ライフスタイルの変化もあり、生涯独身という人が増えている近年。年金だけに頼らず、自分で老後資金を用意することが常識となりつつあります。「老後2,000万円問題」が話題になって久しいですが、その金額になかなかピンとこない人も多いかもしれません。

「結局、老後資金っていくら必要なの?」「老後資金を用意するには、貯金だけじゃ足りないかも。具体的にはどうしたらいいの?」といった不安を感じている人もいるでしょう。そこでこの記事ではファイナンシャルプランナーの頼藤太希さん監修のもと、独身の人が貯めるべき老後資金の金額を紹介します。

【最新情報】令和6年度の年金額改定について
2024年1月19日に、厚生労働省より2024年4月から施行される令和6年度の年金額が発表されました。

令和6年度の年金額の例
・国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分)…月額6万8,000円(※1)
・厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を含む標準的な年金額)…月額23万483円(※2)

※1:昭和31年4月1日以前生まれの人の老齢基礎年金(満額1人分)は月額6万7,808円。
※2:平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9,000円)で40年間就業した場合に受け取る年金の給付水準。

詳しく知りたい人は、コチラをご確認ください。

※この記事は令和6年度の金額を記載

※この記事は2021年7月19日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

頼藤太希(よりふじ たいき)

Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト
中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。月400万PV超のWebメディア『Mocha』や登録者数1万7000人超のYouTube『Money&YouTV』を運営。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など著書累計150 万部超。日本年金学会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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独身の老後資金って、いくら必要? まずは「2,000万円問題」の内訳を解説

画像: 画像:iStock.com/NoSystem images

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不安なく老後を過ごすために、資金はいくら必要なのでしょうか。

まずは、必要な老後資金の目安として提示されて話題となった「2,000万円問題」について解説します。

この「2,000万円」という金額は、2017年に総務省が公表したアンケート調査「家計調査報告」1)のデータをもとにしており、高齢夫婦無職世帯(※)30年間「平均的」な生活をするために必要と考えられる金額の試算結果から生まれたものです。

※:夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯

2017年の「家計調査報告」に記載された「高齢夫婦無職世帯の家計収支」によれば、年金が中心となる毎月の実収入が20万9,198円なのに対し、支出の合計(消費支出+非消費支出)は26万3,717円となっており、毎月5万4,519円の赤字となります。

〈図〉高齢夫婦無職世帯の家計収支(2017年)

画像: ※:夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合

※:夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合

仮に「老後」を65〜95歳とした場合には、毎月5万4,519円の赤字が30年間続きます。30年間の赤字総額を導き出す計算式は以下のようになります。

赤字総額の計算式

5万4,519(円)×12(カ月)×30(年)
=1,962万6,840円

つまり、夫婦で「平均的」な老後の生活を送るためには、年金とは別に30年間で約2,000万円が必要になる、というわけなのです。

では、独身の場合はどうでしょうか。

〈図〉高齢単身無職世帯の家計収支(2017年)

画像: ※:60歳以上の高齢単身無職世帯の場合

※:60歳以上の高齢単身無職世帯の場合

2017年の「家計調査報告」を見ると、毎月の実収入は11万4,027円なのに対し、支出の合計(消費支出+非消費支出)は15万4,742円となり、毎月4万715円の赤字です。

毎月4万715円の赤字が30年間続く場合、赤字総額の計算式は以下になります。

赤字総額の計算式

4万715(円)×12(カ月)×30(年)
=1,465万7,400円

つまり独身で「平均的な老後の生活を送るためには、年金とは別に30年間で約1,500万円が必要になる、ということです。

ただし、この金額はあくまでも2017年の「家計調査報告」の調査結果をもとにしたものです。多くの人が「平均的」だと考える生活に必要な資金は、その時の社会情勢によって変化するので、7年前とはいえ、将来の生活にマッチしているとは限りません。

