう。
【ステップ2】家計簿アプリで家計の収支を把握する

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生活費専用の口座を開設しても、収支をチェックしていなければ意味がありません。そこで、次に実践してほしいのが、家計の収支を簡単にチェックできるしくみをつくることです。
その際におすすめしたいのが、銀行口座と連携できるタイプの家計簿アプリです。銀行口座の収支情報を自動的に取り込んで管理してくれるので、アプリを開けば家計の収支がすぐにチェックできるようになります。
さらに個人の銀行口座や、個人で利用しているキャッシュカードやキャッシュレス決済サービスとも連携しておけば、世帯の家計とあわせて自分の収支を把握する役にも立ちます。
【ステップ3】定期的に家計について一緒に話しあう

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次のステップとして実践してほしいのが、家計の状況や収支の問題点を把握したり、貯蓄へ向けた互いの意識をひとつにしたりするために、定期的な話しあいの機会を設けることです。
理想をいえば、月に1度は収支を見ながら意見を交わしてほしいところですが、はじめのうちは、賞与が出たり給与額が変わったりといったタイミングだけでも構いません。
いずれにしても大切なのは、夫婦で一緒に家計の収支をチェックすることです。互いに家計を把握することで信頼感も増し、貯金に向けた課題解決に対する意識が高まっていくことでしょう。
【ステップ4】夫婦ならではのお得なサービスや制度を活用する

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互いに家計を把握し貯金に対する意識が高まれば、自然と節約にも関心が向いてくるはずです。とはいえ、いきなり大きな改革を行うのは難しいと思いますので、まずは以下に挙げるもののように、簡単にできる節約テクニックから実践してみてはいかがでしょうか。
(1)スマホや携帯電話
同じ通信会社に契約し、家族割引のサービスを受ければ通話や通信代が節約できます。夫婦間の通話が無料になる場合も多いので、連絡手段に電話をよく使っているなら、大きな節約も期待できるでしょう。
(2)クレジットカード
家族会員のカードを利用すれば、ポイントをひとまとめにできるほか、クレジットカードの収支を把握しやすくなるというメリットもあります。年会費の節約にもなりますし、指定の飲食店で割引サービスが受けられるといった特典のあるカードもあるので、2人で外食する機会が多い夫婦にもおすすめです。
(3)各種のネット配信サービス
動画や音楽の定額配信サービスには、ひとつのアカウントで複数人数が利用できる家族向けの料金プランが用意されているものがあります。2つのアカウントを持つよりも割安になるので、同じサービスを個別のアカウントで利用しているなら、ぜひ料金プランの見直しを行ってください。
(4)ふるさと納税制度
互いに一定額以上の収入がある共働き夫婦の場合には、節税にも注意する必要があります。そこでおすすめしたいのが、居住している自治体以外の場所へ任意の金額を寄付する「ふるさと納税制度」の利用です。
寄付した金額から2,000円を引いた額がそのまま寄付金控除の対象となるため、主に住民税の節税につながります。さらに、ふるさと納税を行った自治体から特産物などの返礼品をもらうこともできるので、節税+アルファのお得にもなります。クレジットカード決済でふるさと納税を行えば、クレジットカードのポイントを貯めることもできます。
このほかにも、夫婦ならではのメリットが得られるサービスや制度はいくつもありますので、一緒に探してみるのも楽しいでしょう。
【関連記事】
【ステップ5】貯金専用の口座を開設する

