少子化が加速している日本。その背景にはお金の心配が少なからず存在しています。夫婦共働きが当たり前の時代、子どもが欲しいと思っても、「産休・育休中にも給与はもらえるのか」とお金の心配をしてしまうというご夫婦も少なくありません。

そこで今回は、ファイナンシャル・プランナーの藤井亜也が、産休・育休中のお金に関する情報を分かりやすくお伝えしていきます。

産休・育休の概要と期間を解説

画像: 画像:iStock.com/g-stockstudio

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まず、産休・育休に関する基本的な知識を確認しましょう。そもそも、産休と育休とは何なのでしょうか。

産休・育休の概要

産休というのは、「産前休業」と「産後休業」のことを指します。出産前と出産後に仕事を休むことができるしくみで、労働基準法で定められた制度です。

そして育休とは、正式には「育児休業」といい、育児・介護休業法によって定められた、子どもを養育する労働者が休みを取得できるしくみです(これに対して「育児休暇」は、企業がそれぞれ定める育児のために取得できる休暇のことをいいます)。

産休・育休の期間と対象

では、産休・育休とはいつからいつまでの期間を指し、取得できるのはどういった方々なのでしょうか。

まず期間については、「産前休業」が出産予定の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得可能で、「産後休業」は出産の翌日から8週間、「育児休業」は子どもが1歳になるまでの間で希望する期間となります。

続いて取得できる方々についてですが、「産前休業」は6週間以内に出産する予定(双子以上の場合は14週間以内に出産する予定)の女性、「産後休業」は出産を終えた女性、「育児休業」は1歳に満たない子どもを育てながら仕事をしている男女が対象となります。

これらのことをまとめたものが、下記の表になります。

〈図〉産休・育休に関する概要1)

画像: 産休・育休の期間と対象

また、「産休は必ず取らなければいけないの?」というご質問を頂くことがありますが、産前と産後により異なります。

産前休業はご本人の申請により取得する「任意」となりますが、産後の場合は、労働基準法第65条で「使用者は産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない」と定められているため、「強制」となります。

産休・育休中もお給料はもらえるの?

画像: 画像:iStock.com/kokoroyuki

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読者の皆さんの中には、職場で既に産休や育休に入られている先輩方が手当金を受けているのを見て、産休・育休中も「収入がある=お給料が支払われる」と思っている方も多いでしょう。

例えば公務員の場合は、産休中も勤務をしている期間とみなされ、月額給料の全額が支払われます。

しかしこれはお勤め先によって異なり、一般企業にお勤めの方は基本的には産休・育休中のお給料はありません

産休・育休中にお給料が出ない職場にお勤めの場合、お休み中の生活費が足りなくなるのではと不安になってしまいますよね。実は、お給料は支払われませんが、その間に支払われる手当金や給付制度が整備されています。次では、産休・育休中に受け取れるお金について確認していきましょう。

産休・育休中に受け取れるお金について

画像: 画像:iStock.com/Satoshi-K

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産休・育休中には、休業中の生活をサポートしてくれる3つの手当金・給付制度を利用することができます。

出産に際しては、加入している健康保険組合より出産育児一時金が支給されます。これはどなたでも受け取れるお金です。また、お給料が支払われない間は、社会保険からお給料の代わり(補塡)となる手当が支給されます。

それぞれの詳細について、以下で確認していきましょう。

(1)【産休中】出産育児一時金

出産費用はお住まいの地域や病院、普通分娩・帝王切開など出産方法によっても異なりますが、普通分娩では全国平均で見ても50万円とかなりの額がかかります2)。しかも、基本的には全額自己負担です。

しかし、この出産時に確認していただきたいのが、出産育児一時金です。出産育児一時金は、健康保険の被保険者及びその被扶養者が出産された時に加入している健康保険組合ヘ申請すると、出産にかかる費用の一部が支給されるものです。

