年齢を重ねるにつれ、周囲からすすめられる機会が増える「人間ドック」。興味はあるものの、年1回の健康診断と何が違うのか、よくわかっていない人も多いでしょう。健康診断と人間ドックの違い、費用の相場、人間ドックを受診すべき年齢の目安などについて、医師の見解を交えて解説します。

この記事の監修者

画像: 【医師解説】人間ドックと健康診断の料金や違い。人間ドックを受けるべき年齢は?

上 昌広(かみ まさひろ)

医療ガバナンス研究所理事長
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。おもな著書に『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)など。

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そもそも、人間ドックと健康診断は何が違う?

画像: 画像:iStock.com/kazuma seki

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会社員であれば会社の指示に従い、1年に一度は健康診断を受診しているはずです。そのため、健康診断に加えて人間ドックまで受診する必要はないと考える人もいるのではないでしょうか。

しかし、企業や自治体が行っている健康診断と人間ドックでは目的や検査内容に違いがあります。そのため、健康診断だけ受診すればよい、ということにはなりません。まずは、企業などで実施されている健康診断と人間ドックの違いについて説明しましょう。

健康診断は実施と受診が義務付けられている

健康診断も人間ドックも、病気の早期発見や生活習慣病の予防、健康の維持増進をおもな目的としている点では変わりがありません。

健康診断と人間ドックで、いちばん大きな違いは、法的義務の有無です

健康診断は労働安全衛生法第66条によって、事業者(企業と法人)が年1回実施することを義務付けられており、労働者も事業者が実施する健康診断を受けなければならない、とされています。

ちなみに、日本で、労働者に健康診断が義務付けられているのは、その歴史が、コレラや結核といった伝染病が拡がるのを防ぐ目的で行う検査から始まっていることに関係しています。また現在では、病気の予防や健康維持により国の医療費節約を目指すことも、健康診断の大きな目的となっています。なお、事業者に対して健康診断の実施を義務付けているのは、世界でも珍しい例と言えるでしょう。

一方、会社員以外の場合は、労働安全衛生法第66条によって健康診断を受診する義務はありませんが、多くの自治体が個人事業主や専業主婦(主夫)、向けの健康診断を実施したり、公務員については行政機関が健康診断を実施したりしています。

健康診断を受診してわかることは?

標準的な健康診断は、おもに食事や運動、喫煙・飲酒といった生活習慣に起因する、内蔵脂肪型肥満に着目しています。内蔵脂肪型肥満はメタボリックシンドロームを招き、様々な生活習慣病の要因となるからです。

また、ほとんどの事業者や自治体が、標準的な健康診断に加え、おもに40歳以上を対象とする特定健康診査(特定健診、メタボ健診)を実施しています。また、大腸がん検診、肝炎ウイルス検査、そして女性向けの乳がん・子宮頸がん検診など、プラスアルファの検査を実施しているケースもあります。ただし、これらの多くが基本的な検査内容にとどまる点には注意が必要です。

人間ドックは、健康診断ではわからない病気の早期発見が目的

人間ドックも、健康診断と同様に病気の早期発見や生活習慣病の予防、健康の維持増進がおもな目的です。しかし法的義務がない任意検査なので、費用が自己負担となる点が、大きな違いとなります

一方、がんをはじめとする、健康診断では見つけることができない様々な病気を早期発見できる点は、最大のメリットと言えるでしょう。そのため、人間ドックは健康診断よりも検査項目が多く、自覚症状のない病気まで見つかる場合も多いです(人間ドックで受けられる検査や、わかる病気の種類については、こちらをご参照ください)。

また、検査後に対面での結果説明を受けたり、あらためて診察を受けたりできる点も、健康診断にはない人間ドックのメリットと言えるでしょう。

標準的な健康診断と人間ドックの違いを以下の表にまとめておきました。

<表>健康診断と人間ドックのおもな違い

健康診断人間ドック
特徴身体の健康状態を大まかにチェックする身体の健康状態を詳しく総合的にチェックする
目的病気の早期発見(おもに生活習慣病)、健康の維持・増進健康診断だけでは見つかりにくい病気の早期発見・予防、将来の発症リスクの把握、健康の維持・増進
検査項目数10~20程度30~50程度
病気の早期発見早期発見できる病気もある健康診断よりも早期発見できる病気が多い
所要時間1時間程度2~5時間程度(検査項目により異なる)
費用加入している保険組合や自治体が負担するため原則無料(場合によって一部負担)保険適用されず自己負担。保険組合や自治体によっては助成金・補助金の制度がある
検査結果後日結果書類を郵送されることが多い医師から直接結果を説明される、ウェブで確認できる、後日結果書類郵送など、選択肢が多い
医療機関健康診断を行っている医療機関から選ぶ。企業によっては医療機関を指定される場合が多い人間ドックを行っている医療機関から自由に選ぶ
その他豊富なオプション検査を追加できる

健康診断と人間ドックは、両方受けたほうがいいの?

