そこでこの記事では、共働き家庭の割合のほか、平均年収や貯蓄額などの生活実態、さらに共働きならではのメリットや夫婦円満のコツまでを、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん監修のもと紹介します。
現在共働き家庭で悩みを抱えている人や、これから共働きを始める人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
高山 一恵(たかやま かずえ)
株式会社Money&You 取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。DCプランナー1級。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。
共働き家庭の割合は66.2%
厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」1)によると、男性雇用者世帯のうち、共働き世帯の割合は66.2%となっています。
〈図〉男性雇用者世帯のうち、共働き世帯と専業主婦世帯の推移
また、内閣府男女共同参画局の「共同参画 2020年9月号」2)によると、1998年に「妻がパートで働く共働き世帯」が「妻がフルタイムで働く共働き世帯」を上回り、2019年には1985年当時の約3倍に増加しています。妻がパートで働く共働き世帯が増えたことが、共働き世帯全体の割合を押し上げているといえるでしょう。
〈図〉共働き世帯における、妻の働き方別の世帯数の推移
共働き家庭の家事事情
今や6割以上を占める共働き家庭ですが、夫婦ともに仕事をするからこそ、家事の分担について悩むことが多いのも事実です。「どちらも働いているのだから5:5の割合が理想だ」と思うかもしれませんが、内閣府の「令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査」3)によると、共働き夫婦の家事負担割合は以下のとおりです。
〈図〉共働き夫婦の家事負担割合
妻がフルタイムで働く家庭ではおよそ6:4(妻:夫 以下同)、妻がフルタイム以外で働く家庭ではおよそ8:2の割合となっています。収入差や家庭の環境など様々な事情により、納得できる負担割合は異なると思いますが、全体としては妻の割合のほうが基本的には多いことがわかります。
そこで、共働き家庭の家事・育児に関する満足度を見てみましょう。2020年に株式会社クレハが行った「「共働き夫婦の家事シェア事情」に関する実態調査」4)によると、小学生以下の子どもがいる20〜40代の共働き夫婦の場合、家事・育児に対する満足度は以下のようになっています。
〈図〉共働き家庭の家事・育児に対する満足度
夫の84.0%が満足しているのに対し、妻の満足度は60.5%にとどまっています。夫に比べ妻のほうが不満を抱えていることが、データから読み取れます。
夫婦それぞれの言い分や、共働き家庭におけるお金と家事の関係など、詳しくは以下の記事で紹介しています。
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また、家事の中でも夫婦喧嘩のもとになりやすい「夕食作り」については、以下の記事で紹介しています。
【関連記事】共働きの夕食問題を円満解決する方法や負担を軽くするテクニックについて、詳しくはコチラ
共働き家庭の子育て事情
子どもがいる家庭では、家事の悩みに加えて育児に関する悩みも多く生じるでしょう。「妻のほうが育児の負担が多い」「フルタイムで働きながら育児をすることが難しい」など、共働き家庭ならではの問題は尽きません。
内閣府の「令和元年度家事等と仕事のバランスに関する調査」3)によると、共働き夫婦の育児負担割合は以下のとおりです。
〈図〉共働き夫婦の育児負担割合
家事の負担割合と同じく、妻がフルタイムで働く家庭ではおよそ6:4(妻:夫 以下同)、妻がフルタイム以外で働く家庭ではおよそ8:2の割合となっています。家事と育児どちらもが妻の負担のほうが多い結果となっています。
こういったことから、共働きの子育て家庭では妻の負担が大きくなり「ワンオペ育児」状態になってしまうこともあります。どちらか一方の負担が大きすぎると、仕事に支障が出たり、体の不調につながったりすることもあります。そうなる前に、夫婦でよく話しあいお互いが納得できる体制を目指しましょう。
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共働き家庭の年収事情
共働きの最大のメリットは、なんといっても収入が多いことでしょう。では、共働き家庭の平均年収や中央値はいくらなのでしょうか。詳しく説明していきます。
共働き家庭の平均年収と中央値
