この記事では、ファイナンシャルプランナー・タケイ啓子さん監修のもと、障害年金の受給要件についてわかりやすく解説します。受給までの流れや障害年金をもらえなかった場合の対処策も説明します。
この記事の監修者
タケイ 啓子(たけい けいこ)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
障害年金とは
障害年金とは、病気やケガで生活や仕事が制限されるようになった時にもらえる年金です。現役世代の人も受け取ることができます1)。対象となる主な病気やケガは以下です2)。
〈表〉障害年金の受給対象となる主な病気やケガ
外部障害 | 眼、聴覚、音声または言語機能、手足などの肢体の障がい |
---|---|
精神障害 | 統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など |
内部障害 | 呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど |
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。障がいの原因になった病気やケガで初めて医師などの診療を受けた時(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金保険(以下「厚生年金」と表記)に加入していた場合はそれに加えて「障害厚生年金」をもらうことになります。
障害年金を受け取るには年金の保険料納付状況などの条件があります。また、障がいの状態によってももらえる金額は異なります。
なお、年金制度については下記の記事で解説していますので、併せて参考にしてみてください。
【関連記事】年金制度とは?公的年金と私的年金の種類やしくみ、保険料などをわかりやすく解説
障害年金の受給要件
障害年金は、原則、年金に加入している期間に、初診日のある病気やケガで法令によって定められた障害等級表に該当する障がいの状態にある時にもらうことができます2)。以下で3つの要件について詳しく説明します。
初診日要件
初診日とは、「障がいの原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」を指します。初診日に国民年金に加入している場合は障害基礎年金、厚生年金に加入している場合は障害基礎年金と障害厚生年金を受け取ることができます。
〈表〉障害年金をもらえる人
障害基礎年金 | 初診日に国民年金に加入していた人 |
---|---|
初診日が20歳前の人 | |
60歳以上65歳未満で日本に住んでおり、年金に加入していない期間に初診日がある人 | |
障害厚生年金 | 初診日に厚生年金に加入していた人 |
初診日が20歳前である場合と60歳から65歳で日本に住んでいる場合も、障害基礎年金をもらうことができます。なお、65歳以上の人は障害年金の対象外です。65歳未満でも年金の繰上げ受給をしている人は、65歳に達したとみなされてしまうため、やはり対象外です。
障害年金を請求する際には、初診日を客観的に証明する必要があります。最初に診断を受けた医療機関に「受診状況等証明書」をもらいましょう3)。カルテの廃棄や廃院などで初診の医療機関で受診状況等証明書をもらえない場合は、2番目に診療を受けた医療機関で証明してもらう方法もあります。詳しくは年金事務所などに確認してみましょう。
保険料納付要件
障害年金をもらうには、初診日の前日において以下の保険料の納付要件を満たす必要があります2)。
【障害年金の保険料納付要件】
初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で年金の保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が2/3以上ある
〈図〉障害年金の保険料納付要件
上図では初診日の2カ月前までに被保険者期間が15カ月あり、保険料納付期間と保険料免除期間の合計はそのうちの12カ月です。2/3以上(10カ月以上)の期間で納付しているため、保険料納付要件を満たすことになります。
また、初診日が令和8年3月末日までの場合には、以下の条件に該当すれば、 特例として納付要件を満たすものとされます。
①初診日に65歳未満
②初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの1年間に保険料の未納がない
〈図〉障害年金の保険料納付要件(特例)
上図には未納期間が多くありますが、初診日がある月の2カ月前までの直近1年間には保険料の未納期間がないので、納付要件を満たすことになります。
障害状態該当要件
障害年金は、法令で定められた障がいの程度(等級)に応じて支給されます。具体例については後述します。身体障害者手帳の等級とは異なる点に注意しましょう2)。
〈表〉障害状態該当要件
1級 | 他人の介助を受けなければ、日常生活のことがほとんどできない状態 |
---|---|
2級 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができない状態 |
3級 | 日常生活にはほとんど支障はないが、労働については著しい制限がある状態 |
