この記事ではファイナンシャルプランナーの冨士野 喜子(ふじの よしこ)さん監修のもと、「家計の見直し」について解説していきます。紹介するのは、3ステップでできる家計の見直し術や、理想の家計の内訳など。さらに、一人暮らしと子持ち夫婦の場合での家計の見直しのシミュレーションも行いますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の監修者
冨士野 喜子(ふじの よしこ)
ふじのFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー 。 教育出版会社、外資系生命保険会社を経て、2012年にFPとして独立。自身の結婚、妊娠、出産、子育ての経験を活かし、20~30代のライフプランニングを中心に活動。最近はラジオ出演や子ども向けのマネー講座の講師をするなど幅広い年代に向けてお金に関する情報発信を行っている。
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家計の見直しの基本を押さえよう!
まずは、家計の見直しを行う前に押さえておきたい基本を確認しましょう。
基本1:自分の家計の状態を数字で把握する
今回のテーマは「家計の見直し」ですが、貯金ができない、出費が多いと悩む人の多くは、そもそも自分の家計の収支がどうなっているか、把握できていないのではないでしょうか。
「家計簿をつけていない」「何となく赤字な気がする」という状態では、家計の見直しのスタートラインには立てません。家計簿をつけるなどして、まずは自分の家計がどうなっているのか、数字で管理することを始めましょう。
基本2:目的、目標を持つ
家計の見直しをする時には、目的や目標を持つことも大切です。目的や目標がないまま取り組むとモチベーションを維持できず、元の家計にリバウンドしやすくなってしまいます。
「結婚資金を貯める」「車を買い替える」という目的や、「今年中に赤字を脱却する」「3年間で100万円貯金する」という目標を立てた上で、後述する家計の見直しを行い、倹約に取り組みましょう。
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基本3:基本の支出の割合を知る
家計管理において、基本の支出の内訳は以下の通りです。
手取り収入=固定費6:流動費3:貯金1 |
収入の金額や貯金の目標に合わせてアレンジは可能ですが、基本は上記の割合になるように家計を見直していきましょう。固定費と貯金以外に使えるお金は手取り収入の3割。収入の少ない20代のうちなどはキツイと感じるかもしれませんが、やりくりする癖をつけておくと収入が増えた時にどんどんお金を貯められるようになれます。
会社員でボーナスでの収入が見込める場合には、手取り月収を全て使い、ボーナスを貯めることで上記の基本の支出に合わせる手もあります。ただし実際には、ボーナスは年間に1、2回発生する臨時支出(保険料や車検代、冠婚葬祭など)に使ってしまう場合も多いので、後述するように年間の支出を把握することが重要です。
<コラム>こんな人は要注意! 家計管理が苦手な人の特徴
貯金ができなかったり、収支が赤字になりがちだったりという家計管理が苦手な人は、大きく2つのタイプに分類できます。
まずは、「支払いの目的が不明確な金額が年間で50万円以上ある人」。家計管理ができていない典型パターンで、自分でも何にどれくらいのお金を使っているのかが把握できていない場合が多いです。生活費とお小遣いの区別ができていないのが特徴。当てはまる人は、まずは基本1の「家計の状態の把握」からしっかり意識するようにしましょう。
次に「節約しているつもりの人」です。このタイプの人は、2万〜3万円以上の比較的大きな買い物は我慢していても、ネットショッピングやコンビニでのちょこちょこ買いが多かったり、ランチやコスメで少しずつ贅沢しているはず。数百円〜1,000円台の買い物も複数回あれば1万円を超えます。後述する「倹約」部分をしっかり意識しましょう。
家計の見直しステップ1:年間の手取り収入と支出を把握する
基本を押さえたら、いよいよ家計の見直しに取りかかりましょう。
まず行いたいのは、収支を把握することです。基本1で述べたように家計の状態を把握した上で、「1カ月」ではなく「1年間」の収支をざっくりと振り返ります。
1カ月分の収支で充分なのではないかと思った方もいるでしょう。ですが、1年間に数回発生する年払いでの生命保険料や火災保険料、車検代や自動車税、ご祝儀代などの臨時支出は、1カ月単位の振り返りでは見落としてしまいがちです。これらをあらかじめ把握して家計をやりくりしないと、結局はその支出のために貯金に回すはずのお金などが消えてしまうことになるのです。
