夫婦関係が良好になるなど、男性が育休を取得するメリットはじつに豊富です。しかし、実際に男性が育休を取得するケースは、いまだに約1割程度となっており、実際に育休を何日まで取れるのか知らない人も多いといいます。

そこで今回は、フィナンシャルプランナーの藤井亜也さん監修のもと、男性が育休を何日まで取れるのかを、取得した場合のメリットや育休期間中の給与などを交えて解説します。

※この記事は2020年8月17日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

藤井 亜也(ふじい あや)

ファイナンシャルプランナー(CFP、FP1級)。独立系FPとして幅広い年代のお客様の相談に対応。1人1人に心を込めて、最適なプランを提案しライフプランを実現。個別相談、セミナー、執筆・監修など幅広く活動中。著書『理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方』(三恵社)、ラジオ番組『未来のためのお金のハナシ』(FM川口)。

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男性の育休とは?

画像: 画像:iStock.com/monzenmachi

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男性の育休とは、夫が妻の出産後に育児や家事を行うために取得する休業制度です。育休を取得するには、育児休業開始予定日の1カ月前までに、勤務先に対して育児休業の取得を書面で申し出る必要があります。給付金などの手続きは会社で行ってくれるため、母子手帳や通帳を用意した上で書面を勤務先に提出します。

育児休業と育児休暇の違いは?

育休は正式名称を育児休業といい、休暇制度である育児休暇とは制度内容が異なります

育児休業と育児休暇の違いは以下のとおりです。

〈表〉育児休業と育児休暇の違い

育児休業(育休)育児休暇
対象者1歳未満の子どもを養育する従業員休暇制度を定める企業の従業員
取得可能期間子どもが1歳になるまで
※:延長すれば2歳になるまで取得可能
企業によって異なる
申出期限育児休業開始予定日の1カ月前まで企業によって異なる
分割取得2回まで可能企業によって異なる
休業中の就業原則不可
※:産後パパ育休のみ労使協定の締結があれば調整の上で就業可能
不可

育児休業と育児休暇の違いは「公的制度かどうか」という点です。育児休業は法律に基づきますが、育児休暇は会社規定に基づく制度です。

前述のとおり、育休は育児・介護休業法に基づく休業制度のことです。1歳に満たない子どもを養育する従業員が勤務先に申し出ることで利用することができます。法律で定められている制度で、雇用期間などの要件を満たせば妻、夫のどちらも取得可能です。仕事を続けながら子育てをする権利が保護されています。

一方、育児休暇は企業が独自に定める休暇制度です。育休と違って取得期間や申出期限などが企業ごとに異なります。企業によっては育児休暇を設けていない場合もあるため、取得時は事前に担当部署に相談しておくといいでしょう。また、あくまで休暇制度のため休暇中の就業は一切認められていません。

日本における男性の育休取得率はどのくらい?

画像: 画像:iStock.com/imtmphoto

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では、男性の取得率の現状はどうなっているのでしょうか。厚生労働省が発表している「令和4年度雇用均等基本調査」によると、2022年度の男性の育児休業取得率は24.2%でした。2021年度の18.9%に比べて5.3ポイント増加しています。ただし、女性の取得率は86.7%であるため、決して高い数字とはいえません1)

男性の育休取得率が伸びない理由は、仕事や生活へのリスクを恐れているからと考えられます。株式会社日本能率協会総合研究所の「厚生労働省委託事業 令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、従業員が育休を取らなかった理由として約4割の人が「収入を減らしたくない」と回答しています2)。また、自分が休むと仕事が滞ると思い込んでしまう人、将来のキャリアにマイナスの影響が出ると考えてしまう人もいるようです。

男性の育休は、何日まで取れる?

画像: 画像:iStock/Kwangmoozaa

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男性が育休を取得できる期間は、女性と異なります。両親ともに育休を取得した場合、休業期間が1年から1年2カ月に延長されるパパ・ママ育休プラスや、通常の育休とは別に最長4週間の育休が取れる産後パパ育休といった制度により、取得開始日や期間の制限が変わるためです。

ここでは、男性の育休取得期間の平均を解説しつつ、制度によって取得期間がどれくらいかを見ていきます。

【関連記事】男性の育休の具体的な期間について、詳しくはコチラ

男性の育休取得期間の平均はどれくらい?

