この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、出産や育児に臨む人に向けて育児休業給付金がもらえる条件について解説します。2025年の育児・介護休業法改正についても説明するので、参考にしてみてください。
※この記事は、2023年8月28日に公開した内容を最新情報に更新しています。
育児休業給付金支給の条件とは?

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育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が原則1歳未満の子どもを養育するために育児休業(育休)を取得した場合、受け取ることができるお金です1)。受け取るには以下の要件を満たす必要があります。
〈表〉育児休業給付金の支給要件
支給要件 | 内容 |
---|---|
雇用保険に加入していること | 正社員だけでなく、パートや派遣社員などの有期雇用労働者も対象 |
1歳未満の子を養育するために育児休業を取得していること | 例外的(※) に1歳6カ月または2歳まで延長可能 |
育児休業開始前の2年間に、11日以上就業している月が12カ月以上あること | 短時間勤務者でも要件を満たしていれば対象 |
育児休業期間中の各1カ月で、就業している日数が最大10日または80時間以下であること | 一定の範囲内での就業は可能 |
この要件を満たしていれば、正社員だけではなく、パートなどの有期雇用労働者や派遣社員でも取得することができます。また、育児休業給付金の支給期間は原則1歳までですが、保育園に入れないなどの理由がある場合は1歳6カ月、2歳まで延長できるケースもあります(※)。
参考資料
育児休業給付金を申請する手順と必要な書類は?

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育児休業給付金は原則として会社が2カ月に1度の頻度でハローワークに支給申請を行い、育休中の従業員に2カ月分の給付金がまとめて支払われます。育休を取得している期間=給付金が支給される期間です。
申請の方法は、まず育休開始予定日の1カ月前までに勤務先に申し出ます。以下が申請の必要書類です1)。
【育児休業給付金申請の必要書類】
①雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
②育児休業給付受給資格確認票
③(初回)育児休業給付金支給申請書
④賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など
⑤母子健康手帳の写し
⑥育児休業給付金振込先の通帳の見開きのコピー
申請する人が勤務先から③の書類を受け取って必要事項を記入し、⑤と⑥を添えて勤務先に提出すると、勤務先が①②④を用意し、まとめてハローワークに書類提出・申請を行います。提出書類が多いので、もれがないように注意しましょう。
育児休業給付金の計算方法

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育児休業給付金の支給額は以下の計算式1)で算出します。
〈表〉育児休業給付金の支給額
育休開始から180日(6カ月)まで | 休業開始時賃金日額×支給日数(※)×67% |
---|---|
育休開始から181日(6カ月)以降 | 休業開始時賃金日額×支給日数×50% |
賃金日額とは、原則、育休開始前の6カ月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額を指し、ハローワークへの申請時に事業主が提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」に記されています。育休を開始した日以前の2年間に完全な賃金月が6カ月に満たない場合は、賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上である6カ月間に支払われた賃金の総額で計算します。
育児休業給付金の計算方法や支給額についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】育児休業給付金の計算方法について、詳しくはコチラ
育児休業給付金をもらえないのは、どんな場合?

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育児休業給付金は原則、育休開始日から2年間で11日以上出勤した日が12カ月以上あれば、支給の対象となります。ただし、育休開始日以前の2年間でケガや病気など、やむを得ない事情で休業していた場合には、最大4年まで遡ることができます1)。
たとえば、1人目の育休からそのまま2人目の産休・育休に入る場合、この「4年遡り」が適用されます。とはいえ、1人目の育休期間の長さや育休前の出勤日数などによって、支給要件を満たさないケースがあるので注意が必要です。
育児休業給付金を受け取ることができないケースについて、さらに知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】育児休業給付金がもらえないケースについて、詳しくはコチラ
育児休業給付金は男性ももらえる!取得の条件とは?

