「手取りの何割を貯金すればいいの?」「みんなは何割を貯金しているの?」と疑問に思っている人も少なくないでしょう。
この記事では、ファイナンシャル・プランナーの冨士野喜子さんの監修のもと、「貯金は手取りの何割が理想なのか?」という疑問にお答えします。また、貯金が苦手な人でも実践しやすいお金の貯め方や資産形成のコツを解説します。
この記事の監修者

冨士野 喜子(ふじの よしこ)
ふじのFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー。教育出版会社、外資系生命保険会社を経て、2012年にファイナンシャルプランナーとして独立。自身の結婚、妊娠、出産、子育ての経験を活かし、20~30代のライフプランニングを中心に活動。「資格取得講座や子ども向けのマネー講座の講師」など幅広い年代に向けてお金に関する情報発信を行っている。
手取りの何割を貯金すればいい?みんなの平均貯蓄割合

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毎月どれくらい貯金すればいいのか、その目安を知るヒントになるのが、ほかの人の貯蓄状況です。まずは金融広報中央委員会の調査をもとに、年代別や収入別の平均的な預貯金額や貯蓄額を紹介します。自分の目標に合わせた貯金計画を立てる際の参考にしてみましょう。
年代別の平均預貯金額
まずは、年代別の預貯金額を見てみましょう1)2)。
〈表〉年代別預貯金額(金融資産を保有していない世帯を含む)1)2)
年代 | 単身世帯 | 2人以上世帯 |
---|---|---|
20代 | 65万円 | 105万円 |
30代 | 289万円 | 286万円 |
40代 | 275万円 | 361万円 |
50代 | 510万円 | 472万円 |
60代 | 637万円 | 885万円 |
70代 | 676万円 | 774万円 |
単身世帯でも2人以上世帯でも、単身世帯40代を除き、基本的に年齢が上がるにつれて預貯金が増える傾向にあることがわかります。これは、若い頃から計画的に貯金を積み立てている人が多いことや、年齢とともに収入が増加することが主な理由として考えられます。
年代別の平均貯蓄額
預貯金だけでなく、株式や投資信託、保険商品など、様々な形で貯蓄している人も多いでしょう。ここでは、年代別の平均貯蓄額を「平均値」と「中央値」の両方から確認します。
平均値は、高額な貯蓄を持つ一部の人の影響を受けやすいのに対し、中央値はデータの中心値を示すため、より実態に近い値となります。そのため、貯蓄額の実態を把握するには、平均値と中央値の両方を参考にしましょう。
〈表〉年代別金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)1)2)
年代 | 単身世帯 | 2人以上世帯 | ||
---|---|---|---|---|
平均値 | 中央値 | 平均値 | 中央値 | |
20代 | 121万円 | 9万円 | 249万円 | 30万円 |
30代 | 594万円 | 100万円 | 601万円 | 150万円 |
40代 | 559万円 | 47万円 | 889万円 | 220万円 |
50代 | 1,391万円 | 80万円 | 1,147万円 | 300万円 |
60代 | 1,468万円 | 210万円 | 2,026万円 | 700万円 |
70代 | 1,529万円 | 500万円 | 1,757万円 | 700万円 |
年代別データの中央値を確認すると、2人以上世帯は年齢が上がるにつれて貯蓄額が増加している傾向があります。単身世帯でも同じ傾向が見られますが、40代・50代は一時的に貯蓄額が低くなっています。この現象の背景として考えられるのは、40代・50代は住宅購入などにより、貯蓄よりも支出が優先されることが影響していると考えられます。
世帯別データの中央値を比較すると、2人以上世帯の方が単身世帯と比べて、貯蓄額は高くなる傾向にあります。これは、2人以上世帯では共働きによって世帯の収入が高くなることが、貯蓄額に反映されていると考えられます。また、どちらの世帯も60代になると、貯蓄額がそれ以前の世代に比べて2倍以上になることがわかります。これは、退職金の受け取りなどによる影響が理由のひとつと考えられます。
年代別の平均貯蓄割合
では、手取りの何割を貯蓄にまわすのが一般的なのかを見ていきましょう。ここでは、年間手取り収入に対する平均貯蓄割合を年代別に比較します。
〈表〉【年代別】平均貯蓄割合(金融資産保有世帯)1)2)
年代 | 単身世帯 | 2人以上世帯 |
---|---|---|
年間手取り収入からの平均貯蓄割合(臨時収入含む) | ||
20代 | 18% | 14% |
30代 | 17% | 14% |
40代 | 14% | 12% |
50代 | 14% | 12% |
60代 | 10% | 11% |
70代 | 6% | 8% |