独身の場合に必要な老後資金の目安

では2024年時点だと、老後資金はどれくらいを目安と考えればよいのでしょうか。2022年版の「家計調査報告」2)をもとに、老後に必要な資金を試算してみましょう。

ここでは、独身(高齢単身無職世帯)が、65〜95歳の「老後」30年間を暮らすために必要と考えられる、年金収入以外の資金を試算してみます。

なお今回の試算では、持ち家で暮らしており、住宅ローンの返済が完了しているものとします。

独身が必要な老後資金は平均740万円

画像: 画像:iStock.com/sakai000

画像:iStock.com/sakai000

独身の場合に必要な老後資金の目安を試算してみましょう。

〈図〉65歳以上の高齢単身無職世帯の家計収支(2022年)

画像: ※:65歳以上の単身無職世帯の場合

※:65歳以上の単身無職世帯の場合

2022年の家計調査報告書を見ると、65歳以上の単身無職世帯の平均実収入は13万4,915円なのに対し、支出の合計は15万5,495円となり、毎月の不足額は2万580円となります。65〜95歳の30年間を「老後」とすれば、計算式は以下になります。

2万580(円)×12(カ月)×30(年)
=740万8,800円

つまり、独身(高齢単身無職世帯)が30年間、2022年基準の「平均的」な生活を送るためには、約740万円の資金が必要と考えることができます。

ただし、この試算結果は65歳以上の単身無職世帯すべてを平均したものであることに注意が必要です。

男女別のおひとりさま老後資金シミュレーション

ここでは男性と女性それぞれの老後資金を試算します。

男女別でシミュレーションする理由は、男性と女性で「平均寿命」と「平均年収」が異なるためです。

厚生労働省が2022年に発表した「主な年齢の平均余命」3)によると、平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳です。また男性と女性では平均年収が異なるため、老後の年金受給額にも差があります。

総務省の「2019年全国家計構造調査」4)をもとに、以下のように老後資金を試算しました。

独身女性の場合のシミュレーション

まずは「2019年全国家計構造調査」をもとに、生活費の不足額を見ていきましょう4)。老後生活を送る期間は、65歳から平均寿命を迎える87歳までの22年間として考えます。以下は、実収入が年金などの社会保障給付に加えてそのほかの収入がある場合と、そのほかの収入がない場合の生活費の不足額です。

〈表〉65歳以降の実収入別で算出した老後資金の目安

実収入消費支出(非消費支出含む)不足分平均寿命を迎えるまでに不足する金額
社会保障給付(年金など)+そのほかの収入がある場合14万1,646円14万9,145円7,500円198万円
社会保障給付(年金など)のみの場合12万8,908円14万9,145円2万237円534万2,568円

社会保険給付とそのほかの収入を合わせた平均実収入は14万1,646円です。一方、そのほかの収入がない場合の平均実収入は12万8,908円となります。

では、それぞれ不足額について見ていきましょう。

〈図〉社会保障給付とそのほかの収入がある高齢無職単身世帯(女性)の実収入と支出(2019)

画像1: 独身女性の場合のシミュレーション

社会保障給付とそのほかの収入がある高齢無職単身世帯(女性)の平均実収入は14万1,646円です。そこから税金や社会保険料などの非消費支出を差し引くと、本人が自由に使える金額(可処分所得)は、13万3,107円となります。毎月の生活費(消費支出)は14万607円であるため、データ上では毎月7,500円の赤字となります。

生活費の不足額は合計で7,500円×12カ月×22年=198万円と算出されました。

つぎに、年金などの社会保障給付だけを収入とする場合の生活費の不足額を見ていきましょう。実収入は12万8,908円になるため、収支は毎月2万237円のマイナスになることがわかります。

〈図〉社会保障給付のみの高齢無職単身世帯(女性)の実収入と支出(2019)

