一人暮らしの20代の収入、支出、貯金額は?
最初に20代の社会人の平均的な金銭事情を見ていきます。あなたの収支と比較してみましょう。
20代の平均月収
厚生労働省の平成30年の「賃金構造基本統計調査」1)によれば、男性は20〜24歳が23万円、25〜29歳が26万3,800円、女性は20〜24歳が22万3,800円、25〜29歳が24万7,500円です(大学・大学院卒の場合)。なお、令和元年の同調査2)によれば、大卒の初任給は男性で21万2,800円、女性は20万6,900円となっています。
〈表〉20代の平均月収
初任給 | 男性:212,800円 女性:206,900円 |
---|---|
20〜24歳 | 男性:230,000円 女性:223,800円 |
25〜29歳 | 男性:263,800円 女性:247,500円 |
ただし、これはいわゆる“額面”の金額です。ここから社会保険料や所得税、住民税などが引かれます。実際の“手取り”は給与により異なりますが、額面の約80%。つまり、額面が23万円の場合、手取りは18万4,000円程度になります。
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一人暮らしの平均消費支出
続いて、毎月の生活費の目安になる月間平均支出です。総務省の令和元年の「家計調査」3)を参考にすると、34歳以下(平均27.1歳)の単身者の平均消費支出は17万2,324円。男女では男性が16万8,721円、女性が17万8,958円と、女性のほうが美容費や交際費の影響でやや高額であることがうかがえます。
〈表〉単身者(34歳以下)の月間平均支出
全体平均 | 172,324円 |
---|---|
男性 | 168,721円 |
女性 | 178,958円 |
内訳は以下の通りです。食費が最も多く、これに住居費、交通・通信費、教養娯楽が続きます。この値は全国平均なので、都市部に住む人だと住居費はもう少し高めになっているでしょう。
〈図〉一人暮らしの平均消費支出の内訳
一人暮らしの20代の平均貯蓄額
貯蓄額も見ていきましょう。金融広報中央委員会の令和元年の「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯)」4)によると、20代の口座残高の合計は86万円。年間の手取り収入から貯蓄しなかった人は27.1%で、7割以上の人が貯蓄をしているようです。また、投資資金も含めた金融資産保有額の平均値は198万円、中央値は80万円でした。
〈図〉20代の口座残高と金融資産保有額
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正しいお金の使い方が身につく、家計簿のつけ方
本気で貯蓄しようと思ったら、多くの人がまず検討するのが家計簿をつけることでしょう。お金の流れを把握できる家計簿は、家計管理をするうえで強力な味方になりますし、「正しいお金の使い方」を身につけるツールとしても活用できます。
ここでは、家計管理の基本的な考え方、家計簿の賢いつけ方、継続のコツなどをお伝えします。
家計管理の基本を理解しよう
そもそも、家計管理の第一歩は、「自分の収入と支出の動きを把握すること」です。しっかりと把握できていれば、無駄遣いをすることも少なくなりますし、貯蓄の管理もしやすくなりますよね。
ただ、ここで管理が難しくなる原因があります。それが「収入と支出の動きが違うこと」です。
会社員の方なら、残業代やボーナスによる変動はあったとしても、毎月の収入はほぼ一定ですよね。一方、買い物や外食、季節の変わり目に発生する衣替えなどの費用、結婚をはじめとしたライフイベントで発生する費用など、支出は月や年ごとに波があります。
〈図〉収入と支出例①
そこで必要なのが、支出が少ない時に収入の一部をストックしておき、それを将来の支出へと割り当てることです。このパズルのような作業こそが、家計管理のキモなのです。
〈図〉収入と支出例②
日々の連続が月々となり、月々の連続が年々となり、より長いスパンで考えると「人生」になります。日頃の家計管理によって人生が変わるといっても言い過ぎではありません。実際、貯蓄があると人生の選択肢は増えます。
たとえば結婚式を挙げる時、前々からお金が準備できていれば、多くの選択肢から会場や規模を選べますが、お金がなければ予算を減らす」「(お金が貯まるまで)開催を先延ばしにする」「開催を諦める」という3つの選択肢しかありません。
