子どものケガや病気に備えて、保険へ加入すべきかどうかを悩む方は多いでしょう。日本では子どもへの公的保障が手厚いだけに、民間保険への加入は悩みどころです。どんな保険があるのか、加入するメリット・デメリットがわからない方がほとんどではないでしょうか。

そこでこの記事では、ご自身もお子さんをお持ちのファイナンシャルプランナー・大堀貴子(おおほり たかこ)さん監修のもと、子どもの医療保険について解説。必要派・不要派の意見とともに、あなたに合う保険を探すヒントをご紹介します。

この記事の監修者

大堀 貴子(おおほり たかこ)

おおほりFP事務所 代表
2008年南山大学法学部法律学科卒業。大手証券会社で営業として勤務後、主人のタイ赴任がきまり、退社。現在は帰国し3人の子育てをしながら、住宅ローン、家計、資産運用などの相談、マネーに関する記事の執筆をしている。CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。
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子どもの保険の加入率はどれくらい?

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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平成30年9月に実施された生命保険文化センターの調査1)によると、生命保険の世帯加入率が全体で88.7%だったのに対して、子どもの加入率は全体で51.1%。そのなかでも民間保険と県民共済等がそれぞれ18.5%、18.7%と多くを占めています。

〈表〉子どもの生命保険の加入率(平成30年)

項目加入率
民間保険18.5%
県民共済・生協等18.7%
かんぽ生命5.5%
簡保3.1%
JA2.6%
全生保51.1%
※子ども=未婚で就学前・就学中。個人年金保険を含む。

なお、平成18年の全体の加入率は55.9%であり、加入率自体は年々低下傾向にあります。この理由は、子どもの病気・ケガに関して「乳幼児医療費助成」や「子ども医療費助成」などの公的保障が適用され、自治体によって差はあるものの、診察や治療の費用がほぼ無料になっているからだと考えられます。

ちなみに、平成29年に実施された厚生労働省による患者調査によると、0歳児の入院総数は11,200人なのに対し、1~4歳は6,700人、5~9歳は4,500人です2)。新生児では入院する場合が多いものの、成長すると相対的な入院リスクは低くなると読み取ることができるでしょう。

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そもそも、子どもの医療保険って? 概要とメリットを解説

子どもの生命保険の加入率は大人と比較して高くないことがわかりました。しかし、だからといって加入しなくてもいい、と判断するのは早計でしょう。

まずは、子どものケガや病気に備える(公的保険以外の)保険には、どのような種類があるのかを知っておきましょう。該当するものとして、「定期型の医療保障」「終身型の医療保障」「学資保険の医療保障特約」の3つが挙げられます。

(1)定期型の医療保障

画像: 画像:iStock.com/maroke

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① 概要
子どものケガや病気に備えた保険として最もポピュラーなのが、保障期間が決まっている「定期型」のものです。共済のほか、幼稚園・小学校などの団体を通して加入できるものが一般的です。

ケガ・病気による通院保障や入院保障がついているほか、子どもが他人にケガをさせた時のための個人賠償責任保険、先進医療特約を付加することも可能です。また、ケガによる1回の通院のみでも給付が受けられる場合があります。

給付金は日額で支払われるケースが多く、入院1日あたり5,000円、通院1日あたり1,500円程度の給付金が相場でしょう。また、入院1日あたり5,000円が給付されるものであれば、掛金は月額1,000〜2,000円程度になるのが一般的です。

② 主なメリット
「定期型」のメリットは、とにかく保険料が安いことです。月1,000円~2,000円で加入できるのは魅力的でしょう。

また、「定期型」は保障期間を更新できることもメリットのひとつです。通常、大きな病気を患った場合、新規で医療保険に加入するのは難しくなりますが、子どもの時から加入しておけばその後の健康状態にかかわらず継続することができます。

(2)終身型の医療保障

画像: 画像:iStock.com/smolaw11

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① 概要
2つ目は、「終身型」の医療保障です。「終身型」は「定期型」と異なり、契約を解消しない限り、保障は一生涯続きます。

子どもが加入する場合、入院や手術の保障のみが基本になりますが、先進医療や通院給付金といったオプションを付加できる場合もあります。

なお、入院保障は日額5,000〜1万円ほど、手術保障は5〜50万円ほどの保障で設定することが一般的です。

② 主なメリット
「終身型」は、加入年齢が低いほど月々の保険料は安くなるのがメリットです。保険料は保障期間中ずっと変わりません。

ただし、長く支払い続ける必要があるほか、途中で保障の基本内容を変更できません(追加で告知した場合、特約の追加は可能です)。また、持病・入院歴・通院歴があると加入しにくくなる点も注意が必要です。

