もちろん、支払いができていればよいのですが、特に若い方の中には滞納してしまう人がいるだけではなく、滞納していること自体に危機感を覚えない人もいるようです。
滞納が長引くと、スマートフォンの利用契約が切れるだけではなく、信用情報に傷がついて将来ローンが組めなくなるなど、大きなリスクにつながります。この記事では、そのような状態にならないために、弁護士の鈴木淳也(すずき じゅんや)先生監修のもと、携帯代を滞納するリスクや対処法について解説します。心当たりのある人は、滞納リスクを正しく認識して、適切な対応を行ってください。
この記事の監修者
鈴木淳也
大手法律事務所で活躍したのち、2018年4月に鈴木淳也総合法律事務所を設立。借金の債務整理から企業法務など幅広く対応。気象予報士や防災士の資格も保有するマルチ弁護士。
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携帯代を滞納しがちな人の特徴チェックリスト
まずは、3,000件以上の債務整理を請け負ってきた弁護士としての経験から、携帯代を滞納しがちな人の傾向を紹介します。あなたは当てはまっていないでしょうか。
携帯代を滞納する人の多くは、借金をする人と似通った共通点を持っています。たとえば、お金の管理が苦手で月の支出を把握できない、自分の経済力以上の買い物をしてしまうなどです。その結果、携帯代の滞納につながっていることが多いです。
特に注意したいのは、商品やサービスの支払いを携帯代とともに行えるキャリア決済を利用している人です。キャリア決済は、3大キャリアと呼ばれる携帯電話会社(ドコモ、au、ソフトバンク)が提供しているサービスです。ショッピングのほか、ゲームアプリの課金やサブスクリプションサービスなど、幅広く利用することができます。
キャリア決済自体は、ネットや店舗での購入ができ、クレジットカードとほぼ同じ機能と言えますが、支払い方法は限定的で一括払いが基本です。クレジットカードの場合、分割払いにするなど、支払い方法を工夫することができますが、それができないのです。そのため、高額になって支払えない場合、スマートフォンの利用停止に直結してしまいます。
なお、世代としては、20〜30代といった若い人ほど携帯代を滞納しやすい
傾向にあります。年配の方はあまりスマートフォンでの決済を利用しないので、過剰に使い込むことはあまりないからです。
〈表〉携帯代を滞納しがちな人の特徴チェックリスト
□お金を管理するのに苦手意識がある □自分の収入と支出を把握できていない □欲しいものがあると、衝動買いをしてしまう □キャリア決済で大金を使うことがある □スマホアプリゲームで重課金をしている □サブスクリプションサービスにいくつ加入しているかわからない |
携帯代を支払えないとどうなる?【強制解約までの流れ】
では、携帯代を支払えないと、どのような事態に陥ってしまうのでしょうか。結論を言うと、最終的に強制解約になります。滞納から強制解約までの主な流れは以下の通りです。
【注意】
下記で示すのはあくまで目安の期間です。回線の利用停止や強制解約までの期間は、携帯電話会社によって異なります。また、三大キャリアへ問合せを行いましたが、期間について公式見解を出していません。その点を留意してご覧ください。
〈図〉料金滞納から強制解約までの流れ
【Phase1】SMS等で未払いの通知が届く
支払日に入金が確認されなかった場合、まずは契約している携帯電話会社からショートメッセージ(SMS)などで未払いを知らせる通知が届きます。
【Phase2】郵送で払込用紙が自宅に届く
未払い通知から1〜2週間ほど何もしないと、払込用紙などが自宅に届き、料金の振り込みを促されます。
【Phase3】携帯電話の回線が停止される
払込用紙の振り込み期限は、本来の支払日から約1カ月後に設定されていることが多いです。そこまでに支払いを行わないと携帯電話の回線の利用が停止されます。ただし、この段階では強制解約にはなりません。振り込みがされれば、回線を再開することができます。
〈表〉回線が停止すると利用できなくなること
・電話の発信 ・(携帯回線を利用した)ネット通信 ・メールの送受信 ・SMS |
※Wi-Fi等を利用したネット通信は利用できます
【Phase4】払込用紙や督促状が自宅に届く
支払いがされない場合、その後も払込用紙や督促状などが送付されてきます。猶予期間と言えるでしょう。
【Phase5】強制解約になる
2、3度目の払込用紙や督促状が届いてから、2カ月ほどが経過しても滞納が解消されなかった場合、強制解約に至ります。
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携帯代を滞納して起こるリスクとは?