画像: 画像:iStock.com/ metamorworks

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先ほども説明したように、そもそも健康診断と人間ドックとでは、受けられる検査の項目数や内容が異なります。ですから、健康診断と人間ドックのどちらかだけを受ければよいということはありません

現在、特に健康上の不安を抱えていない人なら、基本的には年に1回の健康診断でも構わないと言えます。糖尿病をはじめとするおもな生活習慣病の早期発見なら、健康診断で行っている血液検査でも十分だからです。

対して人間ドックを受けることをおすすめしたいのは、生活習慣病以外の特別な病気に対して、現在不安を抱いている人です。

たとえば、がんの病歴がある血縁者がいれば、自分もがんになるリスクが高いと考えられます。また糖尿病や高血圧といった生活習慣病も、遺伝リスクがあるため、血縁者に病歴があれば不安を抱くかもしれません。こうした不安に対応できるのが、健康診断よりも詳しい検査が受けられる人間ドックなのです。

人間ドックは、健康診断として代用できる?

人間ドックで受ける検査項目に、健康診断の検査項目がすべて含まれている場合なら、人間ドックを健康診断の代用とすることも可能です。

ただし、その場合には、先述のように会社員には健康診断を受診する義務があることから、健康診断の代用で受けた人間ドックの結果を、自分が所属している企業などに提出する必要がある点に注意しましょう。人間ドックの結果には健康診断に含まれない個人情報が多いため、取り扱いに十分注意してもらう必要があります。

また、人間ドックの結果を健康診断の結果として使えるかどうかについては企業ごとに判断が異なる可能性もあるため、詳しくはお勤め先の担当部署に相談してください。

人間ドックは何歳から受けたほうがいい? 受ける頻度は?

画像: 画像:iStock.com/davidf

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人間ドックは、何歳から受けたほうがいいの?

会社員の場合、健康診断は年齢にかかわらず年に1回受診することになります。対して人間ドックは任意で受診するものなので、受診を検討すべきタイミングや、どれくらいの頻度で受診すればよいかなどの目安を知りたい人もいるでしょう。

人間ドックは基本的に、仕事やライフステージが変化することの多い30歳以降の受診が推奨されています

しかし、すでに気になる症状がある、血縁者に遺伝性疾患の病歴があるといった不安を抱えているなどの場合は、20代でも受診すべきでしょう。ちなみに標準的な人間ドックの対象年齢は20歳以降となっています。

また、年齢や性別によって発症リスクが高まる病気があることも忘れてはいけません。たとえば、男性は40代から肺がんの発症リスクが高くなります。また、女性は20代から子宮頸がんの発症リスクが高くなります。こうした病気を心配している場合、発症率が高くなる年齢にあわせて、対応する検査を行う人間ドックを受診しましょう。

人間ドックは、どのくらいの頻度で受けたほうがいい?

生活習慣病や心疾患・がん・脳血管疾患などの発症リスクが高くなるとされる40代以降になったら、年に1回は人間ドックを受診することが望ましいと言えるでしょう。

ただし、人間ドックの推奨受診ペースは、年齢だけでなく、生活習慣によっても変わります

たとえば、疾患の発症リスクが低いと考えられる30代でも、喫煙をしている、飲酒量が多い、食生活が乱れているなど、高リスクと判断される生活習慣があれば、定期的な人間ドックが必要です。

逆に、40代以降でもリスクの低い生活習慣を続けていれば、数年に一度程度の検査でも構わないと考えることもできます。

ただし、血縁者の病歴は特に重要な因子になりえます。血縁者に遺伝性疾患の病歴があるといった不安を抱えている人の場合、生活習慣に問題がなくても、定期的な検査をおすすめします

また健康診断と違い、人間ドックでは担当した医師が、必要に応じて検査のペースを判断してくれるので、特定の検査については、医師がすすめる頻度で検査を行うとよいでしょう。

人間ドックと健康診断の項目は、どのくらい違うの?