2021年の総務省統計局「家計調査 家計収支編」5)によると、共働き世帯の1カ月あたりの実収入の平均は68万3,525円です。年収にすると820万2,300円※となります。
ただし、これはあくまでも平均で、一部の高収入世帯が金額を押し上げてしまっている可能性があります。より正確に実態を見るために、総務省の「平成29年就業構造基本調査」6)をもとに共働き世帯の年収別分布を見てみましょう。比較のために、専業主婦世帯の分布も示しています。
〈図〉共働き世帯の年収別分布
共働き世帯であっても、年収400万~499万円の世帯がもっとも多いことがわかります。一方で、年収1,000万円~1,249万円という高額な年収を稼いでいる層も比較的多くなっています。
この調査では、「共働き」が夫婦とも正社員なのか、一方がパートやアルバイトなのかを分けずに集計しているため、世帯年収にバラつきが出ていると考えられます。
なお、この分布図をもとに中央値を算出すると、共働き世帯の年収中央値は600万〜699万円となります。
※実収入は各種税金や社会保険料が引かれる前の金額です。
夫の年収、妻の年収
共働き世帯における夫と妻の1カ月あたりの実収入について、同じく2021年の「家計調査 家計収支編」5)の結果によると、夫が45万6,579円、妻が15万9,732円です。
これを年収にすると、夫が547万8,948円、妻が191万6,784円となります。なお、前述した「実収入」には、夫婦以外の世帯人員の収入なども含まれるため、合計は一致しません。
共働き家庭の貯金事情
比較的収入の多い共働き家庭ですが、貯金額についてはどのようになっているのでしょうか。
年代別の共働き世帯のみの貯金額・貯蓄額に関する公的なデータはありませんが、参考までに金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」7)を見てみると、共働き以外も含む2人以上の世帯が保有する「貯金」「金融資産」は以下のようになっています。
〈表〉世帯主の年齢別・貯金額、金融資産保有額(2人以上の世帯)
世帯主の年齢 | 貯金額 (平均値) | 金融資産保有額 (平均値) | 金融資産保有額 (中央値) |
---|---|---|---|
20歳代 | 103万円 | 212万円 | 63万円 |
30歳代 | 380万円 | 752万円 | 238万円 |
40歳代 | 406万円 | 916万円 | 300万円 |
50歳代 | 577万円 | 1,386万円 | 400万円 |
60歳代 | 997万円 | 2,427万円 | 810万円 |
70歳以上 | 959万円 | 2,209万円 | 1,000万円 |
「金融資産」には、株式や投資信託などの金額も含まれています。
この調査に協力した世帯で、共働き(世帯主と配偶者のみ就業、その他就業者あり)と回答したのは、約57%と半数を超えています。誤差はあるでしょうが、共働き夫婦の場合の平均貯金額・貯蓄額と、ほぼ同様と考えてもよいでしょう。
ちなみに、総務省の「家計調査 貯蓄・負債編(2021年)」8)によると、全年代を合わせた共働き世帯の貯金額は868万円、貯蓄額は1,372万円となっています(平均年齢48.8歳)。上記の金融広報中央委員会の調査と併せて、参考にしてみてください。
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共働きのメリット
共働きには、様々なメリットがあります。ここでは、主に考えられる6つを紹介します。
収入が増える
最大のメリットは、夫婦2人分の収入があるため、1人で働くよりも収入が増えることです。収入が増えることで経済的な余裕が生まれるほか、教育資金や老後資金など将来のための貯蓄もしやすくなるでしょう。
また、経済的な余裕は心の余裕にもつながります。共働きで忙しい日々の中でも、節約に必死にならずに済む点もメリットでしょう。
年金の受給額が増える
専業主婦(夫)や夫婦のどちらかが扶養内で働く場合、その人の年金は国民年金のみとなりますが、夫婦がそれぞれ厚生年金に加入するほどの収入があれば、将来もらえる年金額もその分増えます。
〈表〉共働き家庭と専業主婦(夫)家庭の年金
働き方 | もらえる年金 |
---|---|
共働き家庭 | 国民年金×2人分、厚生年金×2人分 |
専業主婦(夫)家庭 | 国民年金×2人分、厚生年金×1人分 |
リスクを分散できる
専業主婦(夫)家庭の場合、働いている人が失業や病気、死亡などで働けなくなった際に、収入がなくなってしまう恐れがあります。
もちろん国や自治体などの給付制度もあるため、完全にゼロになることはあまりないと思いますが、そういった制度の保障は受け取るまでに時間がかかったり、生活費をまかなうのには少額であることも考えられます。
その点、共働き家庭であれば、完全に収入がなくなることはありません。収入源が2つあることで、リスクの分散ができるのです。
