社会人の実家暮らしは、一人暮らしと比べて貯金をしやすい環境ですが、それでも貯金ができないという人も意外と多いものです。そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さん監修のもと、実家暮らしの平均貯金額や実家暮らしならではの貯金術を解説。

どれくらいのペースで貯金ができそうか、どのような手段だと貯めやすいか、紹介していきます。

※この記事は、2020年8月12日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

豊田 眞弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー。日経マネーなどのライターを経て、94年より独立系FPとして活躍。現在は、個人相談のほか、講演や研修講師、コラム寄稿・監修などを行う。亜細亜大学ほかで非常勤講師も務める。「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。

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実家暮らしの平均貯金額

画像: 画像:iStock.com/CreativeJP

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まず実家暮らしの平均貯金額はいくらなのでしょうか? 一人暮らしの月々の平均貯金額と比べながら、貯金の実情を探っていきます。

実家暮らしと一人暮らしの平均貯金額

「マイナビウーマン」が22~39歳の社会人女性を対象に行った月々の貯金額に関するアンケート調査1)によると、実家暮らし女性の平均貯金額は3万3,691円、一人暮らし女性の平均貯金額は3万110円という結果でした。実家暮らしと一人暮らしの20〜30代女性の月々の平均貯金額には、約3,000円の差しかないことがわかります。

ちなみに、金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査2024年(単身世帯調査)」2)によると、一人暮らしの20代・30代の貯蓄額の平均値と中央値は以下のようになっています。

〈表〉金融資産保有額の平均値と中央値、預貯金額の平均値

金融資産保有額の平均値金融資産保有額の中央値預貯金額の平均値
20代161万円15万円91万円
30代459万円90万円200万円
※:貯金なしの人も含む。
※:金融資産保有額とは、預貯金以外の貯蓄型の保険や株式、投資信託、財形貯蓄などを含んだ金額。

預貯金額に注目すると、一人暮らしの20代で91万円、30代で200万円が平均です。前述のように実家暮らしと一人暮らしで大きな貯金額の差がないことから、実家暮らしの人もこの平均貯金額を参考にしていいでしょう。

なお、同じく金融経済教育推進機構の調査によると、年間手取り収入からの貯蓄割合は20代・30代ともに30%となっています。一方で、貯金なしを意味する「金融資産非保有」の人の割合は、一人暮らしの全世代でなんと33.8%。20代で36.6%、30代では33.4%と、約3〜4割の人が貯蓄できていません。

実家暮らしと一人暮らしを比較した結果

両者の貯金額を比べると、あまり貯金額に差がないということがわかりました。しかし、実家暮らしの人は住居費や食費、水道・光熱費などの金額分、手元に残るお金に余裕のある人が多いと想定できます。実家暮らしの人はもっと貯金ができてもよさそうな気がしますね。

自分の将来のためにも、実家暮らしの人はこの貯金をしやすい環境をもっと生かすべきでしょう。

実家暮らしが貯金をしやすい理由

画像: 画像:iStock.com/kazoka30

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実家暮らしの人は、なぜ貯金がしやすいといわれているのでしょうか。その理由は、いたってシンプルです。実家暮らしであれば一人暮らしよりも生活費がかからない傾向にあり、手元にお金が残りやすいからです。

具体的にそれぞれの生活費についてデータを見ていきましょう。まずは一人暮らしの生活費です。総務省の「家計調査年報(家計収支編)2024年」3)によると、34歳以下の一人暮らし(世帯人員1人)の生活費の平均は17万6,366円となっています。内訳は以下のとおりです。なおここでは、消費支出の合計を生活費としています。

〈表〉一人暮らしの生活費の平均と内訳(34歳以下/勤労者世帯)

食料4万734円
住居4万146円
水道・光熱8,999円
家具・家事用品4,580円
被服及び履物7,804円
保健医療8,423円
交通・通信1万8,446円
教育0円
教養娯楽2万4,230円
その他の消費支出2万3,004円
合計17万6,366円
※:四捨五入の関係で合計が合わないことがあります。

実家暮らしの支出に関する公的調査データは見当たりませんが、住居関係費や食料費は一人暮らしの場合の一般的な生活費と比べると少なくて済んでいるであろうことは想像に難くありません。

