産前・産後の収入がない期間を補填してくれる出産手当金は、申請から約1〜2カ月で申請書に記入した振込先指定口座に振り込まれます。この記事では、ファイナンシャルプランナーの藤井亜也さん監修のもと、出産手当金がいつもらえるのかや、早くもらうためのポイントについてご紹介します。
出産手当金がもらえるのは、申請から1~2カ月後
「出産手当金」とは、会社員として勤務している被保険者が出産に伴い健康保険協会などの保険者からもらえる給付金のことです1)。被保険者のほか、医師・助産師、事業主が申請書を記入します。
出産手当金が振り込まれるタイミングは加入している健康保険により異なりますが、申請から約1〜2カ月の場合が多いです。正確な日程を知りたい場合は、加入している保険者に問い合わせてみてください。
参考資料
出産手当金を申請するタイミングは?
出産手当金を申請する方法は、以下の2つから選ぶことができます2)。
それぞれ詳しく解説します。
①産前・産後分をまとめて申請する場合
出産手当金は、産前・産後の対象期間分をまとめて申請するのが一般的です。ただし、まとめて申請する場合、出産後56日経過後、その月の給与の締め日を過ぎてからしか申請できません3)。これは対象期間に給与の支払い状況を確認する必要があるからです。申請から1〜2カ月程度で入金されるため、実際に出産手当金を受け取るのは出産後3〜4カ月先となります。
②産前・産後分を分割して申請する場合
出産手当金は、産前・産後を複数回に分けて申請することもできます3)。産前・産後を分けて申請する場合、出産後56日目を含む給料の締め日を待つ必要がないため、出産手当金が早くもらえるというメリットがあります。
ただし、申請のたびに会社に依頼し、事業主の証明欄を記載してもらわなければならないので注意しましょう。医師または助産師の証明欄については、出産日が確認できる書類を提出すればその後は省略できます。医師または助産師の証明欄に出産予定日しか記載されていない場合は、最大でも出産予定日までの申請のみしかできません。
2年以内に申請しなければ時効となる
複数回に分けて申請する場合でも未来日については申請ができないため、最終的な申請は出産後に行わなければなりません。しかし、産後は育児で忙しく、後回しにしてしまう可能性があります。ただし、出産手当金には申請期限があり、その期間中に申請しなければ受け取れなくなってしまうので注意しましょう。
申請期限は、出産のために仕事を休みはじめた日の翌日から2年以内です。出産手当金は休業日1日ごとにもらえるため、申請期限も1日ごとに設定されます。確実にもらうためにも、いつまでに申請しなければならないのか、しっかり把握しておきましょう4)。
出産手当金の支給要件
そもそも、出産手当金はどのような人がもらえるのでしょうか。出産手当金の支給要件は、以下のとおりです4)。
- 出産をする本人が健康保険の被保険者であること
- 出産のために休業していること
- 妊娠4カ月(85日)以後の出産であること
前提として出産する本人が健康保険に加入していない場合は、出産手当金をもらえません。そのため、家族の扶養となっている場合は支給対象から外れるため注意しましょう。
また、出産手当金は、原則として出産のために仕事を休んでいて、産休中に会社から賃金の支払いを受けていない人に支給されます。産休中に会社から賃金の支払いがあった場合でも、支払額が産休前の給与より少ない場合は、その差額分を出産手当金としてもらうことができます。
なお、ここでいう「出産」には、妊娠4カ月(85日)以後の出産のほか、流産や死産・人工妊娠中絶なども含まれます。
出産手当金の支給要件やもらえないケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せて確認してみてください。
【関連記事】出産手当金がもらえないケースについて、詳しくはコチラ
参考資料
出産手当金の1日あたりの支給額
出産手当金の1日あたりの支給額は、以下の方法で計算できます5)。
1日あたりの出産手当金 = 支給開始日以前1年間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3
1日あたりの出産手当金は、1年間の標準報酬月額の平均額をもとに計算されます。標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために設定された金額であり、実際の給与額ではありません5)。また、支給開始日とは、一番最初に出産手当金が支給された日を指します。