金融広報中央委員会の調査によると、単身世帯では20代の貯蓄割合(18%)が最も高く、年齢とともに低下する傾向が見られます。一方、2人以上世帯では、20代・30代が14%で最も高く、それ以降は徐々に減少しています。
この傾向の背景には、年齢とともに増える生活費の負担があると考えられます。住宅ローンや家賃、食費、医療費などの支出が増えることで、貯蓄にまわせる余裕が減少しやすくなります。また2人以上世帯では、子どもの教育費が加わることで、貯蓄の余裕がさらに減る傾向が見られます。さらに、60代以降になると退職による収入の減少が影響し、貯蓄割合も低下しやすくなると考えられます。
収入別の平均貯蓄割合
最後に、年間手取り収入からの貯蓄割合がどのように異なるのかを見てみましょう。なお、年間の貯蓄額は、年間手取り収入と貯蓄割合を掛けて試算しています。
〈表〉【収入別】平均貯蓄割合(金融資産保有世帯)1)2)
世帯の年間手取り収入 | 単身世帯 | 2人以上世帯 | ||
---|---|---|---|---|
貯蓄割合 | 年間の貯蓄額 (年間手取り収入×貯蓄割合) | 貯蓄割合 | 年間の貯蓄額 (年間手取り収入×貯蓄割合) | |
300万円未満 | 10% | ~30万円 | 8% | ~24万円 |
300~500万円未満 | 17% | 51~85万円未満 | 8% | 24~40万円未満 |
500~750万円未満 | 20% | 100~150万円未満 | 11% | 55~82万5,000円未満 |
750~1,000万円未満 | 27% | 202万5,000円〜270万円未満 | 14% | 105~140万円未満 |
1,000~1,200万円未満 | 11% | 110~132万円未満 | 18% | 180~216万円未満 |
1,200万円以上 | 22% | 264万円以上 | 19% | 228万円以上 |
単身世帯で年間手取り収入からの平均貯蓄割合が最も高いのは、750~1,000万円未満であり、次点が1,200万円以上という結果でした。一方、2人以上世帯で貯蓄割合が最も高いのは1,200万円以上、次いで1,000~1,200万円未満となっています。
毎月いくら貯金すればいい?

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年代別の平均貯蓄額や収入別の平均貯蓄割合のデータを参考するのであれば、年間手取り収入からの貯蓄割合は約10~20%が一般的と考えられます。なお、専門家の中には20~30%を理想値として挙げる人も少なくありません。
ただし、ライフイベントによる急な支出や年間手取り収入の変動などを考慮すると、毎月同額を貯金し続けるのは難しいケースもあります。特に貯金に慣れていない人は、毎月同額を貯金するよりも、「年齢×1万円」などのルールを決め、年間目標額を設定する方法がおすすめです。年齢が上がるにつれて年間手取り収入も上がると仮定し、20代、30代などの年代によって、掛ける金額を上げて計画するのがポイントです。
以下は、1万円からスタートし、年代ごとに年齢に掛ける金額を5,000円上げて貯金した場合の例です。
〈表〉20~30代の貯金額例
年齢 | 年間貯金目標 (年齢×1万円) | 年齢 | 年間貯金目標 (年齢×1万5,000円) |
---|---|---|---|
20歳 | なし | 30歳 | 45万円 |
21歳 | なし | 31歳 | 46万5,000円 |
22歳 | なし | 32歳 | 48万円 |
23歳 | 23万円 | 33歳 | 49万5,000円 |
24歳 | 24万円 | 34歳 | 51万円 |
25歳 | 25万円 | 35歳 | 52万5,000円 |
26歳 | 26万円 | 36歳 | 54万円 |
27歳 | 27万円 | 37歳 | 55万5,000円 |
28歳 | 28万円 | 38歳 | 57万円 |
29歳 | 29万円 | 39歳 | 58万5,000円 |
29歳までの貯金額 | 182万円 | 39歳までの貯金額 | 699万5,000円 |
〈表〉40〜50代の貯金額例
年齢 | 年間貯金目標 (年齢×2万円) | 年齢 | 年間貯金目標 (年齢×2万5,000円) |
---|---|---|---|
40歳 | 80万円 | 50歳 | 125万円 |
41歳 | 82万円 | 51歳 | 127万5,000円 |
42歳 | 84万円 | 52歳 | 130万円 |
43歳 | 86万円 | 53歳 | 132万5,000円 |
44歳 | 88万円 | 54歳 | 135万円 |
45歳 | 90万円 | 55歳 | 137万5,000円 |
46歳 | 92万円 | 56歳 | 140万円 |
47歳 | 94万円 | 57歳 | 142万5,000円 |
48歳 | 96万円 | 58歳 | 145万円 |
49歳 | 98万円 | 59歳 | 147万5,000円 |