仮に、これらの費用の負担がゼロの場合を考えて、上記のデータをもとに実家暮らしの生活費の目安を考えてみると、以下のようになります。

(一人暮らしの生活費)17万6,366円
-(住居費)4万146円
-(食費)4万734円
-(水道・光熱費)8,999円
(実家暮らしの生活費)8万6,487円

なお、「家計調査年報」の調査対象には、持ち家がある世帯が含まれているほか、住宅ローンを消費支出に含めていないといった理由から「住居」の金額が低めになっている点にご注意ください。

もちろん、実家暮らしの場合、住居費や食費の一部として実家にお金を入れているケースもあります。「SUUMO実家暮らし調査」4)によれば、毎月実家にお金を入れているという人は64.5%。その平均月額は3万7,417円となっています。

個々人で事情が違うことを考慮しても、実家暮らしの人に必要な生活費は、一人暮らしの人に比べると少ない傾向にあるといえるでしょう。つまり、先ほども述べたとおり、手元に残るお金も実家暮らしのほうが多くなる可能性が高いと考えられます。

実家暮らしであれば、やる気次第で一人暮らしの人に比べて、より多くの金額を短期間で貯金していくことができるでしょう。

以下の記事では、実家暮らしの人が家に入れるお金の平均や金額の決め方について解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】実家暮らしの人が家に入れるお金の平均について、詳しくはコチラ

実家暮らしなのに貯金ができない原因

画像: 画像:iStock.com/tdub303

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ここまで実家暮らしの貯金の実情について見てきました。実家暮らしは貯金をしやすい環境ですが、もっと貯金額を増やすことはできそうですし、中には「なぜか全くお金が貯まらない…」と首をひねっている人もいることでしょう。

そこで、実家暮らしの人が貯金できない原因について、家計の専門家である豊田さんの相談業務などの経験を踏まえて紹介します。

原因1:お金に対する感度が低い

画像: 画像:iStock.com/tetsuomorita

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実家暮らしの場合、実家にお金を入れている人も多く、それが住居費や水道・光熱費、日用雑貨、食費に該当します。一人暮らしの家賃やそれ以下しか家に入れていないことも多く、ゆとりがあります。

おそらく、実家の家賃や光熱費などの支出を把握していない人がほとんどでしょうし、毎月の食費などはどのくらいで抑えるべきかなど、一人暮らしの人に比べるとお金に対する感度が低い傾向にあります。

貯金と何の関係があるの? と思うかもしれませんが、支出額の把握・管理は非常に重要なポイントです。

実家暮らしで食事も親に頼っている場合、外食費・スマホ代・交際費・趣味費、自己投資の費用しか管理する機会がありません。

家に入れるお金を引いてもゆとりがあり、自由になるお金が多いことから、一人暮らしをしていたら不可能な金額を趣味につぎ込むなど、過剰消費になりがちです。長年その生活に慣れてしまうと、一人暮らしや結婚で家計を運営していく際に収支のバランスが取りにくく、苦労をすることになります。

もちろん、実家暮らしの人が皆そうだとはいいませんが、この感覚のままでいると計画的に貯金することができません。

原因2:趣味優先のお金の使い方をしてしまう

画像: 画像:iStock.com/twinsterphoto

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前述どおり、実家暮らしで基本の生活費がほとんどかからないということは、余剰分は好きなことに使える、ということです。自分を満足させることの筆頭といえば、趣味や贅沢品に関する消費でしょう。

余剰資金があるがゆえ、趣味などに大きなお金を消費しがちなのです。たとえば、ブランド物のバッグや、好きなアーティストの遠方のコンサートチケットはもちろん、車も気軽にローンなどで購入しがちです。

もちろん、趣味は生活を豊かにしますし、否定はしません。しかし、趣味への投資を最優先にして、「余ったお金を貯金すればいい」という考えになりがちなのが問題です。

好きなことに費やすお金は際限がありません。このようなお金の使い方をしていたら、いつまで経ってもお金が貯まらないのは明らかです。

【関連記事】貯金できない人に共通する3つの原因。ズボラでも確実に貯められる方法とは?