画像2: 独身女性の場合のシミュレーション

生活費の不足額は合計で2万237円×12カ月×22年=534万2,568円と算出されました。

また調査結果では、調査の対象になった人の多くが持ち家に住んでいると考えられます。理由は、住居費が消費支出14万607円の11.6%(1万6,310円)であるとなっているためです。

仮に家賃が8万円の賃貸に住む場合、毎月の支出は21万2,835円となります。社会保険給付12万8,908円を差し引くと赤字は8万3,927円です。不足額は8万3,927円×12カ月×22年=2,215万6,728円となります。

さらに、介護費用や葬儀費用への備えも必要です。公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、毎月の介護費用の平均は8万3,000円でした5)。在宅介護で4万8,000円、施設介護で12万2,000円と介護形態によって費用負担は変わりますが、年間で100万円近い金額がかかります。現時点で健康でも、介護への備えは必須といえるでしょう。

葬儀費用については、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると約120万円程度かかります6)。葬式をしないケースもありますが、火葬の際に必ず料金がかかります。十分な貯蓄をしておき、葬儀費用を自分の遺産からまかなえるようにしましょう。

続いては、一人暮らし独身女性の生活費の内訳を詳しく見ていきましょう。

一人暮らし独身女性の生活費の内訳

総務省統計局が発表している「家計調査報告書」(2022年)をもとに、一人暮らし独身女性の生活費の内訳を年代別にまとめました。それぞれの年代で必要な生活費は以下のとおりです7)

〈表〉一人暮らし独身女性の生活費の内訳

34歳以下35~59歳60~64歳以下65歳以上
消費支出15万9,438円19万59円15万1,673円14万8,971円
食料3万35円4万75円3万7,610円3万7,542円
住居4万1,775円3万44円1万4,163円1万3,141円
電気代4,699円6,714円7,629円7,660円
ガス代2,671円3,987円3,553円3,563円
上下水道1,467円2,246円2,471円2,510円
そのほかの光熱費70円424円1,401円1,410円
家具・家事用品4,107円6,468円7,149円7,119円
被服および履物7,447円8,632円4,501円4,388円
保険医療(医薬品、保険医療サービスなど)4,748円1万844円8,585円8,447円
交通7,253円4,618円1,953円1,875円
自動車等関係費6,536円8,687円6,123円5,245円
通信費6,003円8,086円6,501円6,303円
教養娯楽2万570円2万34円1万5,336円1万5,041円
その他2万2,057円3万9,203円3万4,696円3万4,727円

表を見ると、35〜59歳の現役世代が日常生活をするのに必要な生活費が比較的高くなっています。この年代を境に、60歳以上では支出が次第に減っていき、65歳以上の消費支出と現役世代の消費支出には1万~4万円程度の差があります。

差額は1万~4万円程度ですが、収入を得ている世代と貯金を切り崩して生活している世代という、大きな違いがあります。やはり、現役世代のうちにいかに貯蓄しておくかが重要といえるでしょう。

独身男性の場合のシミュレーション

男性の場合も同様に算出します。老後生活を送る期間は、65歳から平均寿命を迎える81歳までの16年間として考えます。以下は、実収入が年金などの社会保障給付に加えてそのほかの収入がある場合と、そのほかの収入がない場合の生活費の不足額です。

〈表〉65歳以降の収入別で算出した老後資金の目安

実収入消費支出(非消費支出含む)不足分平均寿命を迎えるまでに不足する金額
社会保障給付(年金など)+そのほかの収入がある場合16万3,492円16万2,603円不足なし(889円プラス)不足なし(17万688円プラス)
社会保障給付(年金など)のみの場合14万9,802円16万2,603円1万2,801円245万7,792円

「2019年全国家計構造調査」によれば、社会保険給付とそのほかの収入を合わせた平均実収入は16万3,492円です4)。一方、そのほかの収入がない場合の平均実収入は14万9,802円となります。

それぞれの不足額について見ていきましょう。

〈図〉社会保障給付とそのほかの収入がある高齢無職単身世帯(男性)の実収入と支出(2019)