(3)学資保険の医療保障特約

画像: 画像:iStock.com/marchmeena29

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① 概要
3つ目は、学資保険に特約として医療保障を付加するものです。学資保険の特約の場合も「終身型」と同様に、加入年齢が低いほど保険料は安くなります。なお、加入できる年齢に制限があり、年齢が上がると加入ができないこともありますのでご注意ください。

② 主なメリット
学資保険の特約で医療保障を付加するメリットとしては、保険料の支払いを学資保険と一緒にできる、手続きが一度で済む、という点が挙げられます。

<コラム>子どもの保険を考える上で知っておきたいこと

ここまで3種類の医療保障を受けられる保険を紹介しましたが、基本的な商品設計のほかに知っておきたいことがあります。大きなメリットがありますので、必ず押さえておきましょう。

【ポイント1】子どもの保険は、0歳からでも加入可能

画像: 画像:iStock.com/kuppa_rock

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保険会社によって多少の違いはありますが、ここまで紹介した3種類は、0歳から保険に加入できる場合が多いです。保険加入を検討するならば、0歳から加入するのがおすすめです。

なぜなら、子どもは0歳の時が最も入院率が高くなるためです。赤ちゃんの場合、夜泣きなどで個室が必要になる可能性がグッと高くなるという点でも、0歳で加入しておくと安心です。

【ポイント2】持病を持つ子どもの場合、加入が制限される場合がある

画像: 画像:iStock.com/gtlv

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「定期型」は、現在の健康状態について記載する「告知事項」が「終身型」に比べて少ない場合が多く、加入条件がゆるやかになっています。もし「終身型」に加入するのであれば、喘息・アレルギーなどの病気が発症していない0歳のうちに加入しておくのがおすすめです。

子どもの医療保険、「必要派」の意見とは?

ここまで、公的保障以外の子どもの保険について紹介しましたが、これらの保険を「必要」だと考える人と、「不要」と考える人が存在します。

以下で、私がこれまで出会った方々の意見をまとめてみました。それぞれの立場によって考え方が違いますので、どちらの考え方が自分に合うかを考えてみましょう。

まずは「子どもの医療保険は必要だ」と考える方たちの意見をご紹介します。

(1)公的保険では賄えないお金がある

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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必要派で最も多いのは、子どもが入院した時に、公的保険では賄えないお金があるという意見です。特に0歳児はインフルエンザ・RSウイルス感染症など、ちょっとしたことで10日以上の長期の入院になってしまうことが多くあります。

入院をした場合、集団部屋であれば公的保険の対象になり、ほぼ無料となりますが、個室を選ぶと、差額ベッド代がかかってしまいます。しかも差額ベッド代は、1日5,000円ほどかかってしまうこともあり、10日の入院になれば約5万円の出費になります。

また、子どもが入院をした時には24時間つきっきりになるため、親の飲食代も必要になります。さらに子どもが病院食をとらず、別で買わなければいけないこともよくあります。病院食は元々自己負担ですから、これに追加で費用がかかるのです。

〈表〉入院時の1食あたりの標準負担額(1日3食に相当する額を限度とする)3)

一般の方460円
住民非課税世帯の方210円
住民非課税世帯の方で過去1年間の入院日数が90日を越えている場合160円

さらに、親のどちらかが有休を取れる職場環境ならよいですが、10日間とるのが難しい家庭もあるでしょう。有休が取れなければ、収入減に直結します

結果として、1回の入院で10~30万円ほど家計への負担になることがあるのです。これらの金額は、もちろん貯金で賄うこともできますが、保険に加入しているとより安心感があるのは間違いないでしょう。

【関連記事】もしもの入院、いくらかかる? 費用の相場をまとめた記事はコチラ

(2)先進医療を安心して受けられる

画像: 画像:iStock.com/ipopba

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保険に加入する際に特約を付加しておけば、先進医療も安心して受けられます。先進医療とは、高度な医療技術を用いた治療法などのうち、公的医療保険の対象になっていないもののなかで、有効性・安全性が一定基準を満たしたものを指します。

