貯金をする意欲があるものの、適した方法がわからずに悩んでいる20代の人もいるのではないでしょうか。
この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、ほかの世代よりも収入と大きな支出が少なく、長期的な貯蓄ができる20代に適した貯金方法を徹底解説します。
20代の貯金額は平均99万~203万円
金融広報中央委員会の調査1)によると、20代独身の年収別の貯金額は以下です。
〈表〉20代独身の年収別貯金額
年収 | 貯金額の平均 | 回答者数 |
---|---|---|
収入はない | 18万円 | 65 |
300万円未満 | 99万円 | 272 |
300万~500万円未満 | 203万円 | 173 |
500万~750万円未満 | 850万円 | 34 |
750万~1,000万未満 | 100万円 | 1 |
1,000万~1,200万未満 | 1,367万円 | 3 |
回答者数を見ると、年収が「300万円未満」が最も多く、ついで「300万~500万円未満」となっています。このことから、20代の貯金額の平均は、99万~203万円程度と考えられます。
【関連記事】20代の平均貯金額や中央値はいくら?無理なく貯金する方法も紹介
20代が備えるべきライフイベントの費用
結婚や住宅購入、子どもの教育など、目的によって貯めておくべき金額は異なります。それぞれの金額の目安を説明します。
〈図〉ライフイベントに必要な金額の目安
結婚資金は平均413万6,000円
リクルートの調査2)では、結婚資金を「結納、挙式、披露宴・ウェディングパーティー、二次会、新婚旅行を行うためのお金」として定義しています。同調査によると、それぞれの平均費用の総額は413万6,000円です。
- 結納式 10万5,000円
- 挙式、披露宴・ウェディングパーティー 347万3,000円
- 二次会 21万9,000円
- 新婚旅行 33万9,000円
合計413万6,000円
ちなみに夫婦で貯金している場合の結婚資金は平均336万6,000円でした。親や親族から結婚資金に援助を受ける場合は平均193万2000円を受け取っており、ご祝儀の総額は平均185万2,000円です。実際にかかった金額を考えると、親や親族からの援助やご祝儀が期待できるとしても、もらえる金額は事前にわからないので、最低でも夫婦で300万円前後は用意しておくと安心でしょう。
参考資料
【関連記事】幸せな結婚生活のために、夫婦で話し合いたい3つのお金のコト
教育資金は全て公立で平均1,536万8,201円
教育資金は、高校入学から大学卒業までの平均費用(学費)を調べた日本政策金融公庫による調査3)と、幼稚園から高校までの学習費を調べた文部科学省の調査4)を合わせて試算します。幼稚園から大学まで全て公立だった場合で、平均1,536万8,201円です。ちなみに、幼稚園から大学まで全て私立を選んだ場合には、文系で2,528万2,502円、理系では2,660万502円になります。
つまり、子どもの進路によっては、2,500万円以上の教育資金を用意する必要があります。
子どもの学費や教育資金の貯め方について詳しく知りたい人は、以下の記事で紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】専門家が教育資金づくりを解説。詳細はコチラ
【関連記事】教育費の平均はいくら? 詳細はコチラ
住宅購入資金は注文住宅の新築で平均5,112万円
国土交通省の調査5)によると、土地を購入して注文住宅を新築する場合、購入資金は平均5,112万円です。建て替えやマンションなどの場合、費用はこの金額以下になります。それぞれの購入資金は以下です。
- 建て替え 平均3,229万円
- 分譲戸建住宅 平均4,250万円
- 分譲マンション 平均4,929万円
- 中古戸建住宅 平均2,959万円
- 中古マンション 平均2,990万円
老後資金は2人以上の世帯で平均2,537万円
総務省の調査6)によると、2人以上世帯の世帯主の貯蓄額は、60~69歳で2,537万円でした。
なお、全国の60歳以上の男女を対象とした内閣府の調査7)によると、貯蓄総額(※)は、「100万~500万円未満」が18.8%で最も多く、ついで「2,000万円以上」が15.6%です。2つの調査を併せて考えると、一定数の人が老後の資金として2,000万円以上を用意していることがわかります。
老後資金の貯め方についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】老後のための貯金、いくら必要? 資金づくりの詳細はコチラ
※:配偶者と同居している場合は、夫婦の貯蓄額の合計
また、目的別の貯金方法についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
20代が無理なく貯金するコツ15選
家計管理や貯金、資産運用などの成功体験が少ない人は早めに”貯金癖”をつけるのがおすすめです。以下では、貯金を始める時にまずやるべきことから節約のポイントまで、無理なく貯金するためのコツを説明します。
① 貯金の目的を決める
結婚資金や住宅購入資金、老後資金など、まずは貯金の目的を決めましょう。貯金に苦手意識がある人は、旅行や買い物など、目標額が少ない目的を立てて貯金を始めるのがおすすめです。