厚生労働省の調査によれば、男性の育休平均取得日数は約41日でした。一方で、育休取得率100%の企業や団体でも、取得日数には数日〜約150日とばらつきがあります。取得率に比例して取得日数も増えるとは限らないようです3)

取得率と取得日数には相関性がないことから、取得日数は人によって差があるといえるでしょう

【パパ・ママ育休プラスの取得期間】子どもが1歳2カ月に達するまで

パパ・ママ育休プラスを取得すれば、子どもが1歳2カ月になるまでの間育休が取得可能です。通常、育休期間は1年間ですが、パパ・ママ育休プラスを取得すると、子どもが1歳2カ月に達するまで育休を延長できます(ただし、夫婦それぞれの取得可能な期間は1年間ずつです)。

〈図〉パパ・ママ育休プラスの取得例

画像: 【パパ・ママ育休プラスの取得期間】子どもが1歳2カ月に達するまで

パパ・ママ育休プラスでは、夫婦で一緒に育休を取得するだけでなく、妻の仕事復帰のタイミングで夫が取得するなど、タイミングをずらすこともできます。夫、妻のどちらかが確実に1年2カ月取得できるため、通常よりも長い育休を取得したい人はぜひ活用しましょう。

【産後パパ育休(出生時育児休業)の取得期間】出生後8週間以内で最長4週間まで

産後パパ育休(出生時育児休業)は2022年10月に施行された新しい制度です。子どもの出生後8週間、これまでパパ休暇として育休の一部で取得していた休業を、育休と別枠で取得できます。期間内であれば最長4週間、2回に分割して取得することができ、これに併せて出生後8週間後の育休についても最長1年間を、2回に分割して取得できるようになりました。

〈図〉産後パパ育休の取得例4)

画像: 【産後パパ育休(出生時育児休業)の取得期間】出生後8週間以内で最長4週間まで

なお、2022年9月まであったパパ休暇制度は産後パパ育休の施行に伴い、廃止されました。

【関連記事】パパ・ママ育休プラスの具体例や産後パパ育休など、男性の育休取得期間について詳しくはコチラ

男性の育休取得期間は延長できる?

男性の育休は、一定の要件を満たした場合に延長できます。延長は「子どもが1歳6カ月になるまで2歳になるまでの2回まで可能で、「子どもが1歳となる育児休業終了予定日に保育所に入所できない場合」といった一定の要件を満たす必要があります。また、1歳6カ月の時点で保育所などに入れないなど一定の要件を満たす場合は、2歳になるまでの再延長が可能です。延長期間中であっても、育児休業給付金や社会保険料の免除は適用されます。

なお、上記とは別に前述したパパ・ママ育休プラスを活用すれば、期間を1年から1年2カ月まで延長できます。延長できるのは夫と妻のどちらか1人です。

【関連記事】「育児休業の延長」の条件や手続きは?詳しい解説はコチラ

男性の育休の開始時期のおすすめは?

男性の育休開始は以下の2つのタイミングがあります。

・妻の退院直後
・出産予定日

スムーズに育休を取得したいのであれば、妻の退院直後の取得がおすすめです。期間としては、少なくとも1カ月以上取るといいでしょう。

理由は、女性の産後うつの防止のためです。女性は産後、ホルモンバランスが崩れます。さらには3時間ごとの授乳など24時間慣れない育児に対応しなければならない責任が重なり、うつになりやすいといわれています。発症時期は個人差がありますが、出産から2週間後をピークにしたおよそ1カ月の期間が、リスクが高いといわれています5)

出産後に夫婦で助け合いながら育児に取り組むことは、女性の産後うつを予防することにもつながるのです。

もしくは、出産予定日からにするのがいいでしょう。男性が育休を取得できるのは、女性の出産予定日以降です。そのため、出産予定日に育休を開始するのが取得のタイミングとしては最短といえます。妻が退院するまでの間に家族が安心して過ごせる環境をつくりたい人は出産予定日から育休を取得しましょう。

ただし、帝王切開で日取りが決まっているなどの場合を除き、子どもはいつ生まれるかはわかりません。そのため、勤務先には事前に申告が必要となります。予定日と実際の出産日はずれることも多いですが、育児休業の開始日は勤務先と相談して変更できるので、繰り上げ・繰り下げ申請で対応可能です。

なお、子どもが出産予定日より早く生まれた場合の繰り上げと、出産予定日より遅く生まれた場合の繰り下げは変更の手続きが異なります。以下の記事で詳しく解説しているので、気になる人は確認してみてください。

【関連記事】男性の育休開始時期は変更できる?繰り上げ・繰り下げの手続きについて、詳しくはコチラ

【取得者側、企業側別】男性が育休を取得するメリットとは?