老後では余計顕著に表れます。昨今は人生100年時代とも言われ、20代の皆さんの将来は非常に長いものになっています。
日々のちょっとした出費が、将来の生活の“格差”を生み出します。1カ月2万円の差でも40年間で約1,000万円に上ります。家計管理は人生そのものを決定づけるほどの重要な役割を担っているのです。
家計簿のつけ方は「目的」によって違う
では、実際にどのように家計簿をつけたらよいのでしょうか。最初に知っておいてほしいのは、家計簿は「目的」によって、それぞれに合ったつけ方があるということです。
家計簿をつける目的は、大きく分けて2つあります。ひとつは、何にいくら使ったかを把握したいという「記録」目的。もうひとつは、家計簿をつけることで支出をカットしたいという「貯蓄」目的です。
「記録」が目的の場合、楽な方法を選ぼう
記録が目的なら、家計簿には買い物の内容を粛々と書いていくだけで十分です。後から項目などを見返すことができさえすればOK。大事なのは継続することなので、家計簿のつけ方も手軽さ重視がいいでしょう。
買い物の直後にサクッと入力できるスマホの家計簿アプリはもちろんのこと、Excelで自己流のシートを作ったり、気になる費目だけを記録したりと、自分に合った方法で家計簿をつければOKです。
「貯蓄」が目的の場合、なぜ使ったのかを把握することが必要
一方で貯蓄(支出カット)が目的なら、何を買ったのかという“結果”を書くだけでは事足りません。なぜなら、それだけではお金の使い方は改善されないからです。
必要なのは、家計簿に購入項目とともに、なぜ買ったのかという“動機(原因)”を書くこと。“動機”に対して満足度が高かったか、そうでなかったかを自分なりに分析し、無駄遣いだったか否かを振り返ることができます。
つまり、自分にとって“正しい”お金の使い方ができていたのかを確認するわけです。この場合は、文字を好きなように書き込める紙の家計簿がオススメです。
正しいお金の使い方が身につく、簡易家計簿のつけ方
一人暮らしをされている若いみなさんには、「正しいお金の使い方」を身に付けることを意識した家計簿のつけ方を実践していただきたいと思います。ズバリ「貯蓄」目的流です。とはいえ、“購入の動機”を合わせて家計簿をつけ続けていくのは、実際のところ、なかなかの労力がかかります。
そこで、家計簿を続けてつけるのが難しい、そもそもつけたくない、という人には、手間がかからない家計管理法としてレシートと貯蓄簿を活用した家計管理術をご紹介しましょう。初心者の人でも、簡単に始められる方法です。
レシートを使用した支出の振り返り
買い物を振り返るツールとしてレシートを活用します。レシートの品目ごとに使い方が良かったか否か、「マルバツ」をつけていきます。
日々の買い物を記録する家計簿は、言い換えると“レシートの転記”です。つまり、レシートを振り返ることで、家計簿を振り返ることと同じ効果を持たせます。
やり方はカンタン。以下の通りに進めていきましょう。
〈表〉レシートマルバツ法の手順
手順1 | 手頃な箱を用意する |
---|---|
手順2 | 1日の最後に、その日の分のレシートを箱に入れる |
手順3 | 週末にすべてのレシートを取り出す |
手順4 | 買ってよかった商品には○、買わなくてよかった商品には×のマークをレシートに書き込む |
手順5 | 手順4で○×をつけた理由を商品ごとにノートに書き込む |
買い物の良し悪しを決定する基準は人それぞれですが、趣味への投資や友人との食事などは○、コンビニでの“ついで買い”などは×になりやすい傾向があります。自分にとって本当に必要な買い物、不要な買い物の法則性が見えてきたら、その原因を分析し、マルを増やすための具体策を考えましょう。あとはその具体策を実行し、ここまでの手順を繰り返すだけです。○が増えるようにしていきましょう。
この時に大切なのは、モチベーションを失ってしまうような、高すぎる目標を設定しないことです。たとえばコンビニで不要な“ついで買い”を週5回している人は、一気に週0回にするのがかえってストレスであれば、週3〜4回に抑えることからトライしてもいいでしょう。
目標を達成できたら、ワンランク上の次の目標を設定しましょう。一旦後退してもとにかく諦めず、長い時間をかけてもいいので、前進する意識を持ち続けることが大切です。
