男性が利用できる育休制度には、「産後パパ育休」と通常の「育休」があります。しかし、この2つの制度の違いを正しく理解できていない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの原絢子さん監修のもと、産後パパ育休と通常の育休の違いをわかりやすく整理するとともに、育休中に受け取れる給付金についても解説します。

この記事の監修者

画像: 【比較】産後パパ育休と育休の違いは?取得期間や給付金をわかりやすく解説

原 絢子(はら あやこ)

FPサテライト株式会社 所属FP。大学卒業後、翻訳・編集業務に従事。金融とは無縁のキャリアを積んできたが、結婚・出産を機にお金の知識を身につけることの大切さを実感。以来、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。自分の人生を自分でコントロールするためには、お金について学ぶことが必要との思いから、執筆・監修、セミナー講師などを通して、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。

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産後パパ育休と育休はどう違うの?

画像1: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

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「産後パパ育休」は正式名称を「出生時育児休業」といい、子どもの出生直後に父親が育休を取得しやすくする目的で創設された、比較的新しい制度です。一方、通常の「育休」は、従来からある制度です。

この2つの制度について、違いがよくわからないという人も少なくありません。まずは、それぞれの違いについて解説します。

なお、産後パパ育休と育休の取得条件などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】産後パパ育休と育休の取得条件について、詳しくはコチラ

産後パパ育休ができた背景

従来の育休制度は、比較的長期の休業を前提としていたため、仕事や収入への影響を考えると、父親にとっては利用しづらい側面がありました。

一方で、子どもの出生直後は母親の心身の負担が特に大きく、父親のサポートが強く求められる時期でもあります。そこで、短期間でも柔軟に休みを取得できる制度の必要性が高まっていました。

このような状況を受けて、「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、2022年10月からスタートしました1)

【比較表】産後パパ育休と育休の違い

産後パパ育休と通常の育休は、いずれも育児を支援するための制度ですが、主な違いは「取得可能な期間」と「休業中の就業の可否」にあります。

産後パパ育休は、出産直後の特に負担が大きい時期に、父親が育児や母親のサポートに主体的に関わることを目的とした制度です。そのため、取得できる期間は子どもの出生後8週間以内に限定されています。

一方、通常の育休は、親が安心して育児に専念できる環境を確保することを目的としており、原則として子どもが1歳になるまで取得することが可能です。

また、休業中の就業の可否にも違いがあります。

産後パパ育休では、労使協定を締結し、会社と従業員が個別に合意すれば、休業中の就業が認められています。これに対し、通常の育休では、育児に専念することを前提としているため、原則として休業中の就業は認められていません。

【比較表】産後パパ育休と育休の違い2)

産後パパ育休(出生時育児休業)育休(通常の育児休業)
取得可能期間子の出生後8週間以内原則として子が1歳になるまで(最長2歳)
取得可能日数最大4週間原則1年間
取得回数2回まで分割取得可(最初にまとめて申請)2回まで分割取得可(都度申請)
休業中の就業労使協定の締結と個別合意により、一部就業が可能原則就業不可
申請期限原則として休業開始の2週間前まで原則として休業開始の1カ月前まで

取得できる対象者に違いはある?

産後パパ育休は、男性の育児参加を促す目的で創設された制度のため、基本的には男性が対象となります。

ただし、厳密には「産後休業をしていない労働者1)」となりますので、養子を迎えた場合などは女性でも取得可能です。

一方、通常の育休は、「1歳に満たない子を養育する男女労働者3)」が対象となるため、男女を問わず取得することができます。

産後パパ育休と育休は併用できる

画像: 画像:iStock.com/oatawa

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産後パパ育休と通常の育休は、どちらか一方のみを利用することも、両方を併用することも可能です。

2つの制度を併用するメリット

産後パパ育休と通常の育休を併用する最大のメリットは、家庭や職場の事情に合わせて、休み方を柔軟に設計できる点です。

産後パパ育休も通常の育休も、それぞれ2回まで分割して取得することができます。そのため、2つの制度を併用すれば、最大4回まで分けて休業を取得することが可能です。

たとえば、通常の育休は、子どもが1歳になるまで原則1年間取得できますが、仕事や収入への影響を考えると、長期間の休業は難しいという人もいるでしょう。

そのような場合でも、2つの制度を組み合わせれば、複数回に分けて休業を取得することができ、負担を分散しながら育児に関わることができます。

また、配偶者と交代で育休を取得すれば、配偶者の職場復帰を後押しすることにもつながり、夫婦での仕事と家庭の両立がしやすくなります。

なお、産後パパ育休と通常の育休を併用した場合でも、育休を取得できる期間が延長されたり、取得可能な日数が増えたりするわけではない点には注意が必要です。

「パパ・ママ育休プラス」を活用すれば1歳2カ月まで延長できる

産後パパ育休と通常の育休を併用しても、育休の取得可能期間(原則1歳まで)を延長することはできません。

しかし、「パパ・ママ育休プラス」を利用すれば、育休の取得可能期間を子どもが1歳2カ月になるまで延長することができます。

パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育休を取得し、一定の要件を満たした場合に、育休の取得可能期間を延長できる制度です4)。ただし、父親・母親それぞれが取得できる休業日数の上限(父親は1年間、母親は産後休業と合わせて1年間)は変わらないため、夫婦で上手に活用しましょう。

