「年金はいつからもらえるの?」
「年金は60歳からもらった方が賢いって本当?」

このように、年金をもらう時期について、悩んでいる人は多いのではないでしょうか。年金の受給は65歳からが基本ですが、繰上げ受給をすると最短で60歳からもらうことが可能です。

今回は、年金を60歳からもらった方が賢いのか、いつからもらえばお得なのかを、ファイナンシャルプランナーの頼藤太希さん監修のもと徹底解説。年金を60歳からもらう場合のメリットやデメリット、受給に関する制度も紹介します。年金の賢いもらい方が理解できるので、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

頼藤太希(よりふじ たいき)

Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『はじめての資産運用』(宝島社)、『1日5分で、お金持ち』(クロスメディア・パブリッシング)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。

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老後にもらえる公的年金は国民年金・厚生年金の2種類

画像: 画像:iStock.com/SB

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年金の制度を大きく分けると、法律によって加入が義務付けられている「公的年金」と、企業や個人が任意で加入できる「私的年金」があります。

公的年金には、「国民年金」と「厚生年金保険(以下「厚生年金」と表記)」の2種類があります。すべての人が対象になる「国民年金」に、会社員や公務員が対象になる「厚生年金」が上乗せされる2階建ての構造になっています。

〈図〉公的年金制度の構造

画像: 老後にもらえる公的年金は国民年金・厚生年金の2種類

なお、2015年まではもう1つの種類として、常時勤務している国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員が加入する「共済年金」がありましたが、現在では厚生年金に統合されています。

①国民年金

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入する年金制度です。20歳から60歳までの40年間が納付期間で、原則65歳から支給されます。国民年金の受給者には、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者があり、それぞれ加入時の届出方法と保険料の納付方法が異なります1)

〈表〉国民年金の加入者の区分

第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者
対象者・自営業者とその家族
・農業者とその家族
・学生
・無職の人
など
・会社員、公務員など厚生年金、共済に加入している人・第2号被保険者に扶養されている配偶者で、年収が130万円未満の人
届出方法住んでいる自治体に届出勤務先の会社が届出第2号被保険者の勤務先に届出
保険料の支払い方法納付書や口座振替など、自分で支払う厚生年金保険料とまとめて、勤務先が支払う(給与から天引きの場合が多い)第2号被保険者の勤務先が、第2号被保険者と第3号被保険者の保険料を併せて支払う

なお、国民年金はいわゆる「年金」と呼ばれる老齢給付金以外に、障害や死亡による事由でも受給が可能です。

②厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的年金です。厚生年金に加入すると、国民年金と厚生年金という2階建てのしくみで年金を受給できます。

保険料は、給料や賞与に保険料率をかけて算出され、事業主と従業員で折半する形で支払います。厚生年金の保険料率は、2017年に18.30%に固定されました2)。厚生年金も、老齢給付金以外に、障害や死亡による事由でも受給が可能です。

公的年金は60歳からもらえる

画像: 公的年金は60歳からもらえる

国民年金および厚生年金は原則65歳から受給できますが、繰上げ制度を使えば60歳からの受給も可能です。しかし、繰上げ制度を使うと、生涯にわたって減額された金額の年金を受給することになります。減額される金額は、早期に受給するほど大きくなる点にも注意が必要です。

年金を60歳からもらうメリット2つ

画像: 画像:iStock.com/banabana-san

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退職後の生活費に不安がある人にとって、年金を前倒しで受給できることは魅力的でしょう。年金を60歳からもらうメリットは、主に以下の2つです。

①早い時期から安定した収入を得られる
②元気なうちに年金を受給できる

それぞれ詳しく解説します。

①早い時期から安定した収入を得られる

60歳前後で早期に退職したり、事業が傾いたりして経済的に不安定になることもあるでしょう。そこで年金を前倒しで受給することで、早い時期から安定した収入を得られます

厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」3)によると、年金を繰上げ受給している人の割合は、国民年金で11.7%、厚生年金で0.5%となっています