出産手当金の支給額の計算については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも併せて確認してみてください。
【関連記事】出産手当金はどのように計算すればいい? 詳しくはコチラ
出産手当金の申請方法
出産手当金をもらうために必要な書類や申請の手順を以下のステップで解説します。
STEP①「健康保険出産手当金支給申請書」を用意し記入する
出産手当金の申請には、出産手当金支給申請書という所定の申請書が必要です6)。書式は健康保険協会によって違うことがあるので、専用の申請書を用意しましょう。
参考資料
STEP②出産時にかかる医療機関に記入してもらう
提出する申請書は、医療機関に記入してもらう証明欄があります。里帰り出産などで出産する病院と妊娠中に通院する病院が異なる場合は、出産する病院での記入が必要です。
可能であれば産後の入院中にすべての証明欄を漏れなく、医師または助産師に記入してもらいましょう。退院後でも持参すれば記入してもらえますが、出産時に持参したほうが、手間がかかりません。
STEP③勤務先に申請書を渡して提出してもらう
出産手当金支給申請書の提出先は、加入している健康保険になります。勤務先が記入する欄もあるため、記入後に勤務先が直接手続きをしてくれるケースがほとんどです。
産後にまとめて請求をする場合は、医療機関に記入してもらったら、産休明けに勤務先に申請書を提出しましょう。出産手当金の入金は申請から約1〜2カ月後になるので、早めに提出することをおすすめします。
妊娠・出産をきっかけに退職する場合の申請方法
出産手当金が受け取れるのは、基本的に産休中の人です。しかし、出産を機に退職する場合でも、要件を満たせば出産手当金の支給対象となります7)。
支給対象となるのは、1年以上被保険者であったことに加えて、退職日の時点で出産手当金を受給しているなどの要件を満たした場合のみになります。退職日に勤務していた場合は支給対象外となるので注意しましょう。
出産を機に退職する場合でも、申請の流れは通常と変わりません。ただし、加入している健康保険へ自分で書類を提出しないといけない場合もあるので、勤務先に確認が必要です。
参考資料
出産手当金が早く欲しい場合の2つのポイント
前述したように出産手当金が申請できるのは、産後56日が経過し給与が確定したあとです。さらに、入金には1〜2カ月ほどかかるため、実際に出産手当金を受け取れるのは産後3〜4カ月も先になります。
出産にはなにかとお金がかかることから、早めに受け取りたいと思う人もいるでしょう。できるだけ早く出産手当金をもらうためのポイントは以下の2つです。
それぞれ詳しく解説します。
ポイント①複数回に分けて申請する
出産手当金をできるだけ早くもらいたい場合、複数回に分けて申請しましょう。出産手当金は未来日の申請ができないため、産後56日を経過してからでないとすべての申請はできません。しかし、複数回に分けての申請は可能です。
たとえば、産前・産後に分割して申請すれば、産前の出産手当金は出産から1〜2カ月程度で受け取れます。全額ではなくても無給の期間の補填として、生活費などに充てられるでしょう。ただし、複数回に分ける場合は、毎回申請書の提出が必要なので注意してください。
ポイント②入院時に申請書を持参して医師などに記入してもらう
できるだけ早く出産手当金を受け取りたい場合、入院時に申請書を持参して医師などに記入してもらいましょう。出産手当金の申請書には、医療機関に記入してもらう証明欄が設けられています。
里帰り出産などで自宅から遠くの医療機関で出産した場合などは、入院時に持参していなければ郵送などで時間のロスにつながります。計画出産などでない場合はいつ入院するかわからないので、早めに準備するようにしましょう。
出産手当金の申請の流れを理解して産前から準備しよう
出産で仕事を休業するとなると収入がなくなるため、生活に不安を感じる人もいることでしょう。出産手当金がもらえる時期は加入している健康保険によって異なりますが、申請から1〜2カ月程度の場合がほとんどです。
また、出産後は何かと慌ただしい日々が続きます。出産手当金には申請期限が設けられているため、いつ何を用意すべきなのかなど、事前に確認しておきましょう。