② 貯金の目標額と期限を決める
貯金の目的を決めたら、そのためにはいくら必要なのか、調べます。加えてどのくらいの期間でその金額を貯める必要があるのか、ライフプランと併せて決めてみましょう。
【関連記事】FP直伝:ライフプランの立て方|メリットや例も併せて解説
③ 収支を把握・確認する
つぎに、現在の収支を把握します。1カ月分でいいので、家計簿や家計簿アプリで収支をつけましょう。無駄遣いや節約できそうな項目と金額を確認できます。家計に負担をかけることなく、貯金にまわせる金額も割り出せるでしょう。
【関連記事】簡単5ステップ! 一人暮らしの家計簿のつけ方・節約術を解説
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④ 月々の貯金額を決める
目標額と目標達成期限、家計に負担をかけない金額を照らし合わせた上で、月々、貯金にまわす金額を決めます。転職などで収入が減ったり、引っ越しなどで固定費が変わったりしても貯められる金額にするのが、貯金を継続するコツです。
⑤ 先取り貯金をする
「先取り貯金」とは、余ったお金を貯金にまわすのではなく、毎月の収入から先に一定額を貯金する方法です。自動積立定期貯金やNISA、iDeCoや財形年金貯蓄など、目的に合わせて強制的に貯金するしくみを選びましょう。
【関連記事】何をしても貯まらない…そんな人こそ「先取り貯金」一択 ! FP直伝・失敗しない始め方
⑥ クレジットカードやキャッシュレス決済を整理する
何枚もクレジットカードを持っていたり、複数のキャッシュレスアプリを使ったりしていると、収支の把握が難しくなります。必要最低限の数を使ったり、用途をそれぞれ決めたり、家計を管理しやすいように整理するのがおすすめです。
⑦ 分割払い・リボ払いをやめる
お金がない時に便利な分割払いやリボ払いですが、利用すると利息や手数料がかかります。貯金ができれば使う必要はない機能と考えて、できるだけ利用しないようにしましょう。
⑧ 毎月使っていいお金の予算を組む
無駄遣いを防止するのに役立つのが、予算を決めることです。全ての項目の予算を守るのがストレスになりそうであれば、趣味に費やすお金は月2万円までなど、特に無駄遣いしがちな項目だけでも制限を設けてみましょう。
⑨外食の回数を減らす
食費や交際費などは変動費に分類されますが、だからこそ制限を設けると節約につながります。特にコストのかかる外食は回数を減らせば、その分、貯金をする余裕が生じます。
【関連記事】一人暮らしで食費を節約する方法は? プロ直伝のテクニックを献立とともに紹介
⑩水筒やマイカップを持ち歩く
水筒やマイカップを持ち歩くことで、小さな節約ができます。その金額はわずかだと思うかもしれませんが、塵も積もれば山となります。抵抗感がなければ実践してみてはいかがでしょう。
⑪コンビニエンスストアでお金を下ろすのをやめる
コンビニエンスストアのATMはどこにでもあり、時間を選ばず入金・出金ができる点は非常に便利です。しかし、提携銀行でない限り、銀行なら無料であることと比べると、その手数料は割高です。せめて利用する回数を減らすことを検討しましょう。
⑫副業を始めて、収入を増やす
節約するのが苦手な場合、貯金をするには収入を増やすのも一手です。副業で得た収入はそのまま貯金するというルールを設ければ、家計に負担をかけることなく、貯金が実行できます。スキルが身につく副業であれば、収入が上がる転職の可能性も高まります。
【関連記事】インスタグラムでできる副業とは? 収入を得るための方法や稼ぎ方のコツまで詳しく解説
⑬各種控除を活用して税金対策をする
生命保険料控除や医療費控除、確定拠出年金(小規模企業共済等掛金控除)など、所得から控除できるものは複数あります。各種控除の条件や内容を理解して、対象となるものはきちんと申請しましょう。
【関連記事】医療費控除でいくら戻る? 計算方法や還付金額のシミュレーションを紹介
⑭ふるさと納税を利用する
ふるさと納税は自治体へ寄附をすることで住民税・所得税の控除対象になる制度です。税金面でメリットがある点はもちろん、好きな返礼品を入手できるのも魅力です。
【関連記事】ふるさと納税のメリットとは? 得する人の特徴、デメリット、注意点も解説
⑮旅行の予約は早割・直前セールを活用する
旅行に行くのが趣味という人や定期的に旅行する習慣がある人は、通常料金よりも割安になる早割を活用しましょう。予定を早く決めるのが嫌な人は、直前セールに注目しましょう。
20代の人が陥りがちな7つの浪費習慣
貯金の妨げとなる浪費習慣。中でも20代の人がやりがちなことは以下の7つです。
- コンビニエンスストアでお金を下ろす
- クレジットカードでリボ払いや分割払いを多用する
- 付き合いの飲み会が多い
- 趣味に、あるだけのお金をつぎ込む
- 使っていないサブスクにお金を払い続ける
- ボーナスを全部使ってしまう
- 高額のローンを組む
就職したばかりの20代には、ボーナスに浮かれて、浪費に走る人も少なくありません。数回で落ち着けばいいのですが、毎回となると貯金を妨げる要因となります。また、将来的にも定期的な収入を得て、給与額は増加していくはずと過信して、高額のローンを組んでしまう人もよくいます。
そうした金額の大きな浪費は明らかに貯金にマイナスの影響をもたらしますが、付き合いの飲み会や使わないサブスクなども少額であっても回数が多かったり、長期化したりすればやはり問題です。心当たりのある人は早めにやめるように試みるのがおすすめです。
