この記事では、ファイナンシャルプランナーの辻田陽子さん監修のもと、転職や退職のタイミングなど、健康保険の切り替え時にマイナンバーカードの保険証で必要な手続きや注意点について解説します。
※本記事は2024年10月30日時点の情報をもとに執筆しています。
※この記事は、2023年12月14日に公開した内容を最新情報に更新しています。
この記事の監修者
辻田 陽子(つじた ようこ)
FPサテライト株式会社所属、ファイナンシャルプランナー。税理士事務所、金融機関での経験を経て、「好きな時に好きなことをする」ため房総半島へ移住。現在は地方で移住相談や空き家活用に取り組みながら、ファイナンシャルプランナーとして活動中。
転職・退職にともなうマイナンバーカードの保険証の変更手続きは不要?
マイナンバーカードと健康保険証の紐付けが完了している場合は、転職・退職にともなう再度の登録や変更手続きは不要です1)。ただし、新しく加入する医療保険者(健康保険組合や国民健康保険など)への加入の届出は従来どおり手続きが必要であるため注意しましょう。
以下で詳しく説明していきます。
マイナンバーカードの保険証の手続きがいらない理由
会社員が転職や退職をした場合、在籍時に加入していた健康保険を脱退する必要があります。健康保険は原則全員が加入しなければならないため、転職した場合は転職先の会社で加入します。また、会社に就職しない場合は前職の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に加入することになります。
通常、転職などにより公的医療保険の資格変更があった場合には、転職先の医療保険者が資格取得届の提出を受けて、新たな資格情報をオンライン資格確認等システムへ登録することで、手続きが行われます2)。
この情報は自動的に反映されるため、マイナンバーカードの保険証の登録や変更手続きは必要ありません。
ただし、マイナンバーカードの有効期限やマイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れている場合は健康保険証として使えませんので、有効期限が切れる前に更新手続きをしなければいけません。
健康保険の切り替え手続きは必須
ここで注意したいのは、マイナンバーカード の保険証の手続きは不要でも、健康保険の切り替え手続きは自身で行う必要があるということです。
転職先が決まっている場合、新しい健康保険の加入手続きは転職先の会社が行うため、切り替え期間などを確認しておきましょう。なお、すぐに就職しない人は退職した会社で任意継続の手続きをするか、お住まいの市区町村の窓口で国民健康保険へ加入の手続きをする必要があります。
健康保険の切り替えをしていない場合は医療費が全額負担になる
退職後、つぎの就職までの期間が長い場合は、健康保険に加入していない空白期間が発生します。健康保険に加入していない状態で医療機関を受診すると、原則3割負担の医療費を全額自己負担しなければなりません。
さらに、国民健康保険に未加入の場合は、前職を退職した日の翌日までさかのぼり、最長2年分の保険料を徴収されます。退職後にすぐ就職をしない場合は、退職前の会社で任意継続の手続きをするか国民健康保険へ加入するなど、無保険期間ができないように気をつけましょう。国民健康保険の支払いが難しい場合は、お住まいの市区町村の窓口に連絡をしましょう。保険料の軽減などができる可能性があります。
転職時の空白期間、マイナンバーカードの保険証でも発生する?
前述したように、健康保険の切り替え時には、脱退から再加入までの間に空白期間と呼ばれる無保険期間が発生します。マイナンバーカードの保険証の場合も、空白期間は発生するのでしょうか。
以下で詳しく解説していきます。
健康保険に加入していない場合、空白期間は発生する
繰り返しになりますが、マイナンバーカードの保険証の変更や登録手続きは不要です。しかし、健康保険の切り替えは自身もしくは転職先の会社が行う必要があります。そのため、健康保険の切り替えをせずに加入していない状態であれば、従来の健康保険証と同様にマイナンバーカードの保険証でも空白期間が発生します。
空白期間を発生させたくない人は、退職前の会社で任意継続の手続きをするか国民健康保険へ加入するなどを検討しましょう。
2024年12月2日以降、転職先では健康保険証の新規発行はされない
マイナンバーカードの保険証への移行にともない、従来の健康保険証は2024年12月2日をもって廃止となり、新規発行や再発行が終了しました3)。これにより、転職先で新しい健康保険証は発行されなくなりました3)。そのため、マイナンバーカードと保険証を紐付けている人は、今後マイナンバーカードの保険証を利用して受診することになります。
なお、マイナンバーカードは、持っているだけでは保険証として利用できません。健康保険証として使うためには、マイナンバーカードと健康保険証の紐付け登録手続きを自身で行う必要があります。
参考資料
マイナンバーカードと保険証を紐付ける方法
マイナンバーカードと保険証を紐付ける手続きは、スマートフォンやパソコン、コンビニエンスストアで行う方法の3つがあります。ここでは、スマートフォンを使った紐付ける方法を紹介しますので、参考にしてみてください。
