「子どもはほしいけれど、出産費用がどれくらいかかるのか不安」。そんな悩みを抱えている人も少なくありません。そうした中、政府は「出産費用無償化」の方針を示し、具体的な制度設計を進めています。
 
この記事では、ファイナンシャルプランナーの原絢子さん監修のもと、出産費用の無償化はいつから始まるのか、無償化の対象はどこまでかなど、現時点で明らかになっている内容について解説します。現状で活用できる制度も紹介しますので、出産を考えている人はぜひ参考にしてください。

※:本記事は、2026年2月10日時点の情報に基づいて執筆しています。制度の内容は今後変更される可能性があります。

この記事の監修者

画像: 出産費用無償化はいつから?制度の方向性をわかりやすく解説

原 絢子(はら あやこ)

FPサテライト株式会社 所属FP。大学卒業後、翻訳・編集業務に従事。金融とは無縁のキャリアを積んできたが、結婚・出産を機にお金の知識を身につけることの大切さを実感。以来、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。自分の人生を自分でコントロールするためには、お金について学ぶことが必要との思いから、執筆・監修、セミナー講師などを通して、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。

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出産費用の無償化はいつから始まる?

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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現在妊娠を考えている人にとって、出産費用の無償化がいつから始まるかは気になる点でしょう。現時点での見通しは以下のとおりです。

2027年度以降に開始予定

出産費用の無償化については、これまで段階的に議論が進められてきました。現状、政府は制度の方向性を整理しており、2026年の通常国会への関連法案提出を目指して、検討を進めています。

そのため、制度が実際にスタートするのは、早くても2027年度以降になる見込みです。

妊娠や出産のタイミングによっては、現行制度が適用されることも想定されるため、最新情報を確認しながら家計の準備を進めていきましょう。

出産費用無償化が議論されている背景

現在、出産費用は基本的に公的医療保険の対象外であり、原則として自己負担になります。しかし、負担を補う制度として「出産育児一時金」制度が設けられており、2023年4月以降は原則50万円が支給されています1)

とはいえ出産費用は年々上昇しており、一時金だけでは不足するケースも少なくありません。また、出産は自由診療であるため、医療機関や地域によって費用に差が生じています。

こうした経済的負担や地域差が、出産へのハードルとなり、少子化の一因となっている可能性が指摘されています。

そこで、出産に伴う経済的負担を軽減し、安心して子どもを産み育てられる環境を整備する少子化対策の1つとして、出産費用の無償化が議論されているのです。

どこまでタダになる?無償化の範囲と対象

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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「出産費用の無償化」と聞くと、出産にかかるすべての費用がゼロになるように感じるかもしれません。

しかし実際には、無償化の対象となるのは一定の範囲に限られます。現在検討されている無償化の範囲と対象について確認しておきましょう。

分娩費用が無償に

現在、正常分娩は公的医療保険の適用外で、自由診療となっています。そのため、医療機関ごとに費用が異なり、地域や施設によって金額差が生じています。

新制度では、正常分娩の費用について全国統一の「基本単価」を設定し、それを保険で全額カバーする方針が示されています2)

一方で、帝王切開や吸引分娩など、従来から保険適用とされてきた医療行為については、引き続き自己負担3割が維持される方向性が示されています2)。正常分娩が無償化される一方で、医療行為を伴う出産については従来どおりの負担が続くことになります。

ここで注意が必要なのは、「お祝い膳」やマッサージといった出産に付帯するサービスです。これらは医療行為ではないため保険適用の対象外とされ、全額自己負担となる見通しです2)

出産にかかるすべての費用が無償になるわけではない点には、十分注意しましょう。

〈表〉出産費用の自己負担イメージ

自己負担なし
(無償)
自己負担3割全額自己負担
正常な分娩費用・帝王切開
・吸引分娩
など、従来から保険適用されている医療行為
・お祝い膳
・マッサージ
・エステ
・写真撮影
など、出産に付帯するサービス

すべての妊婦が対象?

出産費用無償化の対象となるのは、現行の出産育児一時金と同様に、「国民健康保険や健康保険組合などの公的医療保険に加入している人」となる見通しです。

具体的な要件は今後の議論が待たれますが、現行の出産育児一時金の支給要件「妊娠85日(約4カ月)以上の出産で、死産・流産なども含まれる」を維持する方向性が示されています3)

「無痛分娩」は保険適用外?

