この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、産休の概要や産前休業開始日と産後休業終了日の早見表、先輩ママたちの平均取得日数のほか、申請の流れや出産が予定からずれた場合の対応などをご紹介します。事前に理解を深め、安心して産休を迎えましょう。
産休とは? 制度や取得できる条件を解説
産休は、出産の準備や産後の育児を目的として、女性労働者が休業できる制度です。正式名称は産前産後休業といい、産前休業は出産予定日を含む6週間、産後休業は8週間を上限に取得できます1)。
参考資料
産休の取得は労働基準法で定められている
「私の会社は産休を取らせてくれるだろうか」と心配な方もいるかもしれません。希望通りに産休を取得できない可能性があるとしたら不安ですよね。でも、ご安心ください。産休は労働基準法第65条1)で定められている女性労働者の権利で、会社が取得を拒むことは法律で禁止されています。会社側もこのことを把握していますので、産休を申請して拒否されることは基本的にないでしょう。
産前休業と産後休業の違い
産休は出産前後の期間に分けられ、産前休業と産後休業には以下のような違いがあります。
〈表〉産前休業と産後休業の違い1)
項目 | 産前休業 | 産後休業 |
---|---|---|
取得可能期間 | 6週間 (双子以上は14週間) | 8週間 (6週間は強制的な休業) |
任意・義務 | 労働者の任意 | 使用者(主に会社)の義務 |
産前休業は労働者の任意、産後休業は使用者(主に会社)の義務となっています。
産前休業が労働者の任意になっているのは、労働基準法第65条で「出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」1)と記載されていることが理由です。つまり、労働者が休業を請求した場合に取得することができます。
一方で産後休業は、労働者の希望に関係なく使用者(会社)が女性労働者に取得させなくてはいけない義務で、「産後8週間は就業させてはいけない」と決まっています。ただし、本人が望み、医師が許可する場合に限り、産後6週間以降は仕事復帰ができます。
産休の取得条件
つぎに産休の取得条件をご紹介します。条件は「会社に雇用されていること」だけです1)。会社に雇用されていて出産予定があれば誰でも産休を取得できます。正社員、契約社員、派遣社員、パートタイム、アルバイトなど、いずれの雇用形態でも取得できますし、勤続年数も関係ありません。正社員の方もアルバイトの方も、勤続1年目の方も10年目の方も同じように取得できるのです。
ただし、経営者や個人事業主は雇用されていないため、産休を取得できません。
なお、産休の取得条件と産休時・育児休業時(以下、育休と略します)に受け取れる手当の支給条件は異なります。これらの支給条件については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてください。
【関連記事】産休の取得条件のほか、産休時・育児休業時の手当の支給条件について、詳しくはコチラ
産休と育休の違い
産休の終了後に取得できる育休は、同じような制度と認識している方が多いでしょう。産休と育休はまとめて会社に申請するため、混同してしまうのも無理はありません。
しかし、これらの制度は取得する時期が近いものの、制度として異なる点も多いです。産休と育休の違いを以下にまとめました。
〈表〉産休と育休の違い2)
産休 | 育休 | |
---|---|---|
取得可能期間 | 産前6週間(双子以上は14週間)、産後8週間 | 原則、子どもが1歳になるまで(保育施設に入れない場合は2歳まで延長可能) |
対象者 | 女性労働者 | 男女労働者 |
取得条件 | 会社に雇用されていること | 勤続1年以上、復帰後も働き続ける予定など |
根拠法 | 労働基準法 | 育児・介護休業法 |
期間中に支払われる手当 | 出産手当金(健康保険より) | 育児休業給付(雇用保険より) |
取得可能期間のほか、対象者や取得条件、根拠となる法律、支払われる手当まで異なります。この中で特に覚えておいてほしいのが取得条件の違いです。
育休を取得するには以下の条件をクリアしている必要があります。
〈表〉育休の取得条件3)
条件1:同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
条件2:子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
条件3:子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと
「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている」という条件があるため、就職、転職をして1年未満だと育休を取得できません。転職して数カ月の場合、産休は取得できても育休は取得することはできませんのでご注意ください。
【早見表】産休はいつからいつまで取れる?