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互いに家計を把握しあい、収支の状況や節約のポイントが見えてきたら、貯金に対する意識もかなり共有できるようになると思います。この段階で、あらためて貯金についての話しあいを行えば、より効率的なプランを立てることができるでしょう。
貯金について話しあう際に必ず押さえておきたいのは、何のために貯金をするのかという目的の確認です。貯金の経験がない人ほど、「とりあえず100万円貯めてみよう」というようにアバウトな目標を立てがちですが、目的が明確になってないと、小額でも目標達成は難しくなります。
ライフプランにもよりますが、共働き夫婦の場合なら貯金の主な目的として、大きく以下の3つが考えられます。目標額と達成期間の目安は人それぞれかとは思いますが、ファイナンシャル・プランナーとして相談を受けた際に提案することが多い、一般的な数値をあてはめてみました。
〈表〉目的に応じた金額・貯金期間の目安
目的 | 金額の目安 | 貯金する期間 |
---|---|---|
レジャーや趣味の買い物 | 10~30万円程度 | 1年程度 |
ケガや病気などへの備え | 家計費の3カ月~1年分 | 1年~3年程度 |
老後生活への備え | 1人1,000~2,000万円程度 | 10年~30年程度 |
このように、目的によって金額や達成期間は大きく異なりますが、可能であればこれらのすべてに備えておきたいことでしょう。
その場合におすすめしたいのが、目的別に個別の銀行口座を用意することです。これにより、目的ごとの貯金状況がわかりやすくなるので、お金の割り振りが簡単になるほか、貯金の取り崩し予防にもつながります。
今までにご紹介したように、夫婦で共有する「生活費用の口座」に加え、「目的別の貯金用口座」や「自分の小遣いを管理するための口座」というように、それぞれ準備してみましょう。
銀行口座の数が増えるのが面倒と思うかもしれませんが、銀行口座と連携できるタイプの家計簿アプリを活用すれば、それぞれの収支を簡単に把握することができます。貯金と真面目に向き合いたいなら、ここまでに紹介したステップをぜひ実践してみてください。
これなら貯められる!年代・収入別 実践型貯金シミュレーション
それでは最後に具体的な例を挙げて、20・30代の共働き夫婦の貯金シミュレーションをしてみましょう。3つのパターンから、自分に近いものを参考にしてみてください。
【パターンA】世帯年収500万円/正社員&契約社員の20代夫婦

画像:iStock.com/imtmphoto ※この画像はイメージです。
●プロフィール
世帯年収 | 500万円 |
---|---|
夫(正社員)の収入 | 月給21.4万円(手取り約17万円) 年収300万円(手取り約239万円) ※賞与年2回(各1カ月分) |
妻(契約社員)の収入 | 月給16.7万円(手取り約13.5万円) 年収200万円(手取り約162万円) |
●目標貯蓄額と達成期間
目標とする貯蓄額 | 90万円 |
---|---|
達成期間の目安 | 2年程度 |
【貯蓄額を設定する上での考え方】
世帯年収が少ない20代共働き夫婦の場合、貯金の目的としてまず考えたいのは、ケガや病気で働けなくなった場合の備えです。
ライフプランに加えて、今後の日本の状況を考えると、早いうちから老後の費用を準備しておいた方が良いのは確かですが、20代のうちはまだ考えなくても間に合うと思います。貯金の習慣がない夫婦なら、まずは生活の基盤となるお金を貯めることを考えてください。基盤となる貯蓄ができれば、それをベースに他の目的の貯蓄を始めることができるでしょう。
ケガや病気で働けなくなった場合に備えておく金額の目安は、一般的に手取り月収の3カ月~1年分といわれています。20代のうちは収入が少ないほか、ケガや病気のリスクも比較的低いので、世帯収入の3カ月分を目標にしてみましょう。
パターンAの共働き夫婦の場合、手取りの世帯月収は約30万円となるので、まずは90万円が目標の貯蓄額ということになります。
たとえば、1年で貯める目標にした場合、月々7.5万円が貯蓄額の目安となりますが、これでは世帯手取り月収の25%に達するので、生活にも影響が出てしまうかもしれません。
前述した通り、20・30代が収入から貯蓄に回す割合の平均値は、約10%です。また、ファイナンシャル・プランナーの間では、無理せず貯蓄できる割合は、手取り月収の5~15%が目安と考えられています。
そこで手取り月収から貯蓄に回す割合を5%きざみでシミュレーションしてみましょう。90万円の貯蓄を達成するためには、以下の期間が必要になります。
〈表〉90万円の貯蓄を達成するために必要な期間
月々の貯蓄額 | 達成までの期間 | |
---|---|---|
手取り月収の5% | 1.5万円 | 60カ月(5年) |
手取り月収の10% | 3万円 | 30カ月(2年6カ月) |
手取り月収の15% | 4.5万円 | 20カ月(1年8カ月) |
もしもへの備えを5年かけて貯めるのは少し心配かもしれませんが、一方で毎月4.5万円を貯蓄に回すのも大変でしょう。
そこで、間をとって2年を目安に90万円を貯めてみてはいかがでしょう? この場合は、毎月だいたい3.7万円(手取り月収の約8%)を貯めれば目標額が達成されます。
家計や小遣いの見直しを検討すれば、これくらいの金額は意外と楽にねん出できるものです。この夫婦の場合は夫にボーナスがあるので、毎回半額を貯蓄に回すことにすれば、もっと早く目標額を達成できるでしょう。
【パターンB】世帯年収700万円/正社員&正社員の20代後半夫婦