画像1: 独身男性の場合のシミュレーション

税金や社会保険料などの非消費支出を差し引くと、本人が自由に使えるお金(可処分所得)は14万4,243円となります。一方、毎月の生活費(消費支出)は14万3,354円で、収支は毎月889円の黒字となります。調査結果から、男性の場合は毎月黒字となるため、特に心配がないように見えます。

つぎに、年金などの社会保障給付だけを収入とする場合の老後資金を見ていきましょう。社会保障給付は14万9,802円になるため、収支は毎月1万2,801円のマイナスになることがわかります。

〈図〉社会保障給付のみの高齢無職単身世帯(男性)の実収入と支出(2019)

画像2: 独身男性の場合のシミュレーション

生活費の不足額は合計で1万2,801円×12カ月×16年=245万7,792円足りないことがわかります。

さらに住居費を確認すると、消費支出の9.1%である1万3,045円となっています。これは高齢の独身女性と同様で、多くの人が持ち家に住んでいると考えられます。

持ち家ではなく家賃8万円の賃貸マンションに住む場合、毎月の支出は22万9,558円に増えます。社会保障給付14万9,802円を差し引くと毎月7万9,756円の赤字です。

老後生活の期間を、65歳から男性の平均寿命81歳までの16年間と仮定すると、合計不足額は7万9,756 円×12カ月×16年=1,531万3,152円と算出されました。

男性も女性と同様に介護費用や葬儀費用の貯蓄が必要です。前述のとおり、男性は女性よりも寿命が短いです。とはいえ、老後資金の備えは必要になります。女性と同様に介護費用が平均月8万3,000円、葬儀費用が約120万円発生すると考えて、貯蓄計画を立てていくことが大切です。

続いては、一人暮らし独身男性の生活費の内訳を詳しく見ていきましょう。

一人暮らし独身男性の生活費の内訳

総務省統計局が発表している「家計調査報告書」(2022年)をもとに、一人暮らし独身男性の生活費の内訳を年代別にまとめました。それぞれの年代で必要な生活費は以下のとおりです7)

〈表〉一人暮らし男性の生活費の内訳

34歳以下35~59歳60~64歳以下65歳以上
消費支出15万7,372円18万4,305円14万7,994円14万8,918円
食料3万7,587円4万4,680円4万1,348円4万938円
住居3万2,960円3万1,546円1万4,255円1万4,242円
電気代4,817円6,627円7,748円7,765円
ガス代3,204円2,899円3,322円3,276円
上下水道1,503円1,743円2,412円2,405円
その他光熱費12円443円1,297円1,301円
家具・家事用品3,194円4,665円4,682円4,631円
被服および履物7,780円3,899円2,191円2,146円
保険医療(医薬品、保険医療サービスなど)5,809円4,838円7,720円8,124円
交通7,289円5,189円1,815円1,853円
自動車等関係費6,939円1万2,159円1万1,302円1万1,328円
通信費6,117円9,308円6,310円6,228円
教養娯楽2万2,857円1万9,638円1万5,964円1万6,287円
その他1万7,306円3万6,670円2万7,628円2万8,393円

女性同様に35〜59歳の現役世代が最も消費支出が高くなっており、60歳以降は現役世代を下回っています。しかし、医療費や光熱費などは現役世代に比べて負担の比率が大きくなっていることがわかります。60歳以上と59歳以下の消費支出は最大月4万円程度差がありますが、負担が極端に少なくなるわけではありません。リタイアする前に収入を貯蓄にまわしながら、計画的に老後資金をつくっていく必要があるでしょう。

以下の記事では、老後の生活費の平均などを解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】老後の支出の平均額について、詳しくはコチラ

介護費用や葬儀費用いくら必要?

