この記事では、ファイナンシャルプランナーの原絢子さん監修のもと、2026年10月から始まる育児期間中の国民年金保険料免除制度も含め、個人事業主やフリーランスが出産・育児期間を安心して過ごすために活用できる支援制度をわかりやすく紹介します。
この記事の監修者
原 絢子(はら あやこ)
FPサテライト株式会社 所属FP。大学卒業後、翻訳・編集業務に従事。金融とは無縁のキャリアを積んできたが、結婚・出産を機にお金の知識を身につけることの大切さを実感。以来、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。自分の人生を自分でコントロールするためには、お金について学ぶことが必要との思いから、執筆・監修、セミナー講師などを通して、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。
個人事業主が利用できる主な支援制度

画像:iStock.com/CG Tan
個人事業主やフリーランスは、会社員であれば受けられる育児休業制度(育休)や育児休業給付金の対象外です。しかし、出産や育児の負担を軽減するために活用できる支援制度はいくつかあります。
こうした制度をまとめると、以下のとおりです。
〈表〉個人事業主が利用できる主な支援制度
| 制度 | 支援内容 | 支給対象 |
|---|---|---|
| 妊婦健康診査費用の助成 | 妊娠から出産前までの健診費用の助成 | 妊娠届を提出した妊婦 |
| 妊婦のための支援給付 | 妊娠時:5万円 出産後:5万円×胎児の数 ※相談支援と一体的に実施 | 妊娠届を提出して、「妊婦給付認定」を受けた人 ※流産・死産等の場合も対象 |
| 国民年金保険料の産前産後期間の免除 | 出産前後4カ月分の国民年金保険料を免除 | 国民年金第1号被保険者で、妊娠85日以降に出産した人 ※流産・死産等の場合も対象 |
| 国民健康保険料の産前産後期間の免除 | 出産前後4カ月分の国民健康保険料を免除 | 国民健康保険の加入者で、妊娠85日以降に出産した人 ※流産・死産等の場合も対象 |
| 出産育児一時金 | 原則50万円 | 公的医療保険の加入者で、妊娠85日以降に出産した人 ※流産・死産等の場合も対象 |
| 児童手当 | 月額1万5,000円または1万円×子どもの数 | 18歳までの子どもを養育している人 |
| 児童扶養手当 | ひとり親家庭に支給 | 18歳までの子どもを養育しているひとり親 |
| 子ども医療費助成 | 子どもの医療費負担を軽減 | 助成対象の子どもの年齢条件は自治体によって異なる |
妊婦健康診査費用の助成
妊婦健康診査(妊婦健診)は公的医療保険の対象外のため、基本的に費用は全額自己負担となります。ただし、妊娠届を自治体へ提出すると、健診に利用できる受診券や補助券が交付され、費用の一部が公費でまかなわれます。
助成の回数や金額は自治体によって異なりますが、どの自治体でも14回以上の健診が助成対象となっており、妊婦1人あたりの平均的な助成額は約11万円です1)。
さらに自治体によっては、追加の助成制度があったり、多胎妊娠の場合に支援が上乗せされたりすることもあります。
妊婦のための支援給付
2025年4月から、こども家庭庁が「妊婦のための支援給付」をスタートしました。安心して子どもを産み育てられるようにと設立された制度で、妊娠中や産後の不安に寄り添う伴走型の相談支援と併せて実施されます2)。
給付金は妊娠時と出産後の2回に分けて支給され、それぞれ5万円ずつ受け取ることができます。基本的には現金での給付ですが、自治体によってはクーポンなどを選択できる場合もあります。
さらに、この制度に加えて、独自の給付金を支給したり、育児用品をプレゼントしたりしている自治体もあります。
国民年金保険料の産前産後期間の免除
個人事業主やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者は、出産(予定)月の前月から4カ月間(多胎妊娠の場合は出産月の3カ月前から6カ月間)、国民年金保険料が免除されます3)。
この免除期間も保険料を納付したものとして扱われるため、将来受け取る年金額に反映されるというメリットがあります。
また、2026年10月からは、育児期間(子どもが1歳になるまで)の保険料も免除される新たな制度が始まります4)。詳細については後述します。
国民健康保険料の産前産後期間の免除
国民健康保険に加入している人は、出産(予定)月の前月から4カ月間(多胎妊娠の場合は出産月の3カ月前から6カ月間)、国民健康保険料が免除されます5)。
国民健康保険料は「所得割」「均等割」「資産割」「平等割」の4つで構成されていますが、免除の対象となるのは、所得割額と均等割額です。「資産割」や「平等割」が導入されている自治体では、それらの分については免除されないため、全額免除にならないケースもあります。
また、国民健康保険料には上限額が設けられているため、所得が高く上限額に達している世帯では、免除期間であっても保険料が変わらない場合があります。
国民健康保険料は各自治体によって異なるため、免除額などの詳しい内容はお住まいの市区町村役場に確認しましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産にかかる費用の負担を軽減するために、公的医療保険から支給される給付金です6)。
妊娠85日(約4カ月)を過ぎて出産した場合、原則として子ども1人につき50万円が支給されます。正常分娩は保険適用外で全額自己負担となるため、この給付金が大きな支えとなります。
多くの医療機関では、出産育児一時金が医療機関へ直接支給される「直接支払制度」を利用でき、出産費用を窓口で全額支払う必要がありません。出産費用が50万円を超えた場合は差額のみの支払いとなり、逆に少なかった場合は後日差額分が振り込まれます。
なお、2025年12月時点では、厚生労働省が出産費用の無償化に向けて、病院ごとに異なる分娩費用を全国一律の公定価格にする案を検討しています7)。これが実現した場合、公的医療保険で出産費用を全額まかない、代わりに出産育児一時金は廃止される方向です。制度は今後調整が続くため、最新の動向を確認するようにしましょう。
児童手当
児童手当は、子どもの健やかな成長と子育て家庭の生活の安定を目的として支給される制度です8)。
2024年10月から制度が大きく変わり、支給対象年齢が高校生年代まで拡大されたほか、保護者の所得制限も撤廃され、より多くの家庭が受給できるようになりました。
〈表〉児童手当の支給額(月額)
| 子どもの年齢 | 支給額 |
|---|---|
| 3歳未満 | 1万5,000円(第3子以降は3万円) |
| 3歳以上18歳まで(※) | 1万円(第3子以降は3万円) |
参考資料
児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭の生活を支えるための制度です9)。前年の所得に応じて、手当の全額を支給する「全部支給」と、一部のみを支給する「一部支給」があります。
〈表〉児童扶養手当の支給額(月額)(2025年4月から)
| 子どもの数 | 全部支給 | 一部支給 |
|---|---|---|
| 1人 | 4万6,690円 | 1万1,010円~4万6,680円 |
| 2人目以降の加算額 | 1万1,030円 | 5,520円~1万1,020円 |
また2024年11月から制度が改正され、所得限度額が引き上げられました。たとえば子ども1人の場合、「全部支給」になる目安額は、給与収入ベースで160万円から190万円へと引き上げられています10)。
子ども医療費助成
子ども医療費助成は、0歳から一定の年齢までの子どもの医療費負担を軽減する制度で、各自治体が独自に運用しています。そのため、対象となる子どもの年齢や助成内容は自治体によって異なります。
近年は多くの自治体で対象年齢の引き上げが進んでいるほか(「中学生まで」または「高校生まで」としている自治体が多い11))、保護者の所得制限が撤廃されるケースも増えています。こうした制度の拡充により、子どもの医療費負担は年々軽減されてきています。
【新制度】国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置(2026年10月開始)