ここでは産休をいつから取得できるか、出産日が予定日とずれたらどうなるかなどを解説していきます。
産休の期間
まずは産休の期間を改めて確認していきます。
産休は産前休業と産後休業に分けて考えましょう。繰り返しになりますが、産前休業の期間は出産予定日を含む出産の6週間(双子以上の場合は14週間)、産後休業は産後8週間となります。
〈図〉産休・育休の取得可能期間
産前休業は最大で6週間取得できますが、期間を短くすることもできます。一方で産後休業は原則として8週間取得しなければならず、本人の希望と医師の許可がある場合に限り、6週間まで短縮することが可能です1)。
【出産予定日別】産休開始日・終了日の早見表
それでは産休期間を具体的にイメージしてみましょう。
出産予定日を各月の1日と仮定した場合の「産前休業の取得開始日」と「産後休業の終了日」を把握できる早見表を作成しました。出産予定日に近い日付と照らし合わせてみてください。
〈表〉産休開始日・終了日の早見表4)
産前休業開始日 (6週間取得した場合) | 出産予定日 | 産後休業終了日 (8週間取得した場合) |
---|---|---|
11/21 | 1/1 | 2/26 |
12/22 | 2/1 | 3/29 |
1/19 | 3/1 | 4/26 |
2/19 | 4/1 | 5/27 |
3/21 | 5/1 | 6/26 |
4/21 | 6/1 | 7/27 |
5/21 | 7/1 | 8/26 |
6/21 | 8/1 | 9/26 |
7/22 | 9/1 | 10/27 |
8/21 | 10/1 | 11/26 |
9/21 | 11/1 | 12/27 |
10/21 | 12/1 | 1/26 |
参考資料
出産予定日がずれた場合、産休はどうなる?
産休は出産予定日に合わせて産前6週間、産後8週間を取得できますが、実際の出産日が予定日とずれるケースは多いです。特に「初産は遅れる傾向にある」といわれ、気になっている方も少なくないでしょう。
もし、出産が予定日からずれた場合、産休の期間は以下のように変動します。
〈図〉産休期間の延長例
予定日より遅く出産した場合は、遅れた日数分が自動で延長され、産前休業が6週間より長くなります。産後休業は8週間で変わりません。
〈図〉産休期間の短縮例
一方で、予定日より早く出産した場合は産前休業が6週間より短くなります。産後休業の期間は変わりませんが、出産が早まった分だけ当初の予定よりも産休全体の期間が短くなります。
産休を長く取得したい時の対応
ここまで産休期間について、解説してきましたが、「里帰り出産をするので、産前の休業期間を長くしたい」「産後の体調がすぐれないので休業期間を延長したい」など、休業期間を長くしたい方はいるでしょう。しかし、法律で定められているため、出産が遅れた場合を除き、産休期間を前倒したり、延長したりすることはできません。
そのため、産前の休業期間を長くしたい場合は「有給休暇を使う」または「欠勤扱いで休む」といった対応をとることが一般的です。なお、産後休業も同じように有給休暇や欠勤を利用することもできますが、育休を取得すれば休業期間は延長できるため、条件を確認した上で、有効に活用しましょう。
いずれにしても、休業期間を定められた期間より長く取得したい方は、早めに会社と相談することをおすすめします。
産休後に育休を取得した場合の休業期間