画像: 画像:iStock.com/semakokal

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検査項目は、健康診断は10〜20、人間ドックは30以上

標準的な健康診断で行われる検査は、10から多くても20項目程度です。対して、人間ドックで行われる検査の項目数は、30以上に及ぶ場合がほとんどです。

たとえば眼の検査ひとつとっても、健康診断では通常視力検査のみなのに対し、人間ドックでは眼圧検査や眼底検査まで受けることができます。

標準的な健康診断と人間ドックの検査項目数の違い(目安)と、検査によって発見できる病気は、以下のようになります。なお、受診する健康診断や人間ドックの種類によって、実施されている検査項目が下記と異なる場合がある点は、あらかじめご了承ください。

<表>健康診断と人間ドックで受けられる検査項目の違い、発見できる病気

大項目中項目健康診断人間ドック発見できる病気
身体計測肥満度・BMI肥満など
腹囲肥満、メタボリックシンドロームなど
循環器検査血圧測定脳梗塞、脳出血、狭心症、心不全、糖尿病、高脂血症、心膜症など
心電図検査不整脈、狭心症、心筋梗塞、心肥大など
心拍数測定発熱、貧血、甲状腺機能亢進症、不整脈、脳圧亢進、甲状腺機能低下症など
眼底検査×白内障、網膜剥離、眼底出血、糖尿病性網膜剥離、加齢黄斑変性症など
眼圧検査×網膜剥離、虹彩毛様体炎、緑内障、高眼圧症など
視力検査近視、遠視、乱視など
聴力聴力検査滲出性中耳炎、耳管狭窄、老人性難聴、メニエール病など
呼吸器喀痰細胞診肺がん、咽頭がん、喉頭がん、気管支炎、肺炎、肺結核など
胸部レントゲン肺炎、肺結核、心臓肥大、肺がん、肺気腫、気管支拡張症など
胃部上部消化管内視鏡検査×食道・胃・十二指腸のがん、ポリープ、潰瘍など
腹部腹部超音波検査肝臓がん、肝硬変、脂肪肝、胆のうがんすい臓がん、腎臓がん、胆石、ポリープ、慢性肝炎、脾腫、水腎など
肝機能(血液検査)総蛋白×栄養障害、ネフローゼ症候群、がん、多発性骨髄腫、慢性炎症、脱水など
アルブミン×肝臓障害、栄養不足、ネフローゼ症候群など
総ビリルビン×肝機能障害、肝硬変、脂肪肝、肝臓がん、胆管結石、胆のう炎など
AST(GOT)急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎、心筋梗塞、筋肉疾患など
ALT(GPT)急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎など
γ-GTP急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変、肝がん、脂肪肝など
ALP×胆道・肝臓の疾患、骨のがん
腎臓(血液検査)クレアチニン×腎臓の機能低下
eGFR(推算糸球体濾過量)×腎臓の機能低下
脂質(血液検査)総コレステロール×脂質異常症、動脈硬化、甲状腺機能低下症、栄養吸収障害、ネフローゼ症候群など
HDLコレステロール脂質代謝異常、動脈硬化など
LDLコレステロール動脈硬化など
Non-HDLコレステロール×動脈硬化、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、栄養吸収障害、肝硬変、低Bリポたんぱく血症など
中性脂肪動脈硬化、低Bリポたんぱく血症、低栄養など
代謝尿酸高尿酸血症、痛風など
血糖糖尿病、すい臓がん、ホルモン異常など
HbA1c糖尿病の状態
血液一般(血液検査)赤血球多血症、貧血など
白血球×細菌感染症、炎症、腫瘍、ウイルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血など
血色素鉄欠乏性貧血など
ヘマトクリット×鉄欠乏性貧血、多血症、脱水など
MCV×ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲食、鉄欠乏性貧血、慢性炎症など
MCH×鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血など
MCHC×鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血など
血小板数×血小板血症、鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、突発性血小板減少性紫斑病、肝硬変など
CRP×細菌・ウイルス感染、炎症、がんなど
血液型×血液型の種類
尿尿一般(糖・タンパク等)・沈査糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎不全、尿崩症、尿路結石、膀胱炎、糸球体腎炎、脱水など
便便潜血検査×大腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなど

気になる検査を自由に追加することも可能

健康診断にはない、人間ドックならではのメリットと言えるのは、自分の意思でオプション検査を自由に追加できるところです。

胃がんの発症リスクがわかるABC検査や、脳疾患の発見に役立つ脳ドックなど代表的な検査はもちろん、アレルギー検査、睡眠時無呼吸症候群の検査、遺伝子検査など、特定の人に有益な検査まで幅広く揃っており、対応しているクリニックであれば、自分に最適な検査をピンポイントで追加できます。自分の年齢や健康状態、既往歴、血縁者の病歴、生活習慣などを伝えれば、発症リスクのありそうな病気に関連する追加検査を選んでもらうことも可能です。

また、総合的な人間ドックではなく、特定の病気に特化した専門ドックのみを選んで受診することもできます。おもな専門ドックには、以下があります。

<表>おもな専門ドックの種類

種類調べられる内容
脳ドック脳の状態を詳しく調べる
PET検診全身にがんがあるかどうかを1回の検査で調べる
心臓ドック心臓の状態を詳しく調べる
胃がん検診胃がん、ピロリ菌があるかどうかを調べる
大腸がん検診大腸がんがあるかどうかを調べる
メンズドック総合的な人間ドックのほか、前立腺がんなど男性特有の病気を調べる
レディースドック総合的な人間ドックのほか、子宮がん、乳がんなど女性特有の病気を調べる
婦人科検診子宮がん、乳がんかどうかを調べる
乳がん検診乳がんかどうかを調べる
子宮がん検診子宮がんかどうかを調べる

標準的な健康診断だけで十分と考えている人でも、これらの専門ドックの受診を検討してみてはいかがでしょうか。

人間ドックにはいくらかかる? 人気が高い検査の費用相場も紹介

画像: 画像:iStock.com/erdikocak

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一口に人間ドックといっても、総合的な検査を行うものから、特定の疾患や臓器を集中的に調べる専門ドックまで、いくつかの種類があります。

ここでは、総合的な検査を受けられる人間ドックと、代表的な検診や専門ドックのおもな種類と検査内容、そして費用の目安について説明します。

※なお、女性系疾患に関わるドックおよび検診は、受診対象がかなり広めになっています。女性の場合、多くの方が当てはまると思いますので、詳しく調べたい方は受診されることをおすすめします。

(1)人間ドック(総合的な検査)

一般の「人間ドック」では、基本的な検査をバランスよく受けることができます。とはいえ、詳しい検査項目は提供されるプランによって異なるため、受信する前に自分にあった検査項目となっているか確認しましょう。

受診対象(目安)おもに30歳以上(人間ドックの受診対象年齢は20歳以上のため、成人していればだれでも受診可能)。全身の健康状態を詳しく知りたいと思っている人。生活習慣を見直したいと思っている人
検査項目身体計測、聴力検査、視力検査、尿検査、血液検査、心電図検査、胸部レントゲン検査、腹部超音波検査、胃内視鏡検査など30以上の検査を行う
受診費用3万~5万円
受診にかかる時間2~5時間
前日の準備食事制限あり

(2)脳ドック

脳の状態を詳しく調べ、脳血管疾患や脳腫瘍などのリスクがあるかどうかを検査します。

受診対象(目安)30歳以上。高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化のある人。血縁者が脳血管疾患になったことのある人。頭痛が頻繁にある人。飲酒や喫煙などの習慣がある人
検査項目頭部CT検査、頭部MRI検査、頭部・頸部MRA検査、頸動脈超音波検査など
受診費用3万~8万円
受診にかかる時間2~4時間
前日の準備夜間のアルコール制限あり

(3)PET検診

体のどこかに、がんがあるかどうかがわかる検査です。検査薬を血管に注射してPETカメラで撮影するだけなので、身体的負担が少なく短時間で検査を終了することが可能です。小さながんを発見するのに優れている点も魅力です。

受診対象(目安)40歳以上。既往歴にがん疾患のある人。血縁者ががん疾患になったことのある人
検査項目PET検査、PET-CT検査、PET-MRI検査など
受診費用10万~20万円
受診にかかる時間2時間ほど
前日の準備糖分を控える食事制限あり、激しい運動を避ける必要あり

