この記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、4人家族の生活費の平均や内訳のバランス、生活費シミュレーションなどを紹介します。
※:この記事では、税金や社会保険料などを除いた“消費支出”のことを「生活費」と表現しています。家賃や光熱費・水道費、食費などは含んでいますが、貯蓄や資産運用への投資金額などは含んでいないのでご承知ください。
※この記事は2020年2月7日に公開した内容を最新情報に更新しています。
この記事の監修者
氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
4人家族の生活費の平均は約33万円/月
まずは、4人家族の生活費の平均を紹介します。総務省の「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」1)から、4人暮らし世帯のデータを参考に見ていきます。
※:「家計調査年報」の調査対象には、持ち家がある世帯が含まれているほか、住宅ローンを消費支出に含めていないといった理由から「住居」の金額が低めになっています。
1カ月・1年間の生活費の平均は?
1世帯に住んでいる4人のうち、世帯主を含む誰かが働いている勤労者世帯の調査結果を抽出し、全体の月額の平均を計算してみました2)。
4人暮らしの勤労者世帯全体の、毎月の実収入(額面月収)の平均は66万477円です。税金や社会保険料などの非消費支出は12万4,469円なので、実収入から非消費支出を引いた手取りの月収額は53万6,008円となります。
一方、生活費(税金や社会保険料などの非消費支出を除いた消費支出)の平均は32万6,674円となっています。
〈表〉4人家族の手取り月収と生活費の平均(勤労者世帯)
手取り月収(実収入−非消費支出) | 53万6,008円 |
---|---|
生活費(消費支出) | 32万6,674円 |
4人家族の場合、手取り月収の約61%が生活費に充てられている計算です。この比率を、月収に対する生活費の割合の目安と考えてもいいでしょう。
4人家族の1カ月分の生活費の平均を12倍すると392万88円です。これを1年間の生活費の平均の目安と考えていいでしょう。
4人家族の生活費の内訳は?
続いて、4人家族の生活費の内訳を見てみましょう2)。やはり「食料」が占める割合が約27%と最も多く、続いて「交通・通信」と「その他の消費支出」の費用が同率(約15%)で高くなっています。
〈表〉4人家族の手取り月収と生活費の平均(勤労者世帯)
手取り月収(可処分所得)(※) | 53万6,008円 | ||
---|---|---|---|
生活費(消費支出) | 32万6,674円 | ||
生活費の内訳(※1) | 食料 | 8万9,812円 | 27% |
住居 | 1万4,175円 | 4% | |
光熱・水道 | 2万4,747円 | 8% | |
家具・家事用品 | 1万2,605円 | 4% | |
被服及び履物 | 1万2,875円 | 4% | |
保健医療 | 1万2,701円 | 4% | |
交通・通信 | 4万8,435円 | 15% | |
教育 | 2万9,780円 | 9% | |
教養娯楽 | 3万3,223円 | 10% | |
その他の消費支出 | 4万8,321円 | 15% |
※:可処分所得とは、収入から税金や社会保険料などの支払いを差し引いた所得で、いわゆる「手取り」の部分を指す
同じ調査で得られた3人家族の生活費と比較すると、「教育」がほぼ倍増しているほか、「食料」が5,000円程度、「教養娯楽」が3,000円程度増えています。一方で、「光熱・水道」や「家具・家事用品」はそれほど大きな差はありません(3人家族では、「教育」1万5,130円、「食料」8万4,320円、「教養娯楽」3万580円、「光熱・水道」2万4,219円、「家具・家事用品」1万3,634円)。
3人家族と4人家族の生活費を詳しく比較したい人は、以下の記事も併せてご参照ください。
【関連記事】3人家族の生活費の平均は月33万円! 内訳や節約術も解説
子どもの教育費、いくら準備すれば十分?
4人家族といえば、夫婦と子ども2人という組み合わせが多いと考えられます。そんな4人家族の生活費の特徴は、子どもがいることにより、子どもの教育費がかかる点です。子ども1人の幼稚園から大学までにかかる教育費はいくらなのでしょうか?