障害手当金(※) | ・障害等級表に定める障がいの状態である ・初診日から5年以内に治っている(症状が固定している) ・治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽い |
障害基礎年金は、1・2級に該当する場合にもらうことができます。障害厚生年金は3級まであります。さらに、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金をもらうには軽い障がいが残った時には障害手当金が一時金として支給されます。障害手当金をもらう場合には、障害厚生年金の初診日要件と保険料要件に加え、上の表で説明した条件をすべて満たしている必要があります。
【コラム】具体例で理解する障害等級1~3級の判定基準
障害年金の対象となる病気やケガは、手足の障がいなどの外部障害のほか、精神障害や内部障害も含みます。その認定基準については、体の部位や病気ごとに「障害認定基準」4)に細かく定義されています。以下では障害等級について、中でも厚生労働省・日本年金機構の調査5)によると、障害年金の支給件数が多い「精神障害・知的障害」と「肢体の障がい」を具体例に解説します。
なお、障害認定基準では、精神障害は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」「気分(感情)障害」「症状性を含む器質性精神障害」「てんかん」「知的障害」「発達障害」の6種類、肢体の障がいは上肢、下肢、体幹・脊柱の機能、肢体の機能の4種類に区分されます。ここでは精神障害は「気分(感情)障害」、肢体の障がいは「体幹・脊柱の機能の障がい」について説明します。
障害等級1級
障害等級1級は、「他人の介助を受けなければ、日常生活のことがほとんどできない状態」です。精神障害(気分<感情>障害)と肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)では以下のように定義されています。
【精神障害(気分<感情>障害)の場合】
高度の気分、意欲・行動の障がい、高度の思考障害の病相期がある。これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要な状態
【肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)の場合】
・座っていることができない、あるいは立ち上がることができない程度の障がいが体幹の機能にある
・身体機能の障がいまたは長期にわたる安静を必要とする病状にあり、日常生活の用をこなすことができない
障害等級2級
障害等級2級は、「必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができない状態」です。精神障害(気分<感情>障害)と肢体の障がい(体幹・脊柱の機能)では以下のように定義されています。
【精神障害(気分<感情>障害)の場合】
気分、意欲・行動の障がい、思考障害の病相期がある。これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、日常生活に著しい制限を受ける状態
【肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)の場合】
・歩くことができない程度の障がいが体幹の機能にある
・身体機能の障がいまたは長期にわたる安静を必要とする病状にあり、日常生活に著しい制限がある
障害等級3級
障害等級3級は、初診日に厚生年金に加入している場合のみ年金をもらえる等級です。「日常生活にはほとんど支障はないが、労働については著しい制限がある状態」で、精神障害(気分<感情>障害)と肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)では以下のように定義されています。
【精神障害(気分<感情>障害)の場合】
気分、意欲・行動の障がい、思考障害の病相期があり、その病状が著しくないが、これが持続したり、繰り返したりして、労働に制限を受ける
【肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)の場合】
・脊柱の機能に著しい障がいを残す
障害手当金
障害手当金も初診日に厚生年金に加入している場合のみもらえます。精神障害(気分<感情>障害)にはこの等級はありません。一方、肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)では以下のように定義されています。
【肢体の障がい(体幹・脊柱の機能の障がい)の場合】
・脊柱の機能に障がいを残す
障害年金の種類ともらえる金額
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります2)。
〈図〉障害基礎年金と障害厚生年金
そもそも公的年金はすべての人が対象になる国民年金に、会社員や公務員が対象となる厚生年金が上乗せされる2階建て構造になっています。障害年金も同じ構造なので、会社員や公務員(初診日に厚生年金に加入している人)が障害基礎年金の1・2級に該当する場合は、障害厚生年金の1・2級も合わせて受け取ることができます2)。
