この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、育休の制度についてわかりやすく解説します。育休を取得できる期間や延長できるケース、申請方法や経済的な支援などのほか、短時間勤務など職場復帰したあとに活用できる制度もお伝えしますので、育休期間の確認、復職後の働き方の検討にお役立てください。
※この記事は、2023年12月7日に公開した内容を最新情報に更新しています。
育児休暇(育休)とは?
育児休業は、育児・介護休業法第5条〜第10条1)で定められている労働者の権利で、雇用保険の被保険者であれば、子どもが1歳になるまで仕事を休業できます。
以下では、育休に関連する休業について説明します。
育児休業と育児休暇の違い
育児中の休業に関する休暇には育児休暇(育児目的休暇ともいいます)もあります。育休という略称から育児休業と育児休暇を混同してしまう方もいらっしゃいますが、2つは異なる制度です。その違いを表にまとめました。
〈表〉育児休業と育児休暇の違い2)
育児休業 | 育児休暇 | |
---|---|---|
根拠を示している法律 | 育児・介護休業法 | 育児・介護休業法 |
概要 | 条件を満たす労働者は、育児休暇を取得できる | 会社には育児休暇制度を設ける努力義務がある |
期間 | 産休が終了した翌日から、子どもが1歳になるまで(最長2歳まで延長可能) | 会社による |
手当・給与 | 育児休業給付金(雇用保険) | 会社による |
育児休業は雇用保険に入っていれば取得できるのに対し、育児休暇は企業の就業規則によっては取得できないこともあります。
育児休暇の場合、企業に対して「小学校に入る前の子どもがいる労働者が育児のために取得できる休暇を設けるように努める」という努力義務2)が課せられています。勤務先の就業規則などがそれに従っていれば、従業員は育児休暇を取得できます。ただし、あくまで努力義務のため、育児休暇がない企業もあります。また、取得できる期間や条件、取得した際の給与の支払いなどは企業ごとに異なるため、希望する際は確認しておくのがよいでしょう。
なお、育児休業と育児休暇は異なる制度となるため、どちらも取得することができます。
育休と産休の違い
育休の前に取得する産前産後休暇(以下、産休と略します)との違いも確認しましょう。
〈表〉産休と育休の違い3)4)
産休 | 育休 | |
---|---|---|
根拠を示している法律 | 労働基準法 | 育児・介護休業法 |
対象者 | 女性労働者 | 男女労働者 |
条件 | 会社に雇用されていること | ・子どもの1歳の誕生日以降も引き続き働く予定であること ・子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了し、契約が更新されないことが明らかでないこと(※) など |
期間 | 出産予定日を含む産前6週間(双子以上は14週間)、産後8週間 | 原則、子どもが1歳になるまで(保育施設に入れない場合は2歳まで延長可能) |
期間中に支給される手当 | 出産手当金(健康保険より) | 育児休業給付(雇用保険より) |
※:有期間契約労働者の場合
産休と育休の違いは上記のとおりです。出産に伴って取得する休暇であることは同じですが、条件や定められている法律、支給される手当などは異なります。最も大きな違いは産休を取得できるのは女性労働者だけであるのに対し、育休は男性労働者も取得できる点です。
また、上記以外では任意・義務に違いがあります。前提として、産休は出産前後の期間に分けられ、産前休業は従業員の任意で取得するものですが、産後休業は企業が従業員に与える義務があります。
育休は産前休業と同様に従業員が希望した場合に任意で取得できるもので、取得の有無や期間は従業員が決めることができます。
なお、産休の取得期間やその間にもらえる給付金などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】【早見表】産休はいつから取れる? 平均取得日数や取得の流れ、延長まで紹介
育休の期間は、いつからいつまで取得できる?
