現役世代でももらうことができる障害年金ですが、「老年に達したら、老齢年金ももらうことができるの?」「選ぶ必要があるのなら、どちらがいい?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・タケイ啓子さん監修のもと、障害年金と老齢年金にまつわる疑問に回答します。

この記事の監修者

タケイ 啓子(たけい けいこ)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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障害年金と老齢年金は併給できる?

公的年金は原則、1人1つです。障害年金と老齢年金は、基本的には同時に受け取ること供給はできません。障害基礎年金を受け取っている人が65歳になり、老齢基礎年金を受け取る権利が発生した場合、障害基礎年金と老齢基礎年金のどちらかを選択して受け取ることになります。

画像: 障害年金と老齢年金は併給できる?

〈表〉障害厚生年金を受け取っている人が65歳になった場合

ただし、厚生年金保険以下「厚生年金」と表記に加入している場合は、障害基礎年金と障害厚生年金を受け取っています。障害厚生年金を受け取っている人が65歳になった場合、上の図のように、障害厚生年金と障害基礎年金をそのままもらい続けるか、障害厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせにするか、老齢厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせに切り替えるか、3つの組み合わせから選ぶことができます1)

そもそも障害年金とは

画像: 画像:iStock.com/byryo

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障害年金とは、病気やケガで生活や仕事が制限されるようになった時にもらえる年金です。現役世代の人も受け取ることができます2)。対象となる主な病気やケガは以下です1)

〈表〉障害年金の受給対象となる主な病気やケガ

外部障害眼、聴覚、音声または言語機能、手足などの肢体の障がい
精神障害統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
内部障害呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。障がいの原因になった病気やケガで初めて医師などの診療を受けた時(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合はそれに加えて「障害厚生年金」をもらうことになります。

障害年金を受け取るには年金の保険料納付状況などの条件があります。また、障がいの状態によってももらえる金額は異なります。

障害年金でもらえる金額や受給要件について、もっと知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】障害年金の受給要件は? 詳しくはコチラ

もらえる金額は等級によって異なる

障害年金は、法令で定められた障がいの程度(等級)に応じて支給されます1)。障害基礎年金は、以下の1・2級に該当する場合、もらうことができます。

〈表〉障害状態該当要件

1級他人の介助を受けなければ、日常生活のことがほとんどできない状態
2級必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができない状態
3級日常生活にはほとんど支障はないが、労働については著しい制限がある状態
障害手当金(※)・障害等級表に定める障がいの状態である
・初診日から5年以内に治っている(症状が固定している)
・治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽い
※:一時金として支給

障害厚生年金は3級まであります。さらに、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金をもらうには軽い障がいが残った時には障害手当金(一時金)が支給されます。

障害年金でもらえる金額について、もっと知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】障害年金をいくらもらえる? 詳しくはコチラ

更新手続きが1~5年ごとに発生する場合がある

障害年金の認定には、「永久認定」と「有期認定」の2種類があります。永久認定は、たとえば手足の切断など、時間が経過しても障がいの程度に変化や改善の見込みがない場合が対象になります。一方、有期認定は、時間の経過によって障がいの程度に変化が起こりえる病状やケガが対象になります。その場合、一定期間ごとに「障害状態確認届(診断書)」を日本年金機構に提出し、更新(再認定)してもらいます3)。その結果によっては等級が上下し、受給額も増減する可能性がある点に注意しましょう。

国民年金の保険料納付が免除になる

障害基礎年金を受給する人は、市区町村役場に「国民年金被保険者関係届書(国民年金保険料免除事由〈該当・消滅〉届)」 を提出すると、国民年金の保険料納付が免除になります4)。ただし、国民年金保険料を免除した分、老齢基礎年金は減額されます。老齢基礎年金を満額でもらいたい場合は、この国民年金保険料の法定免除制度を利用せずに、国民年金の保険料を支払いましょう。

障害年金と老齢年金、どちらを選ぶべき?

画像: 画像:iStock.com/metamorworks

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前述の説明を読んで、障害年金と老齢年金のどちらを選ぶべきなのか、悩む人もいるのではないでしょうか。以下では、国民年金のみに加入している場合と厚生年金に加入している場合について、説明します。

国民年金のみに加入している場合

障害基礎年金を受給する資格が生じると、国民年金保険料の法定免除制度を利用することができます。この制度を活用すると、60歳までの保険料の負担はなくなることはよいのですが、将来受け取る老齢年金が満額にはならないので少なくなってしまいます。

障害基礎年金の2級で国民年金の満額、1級で満額の1.25倍を受け取ることができます。障害年金の等級が65歳以降も変わらなければ、老齢年金ではなく障害年金を受け取り続けることが可能です。

国民年金保険料の法定免除制度を利用していた場合、障害基礎年金をもらい続けたほうがよいでしょう。法定免除制度を利用せずに国民年金の保険料を支払い続けていた場合も、障害基礎年金が1級である場合には障害基礎年金をもらい続けたほうが受給額は多くなります。

ただし、有期認定の場合、もしも更新できないと障害年金を受け取れなくなり、老齢基礎年金に切り替えることになります前述の国民年金の保険料の法定免除制度を利用していると、老齢基礎年金を満額でもらえない可能性があるので注意が必要です。

厚生年金にも加入している場合

厚生年金に加入している場合、前述のように、障害厚生年金と障害基礎年金をそのままもらい続けるか、障害厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせにするか、老齢厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせに切り替えるか、3つの組み合わせから選ぶことができます1)

障害等級が2級以上なら、1階部分は老齢基礎年金ではなく、障害基礎年金を選ぶのがよいでしょう。ただし、永久認定ではなく65歳を迎えてから障害等級の条件を満たさなくなった場合には、老齢基礎年金を受け取ることになります。法定免除を利用していると、老齢基礎年金の金額が少なくなってしまうので注意が必要です。

2階部分はどうでしょう。障害厚生年金は「厚生年金に300カ月加入した」とみなして計算されます。そのため、障害厚生年金の受給開始時点から報酬が増えている場合、障害厚生年金よりも老齢厚生年金のほうが受給額は高くなるので、老齢厚生年金に切り替えるのがおすすめです。

もらえる年金は「1人1年金」が原則

画像: 画像:iStock.com/ flyingv43

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前述のように、公的年金は1人1つが原則です。国民年金のみに加入している人が65歳になった場合は、障害基礎年金と老齢基礎年金のどちらかを選ぶ必要があります。障害年金の等級が2級以上である場合は国民年金の満額が支給されるため、そのまま障害基礎年金をもらえばよいでしょう。

厚生年金に加入している場合は、さらに1階部分と2階部分の組み合わせを選ぶことができます。障害基礎年金の受給開始から報酬が上昇している場合は、2階部分を老齢厚生年金に切り替えましょう。

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