支給方法は、「直接支払制度」と「受取代理制度」があり、出産する医療機関によって導入している制度が異なります。

〈図〉「直接支払制度」と「受取代理制度」の違い

画像: (1)【産休中】出産育児一時金

一般的には、妊婦などに代わって、医療機関等が出産育児一時金の請求と受け取りを行う「直接支払制度」を利用される方々が多いです。出産育児一時金が医療機関等へ直接支給されるため、退院時に窓口で出産費用を全額立て替え払いする必要がなくなります。

「受取代理制度」はごく少数の医療機関でしか利用できませんが、被保険者に代わって医療機関等が健康保険組合から出産育児一時金を受け取れる扱いにすることが可能になります。具体的には、出産費用と出産育児一時金との差額だけを医療機関の窓口で支払う形にすることができるようになります。適用されるかは担当の医療機関に確認してみてください。

〈表〉出産育児一時金の概要3)

受給条件・健康保険に加入している(夫の健康保険の被扶養配偶者になっている場合も可)
支給額・子ども1人につき42万円
・多胎児を出産した際は、胎児数分だけ支給(例:双子の場合は84万円)
・産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合、または在胎週数22週未満の分娩の場合は40万4,000円
申請方法・申請は勤務先の総務課もしくは健康保険組合等に申請する。
・国民健康保険の場合はお住まいの市区町村の役所に申請する。
・直接支払制度を利用する場合は、出産される医療機関へ確認する。

(2)【産休中】出産手当金

先ほども述べた通り、基本的に産休中にはお給料は支払われません。その間の生活を支えてくれるのが、出産手当金です。

この制度は、社会保険の被保険者やその家族の生活を保障し、安心して出産前後の休養ができるようにするために設けられています。勤務先で加入している社会保険から、申請者ご本人の口座に直接手当金が支払われるので、こちらも概要をチェックしていきましょう。

〈表〉出産手当金の概要4)

受給条件勤務先の健康保険に加入している(出産育児一時金とは異なり、夫の扶養に入っている場合や国民健康保険の場合は対象外となります)
対象期間出産日の42日前(双子以上の妊娠の場合は98日前)から出産日の翌日以降56日目までの会社を休んだ期間
支給額支給開始日以前から12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2
申請方法①勤務先の担当(総務部等)に申請をして「健康保険出産手当金支給申請書」を受け取る(申請書は健康保険組合や会社を管轄している社会保険事務所で受け取ることができる)。
②申請書に必要事項を記入し、勤務先と医師の証明を受け、その他の書類(賃金台帳、出勤簿の写し)を添付して社会保険事務所に提出する。

ちなみに、出産を機に退職する場合は、下記の条件が受給条件となります。

〈表〉出産を契機に退職する場合の受給条件

  • 被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること
  • 資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること
  • 退出産日(出産予定日)から42日以内に退職していること
  • 退職日に仕事をしていないこと

出産手当金として支給されるのはお給料の3分の2ではありますが、産休中の生活費としては大きな支えとなります。

(3)【育休中】育児休業給付

妊娠中や出産もさることながら、子どもが生まれてからは子育てに追われる日々が続きます。最近では男性も積極的に育児に協力し、育児休業を取る方も増えてきました。

もしこのように育児休業を検討していらっしゃるようであれば、育児休業給付を申請することをおすすめします。この制度では、雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合に、月給の約半分の金額を受給することができます。

〈表〉育児休業給付の概要5)

受給条件・雇用保険に入っていて育児休業を取り、その後も働き続ける
・育児休業開始前の2年間に、11日以上就業している月が12カ月以上ある
・育児休業期間中の各1カ月で、休業開始前の1カ月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていない
・育児休業期間中の各1カ月で、就業している日数が10日以下
対象期間・子どもが1歳になるまでの間で希望する期間
(延長も可能)
支給額・育休開始から180日間は月給の67%、それ以降は50%ですが、それぞれ上限額と下限額が定められています。
申請方法①育休開始予定日の1カ月前までに勤務先に申し出る。
<必要書類>
1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
2.育児休業給付受給資格確認票
3.(初回)育児休業給付金支給申請書
4.賃金台帳、労働者名簿、出勤簿等
5.母子健康手帳の写し
6.育児休業給付金振込先の通帳の見開きのコピー
②勤務先から受け取った書類に必要事項を記入し、5と6を添えて勤務先に提出する。