ここからは育休の期間について詳しく解説していきます。
育休は産休が終了した翌日から子どもが1歳になるまで(1歳の誕生日の前日)の間に取得できます。期間は労働者が決めることができ、2回に分けて取得することも可能です。また、原則育休は、子どもが1歳になるまでの期間となりますが、保育施設に入れないなどの事情がある場合は育休期間を延長することもできます。
〈図〉出産から育休の終了までのスケジュール
様々な事情から子どもが1歳になった時点で復職が難しいこともあります。そのような場合は、最長で子どもが2歳になるまで育休を延長できます(※)。
育休の延長は半年間ずつ2回まで申請可能です。1回目の延長時に2歳まで期間を延長することはできません。1回目の延長は1歳6カ月までの期間、2回目の延長は1歳6カ月から2歳までの期間で申請を行います。
ただし、希望すれば必ず延長できるわけではありません。以下の条件を満たすことと、育休を延長する相応な理由があることが求められます。
※:以前は最長で1歳6カ月まででしたが、平成29年10月の法改正以降は2歳まで延長できるようになりました。
〈表〉育休を延長する条件と理由
詳細 | |
---|---|
条件 | ・子どもが1歳(もしくは1歳6カ月)になる誕生日の前日に両親のどちらかが育休を取得中であること(※) ・延長期間終了までに雇用契約の期間が満了しないこと |
理由(一例) | ・育休が終了する日までに子どもが保育施設に入れない ・子育てをする予定だった配偶者が何らかの理由で子育てできなくなった(第2子の妊娠・出産、死亡、負傷などで養育できなくなった、離婚などの事情で同居しないことになったなど) |
※:1歳6カ月までの延長の場合は1歳になる誕生日の前日。2歳までの再延長の場合は1歳6カ月になる日の前日。
延長の申請方法については、後述する「育休の申請方法」で解説しています。
育休は2回に分割して取得することも可能
育休は以下のように2回に分けて取得することも可能です。育休の分割取得は2022年4月の育児・介護休業法の改正5)により可能となった制度です。1回しか取得できなかった法改正以前に比べ、家族のライフスタイルに合わせた様々な形で育休を取得できるようになっています。
〈図〉育休を2回に分けて取得する例
「仕事の都合上、1度復職したい」「夫婦で順番に育休を取得したい」などの事情がある場合は、上の図のように2回に分けて育休を取得するのがよいでしょう。
出産が予定日とずれた時の育休期間
育休と産休は出産予定日を起点に会社に申請しますが、実際の出産日は予定日とずれることも多いです。
出産が予定日とずれた場合、育休期間は以下のように変わります。
〈図〉出産が予定日より10日早まった場合(予定日が4月13日の場合)
予定日より早く出産した場合も、育休の開始日と終了日はずれますが、育休の日数は変わりません。
〈図〉出産が予定日より10日遅れた場合(予定日が4/13の場合)
予定日より遅く出産した場合も、開始日と終了日が変わっても育休の日数は変わりません。
なお、出産日がずれた場合の育休期間の変更申請については、あらかじめ会社に確認しておきましょう。多くの会社では出産日を報告する以外の手続きは不要です。社会保険料の控除や育児休業給付金の取得期間が変わる場合の手続きは会社が行ってくれることが多いです。
ただし、出産が予定日とずれた場合、産休は日数が変わります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】【早見表】産休はいつから取れる? 平均取得日数や取得の流れ、延長まで紹介
保育施設に入れず育休を延長するケース
ここでは、育休を延長する理由として多い、子どもが1歳になる時点で保育施設に入れず、育休を延長する場合について説明します。
まず、延長には市区町村が発行した「保育所入所不承諾通知書」や「利用調整結果通知書(保留)」の写しが必要になります。また認可外保育施設だけを申し込んでいる場合は、対象外となるため、注意しましょう6)。
下の図は4月13日生まれの子どもを保育施設に入れることができず、2歳まで育休を延長した場合です。
〈図〉保育施設に入れずに育休を延長する例
前述したように、育休の延長は半年間ずつ2回まで申請できます。1回目の延長は1歳6カ月までの期間、2回目の延長は1歳6カ月から2歳までの期間で申請をする必要あるので、手続きを忘れないようにしましょう。
育休の延長や、延長できなかった時の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】育児休業の延長はいつまで? 条件や手続き、申請書類や給付金についてまるっと解説
男性の育休期間はいつまで?