49歳までの貯金額 | 1,589万5,000円 | 59歳までの貯金額 | 2,952万円 |
大卒の新卒で就職する23歳から貯金を始めると、60歳になる前に合計2,952万円を貯めることができます。もちろん、結婚や車の購入費などのライフイベントで貯金の増減があるかもしれませんが、ある程度の老後資金は残せるのではないでしょうか。このように1年間の貯金額を決めて、コツコツ継続することが大切です。
【コラム】貯金は生活費の6カ月分を目標にしよう
平均預貯金額や平均貯蓄額を見てきましたが、そもそも貯金はいくらあれば十分といえるのでしょうか。一般的には、病気・事故・失業・ライフイベントなどの突発的な支出に備える「緊急予備資金」として、生活費の6カ月分が目安とされています。
たとえば、総務省の調査によると、35~59歳の単身世帯の生活費の平均は26万9,933円です3)。この場合、約162万円(27万円×6か月)の貯金があれば、収入が減ったり急な支出が必要になったりした際にも対応できると考えられます。まずはこの金額を目標に貯金を進めるとよいでしょう。
なお、6カ月分の生活費を確保したあと、さらなる貯蓄を検討する場合には、より効率的に資産を増やせる積立投資やその他の資産運用も視野に入れることをおすすめします。
無理なく続けられる貯金の方法とコツ

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一般的な貯蓄割合は約10~20%ということがわかりましたが、これまでに貯金の成功体験がなく、どうすれば貯金ができるのかわからないという人もいるかもしれません。そこで、貯金を無理なく続けるための実践的な方法とコツを紹介します。
それぞれについて以下で詳しく説明していきます。
支出を見直して貯金を増やす
「現在の生活が経済的に厳しく、貯金が難しい…」と感じている人もいるかもしれません。そんな場合は、まず家計の見直しから始めてみましょう。
家計を見直す目的は、無駄な支出を見つけ、その分を貯金にまわすことにあります。ただし、すべてを削りすぎるとストレスがたまり、長続きしません。無理のない範囲で節約可能な項目を見極めることが、家計管理を成功させるコツです。
生活費には、主に2つの種類があります。
- 固定費:毎月一定額の支払いが発生する支出(例:家賃、光熱費、保険料など)
- 変動費:金額や内容が月ごとに変わる支出(例:食費、娯楽費など)
基本的に、固定費を削減する方が効果的です。固定費は一度見直して削減すれば、そのあとも継続的に支出を抑えられるため、長期的な節約効果が期待できます。たとえば、以下のような方法があります。
- 家賃の見直し(引っ越しや家賃交渉)
- 携帯電話プランの変更
- 保険料の見直し
一方で、変動費は無理のない範囲で調整するといいでしょう。食費や娯楽費を極端に削ると生活の質が下がり、ストレスにつながる可能性があります。そのため、適度な節約を心がけながら、日常の支出を見直すことがポイントです。
まずは固定費から優先的に見直し、その後、変動費についてもバランスを考慮しながら調整してみましょう。家計の見直しや節約方法について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】家計を見直し、お金を貯める方法について、詳しくはコチラ
【関連記事】すぐにできる家計の見直し術について、詳しくはコチラ
【関連記事】簡単にできる節約術30選について、詳しくはコチラ
貯金習慣を身につけるための工夫
貯金習慣がない人には、つぎの4つの特徴が見られます。
- 貯金をする意識が低い
- 貯金の成功体験がない
- 経済的に困ったことがない
- 将来へのリスク管理が甘い
貯金習慣がある人は、目標を設定し、「貯金して欲しいものを買う」といった経験を積んでいることが多い一方で、貯金習慣がない人は、その場の勢いでお金を使ってしまうなど、先を見通してのお金のやりくりが苦手で、計画的に行動する経験が少ない傾向にあります。
お金の経験値とは、家計管理や貯金、資産運用などの成功体験だけでなく、失敗体験や経済的に困った経験を含めたものを指します。特に、経済的に困った経験や貯金があって助かった経験がない場合、貯金の重要性を実感する機会が少なく、将来に向けたリスクを具体的に想像するのが難しいと考えられます。その結果、貯金の目標や目的を考える必要性を感じにくいことがあります。
貯金が苦手な人でも確実に貯金できる方法として、「先取り貯金」を試してみるのがおすすめです。収入が手元に入る前に一定額を自動的に貯金するしくみを取り入れることで、意識せずに貯金ができるようになります。
貯金への苦手意識を改善したい人や、貯金のコツを知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
【関連記事】ズボラでも確実に貯められる方法について、詳しくはコチラ
iDeCoやNISAなどを活用する