「家計調査報告書」をもとに、独身の男女の老後資金をシミュレーションしてきましたが、ここで注意してほしいのが、同報告書の支出には、介護にかかる費用が含まれていないことです。

独身の場合は、あらかじめ費用を把握して計画的に貯めるようにしておきましょう。なお、ここでは葬儀費用についてもお伝えしますので、併せて確認してみてください。

介護に必要な費用

画像: 画像:iStock.com/byryo

画像:iStock.com/byryo

独身の老後で「平均的」な生活を送りつつ、「もしも」に備えるためには、プラスアルファの貯えが必要です。

そこで、安心できる老後資金の目安として介護に備える費用も試算してみましょう。

生命保険文化センターが公表した「生命保険に関する全国実態調査/2021(令和3)年度」5)によれば、介護費用の月額平均は、8万3,000円となっています。

〈図〉月額介護費用の平均

画像1: 介護に必要な費用

また、同調査によれば、介護が必要な期間は平均で61.1カ月(約5年1カ月)です。

〈図〉介護期間の平均

画像2: 介護に必要な費用

介護費用の平均月額と介護が必要な期間を掛け合わせた計算式は、以下となります。

8万3,000円×61.1(カ月)
=507万1,300円

計算結果を見ると、約507万円が必要ということになります。さらに、住宅改修や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計額(「生命保険に関する全国実態調査/2021(令和3)年度」によれば平均74万円)を加えると一人あたり約580万円の備えが必要になると考えることができます。

つまり、生活費に加えて介護の「もしも」に備える資金を用意する場合、以下の老後資金を用意することになります。

〈表〉介護費用を含めた老後資金の目安

女性男性
社会保障給付(年金など)+そのほかの収入がある場合778万円562万9,312円
社会保障給付(年金など)のみの場合1,114万2,568円825万7,792円

また、この試算は、あくまでも前出の総務省の2019年全国家計構造調査4)をもとにした平均的な生活を送る場合の結果である点に注意が必要です。

葬儀に必要な費用

また「2019年全国家計構造調査」には葬儀費用も含まれていません。独身の場合は葬儀費用を自分で準備する必要がある人も多いでしょう。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると葬儀費用の平均は約120万円程度6)、また株式会社鎌倉新書の調査によると、お墓の購入費用の平均は135万円8)です。生活費や介護費に加え、こうした費用の必要性も考えることが大切です。

今回の試算結果は、あくまでも目安と考えて、この金額をベースに、自分のライフスタイルに合った老後資金を用意しましょう。

持ち家か賃貸かでも老後資金は変わってくる

画像: 画像:iStock.com/sommart

画像:iStock.com/sommart

前段でも少し触れましたが、老後の住居が持ち家か賃貸かで、用意する老後資金の金額は大きく変わってきます。独身の60代、70代の住居状況は調査によると、以下のとおりです。

〈表〉独身60歳代・70歳代の住居状況9)

持ち家賃貸・社宅・間借りなど
60歳代54.9%45.1%
70歳代68.1%31.9%

60代は持ち家と賃貸の割合が均衡しています。一方、70代は約7割が持ち家で、賃貸は3割程度に留まる結果となりました。

持ち家、賃貸どちらにおいても必ず住むための費用負担が発生します。どちらが支出を抑えられるのかシミュレーションした上で、住環境をどう整えるか検討しましょう。

たとえば、賃貸に住み続けるのであれば、老後も家賃や共益費を支払っていかなければなりません。固定資産税はかかりませんが、物件によっては管理費・修繕積立金、駐車場代や駐輪場代がかかります。住んでいるうちは費用がかかる点に注意が必要です。

一方、住宅ローンを組んで持ち家を購入した場合は、完済してしまえば住居費の負担は減ります。しかし老後もローン返済が続くのであれば、返済負担が家計を圧迫する可能性はあります。また、持ち家の場合は毎年固定資産税を支払わなければなりません。エリアによっては、都市計画税もかかります。税額は建物の価値低下に伴って次第に下がっていきますが、毎年かかるため費用負担は避けられません。

住環境によって老後にかかる支出が異なることを念頭に置きながら、老後資金を用意する必要があるでしょう。

以下の記事では、独身が必要な老後資金を住居種別でそれぞれ解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】独身で持ち家に住んでいる方はコチラ
【関連記事】独身で賃貸に住んでいる方はコチラ

マンションの修繕積立金については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】修繕積立金の相場や将来の値上がりリスクについて詳しく解説した記事はコチラ

60歳代・70歳代の独身、貯金はいくら貯めている?