働けない期間の支援制度がある
産休・育休制度や失業・傷病手当など、働けない期間に対する支援制度は、専業主婦(夫)や扶養内で働く場合には利用できません。こういった制度を利用できる点も共働きのメリットでしょう。
社会とのつながりを持てる
結婚や出産をきっかけに専業主婦(夫)になる際には、自分の世界が家庭内やママ・パパのコミュニティのみになってしまい、社会とのつながりが薄れてしまうこともあるでしょう。
夫婦それぞれが社会とのつながりを持っていれば、より世界は広がりますし、家庭以外でのつながりがあることで、心の拠り所を複数持っておけるメリットもあります。
夫婦の理解度が深まる
専業主婦(夫)家庭の場合には、仕事と家事・育児、それぞれの大変さがお互い理解できず喧嘩の原因になることもあるでしょう。しかし共働き家庭の場合には、夫婦ともに仕事と家事・育児を担うために、お互いが大変なことや困っていることを理解しやすい環境です。
どちらかの仕事が忙しい時には家事の分担を調整するなど、助けあいながら生活していくことで、夫婦の理解度もより深まるでしょう。
共働き家庭の夫婦円満のコツ
つぎに、共働き家庭の夫婦が円満に暮らすためのコツを4点紹介します。すぐにできることなので、ぜひ実践してみてください。
感謝を伝える
共働き家庭に限ったことではありませんが、一緒に生活する上で感謝を伝えることはとても大切なことです。何かちょっとしたことでも、相手が自分や家族のために動いてくれたと感じたら、感謝を伝える習慣をつくりましょう。思っているだけでは何も伝わっていないのと同じなので、「言葉に出して伝える」「見える形で伝える」ということを実践しましょう。SNSやチャットツールなどを使うのも、手軽に気持ちを伝えられるのでおすすめです。
話す習慣をつける
日常的に会話が多い夫婦は、お互いの意思の疎通がうまくいきやすいでしょう。日常の些細なことでも、夫婦間で報告しあったり、共有する習慣をつけましょう。家事や育児についての希望、大変なことなども話しやすくなります。
また、必要事項だけでなく、雑談や、子どもの笑えるエピソード、かわいいエピソードなどを話しあうことで、絆を深めていけます。
面と向かって話す時間をとりにくい場合は、SNSやチャットツールなどを活用するのもおすすめです。
互いの仕事を尊重する
パートナーや、配偶者の仕事を尊重する気持ちは、人間関係にとってとても大切です。「自分のほうが稼いでいる」「自分のほうが家事をしている」といった気持ちがあったとしても、それと相手が毎日仕事を頑張っていることはまた別の問題です。互いに尊重しあう関係を築いていきましょう。
2人とも何もしてはいけない日をつくる
時には「家事をせず、休む」日もつくりましょう。お互い仕事で忙しい中、家の用事も行うわけですから、息抜きもしないとストレスがたまってしまいます。
子どもがいて難しい場合は、同じ日ではなく別の日に、それぞれ休むようにしてもよいでしょう。
共働きの家事時短テク
共働き家庭では、家事にかけられる絶対的な時間がそれほど多くありません。そもそもの家事負担を減らす工夫をすることで、日々のストレスを軽減することができるでしょう。すぐに実践できるテクニックを紹介します。
時短家電を活用する
自分たちですべての家事をやる必要はありません。最近では、新三種の神器として、家事の手間を減らせる「ロボット掃除機」「食器洗い乾燥機」「ドラム式洗濯乾燥機」が挙げられるなど、便利な時短家電がたくさんあります。共働きの強みは収入が多いということでもあるので、生活を助けてくれる家電は積極的に取り入れて、家事に時間をかけない暮らしを目指しましょう。
冷凍食品やミールキットを活用する
カット済みの野菜や味付きの肉類など、手間を減らして料理ができる冷凍食材や、炒めたり煮たりするだけで完成するミールキットなどは、忙しい日の調理の手間や、メニューを考える手間を大幅に削減してくれます。「料理は一から作らないと!」と気負わずに、使えるものは使いましょう。
洗濯物をたたむのはセルフ方式にする
洗濯物を取り込んだあとたたむのは、家族それぞれにやってもらうと手間が省けます。家族の人数分の専用カゴを用意して、分類までを洗濯担当者がやり、その後は各人のタイミングで行いましょう。うまく定着すれば、洗濯のひと手間を減らせます。
【関連記事】共働き家庭の家事時短テクニックについて、詳しくはコチラ
まとめ
年々増加している共働き家庭、その数は今後さらに増えていくことが予想されます。そういった中で、共働きならではの悩みは今後も尽きることはないでしょう。
年収や貯金額などお金に関することから、家事や子育てなど生活に関することまで、実情や悩み、解決策を紹介しましたが、共働き家庭の夫婦が円満でいるためには、何よりも話しあうことが大切です。
一緒に家庭を支える意識を持って、より協力しあえる環境づくりを目指しましょう。