20代におすすめの資産運用方法4選
ほかの年代に比べ、収入が低い一方、大きな支出が少なく、お金を貯める期間を長く設けることができるのが20代の特徴です。以下では賢く確実に貯金ができる資産運用法を紹介します。少額でもいいので、早めに取り組むと将来の安心につながります。
自動積立定期預金
強制的にお金を貯めるしくみの中でも、最もオーソドックスなのが、銀行などの金融機関で行う「自動積立定期預金」です。給料日後に毎月一定額を、定期預金口座へ自動で振り分ける方法です。
金融機関によって多少の違いはありますが、少ない額から始められるのが利点です。契約期間は金融機関にもよりますが、3カ月~5年です。途中で解約することもできますが、満期前に引き出すと満期まで預けたときの金利よりも低い金利(中途解約利率)が適用されてしまうので注意が必要です。
大手都市銀行の定期預金の金利は0.002%程度と低いため、金利にこだわるならネット銀行(0.13%程度の機関もある)がおすすめです。ほかの銀行に給与口座を持っていても、無料でお金を振り分けてくれるシステムのネット銀行もあります。また、ボーナス時には多めに自動で振り分けるよう、月ごとでの金額設定も可能です。
財形貯蓄制度
財形貯蓄制度8)とは、勤労者が金融機関などと契約を結び、賃金からの控除(天引き)によって、事業主を通じて積み立てていく貯蓄です。全ての企業で制度が導入されているわけではない上、フリーランスや自営業の人は利用できないのが難点です。積立は月1,000円からできるので、勤め先の企業で導入されているようであれば、堅実に資産形成ができる方法として利用してみましょう。
財形貯蓄には、一般財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄)、財形年金貯蓄(勤労者財産形成年金貯蓄)、財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)の3種類があり、貯蓄の使い道がそれぞれ異なります。
一般財形貯蓄の用途は自由ですが、財形年金貯蓄は満60歳以上に年金として受け取るもの、財形住宅貯蓄の使い道は持ち家の取得または持ち家の増改築に限定されます。
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を合わせて、元利が合計550万円に達するまで、受取利息(利子所得)が非課税になるのが利点です。また、年金として受け取る財形年金貯蓄は受給が終わるまで非課税措置が継続される点も経済的にプラスです。
参考資料
iDeCo
iDeCo9)とは、確定拠出年金法に基づいた私的年金制度です。20歳以上65歳未満の国民年金の被保険者であれば、任意で加入できます。自分が拠出した掛金を自分で運用して資産を形成し、60歳以降に老齢給付金として受け取ることができます。最大の特徴は、3つの税制優遇メリットがあることです。
①掛金が全額所得控除され、所得税・住民税が軽減される。
②確定拠出年金制度内での運用益は非課税で再投資できる。
③受給時に所得控除を受けられる。
原則60歳になるまで資産を引き出すことはできませんが、老後資金を貯める手段として、税金の面でも魅力的です。
iDeCoについてもっと知りたい人は、以下の記事でも紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】iDeCoはサラリーマンの節税にメリットだらけ。詳しくはコチラ
参考資料
NISA
NISAとは、個人投資家向けの少額投資非課税制度のことです。
非課税口座内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益には税金がかからない制度です。
現行の制度では、一般NISAとつみたてNISA、20歳未満向けのジュニアNISAがありますが、2024年1月からは新NISA10)に切り替わります。これまでのNISAとつみたてNISAで金融商品の購入を行うことができるのは2023年までです。2023年中に購入した金融商品は5年間(2027年まで)非課税で保有することができます。
年間投資枠(非課税) | 非課税保有期間 | 非課税保有限度額 | |
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一般NISA | 120万円 | 5年間 | 600万円 |
つみたてNISA | 40万円 | 20年間 | 800万円 |
新NISA(つみたて投資枠) | 120万円 | 無期限 | 1,800万円(※) |
新NISA(成長投資枠) | 240万円 | 無期限 | 1,200万円(内数) |
新NISAでは、非課税期間に期限があったこれまでのNISAと異なり、非課税の期間が無期限となります。年間投資枠や非課税保有限度額(総枠)も大幅に引き上げられます。
参考資料
10)金融庁「新しいNISA」
早めに浪費習慣をやめて、貯金に取り組もう!
就職したばかりの20代は、よくも悪くもお金の習慣が身につく時期です。浪費習慣も短期間ならダメージが少ないですが、長い目で見ると大きなロスになります。早めに自覚をした上で、少額でも資産運用に取り組んで、貯金の成功体験を重ねましょう。