前述どおり、育休を利用すると休業期間を長くすることが可能となります。ここでは産休後にそのまま育休を取得する場合の休業期間について、具体例を挙げて見てみましょう。
〈表〉産休・育休を併用した場合の休業期間の一例
産前休業開始日 (6週間取得した場合) | 出産日 | 産後休業終了日 (8週間取得した場合) | 育休開始日 | 育休終了日 (1年間取得した場合) |
---|---|---|---|---|
12/22 | 2/1 | 3/29 | 3/30 | 翌年1/31 |
育休は、原則として子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで取得できます。早く仕事復帰したい方は、1歳の誕生日を待たずに終了することも可能です。
休業期間は産休を取得する前にある程度決めることが多いですが、産後の状況をみて変更することもできます。産後に会社と連絡を取り合い、育休を終えるタイミングを決めるようにしましょう。
また、復職にあたって子どもが保育施設に入れないなど、子どもが1歳を迎えても育休が必要だと判断できる場合は、最長で子どもが2歳になるまで育休を延長することも可能です。
【関連記事】育休の延長はいつまで? 条件や手続き、申請書類など、詳しくはコチラ
【関連記事】男性の育休の取得条件、期間などに関して、詳しくはコチラ
産休はいつから取るのが平均的?【アンケート調査】
産前休業は最長で6週間取得できますが、どのくらい取得するかは個人で決められます。もちろん、お腹の赤ちゃんは心配ですし、長めに休業して無理をしない生活をしたいところですが、会社や仕事の事情を考えると「6週間をフルで取得しても大丈夫?」などと悩む方もいるでしょう。
そこで「マネコミ!」では先輩ママたちに産休・育休に関するアンケートを実施。産休をいつから取得したかを調査しました(お子さんがいる20〜40代女性204人にアンケート、協力:ファストアスク)。
〈図〉産休の取得期間に関するアンケート
産前休業は、出産予定日の「6週間前」から取得している方が最も多く28.6%、次いで「5週間前」から取得している方が24.1%で、合わせて過半数を占める結果になりました。出産予定日の5〜6週間前から産休を取得するのが平均的といえるでしょう。
なお、「3〜4週間前」から取得した方は18.8%とそれなりの割合ではありますが、「1〜2週間前」だと6.2%にまで減少します。短い方でも1カ月程度は産休を取得しているといえそうです。
また、産前の休業期間を6週間より多く取得している方も20%以上いるため、平均値から考えても、産前休業は6週間フルで取得することを遠慮する必要はなさそうです。
公務員の産休はいつから取れる?
注意しなくてはいけないのは、公務員の場合は産休の制度が一部異なる点です。
基本的に、産前休業6週間、産後休業8週間を取得できる点は同じですが5)、地方公務員は自治体ごとの条例によって産前休業を8週間取得できる場合があります6)。地方公務員で産休を取得する予定の方は、お勤めの自治体の条例を確認しましょう。
また、育休に関しても違いがあり、一般企業の労働者は最長で子どもが2歳になるまで育休を延長できるのに対し、公務員は最長で子どもが3歳になるまで延長できます7)。そのほか、男性の育休の取得に関しても一部違いがあり、公務員の男性は妻の出産に伴う休暇を2日間まで取得できます。
産休の申請方法と、しておくべきこと
産休の申請方法や用意する書類、産休前の引き継ぎなど、産休に入る前にしておくべきことをご紹介します。