(4)心臓ドック

心臓の状態を調べ、不整脈、心筋梗塞など心疾患のリスクがあるかどうかを検査します。

受診対象(目安)50歳以上。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などのある人。血縁者が心疾患になったことのある人。喫煙の習慣がある人。胸の痛みなど、気になる症状のある人
検査項目安静時心電図検査、運動負荷心電図検査、ホルター心電図検査、冠動脈CT検査、血圧脈波検査など
受診費用6万~9万円
受診にかかる時間2~3時間
前日の準備特になし

(5)胃がん検診

胃の状態や胃がんの有無を調べる検査です。おもな検査は画像診断ですが、血液検査で胃がんになるリスクを高めるとされる「ピロリ菌の感染」の検査も可能です。

受診対象(目安)40歳以上。喫煙経験のある人。飲酒する機会の多い人。胃痛や胃もたれなど胃に違和感のある人
検査項目胃バリウム検査、胃内視鏡検査(胃カメラ)、胃CT検査、胃ABC検査(ピロリ抗体検査・ペプシノゲン検査)など
受診費用1万~1万5,000円
受診にかかる時間1~2時間
前日の準備食事制限あり

(6)大腸がん検診

食事制限や下剤などを使用して腸内を空にし、レントゲンやカメラでがんの有無を確認します。大腸がんは日本人のがん羅患率トップで、全体の死亡数は3位、女性では2位になっている疾患です。さらに、高齢になるほど羅患率は上がるとされています。

受診対象(目安)40歳以上。下痢や便秘などを繰り返している人。喫煙、飲酒の機会が多い人。野菜不足など偏った食生活の人。血縁者が大腸がんになったことのある人
検査項目便潜血検査、大腸バリウム検査、大腸内視鏡検査、大腸3D-CT検査など
受診費用3万円前後
受診にかかる時間2~3時間
前日の準備食事制限あり

(7)メンズドック

人間ドックで行う総合的な検査項目に加え、男性特有の疾患である前立腺がんにかかっている可能性があるかどうかを検査します。

受診対象(目安)前立腺がんの遺伝リスクのある男性、残尿感・夜間頻尿など気になる症状のある男性
検査項目人間ドックの検査項目に加え、前立腺腫瘍マーカー検査、前立腺エコー検査、前立腺触診など
受診費用4万~6万円
受診にかかる時間3~5時間
前日の準備食事制限あり

(8)レディースドック

人間ドックで行う総合的な検査項目に加え、女性特有の疾患である乳がん、子宮がんにかかっている可能性があるかどうかを検査します。乳がん、子宮がん検診の検診方法は医療施設によって違いがあるため、検査方法を確認するようにしてください。また、医療施設によってはあわせて卵巣がんの可能性を検査できます。

受診対象(目安)20歳以上の女性。血縁者が女性特有のがん疾患になった人。既往歴に乳がん、乳腺炎のある人。初経が11歳未満の人。閉経が55歳以降の人。出産経験がない人。初産が30歳以上の人。乳房に痛み、張り、変形などの違和感のある人。性交渉経験者。閉経が遅い人。既往歴に婦人科疾患があり、ホルモン治療を行っている人。月経不順、不正出血などのある人
検査項目人間ドックの検査項目に加え、乳腺超音波検査、マンモグラフィ、触診検査、子宮頸がん検査(子宮頸部細胞診)、子宮体がん検査(子宮内膜細胞診、経腟超音波検査、子宮内視鏡検査)など
受診費用5万~8万円
受診にかかる時間3~5時間
前日の準備食事制限あり、膣洗浄や性行為を避ける

(9)婦人科検診

女性が罹患することの多い、乳がんと子宮がんにかかっている可能性があるかどうかを検査します。また、医療施設によってはあわせて卵巣がんの可能性を検査できます。

受診対象(目安)20歳以上の女性。血縁者が女性特有のがん疾患になった人。既往歴に乳がん、乳腺炎のある人。初経が11歳未満の人。閉経が55歳以降の人。出産経験がない人。初産が30歳以上の人。乳房に痛み、張り、変形などの違和感のある人。性交渉経験者。閉経が遅い人。既往歴に婦人科疾患があり、ホルモン治療を行っている人。月経不順、不正出血などのある人
検査項目乳腺超音波検査、マンモグラフィ、触診検査、子宮頸がん検査(子宮頸部細胞診)、子宮体がん検査(子宮内膜細胞診、経腟超音波検査、子宮内視鏡検査)など
受診費用1万~2万3,000円
受診にかかる時間90分ほど
前日の準備膣洗浄や性行為を避ける