なお、このレシートマルバツ法は、基本的に「変動費」(趣味代、遊興費、おやつ代、被服代など、毎月変動する費用)に対して有効です。住宅費や水道光熱費などの固定費については後述しますが、一般的に別のテクニックが必要になります。
毎月の収支をカンタンに記録できる「貯蓄簿」
また、上記のレシートマルバツ法とともに、月に1回、家計全体を把握するための「貯蓄簿」をつけることも有効です。これは読んで字のごとく、毎月の貯蓄額を記録していくだけのものです。
貯蓄額には、その月の収支の結果が反映されます。たとえば、ある月の残高が100万円、翌月が110万円で、給料が25万円とした場合、逆算して15万円の支出があったことがわかりますよね。つまり、貯蓄額を継続的に記録しておけば、毎月の支出額は逆算で把握できるのです。口座を複数もっている人は、それぞれの貯蓄額を足すだけで大丈夫です。
気をつけたいのはクレジットカードで、その月に使って引き落とされていない金額は貯蓄額から差し引く必要があります。貯蓄簿をつける時は、クレジットカード会社の会員ページなどから利用明細を確認し、その時点での利用残高を確認しましょう。
Column「正しいお金の使い方とは」
お金を貯めるシンプルで大事なコツは、本当に必要なモノ・本当に欲しいモノを買うことです。このコツさえつかむことができれば、不要なモノを買わなくなり、結果として「節約」と同じ効果が期待できます。
お金を貯める本質とは、節約といった「支出」をどう削るかではなく、お金をどう使うかなのです。正しくお金を使えば、「節約しよう」というストレスはなく、お金を前向きに使うことができます。
“一”に“止”と書いて、“正”。
つまり、一線を越えないことが「正しいお金の使い方」です。しかし、その“一線”は人それぞれですから、ご自身なりの価値観でレシートにマルバツをつけて、良し悪しを判断してほしいと思います。
マルバツの判断基準のひとつは、“自分が”ときめくかどうかです。心からときめく買い物の場合、「前からずっとほしかった!」「大好きな趣味の商品だから、絶対に買いたかった」など、“自分”が主語になることが多いです。
ところが、不要な買い物では、「お買い得だから買った」「限定品なので買った」など、“商品”が主語になっていることが多く、買わなければよかったと後悔しやすい傾向があります。
満足度の高い「ときめき買い」が習慣化すれば、不要なモノに囲まれて生活することも減る上に、買い物の時間も節約でき、一石何鳥にもなりえます。もちろん、家計的には貯蓄形成にしっかりつながります。
「ときめき買い」は自分を満足させる買い物です。たとえば、皆さんの恋人や友人を満足させるプレゼントを選ぶように、自分の好みや価値観、考え方などを確認しながら、日々の買い物をしてみてください。きっと、自分が心から喜ぶような買い物ができるようになるはずです。「ときめき買い」を続ければ、自分を好きになり、人生をハッピーにすることにもつながるのです。
〈図〉貯蓄につながる「ときめき買い」のメカニズム
一人暮らしにおすすめ。費用別・生活費節約のコツ
さて、ここまでは主に交遊費や趣味代などの変動費を抑える方法を紹介してきました。では、家賃や水道光熱費、食費など、必要経費とも言える生活コストはどうしたら抑えられるのでしょうか。
変動費は、購買意欲のコントロールやマインドによって改善できる部分が大きいですが、生活コストを抑えるためには、それに加えてハウツーを知ることが必要です。
家賃節約のコツ
一人暮らしの20代にとって、負担の大きな固定費となる家賃。少しでも減額したいなら、周辺の相場を調べて、大家さんに家賃交渉をしてみるのもひとつの手です。契約更新のタイミングでしか家賃交渉できないと思われがちですが、いつでも交渉可能です。
引越しを検討している人は、住まいに求める条件を列挙し、しっかりと優先順位をつけましょう。不動産は基本的に“安かろう悪かろう”の世界なので、予算を下げれば下げるほど、物件のレベルも落ちる傾向にあります。譲れる条件と譲れない条件を整理した上で、自分に合った部屋を探しましょう。
光熱費節約のコツ
電気代やガス代を抑えるなら、まずは契約している事業者を調べてみてください。電力会社やガス会社との契約は自由化されています。相場よりも高い料金を支払っている場合は、ほかの事業者と契約することも検討するといいでしょう。
