そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの藤井亜也さん監修のもと、男性の育休制度について、期間をはじめ、取得率や育休中の給与、取得した場合のメリット、2025年に予定されている法改正の内容などを交えて解説します。
※この記事は2020年8月17日に公開した内容を最新情報に更新しています。
男性の育休とは?
男性の育休とは、夫が妻の出産後に育児や家事を行うために取得する休業制度です。育休を取得するには、育児休業開始予定日の1カ月前までに、勤務先に対して育児休業の取得を書面で申し出る必要があります。給付金などの手続きは会社で行ってくれるため、母子手帳のコピーや通帳を用意した上で書面を勤務先に提出します。
男性の育休の現状とその背景
近年、共働き世帯が増えたことで、育児や家事は夫婦で協力して行うものという考え方が定着してきました。
こうした時代の変化にともない、2022年には育児・介護休業法が改正され、男性の育休取得を促進する様々な内容が義務化されました1)。結果として、男性も育休を取得することが一般化しつつあります。
また、こうした制度の拡充により、少子化問題はもちろん、働き方改革の適切な施行や女性の社会進出など、多くの社会的課題の解決も期待されています。
後述しますが、2025年にはより育休を取得しやすくなるよう、育児・介護休業法が再度改正される予定です。制度の大幅な整備により、今後も男性・女性問わず子育てをしやすい環境が整えられていく予定です。
男性が利用できる2つの育休制度
男性が利用できる育休制度は、主に以下の2つです。
- 育児休業
- 産後パパ育休制度
育児休業は、育児・介護休業法に基づいて定められた、男女問わず取得できる休業です。1歳未満の子どもを養育する目的で取得します。休業期間は原則、配偶者の出産予定日から子どもが1歳を迎えるまでの1年間です。
産後パパ育休制度は、子どもの出生後8週間以内に、最長で4週間まで育休が取得できる制度です。この休業は、前述の育児休業とは別に取得できます。また、最大2回に分けての取得も可能です。詳しくは後述します。
【コラム】育児休業と育児休暇の違いは?
育休は正式名称を育児休業といい、休暇制度である育児休暇とは制度内容が異なります。
育児休業と育児休暇の違いは以下のとおりです。
〈表〉育児休業と育児休暇の違い
育児休業(育休) | 育児休暇 | |
---|---|---|
対象者 | 1歳未満の子どもを養育する従業員 | 休暇制度を定める企業の従業員 |
取得可能期間 | 子どもが1歳になるまで(※1) | 企業によって異なる |
申出期限 | 育児休業開始予定日の1カ月前まで | 企業によって異なる |
分割取得 | 2回まで可能 | 企業によって異なる |
休業中の就業 | 特定の条件下であれば可能(※2) | 副業は可能(※3) |
※1:延長すれば2歳になるまで取得可能。
※2:労使の話し合いにより、子どもの養育をする必要がない期間に、一時的・臨時的に事業主のもとで就労することは可能。
※3:但し、企業が副業を認めている場合。
育児休業と育児休暇の違いは「公的制度かどうか」という点です。育児休業は法律に基づきますが、育児休暇は会社の規定に基づく制度です。
前述のとおり、育休は育児・介護休業法に基づく休業制度のことです。1歳に満たない子どもを養育する従業員が勤務先に申し出ることで利用することができます。法律で定められている制度で、雇用期間などの要件を満たせば妻、夫のどちらも取得可能です。仕事を続けながら子育てをする権利が保障されています。
一方、育児休暇は企業が独自に定める休暇制度です。育休と違って取得期間や申出期限などが企業ごとに異なります。企業によっては育児休暇を設けていない場合もあるため、育児休暇を取得したい時には事前に担当部署に相談しておくといいでしょう。
男性が育休を取得できる期間はいつからいつまで?