育休は男性も取得可能です。男性が取得できる育休期間は女性と変わりません。原則として出産日から、子どもが1歳になるまで(1歳の誕生日の前日)取得でき、最長で2歳になるまで延長することも可能です。
女性にだけ産休があるように、男性にも育休以外に育児のために取得できる休暇があります。これを利用することでより臨機応変に男性も育児と仕事の両立をすることが可能です。夫婦揃って育休を取得することで育休期間を伸ばすことが可能になっています。
産後パパ育休と育休の2種類がある
男性が育児のために取得できる休暇には、産後パパ育休(出生時育児休業)と育休の2種類があります。
産後パパ育休は、2022年4月の育児・介護休業法の改正4)によってスタートした制度で、妻が産後休業の期間中(出生後8週間以内)に取得することができます。産後パパ育休と育休の違いを表にまとめました。
〈表〉産後パパ育休と育休の違い5)
産後パパ育休 | 育休 | |
---|---|---|
対象期間・取得可能日数 | 子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能 | 原則、子どもが1歳になるまで取得可能(最長2歳まで延長可能) |
取得回数 | 分割して2回まで | 分割して2回まで(延長した場合は再取得可能) |
申請期限 | 原則、休業開始日の2週間前まで | 原則、休業開始日の1カ月前まで |
産後パパ育休は産後8週間が対象ですが、取得できるのは最長4週間です。ただし、2回に分けて取得できるため、以下のように出産直後や産休が終わる時に分けて取得することもできます。
〈図〉産後パパ育休と育休取得のイメージ
産後パパ育休は休業2週間前までの申請で取得が可能である点も特長です。育休の場合、休業開始の1カ月前までに申し出を行わなければいけないのですが、産後パパ育休を利用すれば、出産予定日がずれた時でも、育休のスタート日をより柔軟に設定することができます。ただし、分割で2回取得する場合、申請は初回にまとめて行う必要があるのでその点は注意しましょう。
男性の育休については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】【2023年最新】男性の育休期間の平均は? 法改正についても詳しく解説
パパ・ママ育休プラスで1歳2カ月まで育休を取得可能
妻と夫がともに育休を取得し、パパ・ママ育休プラスという制度を活用することで、子どもが1歳2カ月になるまで育休期間を延ばすことができます。
〈図〉1歳2カ月まで育休を取得する一例6)
保育施設に入所できないといった状況でなくても、育休を延長できる制度もあります。それが「パパ・ママ育休プラス」です7)。
パパ・ママ育休プラスを取得する条件は、以下になります。
〈表〉パパ・ママ育休プラスの取得条件
【パパ・ママ育休プラスの取得条件】
- 条件1:配偶者が、子どもが1歳に達するまでに育児休業を取得していること
- 条件2:本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前であること
- 条件3:本人の育児休業開始予定日は、配偶者が取得している育児休業の初日以降であること
注意点としては、1人あたりの育休取得期間は変わらず最長1年間となっているので、女性の育休開始日と男性の育休開始日をずらす必要があります。
参考資料
男性の育休取得率は約3割
近年、男性が育休を取りやすい環境が整備されてきています。厚生労働省が公表した「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、男性の育休取得者は30.1%と、前年度(令和4年度:17.1%)に比べて13.0ポイント上昇しました8)。取得者の割合、上昇幅ともに歴代最高を記録しており、男性の育休取得は確実に進んでいるようです。
政府は、2025年までに男性の育休取得率を50%にするとしています。このまま取得者が増え続ければ、2025年までの達成も不可能ではないといえるでしょう。
パパ・ママ育休プラスの詳細や、男性の育休期間の平均、男性が育休を取得するメリットなど、男性の育休に関する情報を以下の記事でもご紹介しています。併せてご覧ください。
【関連記事】【2023年最新】男性の育休期間の平均は? 法改正についても詳しく解説
【関連記事】【2022年最新】男性の育休はじつはメリットだらけ! 取得期間や助成金など、法改正も併せて制度の内容を解説
【関連記事】男性の育休中、給与はどうなる? 給付金の申請や計算方法を解説!