画像: 画像:iStock.com/erdikocak

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必要な老後資金の目安がわかったところで、気になるのが、実際にほかの人がどれだけの老後資金を貯めているかでしょう。

金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」9)によれば、60歳代の独身の金融資産保有額の平均値は1,388万円です。

〈図〉60歳代の独身の金融資産保有額の割合

画像1: 60歳代・70歳代の独身、貯金はいくら貯めている?

ただし、中央値は300万円となっています。つまり、多くの人は介護費用などを含めた老後資金の半分以下しか準備できていないといえます。

つぎに70歳代の独身の金融資産保有額を見ていきましょう。

〈図〉70歳代の独身の金融資産保有額の割合

画像2: 60歳代・70歳代の独身、貯金はいくら貯めている?

70歳代の独身の金融資産保有額の平均値は1,433万円です。しかし、中央値は485万円で介護費用などを含めた老後資金には足りない結果となっています。

老後の不安をなるべく少なくしておきたいなら、先ほど試算した介護費用を含めた老後資金を目安に、貯蓄プランを立てることをおすすめします。

以下の記事では、老後のための資産準備などについて解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】老後資金の貯め方について、詳しくはコチラ

独身が老後に受給できる年金

年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金の加入者は老齢基礎年金、厚生年金の加入者は老齢厚生年金を65歳以降に受給できます。受給額は毎年改定されており、直近5年では以下のように推移しています。

〈表〉平均年金額(月額)の推移10)

年度国民年金厚生年金(国民年金を含む)
平成29年5万5,518円14万7,051円
平成30年5万5,708円14万5,865円
令和元年5万5,946円14万6,162円
令和2年5万6,252円14万6,145円
令和3年5万6,368円14万5,665円

厚生年金は月15万円程度が受け取れますが、国民年金は毎月5万円程度であり、この金額だけで老後の生活費をまかなうのも難しいでしょう。年金だけを頼りにするのではなく、現役時代から資産づくりをして、老後資金を用意することが大切です。

以下の記事では、老後のための年金の受給額や働きながら年金を受給する方法について解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】年金の受給額について、詳しくはコチラ
【関連記事】働きながら年金を受給する方法について、詳しくはコチラ

年金以外に受け取れる給付金

年金以外に受け取れる給付金を活用すれば、老後資金づくりに役立てられます。主な給付金は以下の4つです。

1 老齢年金生活者支援給付金
2 補足的老齢年金生活者支援給付金
3 障害年金生活者支援給付金
4 遺族年金生活者支援給付金

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1 老齢年金生活者支援給付金

老齢年金生活者支援給付金は、年金を受給している人で特定の条件に当てはまる場合に受け取れる給付金です。支給要件は以下のとおりです。

〈表〉老齢年金生活者支援給付金の支給要件11)

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している
  • 同一世帯の全員の市町村民税が非課税となっている(※1)
  • 前年の年金収入金額とそのほかの所得の合計が87万8,900円以下である(※2)

※1:障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まない。
※2:前年の年金額とそのほかの所得の合計が77万8,900~87万8,900円以下の場合は後述する補足的老齢年金生活者支援給付金が支給される。

給付額は年金保険料の納付済期間と免除期間をもとに算出します。計算式は以下のとおりです11)