男性が育休を取得できる期間は、女性と異なります。両親ともに育休を取得した場合、育休の適用期間が「子どもが1歳になるまで」から「子どもが1歳2カ月になるまで」に延長される「パパ・ママ育休プラス」や、通常の育休とは別に最長4週間の育休が取れる「産後パパ育休」といった制度により、取得開始日や期間の制限が変わるためです。
ここでは、男性の育休取得期間の平均を解説しつつ、制度によって取得期間がどれくらいかを見ていきます。
育休期間は原則1年間
育休期間は、原則1年間とされています。育児・介護休業法では、育休は「1歳に満たない子の養育」のために取得できるものと定めています2)。男女によって、取得できる期間に違いはありません。ただし、育休期間は「1歳2カ月まで」「2歳まで」というように、状況に応じて延長が可能です。延長については、後ほど詳しく解説しています。
【パパ・ママ育休プラスの取得期間】子どもが1歳2カ月に達するまで
パパ・ママ育休プラスを取得すれば、子どもが1歳2カ月になるまでの間育休が取得可能です。通常、育休期間は1年間ですが、パパ・ママ育休プラスを取得すると、子どもが1歳2カ月に達するまで育休を延長できます(ただし、夫婦それぞれの取得可能な期間は1年間ずつです)。
〈図〉パパ・ママ育休プラスの取得例
パパ・ママ育休プラスでは、夫婦で一緒に育休を取得するだけでなく、妻の仕事復帰のタイミングで夫が取得するなど、タイミングをずらすこともできます。最長で子どもが1歳2カ月になるまで、妻か夫のいずれかが育休を取得できるため、ぜひ活用を検討してみましょう。
【産後パパ育休(出生時育児休業)の取得期間】出生後8週間以内で最長4週間まで
産後パパ育休(出生時育児休業)は2022年10月に施行された新しい制度です。子どもの出生後8週間、これまでパパ休暇として育休の一部で取得していた休業を、育休と別枠で取得できます。期間内であれば最長4週間、2回に分割して取得することができ、これに併せて出生後8週間後の育休についても最長1年間を、2回に分割して取得できるようになりました。
〈図〉産後パパ育休の取得例1)
なお、2022年9月まであったパパ休暇制度は産後パパ育休の施行にともない、廃止されました。
【関連記事】パパ・ママ育休プラスの具体例や産後パパ育休など、男性の育休取得期間について詳しくはコチラ
男性の育休取得期間も延長できる
男性の育休は、一定の要件を満たした場合に延長できます。延長は「子どもが1歳6カ月になるまで」と「2歳になるまで」の2回まで可能で、「子どもが1歳となる育児休業終了予定日に保育所に入所できない場合」といった一定の要件を満たす必要があります。また、1歳6カ月の時点で保育所などに入れないなど一定の要件を満たす場合は、2歳になるまでの再延長が可能です。延長期間中であっても、育児休業給付金や社会保険料の免除は適用されます。
なお、上記とは別に前述したパパ・ママ育休プラスを活用すれば、育休の適用期間を「子どもが1歳になるまで」から「子どもが1歳2カ月になるまで」に延長できます。延長できるのは夫と妻のどちらか1人です。
【関連記事】「育児休業の延長」の条件や手続きは?詳しい解説はコチラ
男性の育休取得期間の平均は46.5日
厚生労働省の「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によれば、調査対象企業610社のうち、男性の育休平均取得日数は、46.5日でした3)。1カ月を超える期間取得できており、今後も増加が見込まれます。
一方、同調査では取得率が高いほど平均取得日数が短くなる傾向にあることも公表しています。育休取得率が100%に近づくにつれ、取得日数が40日以下の人が増えているのです3)。
今後育休の取得率が増えても、取得日数が少なければ、法改正で拡充した意味がなくなってしまいます。「取得率は高く、取得日数は長い」といった状況になるよう、事業主や職場の協力が必要となりそうです。
男性の育休のおすすめ期間は?