育児休業は子どもを養育する「男女」労働者が対象となります。共働きのご夫婦が多い中、夫が育児に協力することで、妻の育児だけでなく復職にも大きなサポートとなります。お勤め先に育児休業の申請ができるか確認しておくと良いでしょう。

(4)自分はもらえる? もらえない? チェックリスト

前述の手当金や給付は、雇用形態や就業状態によって支払われる人と支払われない人がいます。

自分は対象なのか、以下の表で確認してみましょう。

〈表〉産休・育休でもらえるお金チェックリスト

公務員正社員派遣社員
パート社員
自営業
出産育児一時金
出産手当金×(*)×
育児休業給付×
◯…もらえる、△…条件により異なる、×…もらえない

出産育児一時金は、どなたでも受け取ることができます。一般企業の正社員や派遣社員、パート社員でも、勤務先の社会保険に加入していれば対象内です。

ただし、出産手当金はお給料が出ない期間の補塡なので、産休中もお給料が出る公務員の方は対象外となります。そして、自営業の方はご加入の保険が国民健康保険であるため、受給対象外となりますので注意しましょう。

また、出産手当金は表では正社員の方のみ◯(もらえる)となっていますが、場合によっては受給の対象外となることがあります(*)。もし出産を機に退職をされる方が退職日に出勤した場合は、継続給付を受ける条件を満たさないため、社会保険の被保険者の資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は支払われないのです。このように退職日の条件が合わない場合は受給対象外となりますので、受給条件を予めご確認ください

育児休業給付は、男女ともに取得できる点が他と異なります。派遣社員やパート社員でも受給条件を満たしていれば申請ができますので、勤務先にご確認ください。

一例ですが、妻が自営業で夫が会社員のご家庭である場合、妻は出産育児一時金を受け取ることができ、夫は育児休業を取得したうえで育児休業給付を受け取ることができます。

その他の産休・育休中の経済的支援

画像: 画像:iStock.com/Milatas

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ここまでは、給付金や手当金などお金を受け取れる制度についてお伝えしてきました。他にも、産休・育休中には経済的な支援がありますので確認しておきましょう。

(1)社会保険料の免除6)7)

お勤め先の会社(事業主)が年金事務所または健康保険組合に申し出をすることで、産休・育休中の社会保険料(厚生年金と健康保険料)が全額免除されます。この場合、被保険者本人負担分と事業主負担分ともに免除適用されます。

保険料は標準報酬月額(給料の平均)の等級8)によって異なりますが、例えば15等級でしたら、月々約20,000円が免除されます。

社会保険料免除の対象となる期間は、基本的に休業開始月から休業終了前月までです。なお、免除を受けている期間も被保険者としての資格は継続されるので、将来の年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として扱われるのでご安心ください。

なお、住民税は前年の所得に応じて翌年に支払い義務があるため、産休中も支払いが生じますのでご注意ください。

(2)子ども医療費助成制度

子ども医療費助成制度とは、健康保険に加入している乳幼児が病気やけがで医療機関を受診した際に、自治体が保険診療の自己負担額のすべて、または一部を助成してくれる制度です。

公的医療保険では、医療費の自己負担割合は小学校入学前が
2割です。全国すべての都道府県と市区町村で独自の制度が設けられており、内容は自治体によって異なります。産まれたばかり子どもが病気やけがをしてしまうということもありますが、こういった医療費の助成を利用すれば、家計の負担は軽減されることでしょう。

市区町村によっては保護者の所得に制限を設けているところもありますので、お住まいの自治体に確認しておきましょう。

(3)配偶者控除・配偶者特別控除9)

産休・育休中はお給料が支払われませんので、妻の年収(所得)は下がることになります。妻の所得が下がった場合、夫の配偶者控除・配偶者特別控除の対象になる可能性が高くなります。