① 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,310円(※1)×保険料納付済期間÷480カ月
② 保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1,333円(※1)(※2)×保険料免除期間÷480カ月
③ ①+②=老齢年金生活者支援給付金

※1:令和6年度の給付(月額)12)
※2:昭和31年4月2日以後生まれの人は、保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間については老齢基礎年金満額(月額)の1/6。保険料1/4免除期間については老齢基礎年金満額(月額)の1/12となります。

たとえば、納付済月数が420カ月、全額免除月数が0カ月の場合は、上記の式で計算すると月額4,646円の給付となります。

2 補足的老齢年金生活者支援給付金

補足的老齢年金生活者支援給付金は、老齢年金生活者支援給付金の一部分を給付し、年金以外の収入を補完します。支給要件は以下のとおりです。

〈表〉補足的老齢年金生活者支援給付金の支給要件13)

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している
  • 同一世帯の全員の市町村民税が非課税となっている
  • 前年の年金収入金額とそのほかの所得の合計が77万8,900円より多く、87万8,900円以下である

計算式も老齢年金生活者支援給付金とはやや異なります。計算式は以下のとおりです。

① 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,310円(※1)×保険料納付済期間÷480カ月
②(87万8,900円-前年の年金収入金額とそのほかの所得の合計額)÷10万円
③ ①×②=補足的老齢年金生活者支援給付金

※1:令和6年度の給付(月額)12)
※2:①②とも計算結果に50銭未満の端数が生じた時は切り捨てて、50銭以上1円未満の端数が生じた時は1円に切り上げて計算。

たとえば、納付済月数が420カ月、年金収入と所得の合計が78万円だった場合、給付額は4,646円となります。

3 障害年金生活者支援給付金

障害年金生活者支援給付金は、障害年金を受給している人で、特定の条件に当てはまる人が受け取れる給付金です。支給要件は以下のとおりです。

〈表〉障害年金生活者支援給付金の支給要件14)

  • 障害基礎年金を受給している
  • 前年の所得(※1)が472万1,000円+扶養親族の数×38万円(※2)以下である

※1:障害年金などの非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まない。
※2:同一生計配偶者のうち70歳以上の人または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円。

給付額は障害等級により定められています。等級ごとの給付額は以下のとおりです。

●障害等級が1級の人 6,638円(月額)12)
●障害等級が2級の人 5,310円(月額)12)

4 遺族年金生活者支援給付金

遺族年金生活者支援給付金は、遺族年金受給者を対象とした給付金です。支給要件は以下のとおりです。

〈表〉遺族年金生活者支援給付金の支給要件15)

  • 遺族基礎年金を受給している
  • 前年の所得(※1)が472万1,000円+扶養親族の数×38万円(※2)以下である

※1:遺族年金などの非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まない。
※2:同一生計配偶者のうち70歳以上の人または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円。

給付額は遺族基礎年金を受け取っている子どもの人数によって変わります。給付額は以下のとおりです。

●原則5,310円(※)
※:令和6年度の給付(月額)12)。遺族基礎年金を2人以上が受け取っている場合は、人数で割った金額を支給する

独身が老後資金を“効率よく”準備する方法

画像: 画像:iStock.com/west

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独身の人が効率よく老後資金を貯めるには、貯金だけでは心もとないでしょう。特に個人事業主やフリーランスは厚生年金がないため、自分で年金を積み立てる必要があります。

効率よく老後資金を貯める方法は、以下の4つです。

手段を工夫したり制度を利用したりして、老後への備えを用意しましょう。

①生活費を見直す

お金を貯めるには、現在の生活費を見直すことが重要です。減らすべき費用は毎月定期的にかかる固定費です。光熱費や通信費のように毎月支払いがあるものは、契約先を変更すれば料金を抑えられる可能性があります。

おおよその貯蓄目標額を決めておくと、月にどれくらいの費用を節約すべきか把握しやすいです。目標が決まらないと節約のモチベーションが保てず、節約した分を食費や娯楽費にまわしてしまうかもしれません。