男性の育休取得は、取得者本人と就業する企業との両方にメリットがあります。取得者側と企業側それぞれの立場で、男性が育休を取得するメリットをご紹介します。

【取得者側】男性の育児休業取得のメリット

男性の育休取得や育児参加は、夫婦の関係性や互いのキャリアに好影響を与えます。メリットを1つずつ解説します。

①妻が産後うつになる可能性を軽減できる

夫が育休を取得すると、妻の産後うつ発症の可能性を軽減できます。夫と妻が互いに育児へ参加することで、妻へかかる負担を減らして良好な関係を保てるからです。

国立成育医療研究センターの調査によれば、産後1年未満に亡くなった女性の死亡原因357例のうち、約3割の102例が自殺との結果が出ました6)。また、「妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究」によれば、産後2週間程度の時期が産後うつのピークとなり、その後産後3カ月付近にかけて発症率が下がっていくようです7)

産後うつは10人に1人が発症するといわれており、決して他人事ではありません。夫が育児に協力することで必ず発症を防げるわけではないですが、産後すぐに育休を取得して妻の負担を和らげられれば、夫婦ともに安定したメンタルで育児ができるでしょう。

②妻のキャリアロス期間を短縮できる

夫が育児に参加することによって、妻の負担が減ります。その分、妻は復職を早めることができるなど、育児によるキャリアロス期間を短縮できるでしょう。共働きを継続したい夫婦にとって、夫の育休は妻のキャリア形成に効果的です。また、男性が育児休業を長く取る組織ほど帰属意識や仕事の意欲が高まるというデータも示されています2)

キャリア形成や仕事のモチベーション維持の面でも、男性の育休取得は夫婦双方にメリットをもたらすのです。

【企業側】男性の育児休業取得のメリット

画像: 画像:iStock.com/bee32

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育休取得に悩む男性の中には「育休を取得したら会社に迷惑をかける」「自分の育休取得を職場は受け入れてくれるだろうか」と考えている人もいるでしょう。しかし、育休取得は企業にもメリットがあります。深く考えすぎずに取得の意思を申し出てみるといいでしょう。

ここでは企業側のメリットをご紹介します。知っているだけで、自身が育休取得を会社に申請する際にも相談・説得しやすくなるでしょう。

①助成金による金銭的な援助を受けられる

従業員が育児休業を取得することで、企業が助成金を受けられるケースがあります。男性の育休取得促進を目的とした「2023年度両立支援等助成金」の「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」です。

「出生時両立支援コース」は、男性従業員が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、育児休業や育児目的休暇を取得した男性従業員が生じた事業主に支給されます。

〈表〉出生時両立支援コースの受給額8)

第1種育児休業取得20万円※1回限り
代替要員加算20万円(3人以上45万円)
育児休業等に関する情報公表加算2万円
第2種育児休業取得率の30%以上上昇等
1年以内達成:60万円
2年以内達成:40万円
3年以内達成:20万円
※1回限り
※厚生労働省「2023年度両立支援等助成金のご案内」より引用

育児休業に関する情報の公表で2万円が加算されるため、育休取得実績を公表すれば福利厚生や人事の面で好影響をもたらせます。過去に取得している人がいるという事例がわかるだけでも、自身の育休取得の後押しとなるでしょう。

②認定制度によるイメージアップが期待できる

男性の育休取得を推進することで、企業のイメージアップが期待できます。

子育てサポート企業の証である「くるみん」のほか、「イクメン企業アワード」など、国や地方公共団体の認定制度の取得や表彰へ応募することで、自身の勤める企業の評価が高まります。

企業にとっても労働環境の整備は必須です。実際、男子学生の5割以上が「育児休業を取って積極的に子育てしたい」と考えているようです9)。ワークライフバランスの維持を考慮している男子学生は多く、女子学生も自分が働き続けることを前提に将来を考えています。

助成金の活用実績があれば新卒だけでなく第二新卒や優秀な人材に対しても採用時にアピールできます。採用や育成、離職防止の面でもメリットが大きいのです。

コラム「企業の取り組みと育休取得事例」

育休を取得した男性社員の事例を見てみましょう。とある建設系企業の男性社員が初の育休を取ったケースをご紹介します。

彼は家庭の事情があり、物理的に育児休業を取らざるを得ない状態でした。第一子の誕生後から子育てのために看護休暇は取っていましたが、第二子が生まれることとなり、本格的に育児をサポートする必要が出てきたのです。