公務員の育休期間は最長3歳まで
公務員の方も育休を取得可能です。ただし、会社員とは育休の期間や手当が異なります。以下に公務員の育休の特徴をまとめました。
〈表〉公務員の育休9)
期間 | 子どもが3歳を迎える前日まで |
---|---|
回数 | 原則として分割して2回まで可能 (特別な事情がある場合は3回以降も可能) |
給与 | 支払われない |
手当 | 子どもが1歳になるまで育児休業手当金が支給される (保育施設に入れない場合は最長2歳まで延長可能) |
共済掛金 | 全額免除される |
会社員の育休期間は原則として出産日から子どもが1歳になるまでですが、公務員は子どもが3歳になるまで育休を取得でき、延長手続きも不要です。ただし、育休中の手当は原則として子どもが1歳になるまで(保育施設に入れなかった場合でも2歳まで)しか支払われません。そのため、子どもが3歳になるまで育休を取得する場合は、手当をもらえない期間が発生します。
なお、地方公務員の方は育休制度が上記とは異なる場合があります。詳しくは勤務先の自治体でご確認ください。
参考資料
公務員の男性の育休
公務員の男性も育休を取得可能です。期間や手当などは女性と変わりません。また、男性の場合は、産後パパ育休や育休のほかにも取得できる休暇があります。
〈表〉育休以外で公務員の男性が取得できる休暇9)
産後パパ育休 | 配偶者出産休暇 | 育児参加のための休暇 | |
---|---|---|---|
対象期間 | 子どもが生まれた日から57日間以内 | 出産のために入院した日から産後2週間まで | 出産予定日の6週間前から子どもが1歳になるまで |
取得可能日数 | 最長57日 | 合計2日間 | 合計5日間 |
給与 | 支払われない | 支払われる(有給) | 支払われる(有給) |
手当 | 育児休業手当金 | なし | なし |
産後パパ育休は、出産直後の時期が対象となる制度です。会社員にも同じ制度がありますが、取得可能日数が違います。会社員は最長4週間なのに対して、公務員は最長57日と長くなっています。
また、配偶者出産休暇と育児参加のための休暇は、産前から取得できる休暇で、どちらも1日単位、もしくは1時間単位で取ることが可能です。いずれも有給休暇扱いとなりますので、取得しても給与は減りません。
育休を取得できる条件・雇用形態
仕事と育児を両立させるためには便利な育休ですが、取得するには条件があります。以下は、育休を取得できる条件と雇用形態です。
【育休の取得条件】1)
- 条件1:子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
- 条件2:子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと
この2つの条件をクリアしていれば育休は取得可能です。以前は「勤続1年以上」という条件もありましたが、令和4年4月の法改正で撤廃されました4)。
また、育休は雇用保険の被保険者であれば雇用形態を問わない制度です。雇用保険に加入していて上記の条件をクリアしていれば、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトの方も育休を取得することができます。
【関連記事】育児休業給付金をもらう条件は? 申請の方法や注意点も解説
育休の申請方法
続いては、育休の申請方法と必要な書類、育休延長の申請方法を説明していきます。
育休は以下の手順で申請をします。
【育休を申請する流れ】
- 手順1:会社に妊娠を報告する
- 手順2:産休・育休の期間を決定する
- 手順3:産休・育休の関連書類を提出する
女性の場合、育休は産休と一緒に申請することが多いです。会社に妊娠を報告して、育休の取得期間を決めたら、必要な書類を記入して会社に提出します。その際に必要な書類は以下のとおりです。
【育休を申請する際に必要な書類(女性・男性共通)】
- 産休・育休の申請書類
- 育児休業給付金支給申請書
- 母子健康手帳の写し
- 育児休業給付金の振込先となる通帳の見開きのコピー
上記4点を提出すれば、会社が育児休業給付金の申請手続きをしてくれます。
なお、育休には「取得する1カ月前まで」という申請期限がありますが、産休と一緒に申請する方は期限を心配する必要はないでしょう。あとから2度目の育休を取得する方や男性は期限にご注意ください。
育休延長の申請方法
育休を延長する際は、子どもが1歳の誕生日を迎える2週間前まで(再延長の場合は1歳6カ月になる翌日の2週間前まで)に書類を会社に提出します。
【育休を延長する際の必要な書類】
- 育児休業申出書
- 延長の理由となる書類(保育施設に入れない場合は、自治体が発行する不承諾通知や利用調整結果通知書(保留)など)
その後、会社からハローワークへの手続きが必要となりますが、この手続きは会社が対応してくれます。ご自身でハローワークに書類提出などをする必要はありません。育休の申請方法や育休延長の手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】育児休業の延長はいつまで? 条件や手続き、申請書類や給付金についてまるっと解説
【関連記事】育児休業給付金をもらう条件は? 申請の方法や注意点も解説
育休中の手当・経済的支援