預貯金より効率よくコツコツお金を貯めたいのであれば、積立投資を活用するのがいいでしょう。特にNISAは2024年1月から大きく改正され、年間投資額の拡大や非課税期間の無期限化など、メリットが多いと注目が集まっています。
たとえば、毎月3万円を「貯金した場合」と、「NISAを活用して投資信託などで積立投資をした場合」のシミュレーションをしてみましょう。NISAは年間3%の利益が出ると仮定し、普通預金(金利0.1%)、定期預金(金利0.2%)と比較・算出しています。
〈表〉毎月3万円ずつ積み立てた場合
年数(元本) | 積立投資(NISA)(※1、※3) (年率3%) | 普通預金(※2、※3) (金利0.1%) | 定期預金(※2、※3) (金利0.2%) |
---|---|---|---|
1年(36万円) | 36万4,991円 | 36万192円 | 36万390円 |
5年(180万円) | 193万9,401円 | 180万4,560円 | 180万9,155円 |
10年(360万円) | 419万2,243円 | 361万8,146円 | 363万6,442円 |
15年(540万円) | 680万9,181円 | 544万805円 | 548万2,019円 |
※1:楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」を使用し計算。
※2:金融広報中央委員会「しっかりシミュレーション」を使用し計算。
※3:手数料、税金等は考慮しない。
積立投資した場合、仮に年率3%で毎月3万円を10年間運用すると、約60万円の利益が見込めます。一方、預貯金では、金利が高めの定期預金を利用し、仮に金利が0.2%だったとしても約3万6,000円にとどまります。
積立投資の資金は、預貯金と同様にいつでも現金化することができるため、少し先の子どもの教育費など、貯蓄を切り崩す可能性のある現役世代にも適しています。ただし、市場の変動によって元本割れのリスクがあるため、短期間での運用には注意が必要です。まずは緊急時に備えた預貯金を確保したうえで、余剰資金で積立投資を始めることをおすすめします。
一方、老後資金を貯めたい場合には、原則60歳までは引き出せないiDeCoが適しています。どちらも税制優遇を受けることができるため、現役世代の人が節約しながら資産運用するのに便利な手段と考えられます。
このほか、老後資金を貯める手段としては、付加年金や国民年金基金、企業型確定拠出年金、個人年金保険なども考えられます。それぞれのメリット・デメリットを理解したい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。
将来に備えるなら保険という選択も
老後に必要な資金を考える際、年金収入だけでは十分でない可能性があることを知っておくことが大切です。総務省の「家計調査報告」4)5)を参考に、65歳以上の方の生活費や実収入の実態から、老後に必要な資金を試算すると、以下のような結果になります。
【65歳以上の夫婦(高齢夫婦無職世帯)】
- 生活費(夫婦2人):1億327万5,720円(28万6,877円/月)
- 実収入(年金など):9,101万4,480円(25万2,818円/月)
老後の不足金額(備えておきたい老後資金)
1億327万5,720円-9,101万4,480円
=1,226万1,240円
【独身(高齢単身無職世帯)】
- 生活費:5,829万5,880円(16万1,933円/月)
- 実収入(年金など):4,828万1,760円(13万4,116円/月)
老後の不足金額(備えておきたい老後資金)
5,829万5,880円 - 4,828万1,760円
=1,001万4,120円
※:老後を65~95歳の30年間として試算。
※:住宅ローン返済が完了しているなどで、住宅費の支払いがほぼ発生していないことを前提とする。
上記の試算に加え、老後に想定外の支出が発生することもあります。また、老後を迎える前でも、病気やケガによる就業不能など、予期せぬ事態が発生することも考えられます。
そのため、医療保険、就業不能保険、学資保険、死亡保険などの保険商品を活用し、不測の事態に備えておくことも重要です。それぞれの保険について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
理想の貯蓄割合を参考にして、安心の未来を手に入れよう

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自分に合った理想的な貯蓄割合を知ることは、無理なく貯金を続けるための大切なポイントです。毎月の手取り収入やライフステージに合わせて貯金を習慣化し、さらに資産運用を取り入れることで効率よく貯金を増やすことができます。
また、将来のライフイベントや老後の備えといった具体的な貯金の目的を明確にし、長期的な計画を立てることが重要です。計画的な貯金が経済的な安心感を生み出し、豊かで充実した未来を実現する大きな一歩となります。
今からできることをひとつずつ始めて、理想の貯金習慣を手に入れましょう。