「育児休業給付金っていくらもらえるの?」「いつの給料が支給額の計算対象になるの?」など、育児休業給付金の支給額について、疑問がある人は少なくないでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、出産や育児に臨む人に向けて育児休業給付金の計算方法について解説します。支給額に関する「よくある疑問」についても説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。

※この記事は、2023年8月28日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

藤井 亜也(ふじい あや)

ファイナンシャルプランナー(CFP、FP1級)。独立系FPとして幅広い年代のお客様の相談に対応。一人一人に心を込めて、最適なプランを提案しライフプランを実現。個別相談、セミナー、執筆・監修など幅広く活動中。著書『理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方』(三恵社)、ラジオ番組『未来のためのお金のハナシ』(FM川口)。

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育児休業給付金(育休手当)の支給額の決まり方

画像: 画像:iStock.com/tadamichi

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育児休業給付金の支給額は、平均賃金にもとづいて決定されます。まず、平均賃金の算出方法について確認してみましょう。

支給額の計算対象となるのはいつの給料?

育児休業給付金の計算対象となる給料は、原則、育休開始前の賃金支払基礎日数(勤務日・有給日など)が11日以上ある直近6カ月間の給料1)です。この期間の平均賃金をもとに、育児休業給付金の支給額が算出されます。

またここでいう給料は、基本給、残業代、通勤手当、各種手当などを指しますが、賞与(ボーナス)や臨時収入は含まれません。

育児休業給付金(育休手当)の計算方法

ここでは育児休業給付金の計算方法を解説します。支給額の上限と下限、支給額の目安も給料別で説明しますので、参考にしてみてください。

育児休業給付金の支給額(月額)は、以下の計算式2)で算出します。

〈表〉育児休業給付金の支給額

育休開始から180日(6カ月)まで休業開始時賃金日額×支給日数×67%(給付率)
育休開始から181日(7カ月)以降休業開始時賃金日額×支給日数×50%(給付率)

「休業開始時賃金日額」とは、原則、育児休業(育休)開始前の6カ月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額を指します。産前産後休暇を取得している場合は、休暇前6カ月間の給料を180日で割った金額です。

そして、育休開始から180日間は平均賃金日額の67%、181日目以降は平均賃金日額の50%の給付率で支給されるしくみとなっています。

支給額の上限と下限

育児休業給付金には支給上限額と支給下限額があります。支給上限額は厚生労働省が行っている調査「毎月勤労統計の平均定期給与額」の増減をもとにしており、毎年8月1日に変更されることがあります。

2025年7月31日までの支給上限金額と下限金額は、以下のとおりです。

〈表〉支給上限額と支給下限額(支給日数が30日の場合)2)

育休開始から180日(6カ月)まで支給上限額:31万5,369円
支給下限額:5万7,666円
育休開始から181日(7カ月)以降支給上限額:23万5,350円
支給下限額:4万3,035円

前述の計算方法で支給額を計算した結果、上の表の限度額を超えている場合は一律上限額まで、下限額に達していない場合は一律下限額まで引き上げられて支給されます。

給料額別に1カ月の支給額をシミュレーション

休業前の給与や育休開始からの日数によって、もらえる支給額は異なります。以下は給与別での育児休業給付金の支給額の目安です。

〈表〉育児休業給付金の支給額の目安

休業前の給与育休開始から180日(6カ月)まで育休開始から181日(7カ月)以降
20万円13万4,000円10万円
30万円20万1,000円15万円
40万円26万8,000円20万円
50万円31万5,369円(支給上限額)23万5,350円(支給上限額)

前述のように支給上限額がある点に注意しましょう。

育児休業給付金の支給要件と手続きの手順

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

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育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が原則1歳未満の子どもを養育するために育休を取得した場合、受け取ることができるお金です2)。受け取るには以下の要件を満たす必要があります。

【育児休業給付金の支給要件】

  • 雇用保険に入っている
  • 1歳未満の子を養育するために育児休業を取得している
  • 育休開始前の2年間に、11日以上就業している月が12カ月以上ある
  • 育休中の就業日数が、1カ月あたり最大10日あるいは80時間以下

雇用保険に入っているのであれば、正社員だけではなく、パートなどの有期雇用労働者や派遣社員でも取得することができます。

なお、育児休業給付金は原則として、会社が2カ月に1度の頻度でハローワークに支給申請を行い、育休中の従業員に2カ月分がまとめて支払われます。育休を取得している期間=給付金が支給される期間です