育休中は雇用保険から育児休業給付金を受け取ることができます。給付金の金額は産休前の給与で変わり、以下の計算式で算出します。
〈表〉育児休業給付金の支給額10)
育休開始から180日(6カ月)まで | 休業開始時賃金日額×支給日数(※)× 67%(給付率) |
---|---|
育休開始から181日(7カ月)以降 | 休業開始時賃金日額×支給日数(※)× 50%(給付率) |
※:原則30日間を1単位として計算する。
育休を180日(6カ月)より長く取得すると、給付率が途中で変わるため、育児休業給付金の金額も変更になる点に注意しましょう。育休を延長した場合は、「育休開始から181日(7カ月)以降」の計算式で金額を算出します。
また、給付金には上限金額と下限金額が設定されています。令和7年7月31日までの上限金額、下限金額は以下のとおりです。
〈表〉支給上限額と支給下限額(支給日数が30日の場合)10)
育休開始から180日(6カ月)まで | 支給上限額:31万5,369円 支給下限額:5万7,666円 |
---|---|
育休開始から181日(7カ月)以降 | 支給上限額:23万5,350円 支給下限額:4万3,035円 |
そのほか、育休中に会社から給与が支払われると給付金の金額が減ることや支給されないこともあります。育児休業給付金について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】育児休業給付金をもらう条件は? 申請の方法や注意点も解説
【関連記事】育児休業給付金の計算方法は? 延長時の金額や支給中の税金についても解説
【関連記事】育児休業給付金の上限は? 計算方法や2022・2023年の法改正も解説
参考資料
育休中は社会保険料が免除される
育休中は社会保険料が全額免除されます。対象期間は、育休を開始した月から終了した翌日の前月までです。育休中にボーナスが支給された場合、ボーナスが支給された月の末日を含んで1カ月以上連続で取得していれば社会保険料が免除されます11)。
【2025年施行】育児休業給付金が手取りの100%相当に
2025年から、育児休業給付金が改正され、条件を満たした場合に手取りの100%相当が支給される予定です。具体的な改正ポイントは、以下の2点です12)。
〈表〉(2025年4月施行)育児休業給付の主な改正ポイント
育児休業給付金の改正 | 男性は子どもの出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、夫婦2人とも14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間手取りの100%相当の給付金を支給する。 |
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育児時短就業給付の創設 | 2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をしている場合に支給する。支給額は時短勤務中に支払われた賃金額の10%とする。 |
現行の育児休業給付金は、賃金の2/3にあたる67%が支給されています。しかし、2025年4月1日からは、夫婦2人とも14日以上の育休を取得した際に、最大28日間賃金の手取りの100%相当を給付金として支給します。これにより、育休中の収入減少への心配が軽減されます。
また、育児のための時短勤務に対する給付も始まる予定です。2025年4月1日からは、2歳未満の子どもを養育している人が時短勤務をしている場合、時短勤務中の賃金の10%が「育児時短就業給付」として支給されます。給付により育児と仕事の両立がしやすくなり、本格的な社会復帰を後押しします。
育児休業給付の大幅な拡充により、育休の取得率はさらに高まることが予想されます。
育休から復職後に役立つ制度
「勤務時間を短くしたい」「子どもの体調が悪い時は育児を優先させたい」など、復職後のことが心配な方もいるでしょう。復職後の時短勤務や子どもが急病の際の欠勤などに関する様々な制度が設けられており、子育てをしながら働きやすい環境が整備されています。
〈表〉育休から復帰後に役立つ制度13)
詳細 | 期間 | |
---|---|---|
短時間勤務制度 | 従業員が希望した場合に、1日の勤務時間を6時間まで短縮できる(※1) | 子どもが3歳になるまで |
所定外労働の制限 | 従業員が希望した場合に、残業をなしにできる | 子どもが3歳になるまで(※2) |
子の看護休暇 | 子ども1人なら5日、2人以上なら10日まで休暇を取得できる(※3) | 子どもが小学校に入学するまで(※4) |
法定時間外労働の制限 | 従業員が希望した場合に、残業を1カ月24時間、1年150時間以下にできる | 子どもが小学校に入学するまで |
深夜業の制限 | 従業員が希望した場合に、午後10時から午前5時までの労働をなしにできる | 子どもが小学校に入学するまで |
※1:2025年からテレワークが努力義務化。
※2:2025年から子どもが小学校に入学するまでに延長。
※3:2025年から内容が拡充。
※4:2025年から子どもが小学校3年生修了までに延長。