【スマートフォンでマイナンバーカードと保険証を紐付ける手順】4)
①スマートフォンに「マイナポータルアプリ」をインストールする
②アプリを起動後、「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」の画面から「利用を申し込む」をタップし、申し込みページを開く
③「マイナポータル利用規約」を確認し、「同意して次へ進む」をタップ
④「保険証等利用登録」の画面で「申し込む」をタップ
⑤数字4桁の暗証番号を入力し、スマートフォンでマイナンバーカードを読み込む
⑥申込完了
医療機関や薬局の窓口に設置されている顔認証付きカードリーダーでも手続きが可能ですが、スムーズな受診のためにも、あらかじめ紐付けておくことをおすすめします。
マイナンバーカードを持っていない人は「資格確認書」の発行が必要
一方、マイナンバーカードを取得していない人や、マイナンバーカードを健康保険証と紐付けていない人、今後するつもりがないという人については、「資格確認書」を医療機関へ提示することで、従来どおり保険診療を受けることが可能です3)。
2024年12月2日以降に転職する人は、転職先の会社を経由して「資格確認書」の発行手続きを行います。国民健康保険に加入する人は、市区町村で加入の手続きをすることで「資格確認書」が発行されます5)。
【関連記事】マイナンバーカードと保険証の紐付け方や資格確認書などについて、詳細はコチラ
そもそもマイナンバーカードの保険証(マイナ保険証)とは?
マイナンバーカードの保険証は、マイナンバーカードの機能のひとつで、2021年10月から本格運用がスタートしました。「マイナ保険証」とも呼ばれています。政府はマイナンバーカードを普及させる取り組みとして、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を推進しています。これにより、国民の利便性向上と医療サービスの品質向上を目指すとのことです。
マイナンバーカードの保険証を利用するには、マイナンバーカードと健康保険証を紐付ける必要があります。2024年10月30日現在、マイナンバーカードと健康保険証の紐付け数は7,627万2,065件で、保有枚数に占める割合は8割を超えています6)。なお、マイナンバーカードの取得と同様、マイナンバーカードと保険証を紐付けるかどうかはあくまでも任意です。この方針は、従来の健康保険証の廃止後も変わりません。
マイナンバーカードの保険証の詳しい情報や紐付け方は、以下の記事で解説しています。気になる人は併せてご覧ください。
【関連記事】マイナンバーカードの保険証について、詳細はコチラ
転職・退職前にマイナンバーカードと保険証を紐付けることのメリット
転職・退職前にマイナンバーカードと保険証を紐付けるメリットについて説明します。
健康保険を切り替えれば健康保険証としてすぐに使える
前述したように、2024年12月2日以降、健康保険証の新規発行はされなくなりました。
マイナンバーカードと保険証を紐付けていない場合は、転職や退職したあとに、前述した「資格確認書」の発行が必要となります。資格確認書が手元に届くまでに医療機関を受診する場合は、一時的に全額を自己負担しなければなりません。
しかし、マイナンバーカードの保険証の場合は、新しい健康保険への加入手続きが済んでいればすぐに利用することができるため、一時的な全額負担をする必要がなくなります。
今後、転職や退職を予定している人は、マイナンバーカードと保険証を紐付けておくと、健康保険を切り替えたあとも面倒な手続きをすることなく保険証を利用することができます。
【コラム】転職後、マイナンバーカードの保険証の情報が反映されない
健康保険の変更手続きをしたにもかかわらず、新しい健康保険の情報が反映されていない、などのトラブルも起こっているようです2)。
情報が反映されていない理由として以下の2点が考えられます。
①現在加入中の医療保険者(健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合など)において、マイナンバーに紐付く資格情報の登録が完了していない
②旧医療保険者において、マイナンバーに紐付く資格情報について喪失処理が完了していない
この場合の対処法としては、旧医療保険者もしくは現在加入中の医療保険者へ問い合わせ、変更手続きの処理が完了しているか確認する必要があります。
旧医療保険者へ確認する際は退職前の会社へ、現在加入している医療保険者へ問い合わせる際は現在の勤務先へ、国民健康保険に加入する人はお住まいの市区町村の窓口へ確認してみましょう。
転職・退職時は、健康保険の変更手続きを忘れずにしましょう
2024年12月2日以降に転職や退職をする場合は、健康保険証の新規発行がされません。メリットやデメリットを把握したうえで、マイナンバーカードの保険証を検討するとよいでしょう。
ただし、健康保険の切り替えについては、従来と同じく自身で手続きをする必要があります。退職後、健康保険の手続きを忘れてしまうと保険に加入していない空白期間ができてしまうので、忘れずに早めに手続きをしましょう。