日本政策金融公庫の調査3)によると、高校1年から大学4年までの入学費用と在学費用の累計は、942万5,000円となっています。
高校卒業後の入学先学校別に詳しく見ると、私立大学に入学した場合の累計金額は、文系で951万6,000円、理系で1,083万4,000円、国公立大学では743万円でした。
〈図〉入学先別の高校入学から大学卒業までにかける費用 (子ども1人あたりの費用〈年間平均額の累計〉)
高校卒業以前の学費についてはどうでしょうか。文部科学省が実施した調査によると4)、以下のとおりです。
〈図〉学校種別・公立私立別学習費総額合計
同調査では、学校教育に支払う学費だけではなく、学校外活動のために支出した費用も加えたものを「学習費」として算出しています。
幼稚園から大学まですべて国公立を選んだ場合は、この2つの調査を基に計算すると、学習費・学費の総額は約1,055万円になります。一方、幼稚園から大学まですべて私立を選んだ場合には、文系で約2,528万円、理系では約2,660万円になります。つまり、子どもの進路によっては、2,500万円以上の教育資金を用意する必要があるということがわかります。
【関連記事】教育費の平均はいくら? 大学までの賢い貯め方、詳細はコチラ
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FPが教える! 4人家族の理想的な生活費の内訳バランスは?
子どもが1人増えて4人家族になると、3人家族の時に比べ、生活費のバランスは変わります。とはいえ、生活費に対する基本的な考え方は、3人家族の場合と同じといっていいでしょう。
ただし進学に必要な教育資金は2人分になりますから、貯金は欠かせません。子どもが小さいうちから、しっかり将来への備えをしておくべきです。
そのために実践していただきたいのが、生活費の見直しです。具体的には、将来へ備える分をあらかじめ考慮に入れて、収入に対する生活費の割合を決めることから始めましょう。ここでは生活費だけに注目するのではなく、毎月の手取り月収に対する支出の理想的なバランスを紹介します。
〈表〉4人家族の理想の支出バランス(監修者作成)
費目 | バランスの目安 |
---|---|
住居(家賃/住宅ローン) | 手取り月収の20~25% |
食費 | 手取り月収の15%以内 |
通信費 | 1万5,000円程度 |
光熱費・水道費 | 2万5,000円程度 |
教育費 | 3万円程度 |
交通費 | ライフスタイルや収入に応じて調整 |
保険料 | |
雑費(日用品費など) | |
小遣い | |
不定期な支出 | 手取り月収の10%程度 |
貯蓄 | 手取り月収の10%以上 |
①住居(家賃/住宅ローン):手取り月収の20~25%
前述の「家計調査年報」2)では、「住居」の金額が低め(手取り月収の約4%)になっていますが、国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査」5)によれば、住宅ローンの平均返済額は全国平均で約14万5,000円、三大都市圏平均で約15万3,000円となっています(注文住宅の場合)。また、家賃の平均は月額7万8,069円、共益費の平均は月額4,836円と記載されています。合計すると平均は月額8万2,905円です。
このデータからもわかるように、「家計調査年報」のデータよりも実際は多く支払う人が多いはずです。そのため手取り月収の20~25%が、家賃や住宅ローン(マンションの管理費や修繕積立金を含む)の目安となるでしょう。
②食費:手取り月収の15%以内
手取り月収に対して食費が占める割合は15%以内が適切といわれています。世帯主の年齢的に収入も増えているため、この比率は、子どもが2人いる場合でも基本的には変わりません。
③教育費:3万円程度
この場合の教育費とは、習い事や塾などにかかる費用であり、学費などの教育資金とは別物です。「家計調査年報」2)によれば、4人家族の「教育」の費目の平均額は、2万9,780円となっています。ここでは、小さな子どもを含む4人家族を想定し、教育費は2万円としました。もちろん、ご家庭の方針によって金額は調整しても構わないでしょう。
④通信費:1万5,000円程度
「家計調査年報」2)によれば、4人家族の「通信」の費目の平均額は1万4,160円となっています。スマホの格安通信プランを利用すれば、1人あたり5,000円程度に抑えることが可能です。なお、ここでは小さい子どもがいる家庭を想定して、両親のスマホ代と自宅で利用するインターネット回線の費用のみで計算し、1万5,000円程度としています。
⑤光熱費・水道費:2万5,000円程度
「家計調査年報」2)によれば、「光熱・水道」の費目の平均額は2万4,747円ですから、だいたい2万5,000円を目安と考えればいいでしょう。
⑥不定期な支出:手取り月収の10%程度
冠婚葬祭にかかる費用や帰省費用、家具家電の買い替えなど、毎月ではなく不定期であるものの年単位でみれば発生する可能性が高い支出については、毎月積み立てをしておくと家計の管理がしやすくなります。金額は手取り月収の10%程度が目安となります。年末に余った金額を貯蓄や子どもの教育費などに割り振ってもいいでしょう。
