子どもの歯科治療や家族の入院などで医療費がかさみ、「医療費控除を利用できるかもしれない」と考えたことはありませんか。
医療費控除というと、確定申告によって所得税が戻ってくる制度というイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、じつは、医療費控除を申告すると、所得税だけでなく住民税の負担も軽くなります。

この記事では、医療費控除の概要や計算方法をはじめ、住民税が安くなるしくみ、軽減額の目安、住民税に反映される時期までをわかりやすく解説します。

※:本記事は、2026年6月4日時点の情報に基づいて執筆しています。制度の内容は今後変更される可能性があります。

この記事の監修者

画像: 【シミュレーション】医療費控除で住民税も安くなるって本当?住民税のしくみとともに解説

原 絢子(はら あやこ)

FPサテライト株式会社 所属FP。大学卒業後、翻訳・編集業務に従事。金融とは無縁のキャリアを積んできたが、結婚・出産を機にお金の知識を身につけることの大切さを実感。以来、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。自分の人生を自分でコントロールするためには、お金について学ぶことが必要との思いから、執筆・監修、セミナー講師などを通して、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。

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そもそも医療費控除とは?制度の概要

画像: 画像:iStock.com/koumaru

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まずは、医療費控除の概要について確認しておきましょう。

医療費控除は税負担を軽減する制度

医療費控除は、所得税や住民税を計算する時のもとになる金額(課税所得)を減らすことができる「所得控除」の1つです。

自分や家族のために支払った医療費の合計が年間10万円(所得金額が200万円未満の人は所得の5%)を超えた場合に、確定申告を行うことで、所得税や住民税の負担を軽減できます1)

医療費控除の対象になる費用・ならない費用

医療費控除の対象になるのは、病気やケガの治療のために支出した費用です。病気の予防や健康増進のための費用は対象になりません2)

〈表〉医療費控除の対象になる費用とならない費用

対象になる費用対象にならない費用
・病院に支払う診療費
・治療目的の医薬品購入費
・入院時の食事代(病院で支給されるもの)
・通院のための公共交通機関の費用
・健康診断の費用(治療に至らない場合)
・予防接種やサプリメントの費用
・入院時の差額ベッド代
・通院のための自家用車のガソリン代・駐車場代

自由診療も治療目的であれば医療費控除の対象

公的医療保険が適用されない「自由診療」でも、治療目的であれば医療費控除の対象となります3)4)5)

〈表〉自由診療のうち医療費控除の対象になる費用とならない費用

対象になる費用対象にならない費用
・子どもの歯列矯正
・インプラント治療
・レーシック手術
・無痛分娩
・大人の歯列矯正
(容ぼうを美化するためのもの)
・美容整形
・ホワイトニング
・妊娠中の出生前検査

セルフメディケーション税制との違い

医療費控除に関連して、「セルフメディケーション税制」という制度を耳にしたことがある人もいるかもしれません。

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例として設けられている制度で、特定の市販薬を購入した場合に所得控除を受けられます1)

医療費控除との大きな違いは、対象となる費用と控除の要件です。医療費控除は、病院などでの治療費をはじめ、一定の医療関連費用が幅広く対象となります。一方、セルフメディケーション税制の対象となるのは、ドラッグストアなどで購入できる特定の医薬品(スイッチOTC医薬品)です。これらの購入額が年間1万2,000円を超えた場合に利用できます。

なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。両方の条件を満たす場合は、いずれか1つを選択することになります。

セルフメディケーション税制に関して詳しく知りたい人は、下記の記事も併せてご覧ください。制度の利用条件や注意事項について詳しく解説しています。

【関連記事】セルフメディケーション税制について、詳しくはコチラ

医療費控除を申告すると住民税の負担も軽減される

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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医療費控除というと、確定申告をすることで所得税が戻ってくるというイメージが強いかもしれません。しかし、所得税だけでなく住民税も減らすことができます

医療費控除で住民税が安くなるしくみ

医療費控除は、所得税を計算する時だけでなく、住民税を計算する時にも適用されます。

住民税は、所得に応じて課税される「所得割」と、所得にかかわらず一定額を負担する「均等割」で構成されています。このうち、医療費控除が影響するのは所得割です。

なお、「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額をいいます。会社員の場合は、年収から「給与所得控除」を差し引いた金額が所得となります。

住民税の計算の流れ

住民税は以下のように計算されます6)

〈図〉住民税の計算の流れ

画像: 住民税の計算の流れ

住民税の所得割は、課税所得に税率をかけて計算されます。そのため、医療費控除によって課税所得が減れば、その分、所得割の負担も軽くなります。結果として、住民税が安くなるというわけです。

医療費控除で住民税はいくら安くなる?

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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それでは、医療費控除によって住民税がどのくらい安くなるのか、具体例を用いて見ていきましょう。

医療費控除額の計算方法

まず、医療費控除額(医療費控除の対象となる金額)は、以下の計算式で求めます2)

〈図〉医療費控除額の計算式

画像: 医療費控除額の計算方法

たとえば、所得200万円以上の人が、1年間に医療費50万円を支払い、保険金などで20万円を受け取った場合、医療費控除額はつぎのようになります。

医療費控除額:(50万円-20万円)-10万円=20万円

ただし、この20万円がそのまま税額から差し引かれるわけではなく、これに一定の税率をかけた金額が軽減されます。

住民税は「医療費控除額×10%」が軽減される

住民税の所得割の税率は一律10%です。そのため、住民税の軽減額は、「医療費控除額×10%」で計算します。

たとえば、医療費控除額が20万円の場合は、つぎのようになります。

住民税の軽減額:20万円×10%=2万円

このケースでは、医療費控除を申告することで、住民税が2万円安くなります。

【シミュレーション】医療費控除による住民税の軽減額

住民税の軽減額は、一律10%で計算されるため、所得(年収)に関わらず同じ結果になります。

ご自身のケースをイメージしやすいように、年間医療費の支払額別に3パターンの軽減額の目安を見てみましょう。

〈表〉医療費控除による住民税の軽減額(目安)