携帯代を滞納するリスクは、携帯電話回線の強制解約だけではありません。支払いができたとしても、遅延損害金で余計な出費が増えますし、強制解約後には他の携帯電話会社で契約を結ぼうと思っても結べなかったり、クレジットカードを作れなかったりするおそれもあります。また、最悪の場合は、勝ち目のない裁判で裁かれることもあります。ここでは携帯代を滞納した場合のリスクについて解説します。
(1)遅延損害金・延滞利息が発生してしまう
強制解約まで至らなくても、支払い期日に間に合わない場合、遅延損害金や延滞利息といったペナルティが発生します。この金額は滞納期間が長引くほど雪だるま式に増えていくので、早めに対応しないと余計に支払いが困難になります。
特に延滞利息は、通話料やデータ通信料といった利用料金が年率14.5%、機種代金などの割賦金は年率3%つくなど、高額です。
〈表〉10万円の料金に対する延滞利息例
延滞年月 | 利用料金の場合 | 機種代金の場合 |
---|---|---|
3カ月 | 103,625円 | 100,750円 |
6カ月 | 107,250円 | 101,500円 |
12カ月 | 114,500円 | 103,000円 |
18カ月 | 121,750円 | 104,500円 |
24カ月 | 129,000円 | 106,000円 |
30カ月 | 136,250円 | 107,500円 |
36カ月 | 143,500円 | 109,000円 |
※利用料金は年率14.5%、機種代金の割賦金は年率3%で算出
(2)各種のブラックリストに登録されてしまう
強制解約まで至ってしまうと、信用情報に傷がつくことになります。ただし、携帯電話会社との契約内容によって、傷がつく信用情報の種類は変わります。
1つは、毎月の携帯代で支払っているのが、通話料やデータ通信料といった通信料金のみの場合です。たとえば、スマートフォンや携帯電話の機種代金を一括支払いされた方や、機種代金を分割払いでもすでに完済している方はここに含まれます。その場合、強制解約後に携帯電話会社間で料金の不払者情報が交換され、今後の携帯電話審査に活用されます。
一方で、スマートフォンや携帯電話の機種代金を分割払いにして、毎月の利用料金と一緒に支払っている方も多いものです。もしその支払いが完済していない場合、強制解約後に発生するリスクは、携帯電話会社間で共有しているリストに加え、クレジットやローン等の申し込みや契約に関する情報を管理する信用情報機関(CIC)のリストにも登録されることになります。以下でそれぞれの内容を見てみましょう。
〈図〉契約状況によって登録されるブラックリストが異なる
【パターンA】携帯電話会社間で共有されるリストに登録される
通信料金のみを滞納し、強制解約に至った場合、一般社団法人電気通信事業者協会を介して、料金不払い者の情報が携帯電話会社間で交換されることになります。5年間は残りますので、これまで契約していた携帯電話会社と再契約できなくなるのはもちろんのこと、他社との新規契約も難しくなります。
【パターンB】クレジット等の情報を管理する信用情報機関のリストに登録される
機種代金の分割払いを含んだ利用料金を滞納し、強制解約に至った場合、上記に加えて、クレジットやローン等の申し込みや契約に関する情報を管理する信用情報機関のリストに登録されてしまいます。
なぜなら、機種代金の分割払いは、利用料金とは別契約になっており、ローンなどと同じ「クレジット契約」だからです。機種代金の分割払いは、皆さんが携帯端末のメーカーに支払うお金を、携帯電話会社が立て替えることで成立しています。そのため、ローンやクレジットカードの滞納と同じ扱いになってしまうのです。
なお、「ブラックリストに登録される」と表現しましたが、正確には、この信用情報機関に「異動情報」として登録されることになります。異動情報とは、支払いの延滞や債務整理、強制解約などのネガティブな信用情報のことです。事故情報とも呼ばれており、およそ5年間は情報が保持されると言われています。
異動情報は、金融機関とクレジット契約やローン契約を交わす時、必ず照会されます。そのため、異動情報が登録されている間、クレジットカードの作成、マイカーローンや住宅ローンといった各種ローンへの申し込み、さらには消費者金融での借り入れも困難になるでしょう。
(3)債務回収会社からの取り立てに遭う
強制解約後も料金が支払われないと、信用リスクだけでなく、訴訟リスクも発生しますが、携帯電話会社もすぐに法的措置を取るわけではありません。まずは債権回収会社や法律事務所に債権回収を委託する等して、債権回収を行います。
暴力沙汰や自宅への押し入りなど、法的に違反となる取り立ては認められていませんが、本人としてはかなり驚く事態でしょう。この段階になり、債権回収会社などから督促状が何通も届くようになり、焦って弁護士などに相談する人も多いです。