産休の報告や手続きの流れ
まずは産休を申請する流れを確認していきましょう。
【手順1】会社に妊娠を報告する
【手順2】産休(・育休)の期間を決定する
【手順3】産休(・育休)の関連書類を提出する
【手順4】引き継ぎ業務を行う
【手順5】産前休業に入る
【手順6】出産後、会社に報告する
【手順7】産後休業の終了後、育休開始または職場復帰する
産休の手続きの第一歩として、まずは会社に妊娠を報告することになりますが、「マネコミ!」が行ったアンケート調査では、約60%の人が「妊娠3〜6カ月の間」で妊娠の報告をしていました。まずはご自身の体調を優先し、妊娠3カ月〜安定期を迎えた頃に会社に報告するのがいいでしょう。
続いて、産休と育休の取得期間を決めることになります。こちらも同じアンケート調査によると、約60%の人が「妊娠3〜6カ月の間」に産休・育休の取得時期に関する相談を会社にしています。なお、取得期間の目安は妊娠の報告前から考えておき、産休・育休の相談もまとめて行ったほうがスムーズでしょう。
そのあと、取得期間が決まったら会社に関連書類を提出します。書類は会社ごとに用意している「産休・育休申請書」に記入する程度であり、年金事務所やハローワークへの申請は会社が行ってくれます(申請書類については後述します)。
産前休業は出産に備えていろいろと準備する期間です。ただ、出産予定日が変わりそうな場合や出産したあとは、忘れずに会社に連絡しましょう。出産日によって産後休業の終了日が変わるためです。出産日を伝えれば、会社は年金事務所に期間変更の連絡をしてくれます。
産休を取得する際に会社に伝えること
前述の【手順1・2】にかかわることとして、「何を」会社に伝えるべきか迷う方も少なくないと思います。産休・育休を取得したい旨を相談する際、会社には以下のことを伝えましょう。
- 出産予定日
- 産休・育休取得の有無
- 最終出社予定日
- 職場復帰予定日(育休を含む)
最終出社予定日と職場復帰予定日については、労務担当者だけではなく直属の上司や同僚などにも伝えましょう。職場復帰予定日に関しては、育休を含めた復帰予定日を伝えるといいでしょう。
産休の取得で必要な書類
産休を取得する際は、一般的に以下の書類を提出する必要があります。
- 産休申請書(本人が会社に提出)
- 産前産後休業取得者申出書(会社が年金事務所に提出)
「産休申請書」は会社に産休の取得を申請する書類です。会社ごとにフォーマットがある場合が多いので、それに沿って記入し、提出しましょう。「産前産後休業取得者申出書」は会社が年金事務所に提出する書類です。産休を取得する本人が作成することはありません。会社が「産前産後休業取得者申出書」を提出することで、産休中の保険料が免除されます。育休も取得する場合は「育児休業等取得者申出書」という書類を会社から年金事務所に提出してもらいます。
【関連記事】産休中の社会保険料が免除について、詳しくはコチラ
引き継ぎは職場復帰を見据えて行おう
産休期間に入る前には、仕事の引き継ぎを行う必要があります。会社の指示に従うなどして後任者に引き継ぎましょう。退職時の引き継ぎと異なるのは、いずれは職場復帰して、再度、その仕事を任されたり、後任者と一緒に仕事をしたりする可能性があることです。復帰後の職場での人間関係や仕事が円滑になることを意識して引き継ぎを行うことをおすすめします。
【コラム】産休前の妊婦健康診査は欠勤扱いになる?
