寄附金の一部が税金から控除される点や、地域の名産品などの返礼品が充実していることから、年々人気が高まっている「ふるさと納税」。ふるさと納税を始めようか迷っている人の中には、具体的なメリットや注意すべきデメリットを知りたいという人もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナー・荒木千秋さん監修のもと、ふるさと納税のメリットとデメリットを詳しくご紹介します。併せて、特にどのような人がふるさと納税の恩恵を受けることができるのか、自治体側にとってのふるさと納税のメリットなども見ていきましょう。

※この記事は2022年11月4日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

荒木 千秋(あらき ちあき)

ファイナンシャルプランナー。荒木FP事務所代表。10年間の銀行勤務を経て独立。これからの女性が人生を楽しむためには「お金・投資」との付き合い方を変えなければならないと確信し、現在は、大学講師、セミナー、ウェブ執筆、個別相談等を行っている。 著書に『「不安なのにな〜んにもしてない」女子のお金入門』(講談社)がある。

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ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附できる制度

画像: 画像:iStock.com/AH86

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ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体など、好きな自治体に寄附ができる制度です1)。寄附先の自治体を自由に選べるため、必ずしも出身地や居住したことのある地域である必要はありません。

最低限の条件として「自己負担金の2,000円」を支払う必要がありますが、ふるさと納税の寄附金のうち、その2,000円を超える金額については、所得税の還付や住民税の控除を受けられます
つまり「寄附金額−2000円」分の税金が軽減されます。

〈図〉ふるさと納税のしくみ

画像: ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附できる制度

また、寄附金の使い道を寄附する側が指定できたり、寄附先からの返礼品として自治体の名産品などをもらえたりするのも、ふるさと納税ならではの大きな特徴です。

なお、2023年10月のルール変更・改正より、自治体の必要経費に含まれる項目が増え、返礼品は地場産品に限ることになりました。また、インターネットなどでの広告に関して、“割引”や“増量”など、返礼品を誇張したり、寄附者を誘引したりするような宣伝の仕方に対する規制がさらに厳しくなります。ふるさと納税はあくまで自治体に寄附を行う制度であることを今一度認識させることがルール変更・改正の主旨です。

ふるさと納税は年間を通じて受け付けており、その年の申込期限は12月31日までです。ふるさと納税の申込期限については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて読んでみてください。

【関連記事】ふるさと納税の申込期限はいつまで? 手順・必要書類の詳細はコチラ

ふるさと納税の5つのメリット

画像1: 画像:iStock.com/YusukeIde

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ここからは、ふるさと納税の5つのメリットについて詳しく見ていきましょう1)

①寄附する自治体を自分で選べる

前述したように、ふるさと納税では、寄附する自治体を自由に選べます。そのため、応援したい自治体がある人にとってはメリットの大きい制度となっています。

自分の生まれ育った地域はもちろん、好きな地域や災害復興を支援したい自治体などを、ふるさと納税を通じて応援することができます。

②寄附した自治体から返礼品がもらえる

画像: 画像:iStock.com/dontree_m

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ふるさと納税で寄附した自治体からは、その地域の名産品などの返礼品がもらえます。

たとえば、ブランド米や銘柄牛、名物料理の食べ比べセットや産地直送の野菜や果物などの返礼品を、自己負担額の2,000円で受け取ることが可能です(寄附金額に応じてもらえる返礼品は異なります)。

返礼品の内容も自治体によって様々なものが用意されており、食品以外にも工芸品や日用品などがあります。

返礼品の中に欲しいものがある人なら、所得税の還付や住民税の控除を受けつつお得に手に入れられるため、メリットも大きく感じられるでしょう。

③寄附金から「2,000円を超える金額は所得税の還付と住民税の控除」を受けられる

画像2: 画像:iStock.com/YusukeIde

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ふるさと納税の寄附金は、自分の控除の上限額までに収めることで、合計寄附額から2,000円を差し引いた金額について所得税の還付や住民税の控除を受けられます。自己負担分の2,000円を除いて、金銭的な負担がかからない点もメリットといえるでしょう。

なお、控除の上限額は個人の収入や家族構成によって異なるため、あらかじめシミュレーションしておくことが大切です2)

④寄附金の使い道を指定できる

ふるさと納税では、自分の寄附金の用途を指定することもできます。ふるさと納税の寄附金の使い道は、その自治体の環境保護や文化遺産の保護、子育て支援や福祉支援など様々です。

ふるさと納税の寄附先に迷った時は、気になる自治体の寄附金の使い道をチェックしてみましょう。

⑤クレジットカードのポイントが貯まる場合がある

ふるさと納税の各種ウェブサイトでは、寄附金の支払いにクレジットカードの利用が可能です。そのため、契約しているクレジットカードによっては寄附額に応じてポイントを貯められる場合があります