(4)裁判を起こされて、必ず負ける
それでも携帯代を滞納し続けると、最悪の場合は民事訴訟に発展します。「たかが携帯代で」と思うかもしれませんが、実際に裁判へと至った件数は少なくありません。
もちろん、滞納者が裁判で勝ち、支払いの義務を解消できる見込みは皆無です。とはいえ、携帯電話会社としても滞納者が一括で支払いできるとは考えていません。そのため、支払いの義務は残ったまま、携帯電話会社との「裁判上の和解」の成立や、無理のない分割払いの設定など、現実的な落としどころを目指していくことになります。
ただし、裁判所から「支払督促」が届いた場合は、必ず2週間以内に異議申し立てを行いましょう。放置していると「仮執行宣言」が発付されてしまいます。これは裁判の判決を待たなくても、判決によって生じる義務を強制執行できる効力を与えるもので、携帯電話会社による財産の差し押さえが可能になります。
異議申し立てというと、携帯電話会社と正面衝突するような印象を受けるかもしれません。しかし、これは「話し合いをしたい」という意思表示のようなもので、異議申し立てをすると支払督促から「通常訴訟」へと移行します。そもそも支払督促は債務者の聞き取り調査などを行わず、債権者の意見だけを聞いて発付される督促なので、債務者としては異議申し立てをするのがセオリーでもあります。
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携帯代をどうしても支払えない時の対処法はあるの?
このように、携帯代の滞納が発展してしまうと、ローンを組めなくなるなど、人生設計にまで悪影響を及ぼすリスクもあります。
しかし、そもそも強制解約になるのは支払いに充てられるお金が不足しているからです。いくら滞納を解消したくてもない袖は振れません。どうしても携帯代が支払えない場合、どのような対処法が考えられるのでしょうか。
原則として、国内の3大キャリアと呼ばれる携帯電話会社では、支払日の猶予を引き延ばしてもらうなどの交渉はできません。そのため、何らかの方法で目の前の滞納料金を支払う必要があります。
【対処法1】クレジットカードで支払う
携帯電話会社によっては、滞納している携帯代をクレジットカードで支払えるケースもあります。これによりクレジットカード会社から携帯電話会社へと支払いが行われるため、クレジットカード会社への負債は残るものの、携帯電話会社に対する滞納は解消されます。
そもそも携帯代の支払い方法は、あらかじめクレジットカードに設定しておくのが安全です。払い忘れを防止できるのはもちろんのこと、残高不足になっても携帯電話会社に対する滞納は発生しないため、回線の利用停止や強制解約を避けられます。また、急な支出などで一括払いが難しくなっても、分割払いやリボ払いなど、経済状況に応じた支払い方法を柔軟に選択できるのはメリットでしょう。
ただし、未払い分が高金利で積み上がっていくリボ払いはリスクも高く、抜け出せなくなってしまう人も多いです。クレジットカードによる滞納料金の支払いは、あくまでも一時的な対処法としては有効ですが、新たな負債が増えるため、根本的な解決策にはなりません。
そもそも携帯代を滞納している時点で、身の丈に合っていない契約を交わしていたり、スマホの使い方に問題があったりする可能性が高いです。後述する「携帯代を滞納しないための対策」を読み、料金体系や利用状況をしっかりと振り返り、自分の経済状況に合った状態へと見直すことが大切です。
【対処法2】知人・金融機関からお金を借りる
現在の個人の生活にとって、スマートフォンや携帯電話は必需品です。これらの端末が使えなくなると、仕事でコミュニケーションを取るのも難しくなり、支払いどころではなくなってしまう可能性もあるでしょう。それを避けるためには、回線の利用停止までに何とかお金を工面することが求められます。
あまりおすすめできませんが、家族などの近しい間柄の人や、金融機関からお金を借りるのもひとつの手です。しかし、返済できる見込みのない借金をすると、それを返済するために借金を重ねていく悪循環に陥ります。そうならないように、自分の収入で返済できる範囲は慎重に見極めましょう。
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携帯代を滞納しないための3つの対策
前述の通り、携帯代が滞納してから対処するのはかなり困難です。そのため、滞納する前に対策を行うことが求められます。携帯代を滞納しないための対策とアイデアを紹介します。
【予防策1】キャリアプランを見直す
最初に見直したいのが、契約しているスマホや携帯電話のキャリアプランです。プランが自分に合っていなければ、無駄な料金がかかっているかもしれません。