申請の方法は、まず育休開始予定日の1カ月前までに勤務先に申し出ます。以下が申請の必要書類です。

【育児休業給付金の申請必要書類】

①雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
②育児休業給付受給資格確認票
③(初回)育児休業給付金支給申請書
④賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など
⑤母子健康手帳の写し
⑥(手書きで申請書を作成する場合)育児休業給付金振込先の振込先情報が確認できる書類(通帳のコピーなど)

申請する人が勤務先から③の書類を受け取って必要事項を記入し、⑤(手書きで申請書を作成する場合は⑥も)を添えて勤務先に提出すると、勤務先が①②④を用意し、まとめてハローワークに書類提出・申請を行います。提出書類が多いので、もれがないように注意しましょう。

育児休業給付金の支給額に関するよくある疑問

画像: 画像:iStock.com/eyetoeyePIX

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振込日や税金など、育児休業給付金に関するお金の疑問を抱える人も少なくないでしょう。以下で「よくある疑問」に回答します。

Q1.育児休業給付金はいつ振り込まれるの?

育児休業給付金は原則として2カ月に1回、会社が支給申請を行います。初回の申請は育休開始から2カ月経過後、4カ月を経過する日の属する月の末日までです。

支給申請を行うと、支給の可否と支給額が記載された「育児休業給付金支給決定通知書」が交付され、会社から自宅に届きます。そして支給決定日から約1週間〜10日後に指定した口座に振り込まれます。振込日は特に日付が決まっているわけではありません。

Q2.育児休業給付金から税金や社会保険料は引かれるの? 

画像: 画像:iStock.com/YusukeIde

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育休などの休業期間における社会保険料の免除要件は、2022年10月1日に改正されました。これ以降に育休を開始した場合、開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの社会保険料は免除になります3) 。また、ボーナスについては、賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える期間を取得した場合に限り、免除の対象となります。

なお、育児休業給付金は非課税のため、所得税はかからず、翌年度の住民税算定額にも含まれません。収入が給付金だけで給与所得がなければ、雇用保険料も発生しません

Q3育休を延長した場合、育児休業給付金の金額はどうなる?

〈図〉育休の期間と給付金のしくみ

画像: Q3育休を延長した場合、育児休業給付金の金額はどうなる?

前述のように、育児休業給付金の支給額は180日(6カ月)までは休業開始時賃金日額×支給日数×67%で、181日(7カ月)以降は休業開始時賃金日額×支給日数×50%で計算します。育休の期間を延長した場合は、181日(7カ月)以降の計算式で算出します。さらに再延長をする場合も同じです。

育休の延長についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】育児休業の延長について、詳しくはコチラ

Q4.育休中に就業した場合は? 

画像: 画像:iStock.com/west

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育休中に就業した場合、賃金を支払われなければ、支給額は変わりません。賃金が支払われた場合、以下の計算式で算出します4)

〈表〉育休中に賃金が支払われた場合の支給額

賃金額支給額
休業開始時賃金月額の13%(※1)未満休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%(給付率)(※2)
休業開始時賃金月額の13%(※1)以上80%未満休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%(給付率)-賃金額
休業開始時賃金月額の80%以上 支給されない

※1:休業期間が180日(6カ月)を超えて給付率が50%になる場合は、休業開始時賃金月額の30%になります。
※2:休業期間が180日(6カ月)を超える場合、給付率は50%で計算。

このように育休中に就業すると支給額が減ってしまいます。就業の必要がある時期と期間があらかじめわかっている場合には、育休を分割で取得するのが得策でしょう。

Q5.パートの育児休業給付金の計算方法は? 

パートや契約社員などの有期雇用者や派遣社員も前述の計算方法で育児休業給付金を受け取ることができます。ただし、「子どもが1歳6カ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと」が支給要件に加わります5)

Q6.配偶者が一緒に育休を取得。金額は変わる?

配偶者が一緒に育休を取る場合も育児休業給付金の支給額に変化はありません。配偶者の支給額も前述の計算式で算出します。男性の育休取得について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】男性の育休取得はメリットだらけ! 詳細はコチラ

産休中に受け取ることができる給付金も理解しておこう

画像: 画像:iStock.com/mapo

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育休中は育児休業給付金がもらえるとはいえ、通常に比べて収入が減ることには変わりません。出産費用は住んでいる地域、病院や出産方法によっても異なりますが、正常分娩の場合でも、全国平均で48万2,294円とかなりの金額がかかっているとのこと6)社会保険に加入している場合には、出産育児一時金や出産手当金を受け取ることもできます。これらについてもしっかり理解しておくと、お金の心配をせずに出産・育児に臨めるでしょう。

産休・育休中のお金事情についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】産休・育休中の給与について、詳しくはコチラ

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