妊婦健診(妊婦健康診査)は、妊娠期間中の母体と赤ちゃんの健康状態を確認するために必要です。しかし、平日しか予約が空いていないことも多く、勤務時間と被ってしまうケースも少なくありません。そのため「仕事を中抜けするのに引け目を感じてしまう」「健診のために有給取得や欠勤することになるの?」と思う方もいるでしょう。
まず、安心していただきたいのは勤務時間中に妊婦健診に行くことは法律で認められているということです。男女雇用機会均等法第12条8)において「事業主は妊婦健診に必要な時間を確保しなければならない」と記されており、以下の頻度であれば勤務時間中に妊婦健診に行くことが認められています。
〈表〉妊婦健診を確保しなければならない回数(妊娠中)
- 妊娠23週までは4週間に1回
- 妊娠24週から35週までは2週間に1回
- 妊娠36週以後出産までは1週間に1回
ただし、勤務時間中に妊婦健診に行くことが欠勤扱いになるかは会社によって異なります。妊婦健診が特別休暇に該当すると就業規則に記載されていれば、減給や欠勤を気にすることなく妊婦健診に行って大丈夫でしょう。しかし、就業規則にそのような記載がない場合は有給を使わないと欠勤や早退、遅刻として扱われる可能性があります。
あらかじめ就業規則を確認したり、会社に相談したりしておきましょう。
産休中の手当・経済的支援
産休・育休中は原則として給与は支払われなくなる一方で、ベビー用品などの出費が増えます。給与が支払われない間の家計が心配な方も多いでしょうから、産休や育休中に支払われる手当や経済的支援を事前に確認しておきましょう。ここでは、出産前後で支払われる代表的な2つの手当と、出産・育児にかかわる経済的支援についてご紹介します。
出産手当金
産休中の給与の代わりとして、健康保険組合から支払われるのが出産手当金です。出産手当金の対象者、申請時期、金額は以下のように定められています。
〈表〉出産手当金の概要10)
対象者 | 申請時期 | 金額 |
---|---|---|
・健康保険の被保険者 ・出産のために休業している人 ・妊娠4カ月(85日)以上で出産した人 | 産休開始の翌日から2年以内 | 1日あたり、支給開始日以前から12カ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3 |
“給与の代わり”と表現しましたが、出産手当金は毎月支払われるものではなく、基本的に産後休業が終わったタイミングで申請してまとめて受け取ることになります。産前休業と産後休業の2回に分けて受け取ることもできますが、その場合は2度申請が必要です。
申請は以下の流れで行います。
【手順1】「健康保険出産手当金支給申請書」を用意し記入する
【手順2】出産時にかかる医療機関に記入してもらう
【手順3】勤務先に申請書を渡して提出してもらう
出産手当金がいくら受け取れるのかなど、より詳しい情報は以下の記事でご紹介しています。気になる方はチェックしてみてください。
【関連記事】出産手当金の計算方法、出産予定日別でシミュレーションはコチラ
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産にかかる費用の一部として支払われるお金です。支給対象者や金額は以下のとおりです。
〈表〉出産育児一時金の概要9)
対象者 | 申請時期 | 金額 |
---|---|---|
・妊娠4カ月(85日)以上で出産した人 ・健康保険や国民健康保険に加入している人、もしくはそれらに加入している人の配偶者や扶養家族 | 出産の翌日から2年以内 | 50万円 |
出産育児一時金の支給額は50万円10)で、申請方法は3種類あり、「直接支払制度」「受取代理制度」「事後申請」に分けられます。「直接支払制度」を用いられるケースが多く、本人ではなく出産した病院に対して、健康保険組合から直接支払われて出産費用に充てられます。この制度を利用すれば、出産時に窓口での支払いが不要となります(もちろん、出産費用が50万円以上の場合は、不足分を病院に支払います)。また、出産費用が50万円以下の場合はあとから差額分を健康保険組合に請求することが可能です。
産休・育休中に受けられる手当・経済的支援一覧
出産手当金と出産育児一時金以外にも、様々な経済的なサポートを受けることができます。産休・育休中に受け取れる手当や経済的支援などを一覧にまとめました。
〈表〉産休・育休中に受けられる手当・経済的支援
項目 | 対象者 | 申請時期 | 金額 |
---|---|---|---|
社会保険料免除11) | 産休・育休の取得者全員 | 産休取得前 | 全額免除 |
妊婦健診費の助成12) | 申請する自治体による | 妊娠の発覚後 | 自治体による |
医療費(3割負担、高額療養費制度)13) | 異常分娩で出産をした人 | 申請不要(事前申請も可能) | 年収による |
医療費控除14) | 妊娠・出産をした人 | 確定申告時 | 年収による |