FPが教える、実家暮らしならではの貯金のコツ

画像: 画像:iStock.com/Milatas

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では、一体どのようにすればきちんと貯金ができるようになるのでしょうか。ここからは、実家暮らしの人の貯金設定額の目安や貯金方法などについて紹介します。

(1)月の貯金額の目安

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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まずは月の貯金額の目安をきちんと決めることが大切です。実家暮らしの人は生活費の負担が少ない分、手取りの4割を貯金することを目標にしてみましょう。

4割というと、手取り月収15万円の場合は6万円、月収20万円なら8万円ですから多く感じる人もいるかもしれません。

しかし、先ほど示した総務省のデータのように、一人暮らしの人のひと月の生活費を改めて見てみると、食費と住居費、水道・光熱費で8万9,879円かかっています。

前述の「マイナビウーマン」の調査のとおり、一人暮らしの人は、これに加えて3万円ほどの貯金を捻出していると考えると、実家にお金を入れたとしても、実家暮らしの人が月に手取り月収の4割を貯金するというのは、無理な金額ではないといえるでしょう。

ただ、4割というのはあくまでも目安の話です。自分の支出を整理して、目標金額を設定することをおすすめします。

【関連記事】ゼロから始める貯金術について、詳しくはコチラ

(2)実家暮らしが実践するべき4つの貯金方法

画像: 画像:iStock.com/petekarici

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では実際に実家暮らしの人が貯金をしようと思った時に、どういった方法で貯金をすればいいのでしょうか。つぎの方法を試してみるのがおすすめです。

①まずは支出計画を立てる

「実家暮らしなのに貯金ができない原因」で述べたとおり、実家暮らしの人は、そもそも自分の収支を把握していない人が多いです。

そこで、まずは必要な支出を整理してみましょう。

手取りの4割を貯金することを目標として、家に入れるお金、昼食費、交際費、スマホ代などの支出を6割以下に抑えるように計画を立てましょう。

この時ポイントになるのが、今現在、月々どの程度の支出があるかを把握することです。まずは自分が何にどれだけ使っているか、1カ月程度、記録することをおすすめします。

実家暮らしの人にとって「生活するために絶対に必要」となる費目はそう多くはありません。しかし、自分が快適に過ごすための友人との飲み会代や交際費などは「必要」といえるでしょう。逆に、ストレス発散のための余分な買い物などは「必要」とはいえません。自分の支出状況を見直すことで、「無駄」が浮き彫りになってきます。

支出を6割以下に抑えられれば、残りの4割は貯金にあてられます。なお、趣味には、あくまでも「必要な支出」と「貯金」を除いた金額をあてる、と心がけることが大切です。

無理をすると長続きしませんが、毎月手取り収入の4割を貯めるようにすれば、大きな金額が短期で貯まります。せめて、もしもの時に備える「生活予備費」(生活費3カ月分程度)が貯まるまでは、少し頑張ってみてはいかがでしょう。

【関連記事】FPが教える! 袋分け家計簿のやり方とおすすめグッズ

②貯金用口座を分ける

もしもの時に備える「生活予備費」はすぐに引き出せる口座に貯金するのが基本ですが、貯金を引き出しにくい状況をつくるため、貯金用の口座を開設するのも1つの方法です。

普段引き落としなどに使っている口座とは別に、貯金用の口座を開設し、そちらに貯金をしていくようにするのです。

この時、口座のキャッシュカードや預金通帳は自宅の引き出しなどに入れてしまいましょう。普段は持ち歩かないようにすれば、ついつい引き出してしまうなんてこともなく済みます。

また、金融機関を選ぶ際はネット銀行を選ぶのもおすすめです。ネット銀行は大手の都市銀行よりも金利がいい場合もあるので、貯めた以上の金額を増やせて一石二鳥です。

③財形貯蓄・定期預金を利用する

より手堅く貯金をしていくのであれば、給与からの天引きで財形貯蓄をしたり、給料日の翌日に自動振替で自動積立定期を設定するなどの方法もあります。

財形貯蓄とは、企業の福利厚生の1つです。給与が振り込まれる時、あらかじめ設定した金額が自動で天引きされ、貯金にまわります。そもそも、給与口座に振り込まれないので、使い過ぎてしまう人にはおすすめです。