公的医療保険の対象ではないため、先進医療を受ける場合、数千万円といった大金が必要になることもあります。必要になる確率は低いですが、ゼロではありません。突然大金が必要になった時の対策が取れるのは安心です。

(3)〈終身型〉子どものうちに加入した方が大人になってからの保険料が割安になる

画像: 画像:iStock.com/PoppyPixels

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「終身型」では、加入した時点から保険料は生涯変わりません。また、年齢が低いほど保険料が安くなることから、子どもの頃に加入した場合、大人になってから加入するよりも、安い保険料で同じ保障を受けられることになります。

あくまで一例ですが、保障内容によるものの、子どもの頃に「終身型」に加入しておけば、月1,000円程度(年間1~2万円)で済む場合もあります。20歳で同じ保障内容の「終身型」に加入しようと思うと、月5,000円くらいはかかることになるでしょう。

(4)所得税・住民税の控除対象になる

画像: 画像:iStock.com/Chainarong Prasertthai

画像:iStock.com/Chainarong Prasertthai

子どもが保険に加入した場合、掛金は親の所得控除対象になり、節税に利用できます。医療保険単体(「定期型」「終身型」)、学資保険の特約は、いずれのケースも「介護医療保険料」として一定額が所得から控除されることになります。

医療保険以外にも、住宅ローン控除や生命保険料控除を活用すれば節税につながります。下記記事では、FPが「所得控除」「税額控除」の基礎知識や、有効な節税方法について詳しく解説。節税する際の注意点も紹介していますので、ぜひご覧ください。

【はじめての節税】サラリーマンが実践すべき9つの税金対策

(5)〈終身型〉将来、子どもへのプレゼントになる

画像1: 画像:iStock.com/Yagi-Studio

画像:iStock.com/Yagi-Studio

「終身型」であれば子どもに医療保障をプレゼントできるというメリットもあります。子どもが大きくなって社会人になりたての時は、まだ収入が低く医療保険にお金をかける余裕がないものです。子どもが小さい頃に保険に加入しておいて、安い保険料で最低限の保障を渡すことができるだけでも、子どもへのプレゼントと言えるかもしれません。

子どもの医療保険、「不要派」の意見とは?

次に、「不要派」の方たちの意見を見ていきましょう。

(1)基本的な医療費は無料になる

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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子どもの医療保険を不要派の意見としては、やはり公的保険で医療費が基本的に無料になるということが大きいです。

先ほど、入院の場合に公的保険の対象になるのは大部屋、と説明しました。もちろん、子どもが大部屋に入院すると、親用のベッドがなかったり、周囲への迷惑にならないように配慮する必要があるなど、看病する親は大変です。

しかし、その状況に臨機応変に対応できる自信がある、もしくは祖父母と協力するなどして、看病できる体制が整えられれば、個室に入室するなどの必要はなくなり、自己負担は発生しません。

なお、子どもの医療費助成は、基本的に義務教育の間ですが、地方自治体によって、条件や金額に微妙な違いがあります。これは公的医療保険の運営主体が国ではなく、地方自治体だからです。ある市では無料で、他では500円の支払いが必要などと差があります。まずはご自身が住んでいる地域の医療費助成制度を確認することをおすすめします。

(2)入院率(受療率)が大人に比べて低い

画像: 画像:iStock.com/Hakase_

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厚生労働省の「平成29年患者調査」2)によると、各年代の入院率(受療率)は、下記のようになっています。

〈表〉年齢階級別にみた入院受療率(人口10万当たりの人数)

年齢総数
0歳1,167
1~4169
5~986
10~1494
15~19113
20~24158
25~29235
30~34291

ご覧いただいて分かるように、子どもの入院受療率は、0歳こそ他の年代と比べて高いものの、1〜4歳は20〜24歳とほぼ同等で、5歳以降は成人よりもかなり低い数字です。

そもそも入院するほど大きな病気やケガをする可能性が低いため、保険に加入する必要性が薄いという意見もあるのです。

(3)〈終身型〉保障内容を変更できない

画像: 画像:iStock.com/Ivan-balvan

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上記の「(3)〈終身型〉子どものうちに加入した方が大人になってからの保険料が割安になる」で、「終身型」の場合、安価な月額保険料で医療保険を子どもにプレゼントできる、と説明しました。

ただし、保険料はそのままですが、保障内容も変更することができません。将来の医療状況や社会状況が分からないため、その時点では必要無くなったり、足りなくなったりしている可能性があります。