また、障害基礎年金の1・2級、または障害厚生年金の1・2級を受け取ることができる人に生計を維持されている家族がいる場合には加給年金や子どもの加算を受け取ることができます2)。
〈表〉配偶者の加給年金と子どもの加算7)
名称 | 金額 | 加算される年金 | 年齢制限 | |
---|---|---|---|---|
配偶者 | 加給年金額 | 23万4,800円 | 障害厚生年金 | 65歳未満であること(※) |
子ども2人まで | 加算額 | 1人当たり23万4,800円 | 障害基礎年金 | ・18歳になったあとの最初の3月31日までの子ども ・20歳未満で障害等級1級・2級の障がいの状態にある子ども |
子ども3人目から | 1人当たり7万8,300円 |
ただし、障害厚生年金の加給年金は、配偶者が老齢厚生年金や退職共済年金の受給権を持っている時や、障害年金を受け取る間は支給停止されます。また、児童扶養手当の受給者や配偶者が公的年金制度から年金を受けるようになったり、年金額が改定されたりした場合には、市区町村から支給されている児童扶養手当が支給停止または一部支給停止される可能性があります6)。
なお、障害年金の年金額や計算方法についてもっと知りたい人は、以下の記事で紹介しているので併せてご覧ください。
障害年金を受給する流れ
障害年金を受給するまでの手続きは、障害基礎年金でも障害厚生年金でも変わりません。
以下で4つのSTEPについて詳しく説明します。
STEP1.初診日と障がいの状態、年金の納付状況を確認する
請求する病気やケガに関して、まずは初診日と障害認定日を確認した上で初診日から現在までの病状や通院歴などを調べましょう。さらに、初診日にどの年金に加入していたかを確認し、保険料納付要件を満たしているかどうかを確認しておきましょう。
STEP2.年金事務所や市区町村役場に相談する
続いて、年金事務所や年金相談センター、住んでいる地域の市区町村役場で障害年金の受給について相談します。事前にSTEP1で調べた情報があると、質問や説明がスムーズに進むでしょう。
STEP3.必要な書類を準備する
年金請求書のほか、必要な書類を用意します8)9)。年金請求書は年金事務所や年金相談センターでもらうか、日本年金機構のウェブサイトからダウンロードすることができます。
〈表〉障害年金の請求に必要な書類
書類名 | 確認事項 |
---|---|
年金請求書(国民年金・厚生年金保険障害給付)様式第104号 | なし |
基礎年金番号通知書または年金手帳 | 年金の加入期間がわかるもの |
戸籍謄本、戸籍抄本、住民票などのいずれか(※1) | 年金を請求する本人の生年月日を明らかにする |
医師の診断書 | 障害認定日より3カ月以内の現症(現在治療中の病気やケガ)のもの。障害認定日と年金請求日が1年以上離れている場合は、直近の診断書(年金請求日前3カ月以内の現症のもの)も併せて必要 |
受診状況等証明書 | 初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日を確認するため |
病歴・就労状況等申立書 | 障がいの状態を確認するための補足資料 |
本人名義の受け取り先金融機関の通帳(※2) | カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカードなど。コピーも可 |
障がいの原因が第三者の行為にある場合は、以下の書類も添えます。
〈表〉障がいの原因が第三者の行為にある場合に必要な書類
書類名 | 確認事項 |
---|---|
第三者行為事故状況届 | 所定の書式あり(※) |
交通事故証明 | 事故証明が取れない場合は、事故内容がわかる新聞のコピーなど、事故が確認できる書類 |
確認書 | 所定の書式あり(※) |
被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類 | 源泉徴収票、健康保険証や学生証のコピーなど |
損害賠償金の算定書 | すでに決定済みの場合、示談書等受領額がわかるもの |
損害保険会社などへの照会に係る同意書 | 所定の書式あり(※) |
また、配偶者や18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障がいの状態にある子どもを含む)がいる場合には、以下の書類も用意します。
〈表〉加給年金・子どもの加算額の請求に必要な書類
書類名 | 確認事項 |
---|---|
戸籍謄本(記載事項証明書) | 配偶者および子どもについて、請求者との続柄および氏名・生年月日を確認するため |
世帯全員の住民票の写し | 請求者との生計維持関係を確認するため |
配偶者の収入が確認できる書類(※1) | 生計維持関係確認のため。所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など |
子どもの収入が確認できる書類(※2) | 生計維持関係確認のため。義務教育終了前は不要。在学中の場合は在学証明書または学生証のコピーなど |
医師または歯科医師の診断書 | 20歳未満で障がいの状態にある子どもがいる場合。1級または2級の障がいの状態にあることを確認するため |
さらに、本人の状態によっては以下の書類も必要です。
〈表〉以下の状況に当てはまる場合に必要な書類