なお、財形貯蓄には貯金の目的に応じて主に3つの種類があります。

〈表〉財形貯蓄の種類

一般財形貯蓄使用する用途が限定されていない貯蓄
財形住宅貯蓄住居の購入や建設、リフォームなどの資金を貯めることが目的の貯蓄
財形年金貯蓄老後の生活のための資金を貯めることが目的の貯蓄

一般財形貯蓄以外は、原則として目的以外の用途では利用できません。しかし、節税効果のメリットがあるので、まずは自分の会社に財形貯蓄の制度があるのかをチェックしてみましょう。

一方、定期預金口座もメリットがある選択肢です。定期預金では、一般的に普通預金よりも金利が高く設定されています。財形貯蓄の制度が勤務先にない人や自営業の人は、ぜひ検討してみてください。

生活資金に余裕のある実家暮らしだからこそ、いつでも引き出せる普通口座に貯金するのではなく、一定期間引き出すことのできない金融商品で堅実に貯金していきたいものです。

④その他の積立サービスを活用する

備えとしての貯金はもちろん必要ですが、やはり人生に楽しみは必要です。旅行やショッピングなどにもお金をかけたいという人は、旅行会社などが扱う旅行積立や、百貨店の積立制度を活用すると効率的に貯金ができます。

たとえば、ある旅行会社の旅行積立では、定期積立プランの場合、積立期間・金額に応じて年利換算1.75%のサービス額が付きます。毎月2万円、2年間で48万円を貯金すると、48万8,750円になります。銀行預金では考えられないお得さです。万が一、会社が破綻した時には預金と違って積立額が保証されないリスクを理解した上で活用するようにしましょう。

【関連記事】お金を貯める方法20選。目的別・ライフステージ別のコツを専門家が徹底解説

(3)お金が貯まったら資産運用を始めてみよう

画像: 画像:iStock.com/SB

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ここからは番外編です。ある程度貯金が貯まった人に実践してもらいたい、資産運用についてお話ししていきます。

実家暮らしであれば生活の心配は少ないうえ、手取り月収の4割を貯めていくことができれば、かなり貯金額に余裕が出てくるはずです。そんな人は、貯金の一部で資産運用に挑戦してみましょう。

生涯役立つ金融リテラシーの向上につながりますし、運用がうまくいけばお金を増やすこともできます。ただし、投資にはリスクがつきもの。お金が増えることもあれば、減ることもあります。そのため、5年以内に使う予定がない資金の3割以下の範囲で投資に挑戦してみてはいかがでしょうか。

以下、投資ビギナーにおすすめの投資の始め方を簡単に紹介します。興味をもった人はより詳しく調べてみてください。

①新NISA(少額投資非課税制度)

NISAとは少額投資非課税制度のことで、投資をする人のための税制優遇制度です。通常、投資で得た利益には約20%税金がかかりますが、NISAで得られた利益には税金がかかりません。つまり、収益の100%が自分のものになるお得な制度なのです。

そして2024年からスタートした新NISAでは、従来の「つみたてNISA」と「一般NISA」が統合され、非課税期間が無制限となり、年間最大360万円まで投資できるようになりました。

「つみたて投資枠」では、年間最大120万円まで、長期の積立・分散投資に適した投資信託等に非課税で投資ができます。少額から始められ、教育資金・結婚・住宅購入など中長期の目標に活用しやすい制度なので、初心者は「つみたて投資枠」からスタートするのがおすすめです。

②iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後の生活資金を準備するための制度です。毎月の掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果が非常に高いのが特長です。運用で得られた利益にも税金はかかりませんし、60歳以降に受け取る際も税制上の優遇措置があります。

2022年の制度改正により、加入年齢が65歳未満まで延長され、また、受け取り開始年齢も60歳から75歳の間で選べるようになりました。ただし、途中でお金を引き出すことは原則としてできないため、確実に使わずにおいておけるお金を運用の対象とする必要があります。

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実家暮らしは「お金の貯め時」

生活に必要な支出を見ると、実家暮らしの人は一人暮らしの人よりも貯金がしやすい傾向にあることがわかります。実家暮らしだからと好きなだけお金を使うのではなく、手元にあるお金を上手に使う術を知れば、未来の自分への仕送りができて、趣味や自分への投資もしやすくなるはずです。

貯金の方法は多彩にあるので、自分のライフスタイルや目的に合わせて、かしこく貯金を始めてみてはいかがでしょうか。

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