同社は8割が男性という企業で、なかなか男性が育休取得を申請しにくい社風でした。

ところが、男性は会社側の働きかけにより4週間の育休を取得できました。経営者としては、官公庁が公募する入札案件に参加したいという背景があり、その加点対象となる「くるみん」の認定を受けたいと考えていました。こうして会社側から働きかけたことで、男性社員は育休を取得できたのです。

この男性の育休は、会社にも好影響をもたらしました。男性が育児休業に入るため、彼が受け持つ現場だけでなく、関係各所との連携が進みました。結果、別現場との連携が生まれ、作業工程が可視化されたのです。男性の育休復帰後の働き方も改善され、会社の生産性向上にもつながったそうです。

育休中の給付金は? 給与の何%がもらえて、社会保険料はどうなる?

画像: 画像:iStock.com/bankrx

画像:iStock.com/bankrx

育休の期間中の給与はどうなるのか、お金の不安を抱く人も少なくないでしょう。給付金や社会保険料など、お金まわりの制度についてご紹介します。

【関連記事】男性の育休中の給与はどうなるのか、詳しくはコチラ

育児休業給付金は2段階の金額設定

育児休業中は就業規則上、無給としている企業が多いです。しかし、雇用保険に加入しており一定の要件を満たしていれば、育児休業給付金が雇用保険から支給されます

額面は、最初の6カ月は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」、それ以降は50%となっています。

〈図〉育児休業給付金の給付率

画像: 育児休業給付金は2段階の金額設定

ただし、賃金月額には上限があります。毎年8月1日に見直されるため支給額は勤務先の労務担当者かハローワークに相談して確認しましょう(2024年7月31日までの支給上限額:支給率67%の場合は31万143円、支給率50%の場合は23万1,450円)10)

なお、育児休業給付金の申請方法や金額などについては、以下の記事で解説しています。興味のある人は確認してみてください。

【関連記事】育児休業給付金の申請方法や申請のタイミングなど、詳しくはコチラ
【関連記事】育児休業給付金など「育休・産休中に支給されるお金」とは? 詳しい解説はコチラ

社会保険料の免除も合わせれば、給与の約80%がカバーされる

育休中は、厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が免除される制度があります。これらの保険料の負担額は所属している健康保険組合によって異なりますが、月収の14%ほどです。

また、育児休業給付金は非課税なので、育休中に無給となった分に応じて所得税と住民税(次年度分)の負担が軽くなります

育児休業給付金は、最初の6カ月は休業開始前の給与の67%が支給されると前述しましたが、負担減額分と合わせると、育休中は休業前の手取り月収の実質80%ほどがカバーされることになるのです。

【関連記事】パパ育休の抜け道とは? 社会保険料が免除される条件について、詳しくはコチラ

【2022年4月施行】男性の育休取得義務化と法改正の内容

2022年4月に改正、施行された育児・介護休業法により、以前よりも男性の育休が取得しやすくなりました。改正の大きなポイントは、以下の3つです。

①産後パパ育休(出生時育児休業)の創設、育休の分割取得

1つめは、前述した「産後パパ育休」の創設と、育休分割取得です。こちらは2022年10月1日から施行されています。

産後パパ育休では、子どもの出生後8週間以内に最長で4週間の休業を2回に分割して取得することができます。育休についてもこれまで原則分割不可でしたが、2回に分割できるようになりました。各項目の変更点は以下の表のとおりです。

〈表〉産後パパ育休と育休制度について

産後パパ育休(育休とは別に取得可能)育休制度(変更前)育休制度(変更後)
対象期間取得可能日数子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能原則子どもが1歳(最長2歳)まで原則子どもが1歳(最長2歳)まで
申出期限原則休業の2週間前まで(※1)原則1カ月前まで原則1カ月前まで
分割取得分割して2回取得可能(初めにまとめて申し出ることが必要)原則分割不可分割して2回取得可能(取得の際にそれぞれ申出)
休業中の就業労使協定を締結している場合に限り、
労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能
原則就業不可原則就業不可
1歳以降の延長-育休開始日は1歳、1歳6カ月時点に限定育休開始日を柔軟化
1歳以降の再取得-再取得不可特別な事情がある場合に限り再取得可能(※2)
※1:雇用環境の整備などについて、法律に義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1カ月前までとすることができます。
※2:1歳以降の育児休業が、ほかの子どもについての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業または新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、
産休等の対象だった子等が死亡等した時は、再度育児休業を取得できます。