出産・子育て応援交付金15) | 妊娠・出産をした人 | 自治体による | 5万円相当の応援ギフトなど |
育児休業給付16) | 育休の取得者 | 初回は育休開始4カ月後の月末 | 育休開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%、以降は50%で計算 |
児童手当17) | 中学卒業までの児童を養育している人 | 出生日から15日以内 | 月額1万5,000円(3歳未満の場合)など |
特別児童扶養手当18) | 20歳未満で精神または体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している人 | 受給資格認定後 | 月額 1級:5万3,700円 2級:3万5,760円 |
児童扶養手当19) | ひとり親世帯等で18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童を養育している人 | 常時(毎年8月に現況届の提出が必要) | 月額4万3,070円(児童1人全部支給の場合)など |
あらかじめ利用できる制度を確認しておき、期限内に申請しましょう。産休中や育休中に受け取れる手当や経済的支援については、以下の記事でも詳しくまとめています。併せてご覧ください。
【関連記事】産休中の社会保険料が免除について、詳しくはコチラ
【関連記事】妊娠・出産に関する医療費控除の申請方法や注意点について、詳しくはコチラ
【関連記事】産休・育休中の給付金・手当金について、詳しくはコチラ
【関連記事】出産後の手続き完全ガイド:提出先・手続き期限などの一覧はコチラ
自治体独自の助成金がある場合も
これまでに説明した制度以外にも、自治体が独自で妊娠中の方や出産した方に向けた助成制度を設けている場合があります。たとえば、東京都中央区では区内在住の妊娠をした方にタクシー券1万円分(双子以上は2万円分)を贈呈しています20)。お住まいの自治体で独自の助成を行っていないか、窓口などで確認しましょう。
参考資料
産休中でもボーナスはもらえる可能性がある
会社のボーナスも産休中に受け取れるお金のひとつです。産休中、給与は支払われませんが、ボーナスは支払われる可能性があります。その理由は、会社が従業員に対してボーナスを支払う場合、産休や育休を理由に特定の従業員にだけボーナスを支払わないことは、男女雇用機会均等法第9条21)や育児・介護休業法第10条22)で禁じられているからです。
そのため、ほかの従業員にボーナスが支払われる場合、産休・育休中の方にもボーナスが支払われる可能性があります。ただし、ボーナスの査定期間中に産休を取得していた場合は、金額が減ることはあります。ボーナスの支払いについて、就業規則に記載している会社もありますので、一度会社に確認をしてみることをおすすめします。
妊娠・出産に際して、民間保険の給付金をもらえることも
民間の医療保険に加入している方は、妊娠、出産に関連して給付金が支払われる可能性があります。たとえば、出産に関連する病気がある場合や、帝王切開のように手術を受けるなど、異常分娩で出産をしたケースは入院・手術給付金を受け取れる可能性があります。逆子やつわり、双子以上の妊娠でも民間の医療保険が適用されるケースもあります。
カバーされる範囲は保険によって異なります。加入している保険の保障内容を忘れずに確認しておきましょう。
また、異常分娩の場合は高額療養費制度や医療費控除の対象にもなりますので、そちらの申請も合わせて行いましょう。
【関連記事】妊娠・出産に関する医療費控除の申請方法や注意点について、詳しくはコチラ
産休・育休後の復職ステップ
産休・育休のあとに職場復帰をする予定の方も多いでしょう。ここでは、産休前から職場に復帰するまでの会社のやり取りを5ステップに分けてご説明します。
〈表〉安心して復職するための5ステップ23)
ステップ | 時期(目安) | やること |
---|---|---|
1 | 妊娠報告後 | 上司との面談で妊娠中の体調、業務の引き継ぎなどを話し合う |
2 | 産休2カ月前 | 上司との面談で産休取得時期、育休の期間、復職後の働き方などを話し合う |
3 | 産休・育休中 | 出産前や産後も職場と定期的に連絡を取る |
4 | 職場復帰1〜2カ月前 | 復職時期や復職後の業務、働き方などを会社と具体的に相談する |
5 | 復職後 | 上司などとの面談で、復職後の仕事で気になることや今後について話し合う |
いずれのステップでも共通しているのは、会社や上司としっかり話し合うことです。産休前からしっかりと話し合って自分の希望や復職時期なども伝えておくと会社もあなたの希望に合わせて動いてくれやすくなるでしょう。そして、産休・育休の間も定期的に連絡を取り、会社とのつながりを持ち続けると、心理的にも仕事復帰しやすくなるはずです。
産休に関するよくある質問
最後に産休に関連してよくある質問をまとめました。
Q1.産休は欠勤扱いになる?