男性の育休のおすすめ期間は、最低1カ月以上です。また、育休開始のタイミングとしては、主に以下の2つがあります。
・妻の退院直後
・出産予定日
男性が育休を取得するのであれば、妻の退院直後から1カ月以上の取得がおすすめです。
理由は、女性の産後うつの防止のためです。女性は産後、ホルモンバランスが崩れます。さらには3時間ごとの授乳など24時間慣れない育児に対応しなければならない責任が重なり、うつになりやすいといわれています。発症時期は個人差がありますが、出産から2週間後をピークにしたおよそ1カ月の期間が、リスクが高いといわれています4)。
出産後に夫婦で助け合いながら育児に取り組むことは、女性の産後うつを予防することにもつながるのです。
もしくは、出産予定日から1カ月以上取得するのがいいでしょう。男性が育休を取得できるのは、女性の出産予定日以降です。そのため、出産予定日に育休を開始するのが取得のタイミングとしては最短といえます。妻が退院するまでの間に家族が安心して過ごせる環境をつくりたい人は出産予定日から育休を取得しましょう。
ただし、帝王切開で日取りが決まっているなどの場合を除き、子どもはいつ生まれるかはわかりません。そのため、勤務先には事前に申告が必要となります。予定日と実際の出産日はずれることも多いですが、育児休業の開始日は勤務先と相談して変更できるので、繰り上げ・繰り下げ申請で対応可能です。
なお、子どもが出産予定日より早く生まれた場合の繰り上げと、出産予定日より遅く生まれた場合の繰り下げは変更の手続きが異なります。以下の記事で詳しく解説しているので、気になる人は確認してみてください。
【関連記事】男性の育休開始時期は変更できる?繰上げ・繰下げの手続きについて、詳しくはコチラ
参考資料
男性の育休取得率はどのくらい?
男性の育休取得率の現状はどうなっているのでしょうか。厚生労働省が発表している「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性の育休取得率は30.1%でした。2021年度の17.1%に比べて13.0ポイント増加しています。ただし、女性の取得率は84.1%であるため、決して高い数字とはいえません5)。
男性の育休取得率が伸びない理由は、仕事や生活へのリスクを恐れているからと考えられます。日本能率協会総合研究所の「厚生労働省委託事業 令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、従業員が育休を取らなかった理由として約4割の人が「収入を減らしたくない」と回答しています6)。また、自分が休むと仕事が滞ると思い込んでしまう人、将来のキャリアにマイナスの影響が出ると考えてしまう人もいるようです。
男性の育休中の給与は?給付金や社会保険料免除を活用しよう
育休の期間中の給与はどうなるのか、お金の不安を抱く人も少なくないでしょう。給付金や社会保険料など、お金まわりの制度についてご紹介します。
育休期間中に利用できる手当・給付金
育休期間中には、夫婦で様々な手当や給付金を受け取れます。主な手当や給付金は、以下のとおりです7)8)9)。
〈表〉育休期間中に利用できる主な手当・給付金
給付金名 | 内容 | 支給対象 | 支給額 |
---|---|---|---|
出産育児一時金 | 出産にかかる費用を補助するための給付金 | 妊娠4カ月(85日)以上で出産した被保険者または家族(被扶養者) | 1児につき50万円(産科医療補償制度未加入の場合や妊娠週数22週未満で出産した場合は48万8,000円) |
出産手当金 | 出産前後の休業中の生活費を支援する給付金 | 健康保険加入者で出産のために会社を休んだ人 | 直近1年の標準報酬月額の平均の2/3 |
育児休業給付金 | 育休中の生活費を補助するための給付金 | 雇用保険加入者で育児休業を取得した人 | 休業開始から6カ月は賃金の67%、それ以降は50% |
出生時育児休業給付金 | 出産後8週間以内に、4週間までの産後パパ育休を取得した場合に給付金を支給する | 雇用保険加入者で産後パパ育休を取得した人 | 賃金の67% |
どれも育休中の生活費や支出を支援してくれる、貴重な給付です。忘れずに申請して、手当・給付金を受け取るようにしましょう。
産休・育休中の手当については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】産休・育休中の給与はもらえない?代わりにもらえる手当を解説
男性の育休では「育児休業給付金」がもらえる
男性の育休では、「育児休業給付金」「出生時育児休業給付金」が受け取れます。
育児休業中は就業規則上、無給としている企業が多いです。しかし、雇用保険に加入しており一定の要件を満たしていれば、育児休業給付金が雇用保険から支給されます。
額面は、最初の6カ月は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」、それ以降は50%となっています。
〈図〉育児休業給付金の給付率