②元気なうちに年金を受給できる

健康面に不安がある人の中には、「元気なうちに年金を受給して、自分の趣味や好きなことにお金を使いたい」と考える人もいるでしょう。そうした人にとっては、繰上げ受給はメリットと捉えることもできます。

持病や健康面に不安がある人は、毎月の受給額が減額されても、早く年金をもらうことを検討してみてもよいかもしれません

年金を60歳からもらうデメリット4つ

画像: 画像:iStock.com/RelaxFoto.de

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年金を60歳からもらうデメリットは、主に以下の4つです。

①毎月受給できる年金額が減る
②1度繰上げ受給すると、あとから受給時期を変更できない
③国民年金と厚生年金は同時に繰上げをしなければならない
④障害年金や遺族年金を受給できない可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

①毎月受給できる年金額が減る

繰上げ受給をすると、65歳から受給を開始した場合に比べて、毎月受給できる年金額が減額されます。年金額の減額は、生涯続くので注意が必要です

つまり、繰上げ受給をした場合は、長生きするほど、65歳から受給開始した場合の年金総額との差が大きくなることになります。2022年4月から、減額の割合は1カ月あたり0.4%、最大24%です4)。早く受給できるものの、総額自体は減ってしまうため、特別な理由がない場合は、繰上げ受給をしない方がよいでしょう。

なお、以下の記事では、年金を毎月20万円もらうために必要な年収額や、利用できる制度を解説しています。興味のある人は、併せてご覧ください。

【関連記事】年金を月20万円もらうために必要な年収や年金額を増やす方法について詳しくはコチラ

②1度繰上げ受給すると、あとから受給時期を変更できない

人によっては、繰上げ受給の開始後に臨時収入が入ったり、仕事に就いたりすることが考えられます。しかし、途中で繰上げ受給の必要がなくなったとしても、1度繰上げ受給をすると、あとから受給時期を変更できないので注意しましょう。

繰上げ受給をするかどうかは、慎重に検討する必要があります。

③国民年金と厚生年金は同時に繰上げをしなければならない

国民年金の老齢基礎年金と厚生年金の老齢厚生年金は、必ず一緒に繰上げをしなければいけません。

そのため、たとえば国民年金で任意加入制度を利用できる条件を満たしていたり、60歳以降で働くことになって厚生年金に加入し続けることになったりした場合でも、「どちらかだけ繰上げて支給してもらう」ということができないのです。

なお、厚生年金の場合は「在職老齢年金」といって、60歳以降に繰上げで年金をもらいながら働くことも可能です。ただしその場合、年金の受給額と給与の合計が一定の金額を超えると、年金額が調整され少なくなってしまうので注意が必要です。

④障害基礎年金や遺族厚生年金を受給できない可能性がある

年金には、いわゆる「年金」と呼ばれる老齢基礎年金と老齢厚生年金以外に、国民年金と厚生年金にそれぞれ障害年金と遺族年金というものがあります。

障害年金とは、障害や病気、ケガによって生活や仕事に制限が生じた場合に受給できる年金です。国民年金に属する障害基礎年金はもらえる金額が手厚いことが特徴ですが、老齢基礎年金の繰上げ受給をしてしまっていると、60歳から65歳になるまでの間に障害基礎年金の受給対象になったとしても、障害基礎年金を請求できなくなります

遺族年金とは、加入者が亡くなった場合に、その遺族が受給できる年金です。厚生年金に属する遺族厚生年金は老齢基礎年金と同時に受給することができないため、繰上げ受給をしてしまっていると、65歳になるまでの間は遺族厚生年金を受給できません

年金の繰上げ・繰下げ制度を解説

画像: 画像:iStock.com/whyframestudio

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以下では、年金の繰上げ、繰下げ制度を解説します。年金は原則65歳からもらえますが、繰上げ、繰下げ制度を利用することで、時期をずらして年金をもらうことが可能です