この配偶者控除・配偶者特別控除が適用されると何が良いかというと、納税者である夫が納める税金額が低くなるため、一家における産休・育休中のお金の負担が軽くなるのです。

この配偶者控除・配偶者特別控除が適用されるには、妻の年収の上限が決められています。

  • 配偶者控除を受けられる妻の年収上限額:103万円以下
  • 配偶者特別控除を受けられる妻の年収上限額:201万5,999円以下

正社員の共働き夫婦の場合、妻が産休・育休に入り収入が減ったとしても、休んでいる間にもらえる給付金や手当の受給額が多いため、夫の扶養には入れないと思われがちです。

しかし、出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金は、非課税で所得とはみなされません。そのため、産休・育休中に給付金などをもらったとしても、妻の収入が上にある年収上限額以下であれば夫の扶養内として考えられ、控除対象になるというわけです。

控除額は夫の所得と妻の所得、妻の年齢によって異なり、10,000円~48万円までと様々です。少しでも出ていくお金を減らせるのであれば、ありがたいですよね。

年末調整で申請して頂くか、間に合わない場合は確定申告で申請をすることもできますので、この控除制度を利用するのもひとつの手です。

産休・育休中にもらえるお金に関する Q&A

画像: 画像:iStock.com/mrPliskin

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ここからは、産休・育休中の方からよく頂く質問にお答えします。少しでも産休・育休中のお金に関する疑問をなくすためにも、ぜひ参考にしてみてください。

Q1.月の途中で産休に入った場合、その月の給与はいくらもらえるのでしょうか?

A1.産休に入った月のお給料は、日割り計算で算出する会社が多いです。ただし、締め日などは勤務先により異なりますので、就業規則や担当の総務部などに確認したほうが良いでしょう。

Q2.産休に入った場合、夫の扶養に入ったほうが良いのでしょうか?

A2.妻が会社員で出産手当金や育児休業給付が受け取れる場合、妻のお勤め先の社会保険に加入していることが受給条件となります。そのため、手当金や給付を受けている間は、お勤め先の社会保険にそのままご加入ください。会社を退職された場合等は、夫の扶養に入ることになります。

Q3.出産育児一時金を医療機関等へ直接支給されるようにしたのですが、過不足があった場合はどうなるのでしょうか?

A3.出産育児一時金は、子ども1人につき42万円です。実際に出産にかかった費用が50万円だった場合、足りない80,000円を医療機関に支払います。逆に費用が38万円だった場合は、差額の40,000円は申請することで支給されます。

Q4.転職を考えていますが、今後、結婚や子育てを考えるとやはり正社員のほうが良いのでしょうか?

A4.派遣社員やパート社員でも、勤務先の社会保険に加入していれば産休や育休を申請することはできます。しかし、雇用された期間が1年以上必要であり、育休後も引き続き雇用が見込まれるという要件があります。

その点も考慮して、雇用期間が安定している、子育てを応援している等の転職先を探されると良いかと思います。

最後に

産休中や育休中はお給料がないので不安を感じている方も多いのではないでしょうか。出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付といった給付金や手当金は、生活の大きな支えとなります。

また、産休育休期間は社会保険料も免除になります。事前に受け取れる給付金や手当金を確認することで、産休育休期間の家計の収支を算出することもできます。不安を解消するには、お金の出入りを可視化することが重要です。

足りないお金などが具体的に分かれば、貯蓄で準備しておくことも可能です。産休・育休中の生活やお金に不安を抱えていらっしゃるご夫婦は、参考にして頂ければ幸いです。

この記事の著者

藤井 亜也

株式会社COCO PLAN 代表取締役社長
独立系FPとして20代~90代と幅広い年代のお客様の相談に対応。一人一人に心を込めて、最適なプランを提案し、多くのお客様のライフプランを実現。個別相談だけでなく、マネーセミナー、執筆・監修など幅広く活動中。
【著書】今からはじめる理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方(三恵社)

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