ただし、賃金月額には上限があります。毎年8月1日に見直されるため支給額は勤務先の労務担当者かハローワークに相談して確認しましょう(2025年7月31日までの支給上限額:給付率67%の場合は31万5,369円、給付率50%の場合は23万5,350円)10)。
なお、育児休業給付金の申請方法や金額などについては、以下の記事で解説しています。興味のある人は確認してみてください。
【関連記事】育児休業給付金の申請方法や申請のタイミングなど、詳しくはコチラ
【関連記事】育児休業給付金など「育休・産休中に支給されるお金」とは? 詳しい解説はコチラ
社会保険料の免除も合わせれば、給与の約80%がカバーされる
育休中は、厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が免除される制度があります。これらの保険料の負担額は所属している健康保険組合によって異なりますが、月収の14%ほどです。
また、育児休業給付金は非課税なので、育休中に無給となった分に応じて所得税と住民税(次年度分)の負担が軽くなります。
育児休業給付金は、最初の6カ月は休業開始前の給与の67%が支給されると前述しましたが、負担減額分と合わせると、育休中は休業前の手取り月収の実質80%ほどがカバーされることになるのです。
【関連記事】社会保険料が免除される条件について、詳しくはコチラ
【2025年施行】育児・介護休業法改正のポイント
2025年から、育児・介護休業法が改正され、より育休が取得しやすくなります。主な改正ポイントは、以下のとおりです。
- 企業に育休取得率の目標設定と公表が義務づけられる
- 労働時間の制限が拡大、看護休暇が取得しやすくなる
基本的には、従業員が柔軟な働き方ができるような措置をしたり、育休取得の意向を聴取したり、事業主に対して課される義務が増える形です。労働者は、子どもの養育状況に合わせて柔軟に働き方を選べたり休暇を取得しやすくなったりするため、メリットが増えます。
なお、育児・介護休業法とは別に子ども・子育て支援法も一部改正される予定です。こちらでは、育児休業給付の給付率が一定条件を満たした場合に限り80%(手取り100%相当)になるといった改正が予定されています10)。
企業に男性の育休取得率の目標設定と公表が義務づけられる
育児・介護休業法の改正により、企業に男性の育休取得率の目標設定や取得状況の公表が義務づけられます。
従業員100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に以下のことをする必要があります11)。
- 計画策定時の育児休業取得状況や労働時間の状況把握等
- 育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定
育休の取得状況や、子どもがいる社員の現在の労働時間を把握し、取得率をいくらにするかなどの数値目標を決めることが義務化されました。
数値目標を掲げることで育休の取得しやすい環境をつくったり、企業側から労働者へ育休の取得を奨励したりといった効果が期待されています。
なお、育児・介護休業法ではこの改正と併せて、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が義務づけられます。企業は個別の聴取などから現状を把握したうえで、適切な数値目標を決める必要があります。
労働時間の制限拡大や看護休暇が取得しやすくなる
育児・介護休業法の改正により、労働時間の制限が拡大され、子どもの看護休暇が取得しやすくなります11)。
労働時間については、これまで3歳未満の子どもを養育している人に限り、所定外労働の制限(残業免除)の請求が可能でした。しかし、2025年からは小学校就学前の子どもを養育している人まで請求対象者が拡大されます。これにより、残業で子どもの養育が妨げられることが少なくなり、夫婦どちらも育児に参加しやすくなります。
また、子どもの看護休暇については、以下のように見直される予定です11)。
〈表〉子どもの看護休暇の改正内容
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
名称 | 「子の看護休暇」 | 「子の看護等休暇」 |
対象となる子どもの範囲 | 小学校入学前まで | 小学校3年生修了まで |
取得事由 | ・病気・けが ・予防接種・健康診断 | 左記に加えて以下を追加 ・感染症に伴う学級閉鎖等 ・入園(入学)式、卒園式 |
労使協定の締結により除外できる労働者 | ・引き続き雇用された期間が6カ月未満 ・週の所定労働日数が2日以下 | ・週の所定労働日数が2日以下(※) |
※:雇用期間6カ月未満の人も休暇を取得可能。
これまでは、小学校に入学するまでの子どもが病気やケガをした際に「子の看護休暇」を取得できました。しかし、2025年からは「子の看護等休暇」に名称が変わり、小学校3年生修了までの子どもが病気やケガをした時に加えて、学級閉鎖時、子どもの卒園式や入学式への参加時に休暇を取得できるようになります。