近年、出産時の身体的・精神的負担を軽減する目的で、「無痛分娩」を選択する人が増えています。現時点では、無痛分娩は公的医療保険の適用外であり、費用は全額自己負担です。

無痛分娩についても保険適用を求める声はありますが、対応できる医療従事者の確保や、実施可能な医療機関の地域差といった課題があります4)。そのため、当面は保険適用の対象外とされる可能性が高いと考えられます。

現状の制度で活用できるもの

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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出産費用無償化の議論は本格化しており、2027年度以降の実現が見込まれていますが、制度開始まではまだ時間があります。

ここでは現行制度の中で、出産にかかる経済的負担を軽減できる主な支援策を紹介しましょう。

出産育児一時金

出産時の経済的負担を軽減する、現時点での代表的な制度が「出産育児一時金」です。公的医療保険に加入している人が出産した場合、子ども1人につき原則50万円が支給されます1)

多くの医療機関で、出産育児一時金を医療機関へ直接支払う「直接支払制度」が利用できるため、出産時にまとまった現金を用意する必要はありません。出産費用が一時金より少なかった場合は、後日、差額が支給されます。

無償化が始まるまでは、この制度が出産費用の基本的な支えとなります。

妊婦のための支援給付

妊娠期から出産・子育て期まで切れ目なく支援するしくみとして、「妊婦のための支援給付」があります。妊娠届出時に5万円、出産後に5万円の計10万円が支給される制度で、経済的支援と相談支援を一体的に行う点が特徴です5)

国の制度ですが、実施主体は自治体のため、自治体によって制度の名称や給付方法に違いがあります。詳細はお住まいの自治体に確認してみましょう。

医療費控除

医療費控除は、生計を一にする家族の1年間の医療費合計が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合に、税負担が軽減される制度です6)。確定申告を行うことで、所得税の還付や住民税の軽減を受けられます。

正常分娩の費用や妊婦健診費用も医療費控除の対象になります。ただし、出産育児一時金や妊婦健診補助券などで補填される金額を差し引いた自己負担分のみが対象となります。また、帝王切開などで医療費が高額になった場合には、「高額療養費制度」により、1カ月あたりの自己負担が一定額を超えた分が払い戻されます7)

自治体独自の支援制度

国の制度に加えて、自治体が独自に出産支援を行っているケースもあります。

たとえば東京都港区では、出産育児一時金を上回る自己負担分に対して、最大31万円を支給しています8)。神奈川県横須賀市では、「妊婦のための支援給付」に上乗せする形で独自の祝い金を計10万円支給しています9)。千葉県野田市では、子ども1人につき出産祝い金として10万円が支給されます10)

支援内容や要件は自治体ごとに異なるため、自治体のホームページなどで早めに確認しておきましょう。

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出産費用無償化に関するよくある質問

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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最後に、出産費用無償化に関する疑問についてお答えします。

無償化の恩恵は全国どこでも受けられますか?

出産費用無償化は、施設差・地域差をなくし、全国どこでも同じ水準の給付を受けられるしくみを目指した検討が進められています。正常分娩については全国一律の「基本単価」を設定し、その費用を公的医療保険でカバーする方針です。

ただし、お祝い膳やマッサージなどの付帯サービスは無償化の対象外で、自己負担となります。これについては、妊婦が納得して選択できるよう、費用や内容の「見える化」が進められるとされています11)

無償化の制度が始まった後も、医療機関ごとの費用やサービス内容を確認し、出産にかかる総額で比較する視点が大切です。

妊婦健診の費用も無償化されますか?

妊婦健診の費用は、今回の出産費用無償化の対象には含まれていません。ただし、別の枠組みで、妊婦健診費用の無償化についても検討が進められています12)

現在、妊婦健診は自治体による助成があります。しかし、医療機関ごとに価格設定に差があるうえ、助成額は自治体によって異なるため、自己負担が発生しているケースも少なくありません。

そこで、妊婦健診についても「標準額」を設定し、一定の基準内の検査については自己負担をゼロにすることが検討されています。

無償化が始まると、現金給付はなくなるの?

出産費用の無償化(現物給付)の開始に伴い、現行の出産育児一時金(現金給付)は廃止となる方向性が示されています。

ただし、帝王切開などの保険診療における自己負担や、出産に付帯するサービスなど、出産に伴う周辺費用への配慮から、新たな現金給付のしくみを設けることも検討されています11)

最終的な形はまだ確定していないため、今後の議論や発表を注視していきましょう。

安心して赤ちゃんを迎えるために

画像: 画像:iStock.com/kuppa_rock

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出産費用の無償化は、2027年度以降の実施が見込まれており、正常分娩の基本的な費用を保険でカバーする方向で検討が進められています。ただし、帝王切開などの医療行為や、出産にかかる付帯サービスについては、引き続き自己負担が残る見通しです。

現状、まだ不確定の部分はあるものの、出産時の費用負担を軽減しようとする動きが進んでいるのは確かです。最新情報を確認しながら、妊娠・出産に向けた家計の準備を進めていきましょう。

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