「産休が欠勤扱いになるか?」ですが、これには2つの答えがあります。まず、“出勤率”(年次有給休暇の付与に関連)を算定する場合には、欠勤扱いにはなりません。産休・育休期間中は出勤として扱うことが労働基準法第39条10項1)で定められています。そのため、たとえば産休を理由に出勤率が8割を下回ってしまい、有給が付与されないということはありません。
ただし、“人事評価”においては欠勤扱いになる可能性があります。人事評価の場合は出勤・欠勤の扱いは法律で決まっておらず、会社の就業規則で判断されるからです。「産休や育休を無給休暇として扱う」などと就業規則に記載されていたら欠勤扱いになり、ボーナスの金額などに影響することがあります。有給休暇の付与と人事評価で、産休の扱いが異なることがありますので覚えておきましょう。
Q2.入社・転職後すぐにでも産休は取れる?
産休は入社後の期間に関係なく取得可能です。「何カ月以上勤続していないと取得できない」という決まりはありませんので、極端な話でいえば、入社後1カ月でも取得できます。ただし、育休は勤続年数などに条件がありますので、産休後に育休を取得する際はご注意ください。
Q3.出産手当金はいつもらえる?
出産手当金は申請をしてから1〜2カ月程度で支払われることが多いです。申請は産休終了後に産前・産後の対象期間分をまとめて申請することが一般的であるため、出産から3〜4カ月後に出産手当金を受け取ることになります。出産手当金を早く支払ってもらいたい方は産前と産後の2回に分けて申請することも可能です。この場合、2度申請をする必要があります。
【関連記事】出産手当金はいつもらえる? 申請から入金までの流れについて、詳しくはコチラ
Q4.出産手当金がもらえないことはある?
以下の5つケースに1つでも該当すると出産手当金をもらうことができません。
【ケース1】出産をする本人が国民健康保険に加入している
【ケース2】出産をする本人が健康保険の扶養に入っている
【ケース3】出産をする本人が健康保険任意継続制度に加入している
【ケース4】休んでいる期間中に給与の支払いがある
【ケース5】休業した日から申請までが2年を超えている
派遣社員やパート社員で国民健康保険に加入していたり、夫の扶養に入っていたりすると出産手当金が受け取れない可能性があります。以下の記事で詳しく説明していますので、上記に該当する方は詳細を確認することをおすすめします。
【関連記事】出産手当金がもらえないケースとは? 支給要件や退職した場合の支給の有無について、詳しくはコチラ
Q5.妊娠や出産でかかった医療費は医療費控除の対象になる?
医療費控除の対象になります。妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用、出産で入院する際の病院までのタクシー代、出産時の入院費用、入院時に病院から出された食事代などが対象になります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】妊娠・出産は医療費控除の対象になる? 対象となる項目や申請方法、注意点について、詳しくはコチラ
産休は産前6週間、産後8週間取得できる
産休は法律で認められており、会社が取得を拒むことは基本的にありません。また、正社員だけでなく、契約社員やパートの方も同じように取得できます。産休を取得し、産前休業は出産や産後の準備に、産後休業は育児の時間に充てましょう。
産休・育休期間に入る前に手当や経済的支援の確認をしたり、仕事復帰のタイミングや復帰後の働き方を会社と相談したりしておくことをおすすめします。万全の準備をして産休期間に入り、出産に備えましょう。