ポータルサイトによっては、指定のクレジットカードを使うことでよりお得にポイントが貯まる場合もあるので、気になる人はあらかじめ確認しておきましょう。

ふるさと納税でメリットを得られる年収の目安は150万円以上

画像: 画像:iStock.com/kazumaseki

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ここからは、ふるさと納税と年収の関係を解説します。ふるさと納税をしてメリットを得られる人の収入の目安は年収150万円以上独身、共働きの場合)」です。これには、ふるさと納税の「寄附金限度額」が大きく関わっています。以下で詳しく見ていきましょう2)

ふるさと納税には「寄附金限度額」がある

ふるさと納税は、年収に応じて寄附できる金額が異なります。自分の年収の寄附金限度額は、各種のふるさと納税関連のウェブサイトのシミュレーションなどを活用して調べてみましょう。

ここでは、ふるさと納税でメリットを得られる年収の目安となっている「年収150万円の場合」について解説します。

年収150万円の場合の寄附金限度額

画像3: 画像:iStock.com/YusukeIde

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年収150万円で、独身または共働きの場合は、ふるさと納税の寄附金の限度額の目安は約8,000円となります。

前述のとおり、ふるさと納税では自己負担分として2,000円かかるため、寄附金は2,000円以上でなければなりません。

ふるさと納税には、応援したい自治体に寄附ができるなどのメリットがあるものの、返礼品のメリットはやはり享受したいところでしょう。そういった人にとっては「自己負担分2,000円<返礼品の現金価値にならないと、商品として購入したほうが安くなってしまいます

ふるさと納税の返礼率は、寄附金額の30%が上限と決まっているため、寄附金額×30%で2,000円を下回る分岐点の目安が年収150万円、寄付限度額でいうと約8,000円」となるのです。

なお、実際には、年収や家族構成などにより寄附金の限度額は異なります。返礼品の金額が自己負担分の2,000円を下回らないかをチェックしてみるといいでしょう。

収入が高いほど寄附額の使い道の幅が広がる

ふるさと納税は、収入が高い人ほど寄附額の上限が高くなり、寄附金の使い道の幅も広がります2)

●年収400万円の人(独身または共働きの場合)
寄附金の上限額の目安は4万2,000円となります。

●年収1,000万円の人(独身または共働きの場合)
寄附金の上限額の目安は18万円となります。自治体によっては高額の返礼品を用意しているので、このように上限額が高いほうがより選択肢が広がります。

定年退職して収入は公的年金のみの人は注意が必要

画像: 画像:iStock.com/JohnnyGreigi

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ふるさと納税をした年に定年退職した場合、翌年6月に支払う住民税や所得税は前年のものなので、その年はふるさと納税の限度額や税金の還付・控除額はそれまでと変わりません。

ただし、その翌年は注意が必要です。再就職する場合や年金以外の収入がある場合は問題ありませんが、65歳以上の人で所得は公的年年金収入のみ150万円未満の場合、寄附可能上限額が0円となるため、ふるさと納税をしても経済的なメリットは生じません3)。ふるさと納税は「寄附」なので、制度を活用することはできますが、税金の還付や控除にはつながらず、全額自己負担となる点に注意しましょう。

自分の控除額の上限を知っておこう

控除対象になるふるさと納税の寄附額は、総所得金額の40%が上限となります。控除額の上限を超えた分については、自己負担になってしまうため注意が必要です。

ふるさと納税の5つのデメリット

画像: 画像:iStock.com/gyro

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ふるさと納税はメリットが多い制度ですが、人によってはデメリットに感じられる点もあります。ふるさと納税で注意したい5つのデメリットも見ていきましょう。

①自己負担金として2,000円がかかる

ふるさと納税では、寄附額にかかわらず、必ず自己負担金として2,000円がかかります。返礼品の内容や返礼率なども考慮して、損することのないよう注意しましょう。

②減税や節税にはつながらない

画像: 画像:iStock.com/narith_2527

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“納税”というキーワードから、「ふるさと納税は減税や節税につながる」と思っている人もいるかもしれません。しかし、ふるさと納税は、直接的な減税や節税効果はありません

ふるさと納税はあくまでも寄附であるため、税金の負担が軽減されるわけではないのです。寄附を通じて自治体にお金を納めて、控除によってそのお金が戻ってくる、というしくみを理解しておくことが大切です。

③控除限度額を超えると自己負担になる

ふるさと納税で控除を受けられる金額には上限があります。寄附金のうち、控除限度額を超えた部分は控除の対象外となり、自己負担扱いとなる点にも注意しましょう。

控除限度額は、その人の年収や家族構成、ローンの有無などによって変動します。自分の控除限度額は、各種のふるさと納税関連のウェブサイトのシミュレーションなどを活用して把握しておきましょう。

④返礼品には国が定めた規制がある

画像: 画像:iStock.com/show999

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ふるさと納税の返礼品には国が定めた規制が設けられており、つぎの2つの条件を満たしている必要があります4)