書類名 | 確認事項 |
---|---|
年金加入期間確認通知書 | 共済組合に加入していた期間がある場合 |
年金証書 | 他の公的年金から年金を受けている場合(配偶者を含む) |
身体障害者手帳・療育手帳 | 障がいの状態を確認するための補足資料 |
国民年金に任意加入しなかった期間がある場合は、その事情を説明する書類も必要になります。
STEP4.年金請求書と必要書類を提出する
必要な書類が揃ったら、年金事務所か年金相談センターに提出します。提出から審査結果のお知らせが届くまでの目安は3カ月です3)。年金の支払いが決定すると1〜2カ月後に年金が振り込まれます2)。
障害年金の受給要件を満たさない場合
障害年金の受給要件を満たさず、障害年金がもらえない場合もあります。以下では障害年金を受給できないケースとその理由、対処法などを説明します。
障害年金を受給できないケースとその理由
つぎの5つのケースでは、障害年金を受給できない可能性が高いでしょう。
【障害年金を受給できないケース】
①保険料要件を満たしていない
②初診日要件を満たしていない
③一定の障がいの状態にない
④対象外の傷病にかかっている
⑤障がいが違法薬物の使用や犯罪の結果による
①〜③は前述の受給要件を満たしていない場合です。通院治療をしておらず、医師の診断書をもらえない場合なども③に該当します。④はたとえばパニック障害や人格障害、不安神経症、強迫性障害などが例として挙げられます。⑤は国民年金(国民年金69条、70条)10)、厚生年金(厚生年金73条)11)、共に法律で給付制限が定められています。
障害年金を受給できない場合の対処法
障害年金が不支給と認定される時、その理由はわかりにくいことも少なくありません。前述の①と⑤の場合は自分で理解することができると思いますが、②〜④の場合は医師に書いてもらった書類に理由がある可能性があります。
年金の決定に不服がある時、決定があったことを知った日の翌日から起算して3カ月以内であれば、文書または口頭で地方厚生局内に設置された社会保険審査官に審査請求することができます12)。
ただし、決定が覆される可能性はそう高くはありません。②〜④の理由で不支給決定されることを避けるためには、書類を提出する前に医師の書類が要件を満たす内容か、確認するほうがよいでしょう。心配な場合には、提出前に社会保険労務士などの障害年金請求を代行する専門家に相談するのも一手です。
参考資料
障害年金を受給できない時に利用できる支援制度
国民年金に加入していなかった人の中で以下の条件に当てはまる場合は、「特別障害給付金制度」13)を利用することができます。ただし受給できるのは、65歳に達する日の前日までに障害認定基準で定義する障がいの状態に該当し、請求した人に限られます。
【特別障害給付金制度の支給対象】
①1991年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生(※1)
②1986年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者などの配偶者(※2)で、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1・2級相当の障がいの状態にある
※1:大学(大学院)、短大、高等学校および高等専門学校の学生。ただし、1986年4月から1991年3月までは専修学校および一部の各種学校の学生も含む
※2:被用者年金制度の加入者、被用者年金制度の老齢給付受給権者および受給資格期間満了者、被用者年金保険制度の障害年金受給者、国会議員、地方議会議員(1962年12月以降)の配偶者
支給額は障害年金同様に障害認定基準によります。基本月額は前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて、毎年度自動的に見直されます。
【特別障害給付金制度の支給額(令和6年度)】
障害1等級相当:令和6年度基本月額5万5,350円
障害2等級相当:令和6年度基本月額4万4,280円
老齢年金や遺族年金、労災補償などを受給している場合には、その受給額分を差し引いた額が支給されます。また、受給者本人の前年の所得が472万1,000円を超える場合は、給付金の全額、370万4,000円を超える場合には1/2が支給停止になります。
参考資料
障害年金の注意点
続いて、障害年金の注意点3つを解説します。
国民年金の保険料納付が免除になる分、老齢基礎年金が減額される
障害基礎年金を受給する人は、市区町村役場に「国民年金被保険者関係届書(国民年金保険料免除事由〈該当・消滅〉届)」を提出すると、国民年金の保険料納付が免除になります14)。ただし、国民年金保険料を免除した分、老齢基礎年金は減額されます。老齢基礎年金を満額でもらいたい場合は、この国民年金保険料の法定免除制度を利用せずに、国民年金の保険料を支払いましょう。
参考資料
更新手続きが1~5年ごとに発生する場合がある
障害年金の認定には、「永久認定」と「有期認定」の2種類があります15)。永久認定は、たとえば手足の切断など、時間が経過しても障がいの程度に変化や改善の見込みがない場合が対象になります。年金証書の右下に記載される「次回診断書の提出年月日」が「〇〇年〇〇月」となっている場合、永久認定となります。