年間医療費医療費控除額住民税軽減額
15万円5万円5,000円
30万円20万円2万円
50万円40万円4万円
※:所得200万円以上・保険金受取なしの場合

所得税は所得が多いほど軽減額が大きくなる

所得税は、所得金額が大きいほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。そのため、医療費控除額が同じでも、所得が多い人ほど軽減額は大きくなります

所得500万円の場合と所得300万円の場合で比較してみましょう。医療費控除額は同じく20万円とします。

・所得500万円の場合(所得税率20%)
所得税の軽減額:20万円×20%=4万円

・所得300万円の場合(所得税率10%)
所得税の軽減額:20万円×10%=2万円

このように、所得税は所得に応じて税率が変わるため、所得が多い人ほど医療費控除による節税効果は大きくなります。

医療費控除を申告後、住民税に反映されるのはいつ?

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。医療費控除を申告すると、所得税だけでなく住民税も軽減されますが、それぞれ反映される時期は異なります。

会社員の場合、所得税は年末調整によっていったん確定します。そのあと、確定申告で医療費控除を申告すると、所得税が再計算され、納め過ぎていた所得税が戻ってきます。

一方、住民税は、年末調整や確定申告によって確定した所得をもとに計算され、翌年6月から新しい税額が適用されます。そのため、医療費控除を申告しても、すぐに住民税が軽減されるわけではありません。

医療費控除が所得税・住民税に反映されるまでの流れは以下のとおりになります。

〈図〉医療費控除が所得税・住民税に反映されるまでの流れ

画像: 医療費控除を申告後、住民税に反映されるのはいつ?

医療費控除にまつわるよくある質問

画像: 画像:iStock.com/violet-blue

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パート収入などで所得税がかからない場合、医療費控除を申告する意味はある?

所得税がかかっていない場合、医療費控除を申告しても所得税の還付はありません。ただし、所得税がかかっていなくても、収入額によっては住民税が課税されている場合があります。その場合は、医療費控除により住民税が軽減される可能性があります。

また、自治体によっては、保育料や各種行政サービスの負担額を住民税額にもとづいて決定している場合があります。そのため、医療費控除によって住民税額が下がることで、保育料などの負担軽減につながる可能性もあります。

所得税の還付が受けられない場合でも、収入額や家族構成によってはメリットが生じる可能性があるため、一度確認してみるとよいでしょう。

医療費控除は過去分も申告できる?

医療費控除は、過去5年分までさかのぼって申告することができます7)。これは「還付申告」という手続きで、通常の確定申告とは提出期限が異なります。

通常の確定申告は毎年2月16日から3月15日までの申告期間が設けられていますが、還付申告は対象となる年の翌年1月1日から5年間であれば、いつでも提出可能です。

ただし、5年分まとめて申告できるわけではありません。医療費控除は1年ごとに計算するため、過去分を申告する場合も、それぞれの年ごとに手続きする必要があります。

実際に過去分の医療費控除を検討している人は、以下の記事でより詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

【関連記事】過去分の医療費控除について、詳しくはコチラ

医療費控除を申告する人によって税負担軽減効果に違いはある?

住民税の軽減額は、医療費控除額が同じであれば所得にかかわらず基本的に同じですが、所得税は、所得が多い人ほど軽減額も大きくなります。

また、医療費控除は、自分だけでなく、生計を一にしている家族の医療費もまとめて申告することができます8)

そのため、夫婦共働きの場合は、所得の多い方が医療費控除を申告したほうが、節税効果が高いケースが多いでしょう。ただし、ほかの控除の適用状況などによっても変わるため、世帯全体の税負担を踏まえて検討することが大切です。

保険金や公的給付を受けても医療費控除は受けられるの?

保険金や公的給付を受け取った場合でも、医療費控除を受けることは可能です。

ただし、医療費控除の対象となるのは「実際に自己負担した医療費」です。そのため、健康保険の高額療養費や、民間保険の入院給付金・手術給付金などを受け取った場合は、その金額を差し引いて医療費控除額を計算する必要があります。

つまり、支払った医療費の全額が控除対象になるわけではなく、保険金などで補てんされた金額を除いた実際の自己負担分のみが医療費控除の対象となります。

保険金や公的給付を受け取った場合の注意点やケース別の詳しい計算方法を知りたい人は、下記の記事も併せてご覧ください。

【関連記事】受け取った保険金が支払った医療費より多い場合について、詳しくはコチラ

医療費控除は住民税にも効果あり!1年の出費を振り返り確定申告をしよう

画像: 画像:iStock.com/kazuma seki

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医療費控除は所得税だけでなく、翌年度の住民税の負担軽減にもつながります。家族の医療費も合算できるため、「対象にならないだろう」と思っていても、思った以上に控除額が大きくなることもあります。

医療費控除は、確定申告しなければ受けられない制度です。確定申告の時期になってあわてることがないよう、日頃から医療機関や薬局の領収書、通院時の交通費の記録などをこまめに整理・保管しておきましょう。

なお、e-Taxやマイナポータル連携を利用すると、確定申告の際の手間を軽減できて便利です。マイナンバーカードを活用したオンライン申告の環境を早めに整えておくのもおすすめです。

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