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育児休業給付金は女性だけでなく、男性も対象となります1)。前述の条件を満たせば、男性も育児休業を取得し、給付金を受け取ることができます。
なお男性が育児休業を取得することで、以下のようなメリットがあります。
【男性が育児休業を取得するメリット】
- 子どもとの時間をしっかり確保できる
- パートナーの負担を軽減できる
- 夫婦で育児の役割を共有しやすくなる
また、育児休業給付金を活用すれば、収入の大幅な減少を防ぎながら育児に専念することが可能です。
男性の育児休業は取得しやすくなっている
日本ではこれまで、男性の育休取得率は低い傾向がありましたが、2022年の育児・介護休業法改正により、男性の育休取得が促進される環境が整えられました。
育児休業の分割取得が可能になった
- 夫婦で交代しながら育休を取得しやすくなる
「産後パパ育休(出生時育児休業)」の導入
- 子どもが生まれて8週間以内に最大4週間の休業を2回に分けて取得できる
〈図〉産後パパ育休と育休取得のイメージ

これらの制度を活用することで、男性も育児休業を取得しやすくなっています。
男性の育児休業給付金の申請方法
男性の育児休業給付金の申請手続きは、基本的に会社を通じて行われます。
【申請の流れ】
1.会社に育児休業取得の意向を伝える(育児休業開始の1カ月前までに)
2.会社がハローワークへ育児休業給付金の申請を行う
3.審査後、育児休業開始から約2カ月後に初回給付
なお、申請は会社を通じて行うため、勤務先の担当部署(人事・総務など)に相談するのがスムーズです。
男性の育児休業給付金、いくらもらえる?
育児休業給付金の支給額は、女性同様に育児休業開始前の賃金の67%(6カ月経過後は50%)となります。
育休開始~6カ月間:休業開始前の賃金の67%
育休開始6カ月以降~終了:休業開始前の賃金の50%
たとえば、育休前の月収が30万円だった場合、最初の6カ月は約20万円、6カ月以降は約15万円が支給されます。
以下の記事では、男性の育児休業給付金について解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
2025年の育児・介護休業法改正で変わった点は?

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働きながら育児をする人のための制度があっても「職場の雰囲気的に育休が取りづらい…」と感じる人も少なくありません。そうした環境を改善し、育児と仕事を両立しやすい社会をつくるため、育児・介護休業法は2022年4月1日から段階的に改正されてきました。そして2025年4月1日からは、新たに以下の法改正が施行されます。改正のポイントは以下の7点です。
【2025年の育児・介護休業法改正のポイント】2)
①子の看護休暇の見直し
②所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
③短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置としてテレワーク追加
④育児のためのテレワーク導入
⑤育児休業取得状況の公表義務の適用拡大
⑥柔軟な働き方を実現するための措置
⑦仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
※:①~⑤は2025年4月1日施行、⑥⑦は2025年10月1日施行
各ポイントの改正内容は以下になります。
〈表〉改正内容(施行日:2025年4月1日)
変更前 | 変更後 | |
---|---|---|
①子の看護休暇の見直し | 対象となる子: 小学校就学の始期に達するまで 取得事由: 病気・けが、予防接種・健康診断のみ 取得できる条件: ①週の所定労働日数が2日以上 ②継続雇用期間6か月以上 | 対象となる子: 小学校3年生修了まで 取得事由: 感染症による学級閉鎖・入園式/卒園式の追加 取得できる条件: ①週の所定労働日数が2日以上(②が撤廃) |
②所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 | 対象:3歳未満の子を養育する労働者 | 対象:小学校就学前の子を養育する労働者 |
③短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置としてテレワーク追加 | 短時間勤務制度の代替措置は、育児休業に準ずる措置・始業時刻変更等のみ | テレワークが代替措置として追加 |
④育児のためのテレワーク導入 | 規定なし | 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう努力義務化 |
⑤育児休業取得状況の公表義務の適用拡大 | 従業員数1,000人超の企業のみ義務化 | 300人超の企業に拡大し、男性の育児休業取得率等の公表が義務化 |
〈表〉改正内容(施行日:2025年10月1日)
変更前 | 変更後 | |
---|---|---|
⑥柔軟な働き方を実現するための措置 | 事業主に特定の措置義務なし | 事業主は5つの措置から2つ以上を選択し提供する義務(例:テレワーク・時短勤務) |
⑦仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 | 妊娠・出産時の意向聴取のみ義務化 | 妊娠・出産時と子が3歳になる前に個別の意向聴取・配慮を義務化 |
2025年4月1日から施行される育児関連の制度改正は、「育児と仕事の両立をより柔軟にする」ことを目的としています。特に、子の看護休暇の拡大、テレワークの導入、短時間勤務制度の代替措置、育児休業取得状況の公表義務の適用拡大などがポイントです。これらの改正により、育児中の労働者がより働きやすい環境が整備されることが期待されます。
2023・2024年に施行された育児・介護休業法改正をおさらい
2025年の改正以前にも、2022年4月1日から3段階で改正が施行されています。ここでは、その内容を改めて確認しておきましょう。
【2022年・2023年の育児・介護休業法改正のポイント】3)
①雇用環境の整備、個別の周知・意向確認の義務化
②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
③産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
④育児休業の分割取得
⑤育児休業取得状況の公表の義務化
※:①②は2022年4月1日施行、③④は2022年10月1日施行、⑤は2023年4月1日施行
上記の改正は、男女共に仕事と育児を両立できるように育休を取りやすくする目的で施行されました。たとえば、男性と女性が交互に育休を取得可能にすることで、保育施設確保の困難による職場復帰へのハードルを下げることにもなりました。
2025年4月1日から創設された新たな給付金とは?
2025年4月から給付金制度が改正され「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付」が新設されました1)。それぞれの給付金についてご紹介します。
①出生後休業支援給付金
「出生後休業支援給付金」は育児休業給付金に上乗せされる給付金で、一定の要件を満たした場合、育児休業開始から最大28日間、賃金の13%が支給されます。育児休業給付金(賃金の67%:開始から180日間)とあわせると、最大80%の給付を受け取ることができます。
【出生後休業支援給付金の支給額】1)
休業開始時賃金日額×支給日数× 13%(給付率)
〈図〉支給額のイメージ