収入についても、額面の年収がわかっていたとしても、手取りの年収を把握していないケースは意外と多いもの。月収からは年金や社会保険料のほか会社によっては共済費などが天引きされているケースもあります。また残業によって月ごとの収入が増減している場合もあるでしょう。これらも含めて、年間の手取り収入として把握するようにしましょう。
〈図〉年間の支出の書き出しの例
収入と支出を把握するには、通帳の確認がもっとも簡単な方法です。収入の場合、昨年1年間にどれだけ振込があったかを確認します。支出の場合も、現金・クレジットカード・キャッシュレス決済など複数の決済方法を使っていても結局は銀行口座からお金が引き落とされるため、通帳で確認すればOKです。
こうして一覧表にまとめることで、年間の収支が赤字になっていないか、貯金がいくらできていたかがクリアになるはずです。「残業代が多かった月の次の月は使いすぎている」「ボーナスを貯金しているつもりが、ほとんど臨時支出に使ってしまっていた」など、自分の家計の問題も見えてくるでしょう。
家計の見直しステップ2:固定費を見直す
年間の収支を把握したら、次は毎月発生する支出=固定費の見直しに取り掛かりましょう。ここからは、月間の支出額をベースに考えるとわかりやすいです。
固定費というと、家賃や水道光熱費、通信費などが代表的なものです。ここでは広めに定義して、保育料などの子どもの教育費や保険料、ガソリン代、外食以外の食費も毎月発生する支出=固定費と考えます。
つまり、「生活するのに必要なお金」=固定費と言いかえることもできます。前述したように、手取り収入のうち固定費の割合が6割程度になるのが基本です。主な固定費の見直し方法をご紹介します。
(1)家賃・住宅ローンを見直す
家賃やローンの返済額は、手取り月収の25%以内におさまっているのが理想的です。
賃貸の場合、それより高い金額を払っている人は見直しを検討しましょう。ただし、引っ越し代などを考えると高くついてしまう可能性もあるため、その後どれくらいの期間その場所に住むのかも含めて計算するようにしてください。
ローンを返済中の人は、ローンの借り換えをするかどうかの判断になります。ここ10年以内は金利が低いため借り換えのメリットは少なくなっていますが、それ以上経っている場合はウェブサービスなどで一度シミュレーションしてみましょう。借り換えのほうがお得かもしれません。
(2)水道光熱費を見直す
電気代の見直しポイントは主に2つ。電力会社の見直しと料金プランの見直しです。一般的に、電力自由化以降に参入した「新電力」の電力会社に切り替えると、1割程度電気代を安くすることができます。家族で暮らしていて電気代が高くなりがちな家庭ほど、お得度は高いでしょう。一人暮らしなどで夜しか家にいないという場合は、夜間の電気代が安くなるプランを選べば電気代が安くなる可能性もあります。
ガス代は、地域によって都市ガスとプロパンガスのどちらが安いかで変わってきます。賃貸では自由に選べない場合も多いですが、物件選びの際に確認するようにしましょう。
水道代は、水の使用量で料金が変わります。こまめに水を止めるなどの節約術を実践してください。
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(3)通信費を見直す
一度見直すだけで大きな固定費の削減になるのが、通信費です。スマートフォンの契約を大手キャリアから格安SIMに切り替えたり、大手キャリアでもプランを見直したりすることで場合によっては1カ月5,000円ほど削減できる場合もあります。
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(4)自動車関連費を見直す
地方では生活必需品の場合も多いですが、購入金額すべてをローンにして車を購入するのはおすすめできません。ローンを組む場合は、ある程度の頭金を用意し、支払いの目処を立ててからにするのがいいでしょう。
ローンは住宅ローンなども含めて、手取り収入の30~35%が上限の目安です。それでも生活が苦しい場合、車の乗り換えも1つの選択肢です。たとえば、普通車から軽自動車に乗り換えると、税金や車検代、自動車保険料などの維持費は下がります。
また、車を2台所有している場合、可能なら思い切って1台にしてみる、というのも手です。車を手放せない場合は、自動車保険の補償内容にダブりがないかチェックしてみましょう。「弁護士特約」や「個人賠償特約」は、補償対象が被保険者だけでなく、その家族も対象になっているのが一般的です。補償内容をしっかりと確認し、車が2台あっても、どちらか一方に付加していれば大丈夫なのかチェックしましょう。
(5)子どもの教育費を見直す
教育費の中でも子どもの習い事代は、ついつい増えてしまいがちな出費です。1年に一度、年度終わりのタイミングなどで続けるのかどうかを見直すようにしましょう。子どもが嫌がっている場合、それでも通わせるのがいいことなのか、話し合いの場をもつことが大切です。無駄な習い事は家計のためにも子どものためにもなりません。