画像:iStock.com/Seiya Tabuchi
2026年10月から、個人事業主やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者を対象に、育児期間(子どもが1歳になるまで)の国民年金保険料が免除される制度が始まります4)。
会社員には育児休業中の厚生年金保険料免除制度がありますが、第1号被保険者には同様のしくみがなく、育児期の経済的負担が重いと指摘されていました。こうした指摘を受け、第1号被保険者を支えるために創設された制度です。
支援対象となるのは、子どもを養育している第1号被保険者本人です(※)。出産した実母だけでなく、実父や、養子を育てる養父母など、父母いずれの場合でも、該当する本人の保険料が免除されます。また、所得要件や休業要件はありません。
※:両親がともに第1号被保険者で育児に携わる場合は、それぞれの「本人分」の保険料が免除されます。
〈図〉対象となる免除期間

免除期間は、産前産後の免除期間と同様に、保険料を納付したものとして扱われ、将来の年金額に反映されます。つまり、免除を受けても将来の年金が減ることはなく、個人事業主やフリーランスが安心して子育てできる環境づくりを後押しする制度です。
手続き・申請の流れ|出産から育児までのスケジュール
これまで紹介してきた出産・育児支援制度は、すべて自分で申請する必要があります。
会社員であれば、会社が代わりに申請してくれたり、手続きを促してくれたりする場合があります。しかし、個人事業主やフリーランスは、すべて自分で行わなければなりません。
そのため、「いつ・どの制度を申請すればよいか」を事前に確認しておくことが大切です。申請先はいずれも、お住まいの自治体の担当窓口になります。
〈図〉各支援制度の申請スケジュール

制度を知って安心して育児期間を迎えよう
会社員に比べるとまだ手薄ですが、近年は、個人事業主やフリーランスを対象とした出産・育児支援制度も徐々に整備されてきています。特に、2026年10月から始まる育児期間中の国民年金保険料免除制度は、大きな支えとなるでしょう。
利用できる制度を整理し、必要な手続きを事前に確認することで、安心して出産・育児を迎えることができます。自分の働き方や家庭の状況に合わせて、支援制度をしっかり確認しておきましょう。
加えて、出産後の生活や将来の教育資金に備える方法として、保険を活用した資金準備も併せて検討すると、より安心感が高まります。