また、雇用期間が6カ月に満たない人でも、子の看護等休暇を取得できるようになります。勤続期間が短い人も休暇を取れるため、より働きやすい環境になることが予想されます。
看護休暇を取得できる子どもの要件や取得事由が拡大されたことで、これまでよりさらに、子どもに寄り添いながら日々の仕事に臨めるようになるでしょう。
【従業員側、企業側別】男性が育休を取得するメリット
男性の育休取得は、従業員本人と就業する企業との両方にメリットがあります。従業員側と企業側それぞれの立場で、男性が育休を取得するメリットをご紹介します。
【従業員側】男性の育休取得のメリット
男性の育休取得や育児参加は、夫婦の関係や互いのキャリアに好影響を与えます。メリットを1つずつ解説します。
①妻が産後うつになる可能性を軽減できる
夫が育休を取得すると、妻の産後うつ発症の可能性を軽減できます。夫と妻が互いに育児へ参加することで、妻へかかる負担を減らして良好な関係を保てるからです。
国立成育医療研究センターの調査によれば、産後1年未満に亡くなった女性の死亡原因357例のうち、約3割の102例が自殺との結果が出ました12)。また、「妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究」によれば、産後2週間程度の時期が産後うつのピークとなり、その後産後3カ月付近にかけて発症率が下がっていくようです13)。
産後うつは10人に1人が発症するといわれており、決して他人事ではありません。夫が育児に協力することで必ず発症を防げるわけではありませんが、産後すぐに育休を取得して妻の負担を和らげられれば、夫婦ともに安定したメンタルで育児ができるでしょう。
②妻のキャリアロス期間を短縮できる
夫が育児に参加することによって、妻の負担が減ります。その分、妻は復職を早めることができるなど、育児によるキャリアロス期間を短縮できるでしょう。共働きを継続したい夫婦にとって、夫の育休は妻のキャリア形成に効果的です。また、男性が育休を長く取る組織ほど帰属意識や仕事の意欲が高まるというデータも示されています14)。
キャリア形成や仕事のモチベーション維持の面でも、男性の育休取得は夫婦双方にメリットをもたらすのです。
【企業側】男性の育休取得のメリット
育休取得に悩む男性の中には「育休を取得したら会社に迷惑をかける」「自分の育休取得を職場は受け入れてくれるだろうか」と考えている人もいるでしょう。しかし、育休取得は企業にもメリットがあります。深く考えすぎずに取得の意思を申し出てみるといいでしょう。
ここでは企業側のメリットをご紹介します。知っているだけで、自身が育休取得を会社に申請する際にも相談・説得しやすくなるでしょう。
①助成金による金銭的な援助を受けられる
従業員が育休を取得することで、企業が助成金を受けられるケースがあります。男性の育休取得促進を目的とした「2024年度両立支援等助成金」の「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」です。
「出生時両立支援コース」は、男性従業員が育休や育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、育休や育児目的休暇を取得した男性従業員が生じた事業主に支給されます。
〈表〉出生時両立支援コースの受給額15)
受給条件 (男性の育休取得者に関する達成条件) | 受給額 | 補足 | |
---|---|---|---|
第1種 | 1人目(※) | 20万円 | 1回限り |
2人目・3人目 | 10万円 | ||
第2種 | 育児休業取得率の30ポイント以上上昇など | 1年以内達成:60万円 2年以内達成:40万円 3年以内達成:20万円 | 1回限り |
※:雇用環境整備措置を4つ以上実施の場合30万円。
育休取得実績を公表すれば福利厚生や人事の面で好影響をもたらします。過去に取得している人がいるという事例がわかるだけでも、自身の育休取得の後押しとなるでしょう。
②認定制度によるイメージアップが期待できる
男性の育休取得を推進することで、企業のイメージアップが期待できます。
子育てサポート企業の証である「くるみん」のほか、「イクメン企業アワード」など、国や地方公共団体の認定制度の取得や表彰へ応募することで、自身の勤める企業の評価が高まります。
企業にとっても労働環境の整備は必須です。実際、男子学生の61.3%が「育児休業を取って積極的に子育てしたい」と考えているようです16)。ワークライフバランスの維持を考慮している男子学生は多く、女子学生も自分が働き続けることを前提に将来を考えています。
助成金の活用実績があれば新卒だけでなく第二新卒や優秀な人材に対しても採用時にアピールできます。採用や育成、離職防止の面でもメリットが大きいのです。
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男性の育休に関するよくある質問
Q1.男性の育休は何カ月間取得できますか?