(6)食費を見直す
食費を見直す際に意識したいのが、「廃棄をなくす」ということです。もちろん買い控えることも大切ですが、食費は無理をして減らす部分ではありません。食べたいもの、必要なものを購入した後は、それを捨てずに使い切ることを考えましょう。
そのことが、二重買いの防止や、使い切れる量しか買わないことにつながります。そのためには、どんなものが今ストックされているのかを把握しやすいよう、キッチンの整理整頓をしておきましょう。
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家計の見直しステップ3:日常生活で倹約に取り組む
固定費を見直せたら、あとは日常で倹約に取り組むことになります。固定費と貯金以外にかかるお金は流動費、いわゆる「お小遣い」とみなしてください。趣味の出費、ファッション・コスメ代、外食・交際費などがこれに当たります。これらは、我慢次第で支出を減らしやすい項目です。まとめて手取り収入の3割の金額に抑えるようにしましょう。
以下に、おすすめの倹約テクニックをご紹介します。
おすすめ倹約方法①:週に一度、ノーマネーデーを実施する
手っ取り早いのが、週に1度お金を使わない日=ノーマネーデーをつくる方法です。欲しいものがないのに、習慣でコンビニや商業施設に立ち寄ってしまっている人は多いのではないでしょうか。ノーマネーデーをつくることは、食費の見直しにもつながります。
おすすめ倹約方法②:整理整頓をする
洋服やコスメなどを購入しすぎてしまう人に特におすすめなのが、整理整頓です。自分の持っているものを整理してみると、同じようなものをいくつも持っていることに気づくのではないでしょうか。その気づきが、無駄な買い物の抑止力となるはずです。
<コラム>自己投資はリターンを考えて!
特に20代、30代のうちは、自己投資として英会話や勉強代、書籍代にお金を使って、将来に投資する人もいるでしょう。もちろんこれは必要なことですが、趣味の「習い事」との区別が曖昧になっている可能性もあります。
自己投資というからには、リターンがあることが前提です。リターンがないものは投資ではなく趣味です。そのことを念頭に置いて、自己投資にかけるお金を見極めるようにしましょう。
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一人暮らし&子持ち夫婦 家計の見直しシミュレーション
ここまで解説してきた家計の見直し術を使って、実際に2つのパターンで家計の見直しを行っていきましょう。
一人暮らし・首都圏在住のAさん(27歳・女性・手取り月収約20万円)の場合
現在の悩み
毎月の収支がギリギリになっている。ボーナスは40万円のうち、半分は使っているが、半分は貯金に回している。ただ、現在ほとんど貯金できていないため、この状態から脱却したい。
年間の支出
〈表〉普段の月間の支出(BEFORE)
項目 | 金額 |
---|---|
家賃 | 65,000円 |
食費 | 30,000円 |
水道光熱費 | 10,000円 |
通信費 | 10,000円 |
保険料 | 5,000円 |
洋服・コスメ代 | 40,000円 |
外食・交際費・交通費 | 30,000円 |
その他(日用品など) | 10,000円 |
合計 | 200,000円 |
冨士野さんからのアドバイス
27歳だと、100万〜150万円くらいの貯金があると安心です。おそらく、Aさんの貯金額は100万円未満ではないでしょうか。働けなくなった時の備えとしては不安な金額です。
Aさん自身はボーナスの半分は貯金しているという認識ですが、月の収支の赤字をボーナスで補填している状況ですね。手取り月収20万円の月をベースと考えて、月に1万円ほどと、残業代が発生した月はその分を貯金できるようにしましょう。食費、通信費、洋服・コスメ代を見直すのがおすすめです。
〈表〉月間の支出(AFTER)
項目 | 金額 | 見直し内容 |
---|---|---|
家賃 | 65,000円 | - |
食費 | 27,000円 | 自炊をがんばって3,000円ダウン |
水道光熱費 | 10,000円 | - |
通信費 | 5,000円 | 格安SIMへの乗り換えやプランの見直しで5,000円ダウン |
保険料 | 5,000円 | - |
洋服・コスメ代 | 35,000円 | 整理整頓し、買い物を減らして5,000円ダウン |
外食・交際費・交通費 | 30,000円 | - |
その他(日用品など) | 10,000円 | - |
合計 | 187,000円 | - |
→1万3000円支出ダウンした分を貯金へ |
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3人暮らし・地方在住のBさん一家(夫33歳、妻33歳、子ども4歳・手取り月収約31.5万円)の場合