⑦貯蓄:手取り月収の10%以上
将来の子どもの教育資金を準備したいなら、少なくとも手取り月収の10%は貯蓄にまわすといいでしょう。あらかじめ割合を決めておけば、給与が振り込まれた時点で「先取り貯金」もしやすくなります。
⑧交通費、保険料、雑費、小遣い
交通費、保険料、雑費、小遣いは、ライフスタイルによって調整が必要になる支出といえます。具体的な目安がある費目を先に計算してから、残りの金額で配分を考えるといいでしょう。
【手取り50万円】4人家族の生活費シミュレーション
それでは、ここまでに提案したバランスを踏まえて、30代の4人家族の生活費をシミュレーションしてみましょう。ここでは、例として手取り月収約50万円の世帯でシミュレーションします。
〈表〉4人家族(手取り月収約50万円)の生活費シミュレーション
手取り月収 | 約50万円 |
---|---|
住居(家賃/住宅ローン) | 12万5,000円 |
食費 | 7万5,000円 |
通信費 | 1万5,000円 |
光熱費・水道費 | 2万5,000円 |
教育費 | 3万円 |
交通費(自動車維持費含む) | 1万5,000円 |
保険料 | 1万5,000円 |
その他(日用品や小遣いなど) | 3万5,000円 |
不定期な支出 | 5万円 |
貯蓄 | 11万5,000円 |
30代の4人家族と考えた場合、子どもの教育資金が2人分必要になることも考慮し、貯蓄にまわす金額を23%確保しました。一方、不定期な支出は子どもの教育費が増える分を考慮し、10%に抑えています。ここでは、小さな子どもがいる家族を想定し、教育費は3万円としました。
通信費にはスマホ代のほか、自宅に引くインターネット回線の費用も含んでいます。交通費1万5,000円では自動車の維持管理費などがまかなえない場合には、住居費や小遣い、不定期な支出などで調整してもいいでしょう。
4人家族が実践したい、5つの節約術
4人家族が押さえておきたい節約術をいくつか、紹介します。
節約術①各種の控除や制度を活用する
国や自治体などの控除や制度を最大限活用することは、節約の基本となります。広報誌などに目を通して、地域の子育て支援制度などはもれなく活用しましょう。
そのほか、支払った保険料に応じて税金の負担が軽くなる生命保険料控除やふるさと納税、老後資金の積み立てにも役立つiDeCoなど、様々な控除や制度があります。
節約術②長子を通じて得たコミュニティーを活用する
1人目の子どもにお金をかけすぎた結果、2人目の子どもにかけるお金を節約しがちになる家庭も多いものです。しかし、どちらも平等にしてあげるべきなのはいうまでもありません。そこで活用したいのが、ママ友やパパ友など長子を通じて得た親同士のコミュニティーです。
洋服や玩具など子ども向けのグッズを融通し合ったりすれば、子どもにかけるお金を節約できるので、学費などの教育資金をより平等に準備することができるでしょう。そのほか、メルカリのようなフリマアプリを活用して子ども向けグッズの売買をすることも、子どもが増えた家庭では有効な節約術といえます。
節約術③通信費、ネットサービスの見直しをする
現代の暮らしに欠かせないスマホ代や動画配信などのネットサービス代は、家族会員(家族アカウント)の契約をすることで、個別契約よりも安くなる場合が多いです。個別にサービスを利用している場合は、契約形態を見直してみましょう。
節約術④保険の見直しをする
家族が増えると、必要な保障内容も変化するため、保険の見直しを検討してみましょう。ただし、必要以上の保障内容にする必要はありません。見直しにあたって、不要な特約を外すなどの方法があります。どの保険に加入するか検討する場合には、新しい商品も含めて比較検討したりするといいでしょう。なお、医療保険や生命保険など、民間の保険に加入していると、生命保険料控除が受けられるメリットがあります。
保険の見直しの際は、保険の専門家に相談してみましょう。保険料や保障など、現在の状況に合わせた提案をしてもらえます。
節約術⑤家計簿アプリを活用する
生活費のやり繰りが上手な人たちに共通する傾向として、家計簿アプリを使い収支を小まめにチェックしていることが挙げられます。データの共有ができる家計簿アプリなら、夫婦で一緒に収支のチェックを行うことも可能です。何に、どれくらいお金を使っているのかが「見える化」できれば、節約しやすくなるでしょう。
子どもが増えれば幸せも増える。計画的な家計管理を
子どもが増えた分だけ生活費もかさむと考えがちですが、1人と2人を比較した場合、食費や光熱費・水道費の増加はせいぜい1.5倍程度です。また、児童手当などを上手に活用すれば負担を減らすことも可能です。節約を含め計画的な家計管理を心掛けましょう。
そのための第一歩は、夫婦一緒に家計の管理を行い、ライフプランについても定期的に話し合うことです。家族の明るい未来のためにも、家計は家族みんなで管理するもの、という意識を忘れないようにしましょう。