画像:iStock.com/imtmphoto ※この画像はイメージです。
●プロフィール
世帯年収 | 700万円 |
---|---|
夫(正社員)の収入 | 月給21.4万円(手取り約17万円) 年収300万円(手取り約239万円) ※賞与年2回(各1カ月分) |
妻(正社員)の収入 | 月給28.6万円(手取り約22.6万円) 年収400万円(手取り約316万円) ※賞与年2回(各1カ月分) |
●目標貯蓄額と達成期間
目標とする貯蓄額 | 120~220万円 |
---|---|
達成期間の目安 | 1~3年程度 |
【貯蓄額を設定する上での考え方】
夫婦ともに正社員として働いており収入もそれなりにある、いわゆるパワーカップルと呼ばれるパターンです。
●ケガや病気で働けなくなった場合の備え
まったく貯金がないという場合は、パターンAの夫婦と同様に、まずはケガや病気で働けなくなった場合の備えとして、手取りの世帯月収の3か月分(約120万円)を目標額とすることをおすすめします。世帯の手取り月収(約40万円)の5~15%を貯蓄に回した場合の達成シミュレーションは、次のようになります。
〈表〉120万円の貯蓄を達成するために必要な期間
月々の貯蓄額 | 達成までの期間 | |
手取り月収の5% | 2万円 | 60カ月(5年) |
手取り月収の10% | 4万円 | 30カ月(2年6カ月) |
手取り月収の15% | 6万円 | 20カ月(1年8カ月) |
目標達成にかかる期間の比率はパターンAの夫婦と同じですが、パターンBの夫婦の場合は世帯の収入がある程度高いので、家計の見直しを行えば、毎月15%を貯蓄に回すこともそこまで大変ではないと思います。
また夫婦ともにボーナスがあるため、ボーナスから貯金へ回すことを予定に含めれば、1年ちょっとで目標額を達成することもできるのではないでしょうか。
●出産・初期の育児への備え
すでにもしもへの備えに近い金額を貯金できているという場合には、そろそろ次の目的の貯金を始めても良いと思います。いずれ出産を考えているなら、出産から初期の育児にかかる費用を準備しておくべきでしょう。
少し古い資料になりますが、内閣府が公表した「インターネットによる子育て費用に関する調査」(平成21年度)3)によれば、0歳児1人あたりの年間子育て費用は、約93万円となっています。
出産にまつわる費用は、公的医療制度である程度賄うことができますが、出産後は子育てにパワーを割り当てることになるので、それまでのように働くことが難しくなる場合が多いものです。保育園などに預けることができるようになるまでの間は収入が減ることを想定して、最低でも100万円は用意しておいたほうが良いでしょう。
パターンBの夫婦の場合、100万円の貯金のねん出方法として、もっとも簡単なのはボーナスから貯蓄に回すことです。思い切ってボーナスを全額、子育ての準備費用に充てることができれば、1年間で目標額に近づきます。
ボーナスを貯蓄に回さない場合は、子育て費用の100万円も月々貯めていきましょう。先述した「手取り月収3カ月分の貯金」を達成した後も、同じ割合で貯金を継続すると良いでしょう。
【パターンC】世帯年収1,000万円/管理職&正社員の30代夫婦