一方、有期認定は、時間の経過によって障がいの程度に変化が起こりえる病気やケガが対象になります。その場合、一定期間ごとに「障害状態確認届(診断書)」を日本年金機構に提出し、更新(再認定)してもらいます16)。更新のタイミングは病気・ケガの種類やその症状などによって異なり、年金証書の「次回診断書の提出年月日」に記載されます。記載された年には誕生月の3カ月前の月末に日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が送られてくるので、これを期限までに提出しましょう。
1人1年金が原則だが、例外もある
公的年金は1人1年金が原則で、支給事由の異なる2つ以上の年金を受けられる場合、どちらかを選択することになります。ただし、その人が65歳以上の場合、2つ以上の年金をもらえるケースもあります2)。
〈表〉65歳以上で2つ以上の年金を受けられる場合①
前述のように、障害年金も障害基礎年金と障害厚生年金の2階建て構造になっています。そのため、障害厚生年金をもらっている人が65歳になった場合、上の3つの組み合わせから選ぶことができます。
〈表〉65歳以上で2つ以上の年金を受けられる場合②
また、障害基礎年金をもらっている人が65歳以降で遺族厚生年金をもらえるようになった場合も、上の3つの組み合わせから選ぶことができます。
障害年金と老齢年金、どちらをもらうべきか、知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。
【関連記事】障害年金と老齢年金は併給できる? 詳しくはコチラ
障害年金の「よくある質問」
障害年金に関する「よくある質問」に回答します。
Q1.障害年金の対象となる病気やケガにはどんなものがある?
障害年金の対象となる主な病気やケガは以下です2)。
〈表〉障害年金の受給対象となる主な病気やケガ
外部障害 | 眼、聴覚、音声または言語機能、手足などの肢体の障害 |
---|---|
精神障害 | 統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など |
内部障害 | 呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど |
Q2.子どもの頃からの病気やケガで障害年金はもらえる?
障害基礎年金は、子どもの頃の病気やケガがもとで一定以上の障がいが残った人にも支払われます17)。ただし、支給は20歳からです。
Q3.障害基礎年金をもらっている人が新たな病気やケガをしたら、障害基礎年金は2つもらえる?
障害基礎年金は1つしかもらうことはできません18)。障害基礎年金をもらっている人に新たな障がいが発生した時は、1番目の障がいと2番目の障がいを併せて、新たに障がいの程度を認定した上で1つの年金として支払います。障害厚生年金の場合も同様です19)。
ただし、障害年金の受給中に、別の病気やケガで就労不能になった場合は、傷病手当金を別途、全額受給することができるケースもあります。
詳しい内容は以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
【関連記事】傷病手当金の金額は?計算方法や併給できる給付も専門家が解説
Q4.障害等級の変更申請はできる?
障がいの程度が変わった時には、その旨を申し立てることができます20)。「障害給付 額改定請求書」に医師の診断書を添えて、年金事務所や年金相談センターに提出します。もらっているのが障害基礎年金の場合、提出先は市区町村役場でも大丈夫です。
参考資料
Q5.障害者手帳がなくても受給できる?
障害者手帳の交付基準と障害年金の審査基準は別の制度なので、基本的に関係がありません。障害者手帳は自治体や事業者が提供する支援・サービスを受けることができるものです21)。
参考資料
21)厚生労働省「障害者手帳」
Q6.年金の保険料が未納でも障害年金は受給できる?
障害年金をもらうには、前述の保険料納付要件を満たす必要があります。国民年金の保険料が未納の場合、障害年金を受給することはできません。ただし、20歳前の病気やケガによる障がいの場合には、所得制限はありますが、障害年金を受給することができます。また、特別障害給付金制度(前述)を利用することも可能です。
20歳前の病気やケガによる障害年金の受給について、もっと知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。
障害年金の受給要件は、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」の3つ
障害年金をもらうには、初診日要件、保険料納付要件、障害状態要件の3つを満たす必要があります。ただし、20歳前の病気やケガによる障がいの場合は、保険料納付要件を満たさなくても障害年金をもらうことができます。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。もらえる金額は障害基礎年金の場合、年度ごとに変わりますが等級によって定額である一方、障害厚生年金の場合は人によって異なります。障がいがある際や障がいの状態になった場合には制度をしっかり理解した上で活用しましょう。