令和4年4月からは、繰上げ受給の際の減額率が改善され、繰下げ受給は75歳まで可能になりました4)

繰上げ受給の減額率が緩和される

これまで、繰上げ受給をした場合の減額率は0.5%でした。しかし、令和4年4月からは、0.4%に改正されました。減額率改正の対象は、昭和37年4月2日以降に生まれた人です。

繰上げ受給の減額率が0.4%に緩和されると、0.5%の時と比べて、長生きしても65歳から受給する場合との年金総額の差が小さくなります。結果として、従来よりも繰上げ受給を利用しやすく感じる人も増えるでしょう。

以下の記事では、年金の計算方法や職業ごとにもらえる年金額のシミュレーションをしています。自分がいくら年金をもらえるか気になる人は、併せてご覧ください。

【関連記事】将来年金はいくらもらえる? 詳しい計算方法などはコチラ

75歳まで繰下げ可能に

繰下げ受給についても制度が変更されます。具体的には、これまで70歳までの繰下げだったものが、令和4年の4月から75歳まで可能になりました

年金の受給開始時期を遅らせるメリットとしては、生涯にわたって毎月の受給額が増額されることがあります。国民年金の場合は、「65歳に達した月から繰上げ申出月の前月までの月数」×0.7%ずつ増額され、最大で84%の増額となります5)

長生きするほど年金の受給期間は長くなるので、65歳から受給した場合よりも多く年金がもらえることになりますが、反対に病気などで長生きができなかった場合は、受給期間が短くなり、もらえる年金の総額が減ってしまいます。

長生きをするためには、健康に気をつかうことが重要です。下記では健康に関する情報も掲載しているので、ぜひご覧ください。

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繰上げ受給をすると何歳から年金総額が減ってしまう?

画像: 画像:iStock.com/Hana-Photo

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繰上げ受給をした場合、長生きをすると65歳から受給した場合と比べてもらえる年金総額に差が出てしまうと解説しました。では、具体的に何歳以上から年金総額が減ってしまうのでしょうか。減額率の改正前と改正後で、年金総額が減ってしまう年齢を表にまとめたので、ご覧ください。

〈表〉繰上げ受給をした場合に、年金総額が減ってしまう年齢

受給開始年齢減額率(改正前)年金総額が減ってしまう年齢(改正前)減額率(改正後)年金総額が減ってしまう年齢(改正後)
60歳30%76歳8カ月24.0%80歳10カ月
61歳24%77歳8カ月19.2%81歳10カ月
62歳18%78歳8カ月14.4%82歳10カ月
63歳12%79歳8カ月9.6%83歳10カ月
64歳6%80歳8カ月4.8%84歳10カ月
※改正後の減額率は、令和4月3月31日時点で60歳に達していない人が対象です。

年金の受給開始時期は健康状態や働く期間も加味して決めよう

画像: 画像:iStock.com/monzenmachi

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年金の受給開始時期を考える際は、平均寿命だけでなく、健康寿命も考慮する必要があります。健康寿命とは、日常生活を支障なく送れる期間のことです。男女の平均寿命と健康寿命を以下の表にまとめたので、ご覧ください。

〈表〉平均寿命と健康寿命6)

男性女性
平均寿命80.98歳87.14歳
健康寿命72.14歳74.79歳

人生設計や資産計画に応じて年金の受給開始年齢を決めよう

画像: 画像:iStock.com/recep-bg

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60歳から繰上げ受給をすることで、早めに安定した収入を得られる点はメリットといえるでしょう。しかしながら、毎月もらえる受給額が減少してしまう点をしっかりと把握した上で検討が必要です。

令和4年の4月から減額率が改善されたことで、特に男性は平均寿命付近まで生きても、受給額の減少の影響を受けにくくなります。繰上げ受給のメリットとデメリット、働く期間などの人生設計、また資産計画も含め総合的に考えた上で、年金の受給開始時期を検討しましょう。

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