また、家電の使い方を工夫して消費電力を抑えるなど、省エネのテクニックは数え切れないほど存在します。たとえば、エアコンなら、冬でも扇風機と併用して暖かい空気を循環させる、室外機の周囲にものを置くと冷暖房の効果が下がるなど……。詳しくは経済産業省のホームページ5)にさまざまな方法が掲載されているので、参考にしてみてください。
家電の買い替えも選択肢のひとつ。一人暮らし用の冷蔵庫を使っている人の場合、部屋のスペースが許すならファミリータイプの冷蔵庫に買い替えたほうが中長期的に見ると安上がりかもしれません。後者のほうがメーカーの競争が激しいため、省エネ技術も高性能なことが多いからです。結婚後もそのまま利用してもいいでしょう。
気になる人は環境省が運営している、「しんきゅうさん」6)という省エネ度を比較するサイトなどを参考に、家電の買い替えを検討してみましょう。
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食費節約のコツ
食費に関しては、単に削ればいいというものではありません。 私たちの体は、食事によって作られています。安易に質を落とせば、健康面で悪影響を与えることになりかねません。
健康な体を維持することは、医療費を抑えたり、安価なプランで生命保険に加入できたりと、資産を維持することとも繋がっています。そもそも健康でなければ、しっかりと働いてお金を稼ぐこともできません。健康はプライスレスなのです。
食費を抑えるには、おすすめはやはり自炊をすること。一人暮らしの料理は割高と思われるかもしれませんが、継続的に料理をするなら話は別です。食材をまとめて購入する、冷凍して保存しておくなどして、リーズナブルに健康的な食事を摂取することを心掛けましょう。
一人暮らしの20代の社会人が陥りがちな、4つの浪費習慣
浪費しがちな人の生活を見ていると、無駄な出費を引き起こす習慣が染み付いているケースも多くあります。なかでも若い人が陥りがちな、4つの習慣を紹介しましょう。
仕事終わりの“無駄遣い”ルーティーン
会社帰りに立ち寄る駅ビル、飲み会のあとのラーメン、帰り際に買うコンビニスイーツ。なんとなく繰り返している仕事終わりのルーティーンのなかに、無駄遣いスポットが潜んでいませんか? 心当たりのある人は、試しに帰り道のルートを変えてみましょう。
買い物中の無意識の物色
買い物に行った時、無意識のうちに目当てのもの以外を“物色”している人もいます。たとえば、コンビニにゴミ袋を買いに行ったはずが、ついドリンクやお菓子を買ってしまっているなどです。目的の売り場に直行して“寄り道”しないことを心がけ、こうした無駄遣いはなくしていきましょう。
商品ストックの確認漏れ
洗剤や調味料など、切らしていると思って買ったものが、家に帰ったら残っていた経験はないでしょうか。こうしたストックの確認漏れも、無駄遣いの原因のひとつです。しっかりと買い物リストをメモするのはもちろんのこと、ネットスーパーで買い物をするのも解決策になります。
ネットでの“なんとなく買い”
ネットショッピングを楽しむのが当たり前になった現代。深夜にぼんやりとスマホをいじっていて、ポチッと買い物をしてしまう人も多いのではないでしょうか。
キャッシュレス決済は便利ですが、お金を支払った感覚が希薄になるデメリットもあります。あくまでも、本当に自分が欲しいものかどうかを見極めてから購入することが大切です。
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損得勘定で買い物をしない。商品はハートで選ぼう
現代社会では、お金と人生は切っても切り離せないもの。損得勘定で買い物をすれば、待っているのは「買わなくてもよかった」という後悔です。無駄な出費を抑えるためにも、心のときめきを感じるためにも、買い物はハートで行なってください。
生涯にわたって続ける家計管理は、一生もののスキルになります。自分なりの正しいお金の使い方を身につけて、豊かな人生を過ごしましょう。
この記事の監修者
八ツ井慶子
ファイナンシャルプランナー。2001年4月より「家計の見直し相談センター」の相談員としてFP活動を始める。13年7月に独立し、「生活マネー相談室」を設立。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開している。
ブログ「しあわせ家計をつくるゾウ」
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