たとえば、毎月の通話料がかさんでいる場合はかけ放題プラン、逆にデータ通信量が余り気味の場合は容量の少ないプランを選択しましょう。契約時にオプションサービスをつけすぎているケースもあるので、不要なものは解約します。
また、契約から時間が経過している場合、当時よりもおトクなキャリアプランが登場している可能性は高いです。こういった最新情報も定期的にチェックしましょう。
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【予防策2】格安SIMへ乗り換える
格安SIMへの乗り換えも検討しましょう。格安SIMとは、独自の回線を持たずに3大キャリアの回線を借りて、格安で通話やデータ通信を提供しているサービスです。基本料金が1,000円を下回ることもあり、大幅な節約につながります。
ただし、3大キャリアから一定量の回線を借りているため、ネットワークが混雑すると通信速度が遅くなりやすいという傾向もあります。また、実店舗を設けているサービスが少なく、対面サポートを受けられないというデメリットもあります。不安な人は実店舗のある格安SIMを選択しましょう。
【予防策3】定期的に利用状況をモニタリングする
携帯代を使いすぎている人は、そもそも自分の日々の利用状況をよく把握していないことが多いです。定期的に携帯電話会社のマイページなどにログインし、現時点での請求予定金額やその内訳を確認しましょう。通話料やデータ通信料はもちろんのこと、キャリア決済を使いすぎていないかをチェックすることも忘れずにしてください。
【予防策4】キャリア決済を使わない
キャリア決済は便利な反面、利用料金が膨らむ原因になりがちです。一般のクレジットカードよりも上限金額が低めに設定されていたり、自分で上限金額を設定できたりしますが、「滞納のおそれがあるかも…」と感じるのであれば、そもそも利用しないことをおすすめします。
携帯代の支払いで困っている人のためのQ&A
そのほか、携帯代の支払いで困っている人が陥りがちな疑問をピックアップしました。それらについてQ&A形式でお答えします。
Q1.携帯代を滞納している時、弁護士に相談するのは効果的ですか?
強制解約前の段階だと、携帯代を滞納している人は一刻も早くその料金を支払うしかないため、弁護士にできることはありません。「支払い延長の交渉をしてほしい」という方も稀にいますが、携帯電話会社との交渉は難しいです。
ただし、強制解約後も支払いを滞納しており、督促状が届いたり、訴訟が起こされたりしたら、弁護士に相談する意味はあります。基本的には通常の債務整理と同じで、携帯電話会社と和解し、利用者にとって無理のない分割払いを設定することがゴールになります。
Q2.強制解約後、何とかスマートフォンを所持する方法はないのでしょうか。
スマートフォンを始めるとする携帯端末は、生活必需品のひとつとなっています。そのため、端末を所持できないと、生活に支障が出る場合もあるでしょう。しかし、携帯電話会社のブラックリストに登録されてしまうと、自分の名義でスマートフォンや携帯電話を契約することは困難になります。
解決策としては、家族の名義で契約した端末を利用するしかありません。このようなケースに限らず、家族全員が父親の名義で契約している家庭などは多いです。
また、ときどき誤解されていますが、自分が携帯電話会社を強制解約になったとしても、家族までブラックリストに登録されることはないので、ご安心ください。
Q3.滞納金の支払いの時、気をつけるべきポイントはありますか?
滞納料金の払込用紙のなかには、携帯電話会社の口座情報が記載されているケースもあります。しかし、くれぐれもこの口座に“直接振込”をしないように気をつけてください。携帯電話会社からすると、何のお金を口座に振り込まれたのかを特定できず、場合によっては未払い扱いになってしまいます。
滞納料金を支払う際には、必ず請求元の携帯電話会社や債権回収会社、法律事務所の指定した方法で行いましょう。
携帯代の滞納は“借金”と一緒だと考えよう
携帯代を滞納しがちな人は、料金を支払えなくても「たかが携帯代くらい」と甘く見ている傾向があります。回線が停止となったとしても、Wi-Fi環境さえあれば、メッセージアプリでのやりとりができたり、社会人であれば社用携帯を用いて最低限の連絡は取れるからかもしれません。
しかし、携帯代を滞納してしまうほど、支払いに余裕がない家計状況は、決して普通ではありません。根本的な改善を図らなければ、やがて家計は火の車になります。
そもそも携帯代の滞納は、借金をしていることと同じです。しっかりと負債が発生している意識を持ち、携帯代を滞納しないように料金体系や利用状況を見直していきましょう。
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