産後パパ育休と育休の取得パターン

産後パパ育休と通常の育休を組み合わせると、様々な育休の取り方が可能です。具体的な取得パターンを見てみましょう。

【パターン①】産後パパ育休と育休を取得した場合

画像1: 産後パパ育休と育休の取得パターン

産後パパ育休で出生直後をサポートし、そのあとは夫婦交代で育休を取得した場合のスケジュールです。

【パターン②】産後パパ育休と育休を取得し、パパ・ママ育休プラスを利用した場合

画像2: 産後パパ育休と育休の取得パターン

産後パパ育休2回、育休2回で4回に分けて育休を取得した場合のスケジュールです。パパ・ママ育休プラスで妻の職場復帰をサポートできます。

【パターン③】育休のみを利用した場合

画像3: 産後パパ育休と育休の取得パターン

産後パパ育休を利用せず、1歳まで通常の育休のみを利用することも可能です。パターン③の場合、夫婦それぞれが休業日数の上限に達しているため、パパ・ママ育休プラスは利用できません。

産後パパ育休と育休の“お金”はどうなる?

画像2: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

育児休業中は、基本的に会社からの給与支払いはありません。しかし、雇用保険から各種給付金が支給されるため、一定の収入を確保することができます。

ここからは、産後パパ育休と通常の育休で受け取れる給付金について解説します。

社会保険料は免除される

前提として、産後パパ育休・通常の育休いずれの場合も、育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除されます5)。免除期間中も、保険料を納めたものとして扱われるため、将来の年金額が減ることはありません。

なお、社会保険料の免除要件は2022年10月に改正され、育休開始月については、月末が育休期間中である場合に加え、同月中に14日以上育休を取得した場合にも免除されるようになりました6)

この改正により、産後パパ育休のような短期間の休業でも、社会保険料の免除を受けやすくなっています。

〈図〉社会保険料の免除要件(月額保険料の場合)

画像: ※:賞与にかかる社会保険料については、育休を1カ月超(暦日で計算)取得した場合にのみ免除されます。

※:賞与にかかる社会保険料については、育休を1カ月超(暦日で計算)取得した場合にのみ免除されます。

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産後パパ育休で受け取れる給付金

産後パパ育休中には「出生時育児休業給付金」を受け取ることができます7)

【出生時育児休業給付金の計算方法】

期間計算方法上限額
28日間休業開始時賃金日額×支給日数×67%30万2,223円
※令和8年7月31日までの額

さらに、2025年4月以降は、一定の要件を満たす場合に「出生後休業支援給付金」が上乗せされるようになりました8)。これは、両親ともに育休を取得するなどの条件を満たすことで、給付率が引き上げられる制度です。

【出生後休業支援給付金の計算方法】

期間計算方法上限額
28日間休業開始時賃金日額×支給日数×13%5万8,640円
※令和8年7月31日までの額

この上乗せにより、出生時育児休業給付金と合わせた給付率は80%となります。そして前述したように社会保険料は免除となるため、手取りベースでは10割相当になります。産後パパ育休中の経済的な不安を大きく軽減する制度といえるでしょう。

出生後休業支援給付金の支給要件は、両親ともに育休を通算して14日以上取ることが原則です。ただし、配偶者の状況により例外が認められる場合があります。支給要件は細かく定められているため、申請前に「育児休業給付の内容と支給申請手続」で確認しておくとスムーズです。なお、申請手続きは勤務先が行うため、担当部署に確認するようにしましょう。

※:「休業開始時賃金日額」とは、原則、育児休業(育休)開始前の6カ月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額を指します。産前産後休暇を取得している場合は、休暇前6カ月間の給料を180日で割った金額です。

育休で受け取れる給付金

通常の育休中には「育児休業給付金」を受け取ることができます7)

【育児休業給付金の計算方法】

期間計算方法上限額
育休開始から180日(6カ月)まで休業開始時賃金日額×支給日数×67%32万3,811円
※令和8年7月31日までの額
育休開始から180日(6カ月)目以降休業開始時賃金日額×支給日数×50%24万1,650円
※令和8年7月31日までの額

なお、通常の育休でも、「出生後休業支援給付金」の支給要件を満たす場合には、育児休業給付金に上乗せして受け取ることが可能です。その場合は、育児休業給付金と合わせた給付率が80%となり、前述したように社会保険料は免除となるため、手取りベースでは10割相当が受け取れます。

産後パパ育休と育休の期間中に受け取れる給付金について、詳しくは以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

【関連記事】男性の育休中に受け取れる給付金について、詳しくはコチラ

制度の違いを理解して、最適な育休プランを選ぼう

産後パパ育休は、子どもの出生直後という特にサポートが必要な時期に、父親が短期的かつ柔軟に休みが取得できる制度です。一方、通常の育休は、一定期間仕事を離れ、育児に専念するための制度です。

2つの制度の違いを理解したうえで活用すれば、家庭や仕事の状況に合わせた、より柔軟な育休取得が可能になります。

給付金や社会保険料の免除なども含めて検討し、夫婦で話し合いながら、自分たちに合った育休プランを選びましょう。

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