例えば、いま0歳の子どもが60歳になった時に、ガンは入院する状況なのかは分かりません。医療技術の進化によって、ガンは簡単に治る病気になっている可能性もあるでしょう。

もちろん「終身型」も中途解約はできますが、解約後に新しい保険に入ろうとすると、その時の年齢に合わせた保険料で加入し直さなければいけなくなってしまいます。早いうちから「終身型」に加入していたメリットが薄くなってしまうのです。

あなたはどうする? 子どもの医療保険、チャート診断

ここまで子どもの医療保険の必要派・不要派の意見を紹介しました。それぞれ納得する部分があったでしょうが、自分事になるとどう選択すればいいのか分からない人も多いでしょう。

そこで、自分の子どもを加入させた方がいいのか、加入する場合にはどの保険が合っているのかを、以下のチャートに沿って見つけていきましょう。

〈図〉子どもの医療保険、診断チャート

画像: 本チャートは、あくまでも判断基準の一要素に過ぎません。必ずしも保険への加入を推奨するものではありません。同一の保険商品カテゴリでも、商品や契約内容で差があるため、チャート内容と矛盾する場合があることをご承知ください。

本チャートは、あくまでも判断基準の一要素に過ぎません。必ずしも保険への加入を推奨するものではありません。同一の保険商品カテゴリでも、商品や契約内容で差があるため、チャート内容と矛盾する場合があることをご承知ください。

こんな場合、どうする? 子どもの医療保険シミュレーション

(1)0歳児がいるAさん

画像: 画像:iStock.com/kokouu

画像:iStock.com/kokouu

0歳児は入院(受療)率が他の年代より高く、保障を得られる可能性が高くなります。保険加入を検討されるなら、0歳児のうち、もしくは妊娠中に加入しておくことがおすすめです。

「定期型」「終身型」「学資保険の特約」のいずれも選択肢として考えられますが、「学資保険の特約」は妊娠中からでも加入できます。なお、「終身型」は成人後の子どもへのプレゼントにすることも可能です(詳細はコチラ)。

月々の料金の目安としては、「定期型」は共済で1,000円もしくは2,000円、「終身型」は入院給付金日額が5,000円のタイプで1,000~1,500円程度です。

(2)6歳・3歳の子どもがいるBさん

画像2: 画像:iStock.com/Yagi-Studio

画像:iStock.com/Yagi-Studio

Bさんの選択肢としては、「定期型」と「終身型」の2つがあげられます。小学生はケガをすることが多いので、捻挫などの軽度のケガでも給付金が下りる可能性のある「定期型」に加入しておくと保障を受けられる可能性が高くなります。

近年は中学受験が多くなっています。6歳のお子さんの教育費が増える見込みの場合には、すぐにやめられるという点を踏まえ、「定期型」を選択するのも良いでしょう。

一方、家計に余裕があり、教育費が負担にならない見通しがあれば、子どもへのプレゼントとして、「終身型」に加入しておくのもおすすめです。

月々の料金の目安としては、「定期型」はAさんと同様に共済で1,000円もしくは2,000円、「終身型」は入院給付金日額が5,000円のタイプで6歳児・3歳児ともに1,000~1,500円程度です。

(3)持病を持つ子どもがいるCさん

画像: 画像:iStock.com/AzmanJaka

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医療保険は通常、加入時に健康状態などについて告知が必要です。もし加入時に持病があるなど健康状態に問題があった場合、保険自体に加入できない、もしくは加入できても特定の部位や症状については保障されないといった特別条件が加えられることがあります。

「定期型」では加入者の健康状態を問う「告知事項」の項目数が少ない場合があり、加入できる可能性は比較的高くなります。しかし、持病があったとしても「終身型」にも加入できる可能性がないわけではないので、まずはいずれか希望するタイプを選んで申請してみましょう。

不安なら医療保険に加入しておこう

子どもの医療保険については、心配ならば、不安を払拭するためにも加入しておくことをおすすめします。義務教育の間なら、医療費はほぼ無料になりますが、周囲への迷惑や仕事との兼ね合いを考えると、入院に伴うコストは少なくありません。家計にあまり余裕がない家庭の場合、月々の支払いが気になるかもしれませんが、一層加入を推奨します。また、一度大きな病気を発症してしまうと、保険に加入できなくなってしまうこともあるので、加入する場合にはできるだけ早めに手続きをするようにしましょう。

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