貯蓄したい金額に合わせて、見直すべき費用や節約したい金額を決めて、実践してみましょう。以下の記事では、一人暮らしの生活費を見直す方法について解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】一人暮らしの節約術について詳しくはコチラ

②iDeCoやNISAを活用する

iDeCoやNISAを活用するのも、老後資金を効率よく貯めるためのひとつの手です。iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれ、毎月の掛金を全額税控除の対象にできるのが特徴です。引き出しは60歳からで、年金形式、一時金形式を選べます。税メリットを受けながら老後資金をつくりたい人におすすめです16)

NISAは運用して得た利益を一生涯非課税で受け取れる制度です。通常20.315%の税金がかかるため、NISAで資産運用すれば通常よりも多くの利益を受け取れます17)。2024年からは生涯をとおして非課税での運用が可能になり、年間投資枠や非課税保有限度額(総枠)も大幅に引き上げられ、より多くの人が利用しやすくなりました。

ただし、iDeCoやNISAは投資であり、お金が減ってしまう元本割れを起こす可能性もあります。リスクを十分理解した上で、利用するようにしましょう。

以下の記事では、iDeCoのしくみについて解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】iDeCoのしくみについて詳しくはコチラ

③個人年金保険などの保険に入る

iDeCoやNISAなどの投資に不安を感じる人は、個人年金保険のような貯蓄性のある保険に加入するのがひとつの手です。個人年金保険は保険料や受け取り年齢などを自分で決められるため、ライフプランに合わせた資産形成ができます。受け取り前に亡くなった場合でも死亡給付金が支払われることが多く、家族にも資産を遺せます。

また、運用を保険会社に任せて年金を増やしたい人は、変額個人年金保険を契約してもよいでしょう。ただし、こちらも投資同様元本割れのリスクがある点には注意してください。

保険に加入する場合は、毎月の保険料が負担にならないよう、事前に生活費や支出を見直しておくとよいです。

以下の記事では、個人年金保険のメリットなどについて解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】個人年金保険のしくみについて詳しくはコチラ

④国民年金基金や付加年金を追加する

国民年金に加入している個人事業主やフリーランスの人は、国民年金基金や付加年金を活用して、受給できる年金額を増やしましょう。どちらも国民年金の第1号被保険者のみが加入できる制度です。

国民年金基金は、年金を上乗せできる制度で、月額6万8,000円まで掛金を拠出できます。複数口の加入が可能で、1口目は終身年金2タイプ、2口目以降は終身年金、確定年金合わせて7タイプから自分に合うものに加入できます。会社員の厚生年金の代わりとして利用するのがおすすめです18)

付加年金は、通常支払うべき年金保険料に月額400円をプラスすることで、年金額を上乗せできる制度です19)。上乗せ金額は「付加保険料を納めた月数×200円」で、毎年受け取る年金にプラスされるため、2年の年金受給で支払った保険料を付加年金として全額回収できます。年金受け取り前に亡くなってしまっても、付加保険料を36カ月以上納めていれば、遺族が受け取る死亡一時金に8,500円が追加されます20)

以下の記事では、付加年金の申請方法などについて解説しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】付加年金のしくみについて詳しくはコチラ

将来のことはわからない。だから、計画を立てることが大切

何十年も先になる「老後」のことなんて、今はよくわからないと思っている人が多いでしょう。しかし、この先に何が起こるかわからないからこそ、安心できる備えが必要となります。老後の生活に少しでも不安を感じるのであれば、なるべく早いうちから準備を始めておきましょう。

とはいえ、老後の心配ばかり優先させて、今の暮らしで我慢をしすぎるのも考えものです。長い人生ですから、トータルのバランスを考えて、老後の準備プランを立ててください。

【関連記事】お金を貯める方法20選。目的別・ライフステージ別のコツを専門家が徹底解説

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