現在の悩み
子どもができてから家計が苦しいと感じている。赤字が月1.9万〜2.9万円出ているため、独身時代の貯金やボーナスを取り崩しながら生活しているのをなんとかしたい。
年間の支出
収入の内訳
夫:手取り年収約350万円(額面年収約420万円) 手取り月収約25万円(額面月収約30万円)
妻:手取り年収約80万円 月収約6.6万円
世帯全体:手取り月収約31.6万円(手取りボーナス 約50万円)
〈表〉普段の月間の支出(BEFORE)
項目 | 金額 |
---|---|
住宅ローン | 80,000円 |
食費 | 60,000円 |
水道光熱費 | 15,000円 |
通信費 | 20,000円 |
保険料 | 15,000円 |
子ども関連費 | 20,000円 |
洋服・コスメ代 | 30,000円 |
車関連費(車2台所有) | 40,000〜50,000円 |
お小遣い | 25,000円 (夫20,000円、妻5,000円) |
その他(日用品など) | 30,000円 |
合計 | 335,000円〜345,000円 |
冨士野さんからのアドバイス
30代前半の家庭なら、200万〜300万円の貯金は欲しいところです。子どもが1人しかいないにもかかわらず、毎月の生活費を貯金やボーナスから補填している状態は黄色信号。たとえば第2子ができて妻が働けない期間ができると、一気に赤字の額が膨れ上がってしまいます。
まずは妻のパート収入を増やすことを考えましょう。扶養控除内ギリギリまで収入を増やし、その上で無理をしない範囲の支出の見直しを行います。ベースの手取り月収が33万円程度になるとすると、月間の支出は約30万円が目安です。
〈表〉月間の支出(AFTER)
項目 | 金額 | 見直し内容 |
---|---|---|
住宅ローン | 80,000円 | - |
食費 | 60,000円 | - |
水道光熱費 | 15,000円 | - |
通信費 | 10,000円 | 格安SIMへの乗り換えや プランの見直しで1万円ダウン |
保険料 | 15,000円 | - |
子ども関連費 | 20,000円 | - |
洋服・コスメ代 | 25,000円 | フリマアプリを利用して 5,000円ダウン |
車関連費 | 30,000〜40,000円 | 車2台のうち1台の保険を見直して、 1万円ダウン |
お小遣い | 25,000円 (夫20,000円、 妻5,000円) | - |
その他(日用品など) | 30,000円 | - |
収入を増やす | +16,000円 | 妻のパートを増やして収入アップ |
合計 | 294,000〜304,000円 | - |
→収入増と支出減で浮いた約3万円を毎月の貯金へ |
家計の見直しに活用すると便利なアイテム
家計の見直しを行う際に、アイテムやアプリを利用すると楽に行える部分もあります。貯金に使えるものもあるので、ぜひチェックして使ってみてください。
(1)家計簿アプリ
毎月の収支を記録していく家計簿アプリ。レシート読み取り機能や銀行口座・クレジットカードとの紐付けができるものが便利です。記録をつけていくことで、無駄買いの抑止力が働く効果も期待できます。
(2)手書き家計簿
レシートを集めて家計簿に貼って収支を計算する、昔ながらの方法です。レシートを集めて貼って記録して…という一連の行動ははっきり言って面倒なもの。そのため、「レシートが多くなるから買わないでおこう」という思考になり、買い物の回数が減ることも多いようです。面倒になってつけるのを諦めてしまっては意味がありませんが、続けられるのであればこの方法もいいでしょう。
(3)貯金アプリ
目標額を設定して積み立てたり、お釣りや端数を自動で貯金に回したりできるアプリもあります。貯金用の口座を開設する手間なく通常の口座以外の場所にお金を貯めることができるので、簡単に貯金を始められます。これまで貯金が苦手だったという人でも、貯金の習慣がつけられるようになるかもしれません。
無理のない見直しで、リバウンドしない家計づくりを
問題意識があって家計の見直しをしても、無理をすると必ずリバウンドしてしまいます。そのため、1年間という長いスパンでの収支を見て、自分に合った家計の見直しを行うことが大切です。
改めて家計を見直してみると、意外な無駄が見つかるものです。なんとなく放置してしまいがちな固定費の無駄が発見できると、一度整理するだけで無理をしなくても収支を黒字化できたり、貯金額を増やせたりします。
毎月5,000円の支出を減らすだけでも、1年間に換算すると6万円の支出減になるのです。書き出してみれば、その数字が無理なものではないことが見えてくるはず。ぜひ面倒くさがらずに、自分の家計を見つめ直してみましょう。
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