※パパ・ママ育休プラスを活用した場合
ただし、出生後休業支援給付金には上限金額と下限金額が設定されています。2025年7月31日までの上限金額、下限金額は以下のとおりです1)。
支給上限額:5万7,111円
支給下限額:1万443円
また、育児休業期間中に賃金が支払われる場合は、支給額が調整されるため、注意が必要です。
出生後休業支援給付金の支給要件は、両親ともに育休を通算して14日以上取ることが原則ですが、配偶者の状況により例外が認められる場合があります。支給要件は細かく定められているため、申請前に「育児休業給付の内容と支給申請手続」で確認しておくとスムーズです。なお、申請手続きは会社が行うため、勤務先の担当部署に確認するようにしましょう。
②育児時短就業給付
「育児時短就業給付」とは、育児のために時短勤務をしている人に対する給付です1)。2025年4月1日からは、2歳未満の子どもを養育している人が時短勤務をしている場合、時短勤務中の賃金の10%が毎月「育児時短就業給付」として支給されます。
育児時短就業給付にも上限金額と下限金額が設定されています。2025年7月31日までの上限金額、下限金額は以下のとおりです1)。
支給上限額:47万700円
支給下限額:8万6,070円
支給要件は以下になります。
【支給要件】
- 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業をする雇用保険の被保険者であること。
- 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて育児時短就業を開始していること。もしくは、育児時短就業開始日前の2年間に、被保険者期間が12か月以上あること。
支給対象期間は、原則、子どもが2歳になる誕生日の前日です。支給要件や期間は細かく定められているため、申請前に厚生労働省が発行しているパンフレットで確認しておきましょう。なお、申請手続きは会社が行います。
ご紹介した2つの給付金については、以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】出生後休業支援給付金と育児時短就業給付について、詳しくはコチラ
制度を理解して、育児休業給付金を活用しよう

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出産や育児にはまとまった費用や準備が必要であるほか、出産後は一定期間、職場を離れることが一般的です。育児休業給付金はそんな期間の経済的負担を軽減してくれます。不明な点や疑問は会社ともコミュニケーションを取って解消し、支給要件や支給額をきちんと理解した上で育休と育児休業給付金を活用しましょう。