「会社が希望を受け入れてくれるか心配」と気にされる方もいるかもしれませんが、ご安心ください。これらの制度は法律によって、会社は従業員が上記の制度を希望した場合に受け入れる義務があり、また該当の制度を理由とした不当な評価を行うことが禁じられています(介護・育児休業法第16条、第17条、第19条、第23条など)13)。時短勤務や休暇をためらわず、制度を利用しながら育児と仕事を両立させていきましょう。育休後の働き方については職場の先輩ママ・パパに相談するのもおすすめです。
なお、これらの制度は2025年から改正が予定されており、期間や対象が拡大されます。以下で詳しく説明します。
参考資料
【2025年施行】育児・介護休業法改正の内容
2025年には、育児・介護休業法が改正され、より柔軟な働き方が実現しやすくなります。2025年の改正のポイントとしては、以下3点が挙げられます。
働き方を選べたり時間外労働が免除される期間が延びたりと、復職や育児と仕事の両立を支えるための制度改正となる予定です。それぞれの内容について、解説します。
3歳まで:テレワークがしやすくなる
育児・介護休業法の改正により、3歳未満の子どもがいる方がテレワークを活用しやすくなります。
事業主は、3歳未満の子どもを持つ従業員について、テレワークを選択できるよう措置を講じることが努力義務となります。これにより、テレワークで子どもの面倒を見ながら働けるようになるのです14)。
3歳から小学校就学前まで:残業免除など柔軟な働き方が選べる
3歳〜小学校就学前までの子どもがいる方については、事業主が従業員に対して柔軟な働き方を実現するための措置を取る必要があります。事業主は、以下の5つの勤務形態のうち2つを選択して、従業員に提示しなければなりません。
【事業主が従業員に提示すべき勤務形態】
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(10日/月)
- 保育施設の設置運営等
- 新たな休暇の付与(10日/年)
- 短時間勤務制度
従業員は、提示された2つの選択肢のうち、どちらかひとつを選択して利用できます。そのため、テレワークだけでなく時短勤務、フレックス制など様々な働き方を視野に入れられます。
なお、事業主が措置を選択する際は、労働組合などから意見の聴取が必要です。事業主や役員だけでは勝手に決められないため、従業員の働き方の選択肢が狭まることはありません13)。
また、所定外労働の制限(残業免除)を請求できる期間も延長されます。これまでは3歳に満たない子どもを養育する従業員が対象でしたが、2025年4月1日からは、小学校就学前の子どもを養育する従業員まで対象が拡大します13)。
残業免除申請期間が延長されることで、保育園や幼稚園の送り迎えに行きやすくなったり、子どもと過ごす時間を増やせたりといったメリットが考えられます。また、働きながら育児ができる環境が整うことで柔軟な働き方を実現しやすくなる共働きを続けやすくなるでしょう。
子どもの看護休暇が取りやすくなる
育児・介護休業法の改正では、子どもの看護休暇に関しても見直されます13)。
〈表〉子どもの看護休暇に関する改正内容
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
名称 | 「子の看護休暇」 | 「子の看護等休暇」 |
対象となる子どもの範囲 | 小学校就学前まで | 小学校3年生修了まで |
取得事由 | ・病気、けが ・予防接種、健康診断 | 左記に加えて以下を追加 ・感染症に伴う学級閉鎖等 ・入園(入学)式、卒園式 |
労使協定の締結により除外できる労働者 | ・引き続き雇用された期間が6カ月未満 ・週の所定労働日数が2日以下 | ・週の所定労働日数が2日以下(※) |
※:雇用期間6カ月未満の人も休暇を取得可能。
これまでは、小学校に入学するまでの子どもが病気やケガをした際に「子の看護休暇」を取得できました。しかし、2025年からは「子の看護等休暇」に名称が変わり、小学校3年生終了までの子どもが病気やケガをした時に加えて、学級閉鎖時、子どもの卒園式や入学式への参加時に休暇を取得できるようになります。
また、雇用期間6カ月に満たない人でも、子の看護等休暇を取得できるようになります。勤続期間が短い人も休暇を取れるため、より働きやすい環境になることが予想されます。
2025年の法改正では、そのほかに、企業側に課せられる男性の育休取得率などの公表義務の拡大、前述した育児休業給付金の改正なども予定されています。今後数年でより育休制度の拡充が進められ、育休を利用しやすくなる環境が整っていくことが期待されています。
育休は子どもが1歳になるまで。復職後の支援も充実
育休は出産日から子どもが1歳になるまで取得でき、保育施設への入所が決まらない場合は最長で2歳になるまで延長が可能です。取得方法も2回に分けて取得できる、夫婦が共に取得すれば延長申請せずに1歳2カ月になるまで育休を取得できるなど、多様化しています。また、復職後は短時間勤務制度などを利用し、子育てと仕事を両立しながら働くことが可能です。
法律で子育てと仕事を両立しやすい環境が整備されていますし、勤務日数を減らす、リモートワークを認めるなど協力的な会社も増えています。
育休の期間や取得方法、復職後の働き方を考え、夫婦のライフスタイルに合わせた育児と仕事の両立を見つけていきましょう。