②育休を取得しやすい雇用環境の整備、意向確認の義務化

2つめは、企業側に求められる育休関連の環境の整備です。具体的には、育休や産後パパ育休に関する研修の実施や、相談窓口の設置などが挙げられます。

また、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た従業員に対して、育休制度に関する詳しい説明と、育休取得意向の確認を個別に行わなければいけません。

こちらは企業の規模にかかわらず義務対象となるため、中小企業であっても必ず行わなければなりません。もし怠ってしまうと、都道府県労働局による指導勧告を受ける可能性もあります。

③従業員1,000人超の企業における育休取得状況の公表の義務化

3つめは、従業員が1,000人以上いる企業に対する育休取得状況の公表の義務化です。取得状況は年1回必ず公表する必要があります。公表内容は「男性の育休等取得率」または「男性の育休等と育児目的休暇の取得率」です4)

インターネットなど、誰でも閲覧できる方法で公表する必要があるため、たとえば転職や就職の際に参考にすることも可能です。

そのほかの育休関連政策

2022年の法改正以外にも、育休関連の政策は様々なかたちで動いています。2023年6月には、今後3年間のうちに「育児休業給付金」を、賃金の67%から最大80%へ引き上げることを閣議決定しました。また、2021年には改正育児・介護休業法で、子どもの看護休暇が時間単位で取得できるようになりました11)

もしこの先給付が80%に引き上げられれば、社会保険料の免除などと組み合わせることで、月収のほぼ100%近くをまかなえるようになります。制度的には育児をしながらの仕事がしやすくなってきていて、徐々に社会全体の理解も深まっていくでしょう。

世界では、北欧地域で福祉が充実しているとたびたび話題に挙がります。これらの国は男性の育休取得率は日本よりはるかに高いのですが、制度面の影響が大きいでしょう。

たとえばノルウェーは世界で初めて男性の育児休業促進のために、休業期間にパパ・ママ・クオータ制を取り入れました。パパ・クオータとは男性だけに割り当てられた育児休業期間のことで、男性が育休を取得しなければ、期間も短くなり、受給できるはずの給付金の権利が消滅するしくみになっています。

一方で、日本は確かに男性の育児休業取得率は低いものの、2019年にユニセフが発表した「先進国における家族にやさしい政策ランキング」では、男性の育児休業制度の充実は世界1位とされました12)。男女ともに1年間同時に育休を取れる国はほかにありません。

世界でも類を見ないスピードで少子高齢化が進む日本ですが、今後は育児休業取得が義務化されるなど、より思い切った制度が創設されるかもしれません。内閣府がまとめた報告書「選択する未来2.0」では、「男性が全員取得する環境を目指す」ことが提案されています13)

男性の育休に関するよくある質問

Q1.男性の育休が10割になるのはいつから?

政府は男性の育休取得率について、2025年までに50%、2030年までに85%を目指すとしています3)。もし順調に目標を達成できれば、数十年後にはすべての男性社員が育休を取れるよう、労働環境が整備されているかもしれません。

ただし、現状では50%を下回る取得率のため、実現には多くの課題をクリアする必要があるでしょう。

Q2.育児休業給付金の80% 引き上げはいつから?

政府は2023年6月、今後3年間のうちに「育児休業給付金」を賃金の67%から最大80%へ引き上げることを閣議決定しました。明確な引き上げタイミングは未定ですが、今後3年のうちに引き上げが正式決定されると見込んでおきましょう。

Q3.育休中は働いていいの?

厚生労働省では、育児休業は労務提供義務を消滅させる制度であるため、原則就労することはできないとされています。クラウドソーシングや短期バイトなど、育休期間を使った短時間業務も認められていません。

しかし産後パパ育休を利用する場合は、休業中も限られた範囲で就業することが認められています。また、子どもの養育のために働き方を柔軟にしたいと考えるのであれば、3歳未満の子どもを持つ従業員が対象となる短時間勤務制度を利用するのも1つの手です。

男性の育休取得が家庭づくりのカギとなる

画像: 画像:iStock.com/Yagi-Studio

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長い人生、夫が育児参加するかどうかで家族の在り方は変わってきます。夫婦は世界で最小単位の組織と言っても過言ではありません。上手にチームビルディングして、家族という組織をよりよくしていくことが、現代の核家族には求められているのです。

育児のメリットには、仕事以外の人間関係ができることも挙げられます。それが結果的に人間としての幅を広げ、仕事にも生かされます。ぜひ本稿を参考にして制度を上手に活用し、よりよい家族関係を築いてください。

【関連記事】出産・育児をきっかけに夫婦で話し合いたいこととは? 詳しくはコチラ

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