  • 返礼率は寄附金額の3割以下である
  • 返礼品は地場産品である

返礼率や返礼品の内容によっては、自己負担の2,000円を下回ることもあり、必ずしも恩恵を受けられるとは限りません。

【関連記事】ふるさと納税をしないほうがいい人は?損する年収ライン、住宅ローン控除との併用も解説

⑤確定申告などの手続きが必要

画像: 画像:iStock.com/west

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ふるさと納税をして所得税の還付や住民税の控除を受けるためには、原則として確定申告などの手続きが必要です。

ふるさと納税自体は、1月1日から12月31日まで、年間を通して申し込みを受け付けています。しかし、寄附後は確定申告などの手続きを期限内に行う必要があり、手続きをしないと控除は受けられません。通常、確定申告は寄附した翌年の2月から3月に行います。

なお、一定の条件を満たすと、「ワンストップ特例制度」という制度を利用でき、確定申告よりも手軽に手続きを済ますことができます。詳しくは以下の記事からご確認ください。

【関連記事】ふるさと納税の手続き期限は? 「ワンストップ特例制度」の期限・手順・必要書類の詳細はコチラ

自分が住む自治体にふるさと納税をするメリット・デメリット

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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ふるさと納税では、住民票登録がある地域の自治体に寄附することもできます5)。そこで、自分の居住地にふるさと納税するメリットとデメリットを見ていきましょう。

自分が住む自治体にふるさと納税をするメリット

自分の住む自治体にふるさと納税をするメリットとしては、つぎのようなことが挙げられます。

  • 自分の自治体の活性化に貢献(寄附)できる
  • 寄附金の使い道を指定できるケースがある(文化・スポーツ振興、子育て支援など)
  • 居住自治体の税収減の防止につながる可能性がある

自分の住む自治体にふるさと納税を利用して寄附をすれば、居住地域の活性化や支援したい活動の応援につながります。より自分たちが暮らしやすい自治体づくりの支援の一環にもなるでしょう。

自分が住む自治体にふるさと納税をするデメリット

反対に、自分の住む自治体にふるさと納税をする場合、つぎのようなデメリットがあるため注意が必要です。

  • 返礼品を受け取ることができない
  • 控除の面では損も得もないが、寄附金控除の手間はかかる

ふるさと納税で自分の住む自治体に寄附をしても、返礼品を受け取ることはできません。これは、住民登録をしている人への返礼ができないよう地方税法で定められているためです。

つまり、自分の住む自治体に寄附すると、ふるさと納税のシステム上「自己負担分の2,000円を寄附して、税金を先払いしただけ」の状態となります。控除の面では損も得もない上、確定申告などの手続きに時間や手間もかかるため、人によってはデメリットを感じる場合もあります。

自治体側のふるさと納税のメリット・デメリット

画像: 画像:iStock.com/JGalione

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一方で、ふるさと納税は、自治体側にとってはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

自治体側のメリット

自治体側が得られるメリットとしては、以下のことが挙げられます。

  • 地域の振興に役立てることができる
  • 財政収入源が増える
  • 税収入を早期に確保できる
  • 返礼品を通じて特産品をPRできる
  • PRによって観光促進につながる可能性がある

ふるさと納税で納められた寄附金は、その自治体の地域振興に役立ちます。被災地にとっても、ふるさと納税は復旧や復興などに必要な資金を得る重要な財政収入源となっています。

また、名産品や特産品を返礼品として届けることで、その地域の魅力を全国にアピールできる点もメリットといえるでしょう。

自治体側のデメリット

一方で、自治体側のふるさと納税のデメリットとしては、つぎのようなことが挙げられます。

  • 住人の多い都市部の自治体の場合、税収減につながる可能性がある
  • ふるさと納税により税収減している地域は、地域が活性化しづらくなる

ふるさと納税は、本来は居住地で納めるべき税金を、ほかの自治体に寄附するかたちで納める制度です。そのため人口の多い都市部の自治体など、ふるさと納税をする人が多いほど住民税の控除額も高額になり、税収減につながる可能性があるのです。

特に、大きな税収減が懸念されているのが東京23区です。ふるさと納税をする人が増える中、東京23区は2021年度の区民税の約5%にあたる約531億円が他自治体に流出しています6)。神奈川や大阪などの都市部でも税収減の状態となっています。

住民税は私たちの住民サービスに直結します。ふるさと納税をする時には、このような自治体側のデメリットに目を配ることも大切なことだといえるでしょう。

ふるさと納税はメリットが豊富! 自分の控除限度額に応じて活用しよう

画像: 画像:iStock.com/SARINYAPINNGAM

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ふるさと納税には多くのメリットがある一方で、注意点もあります。しかし、自分の控除限度額を踏まえて寄附したり、控除を受けるための手続きについて事前に把握しておいたりすることで、お得にふるさと納税を活用することができるでしょう。自分の収入を踏まえてシミュレーションなども活用しながら、ふるさと納税を始めてみましょう。

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