男性の育休は、子どもが1歳になるまで(延長した場合は1歳6カ月まで、再延長で2歳まで)です。男性の育休は、配偶者の出産予定日から子どもの1歳の誕生日の前日まで取得できます2)。
ただし、子どもが2歳になるまでは、場合によって育休の延長が可能です1)。しかしながら、実際の取得平均日数は46.5日となっています3)。
Q2.男性の育休取得率が100%になるのはいつから?
政府は男性の育休取得率について、2025年までに50%、2030年までに85%を目指すとしています17)。
2023年度の男性育休取得率は、30.1%でした5)。前年から大幅に増えているため、2025年には育休取得率が50%を記録する可能性もあるでしょう。
Q3.育児休業給付金の100%支給はいつから?
育児休業給付金は、2025年4月1日から、以下の条件を満たした場合に限り、最大28日間手取りの100%相当が支給される予定です10)。
男性は子どもの出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得した場合
ただし、給付金の支給率は賃金の80%であり、100%相当が給付されるわけではありません。手取り額に換算すると100%相当となる点に注意が必要です。
Q4.男性の育休中の給与はどうなる?ボーナスは?
男性が育休を取得している間、一般的に給与は支給停止となり、ボーナスについてはこれまでと変わらず受け取れる場合が多いです。
育休は休業であり休暇ではないため、期間中は給与支払いを受けられません。その代わり、育児休業給付金が支給されます。よって、生活費は給付金や貯蓄で賄っていくことになります。
一方、ボーナスは給与とは異なり育休期間中も支給されます。ただし、就業規則で支給対象外としていたり企業の業績が悪化したりした場合は、支給されない場合もあるでしょう。
Q5.男性の育休期間はいつがおすすめ?
男性の育休取得期間は、妻の退院直後か出産予定日から1カ月以上がおすすめです。どちらも妻を精神的に支えられるため、産後うつの防止につながります。また、子どもの出生後8週間以内に取得すれば、前述のとおり育児休業給付金の支給率が80%に上がる可能性もあります。
Q6.育休中は働いていいの?
厚生労働省では、育児休業は労務提供義務を消滅させる制度であるため、原則就労することはできないとされています。ただし、勤務先の企業が副業を認めている場合、副業はこの制限には含まれないため、会社の規定をご確認ください。月10日以下(80時間以下)の非恒常的な就労であれば、育児給付金の給付対象になります18)。
なお、産後パパ育休を利用する場合は、休業中も限られた範囲で就業することが認められています1)。また、子どもの養育のために働き方を柔軟にしたいと考えるのであれば、3歳未満の子どもを持つ従業員が対象となる短時間勤務制度を利用するのも1つの手です。
男性の育休取得が家庭づくりのカギとなる
長い人生、夫が育児参加するかどうかで家族の在り方は変わってきます。夫婦は世界で最小単位の組織と言っても過言ではありません。上手にチームビルディングして、家族という組織をよりよくしていくことが、現代の核家族には求められているのです。
育児のメリットには、仕事以外の人間関係ができることも挙げられます。それが結果的に人間としての幅を広げ、仕事にも生かされます。ぜひ本稿を参考にして制度を上手に活用し、よりよい家族関係を築いてください。