画像:iStock.com/imtmphoto ※この画像はイメージです。
●プロフィール
世帯年収 | 1,000万円 |
---|---|
夫(管理職)の収入 | 月給42.9万円(手取り約33万円) 年収600万円(手取り約463万円) ※賞与年2回(各1カ月分) |
妻(正社員)の収入 | 月給28.6万円(手取り約22.6万円) 年収400万円(手取り約316万円) ※賞与年2回(各1カ月分) |
●目標貯蓄額と達成期間
目標とする貯蓄額 | 2,000~3,000万円 |
---|---|
達成期間の目安 | 30~35年 |
【貯蓄額を設定する上での考え方】
夫婦ともに正社員として働いており、さらに夫は管理職となっている、なかなか高収入な共働き夫婦のパターンです。
30代を迎え、ある程度もしもへの備えになる貯金はできていると仮定すると、次に心配なのは老後資金になるはずです。
●貯金・節約による老後への備え
幸い、パターンCの夫婦は年収もかなり多いので、老後資金を貯めることを考えるなら、手取りの世帯月収の20%(約11万円)を貯蓄に回しても良いと思います。ただし、子どもがいる家庭の場合は育児にかかる費用を考慮し、15%程度にしておいたほうが安心だと思います。
最近では一般的に、老後に必要な貯蓄額は1人2,000万円、夫婦で3,000万円という説が出回っていますが、これはあくまでも、現在の生活水準を維持することを想定した場合の試算です。実際には、いくらあれば安心かという感覚は、その人の価値観によっても異なるでしょう。
そこでパターンCのような高収入の共働き夫婦が、老後資金について話しあう際に特に検討してほしいのが、現在の生活レベルの見直しです。
高収入の世帯ほど家計が放漫で、生活レベルも高めになっているケースが多いため、そのままのレベルを維持しながら老後の生活をイメージすると、貯金がいくらあっても足りない、ということになりかねません。
今のうちに、自分たちの生活レベルを見直し、老後に備え徐々に生活の規模を縮小させることを念頭に置いた貯金のプランを立てれば、夫婦で2,000万円の貯蓄でも余裕がある老後を過ごせる可能性は十分にあります。
●資産運用を視野に入れた貯蓄計画を
とはいえ、貯金だけでこの金額を達成するのは、貯金の習慣が身についた世帯でも難しいと思います。そこで検討してほしいのが、銀行口座への貯金とあわせ、投資信託などへの投資です。もちろんリスクはありますが、銀行口座の利息に比べ、高いリターンが期待できるので、まとまった老後資金を貯めたい人なら、挑んでみる価値があると思います。
特に、最近注目されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」なら小額から始めることができます。たとえば、「つみたてNISA」の場合には1人年間40万円、夫婦なら年間80万円までが非課税枠となるので、節税対策としても有効でしょう。
老後のための貯蓄は、30代の夫婦でも30~35年という長期間をかけて達成することになります。先ほどおすすめした生活レベルの見直しを含め、夫婦でよく話しあいながら、お互いに納得できる無理のないプランを立ててください。
まとめ
いかがでしたか? 共働きなのになかなか貯金ができないと感じていた夫婦でも、これなら貯金と真面目に向き合うことができると思えたのではないでしょうか。
たとえ夫婦であっても、特に共働きの場合には、互いの収入やお金の使い道について話しあうことに抵抗があるという人は多いと思います。
しかし、これまでファイナンシャル・プランナーとして、様々な夫婦の相談を受けてきた経験から言わせていただければ、金銭感覚のすり合わせができていない夫婦ほど、夫婦仲も険悪になりがちな傾向がありました。逆に言えば、金銭感覚のすり合わせができている夫婦は、普段の夫婦仲も良好な場合が多いように思えます。
お金に対する意識のすり合わせは、一見難しいように思えるかもしれませんが、互いに腹をわって自分の意見を交わす材料として、実はもっとも具体的でわかりやすいものともいえます。
長い人生を仲睦まじく暮らしていくためにも、これを機会に、ぜひ貯金についての話しあいをしてみてはいかがでしょうか?
この記事の監修者

高山一恵
株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。
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