(10)乳がん検診

乳房とその周辺の状態を調べ、乳がんにかかっている可能性があるかどうかを検査します。乳がんは、女性がもっともかかることの多いがんとなっています。

受診対象(目安)20歳以上の女性。既往歴に乳がん、乳腺炎のある人。血縁者が乳がんになった人。初経が11歳未満の人。閉経が55歳以降の人。出産経験がない人。初産が30歳以上の人。乳房に痛み、張り、変形などの違和感のある人
検査項目乳腺超音波検査、マンモグラフィ、触診検査など
受診費用乳腺超音波検査3,000~6,000円、マンモグラフィ4,000~8,000円
受診にかかる時間60分ほど
前日の準備特になし

(11)子宮がん検診

一般に子宮がん検診というと、子宮頸がん検診のことを指す場合が多いのですが、「子宮がん」には子宮頸がんのほか子宮体がんも含まれます。子宮頸がんは20代から、子宮体がんは40代後半から羅患率が上がります。特に子宮頸がんは初期症状がないことが多いため、定期的な受診が大切です。

受診対象(目安)20歳以上の女性。血縁者が子宮がんになった人。性交渉経験者。閉経が遅い人。既往歴に婦人科疾患があり、ホルモン治療を行っている人。月経不順、不正出血などのある人
検査項目子宮頸がん検査(子宮頸部細胞診)、子宮体がん検査(子宮内膜細胞診、経腟超音波検査、子宮内視鏡検査)など
受診費用子宮頸がん検査3,000~1万円、子宮体がん検査1万3,000~1万5,000円
受診にかかる時間60分ほど
前日の準備膣洗浄や性行為を避ける

人間ドックに保険は適用される? 補助は受けられる?

画像: 画像:iStock.com/Everyday better to do everything you love

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基本的に人間ドックに健康保険は適用されない

人間ドックの費用は検査の組み合わせや医療施設によって異なりますが、総合的な人間ドックの場合、相場は3~5万円となります。さらに脳ドックなど専門的な検査を加えれば、10万円を超えてしまう場合もあります

これらの費用は健康保険の適用にはならず、全額自己負担となります。

人間ドックの費用を抑えるポイントは「補助金(または助成金)制度を利用すること」です。誰でも利用できるわけではありませんが、利用できる場合は人間ドックの費用を一部負担してもらうことができます。

まずは、自分が所属している健康保険の種類を確認しましょう。保険証の「保険者名称」欄を見れば種類が確認できます。わからない場合は、所属している勤務先の担当者などに問い合わせてください。

〈補助金関連〉勤務先が組合健保(健康保険組合)に加入している場合

健康保険組合によっては、人間ドックの一部費用の補助が受けられる場合があります。補助内容は加入している団体によって異なりますが、保険加入者に加えて扶養家族(配偶者など)も費用補助の対象になる場合もあります。

〈補助金関連〉勤務先が協会けんぽ(健康保険協会)に加入している場合

「協会けんぽ(全国健康保険協会)」に加入している35〜74歳の人は、人間ドック相当の検査を通常よりも安く受けることができます(一部の検査は含まれていません)1)

具体的には尿検査、血液検査、胸部レントゲンなど約30項目の一般的な検査に加えてマンモグラフィ、子宮細胞診、肝炎ウイルス検査などが含まれます。検査の対象者や検査内容は細かく定められています。

また、協会けんぽの加入者は「差額人間ドック」の対象になります。差額人間ドックとは、医療機関が協会けんぽと提携しているプランで、割安に受診することができます。詳細は協会けんぽのウェブサイトを確認してください。

〈補助金関連〉国民健康保険に加入している場合

自営業者、個人事業主、年金受給者、無職の人の多くが加入しているのは「国民健康保険」です。一部の自治体では、国民健康保険の加入者に対し、人間ドックの費用の一部を負担してくれる制度を設けている場合があります

たとえば東京都大田区では、40~74歳の国民健康保険加入者を対象に、先着800名まで、対象となる人間ドックの費用を上限8,000円まで負担してくれる制度を用意しています(2021年時点)2)

その他、対象者や助成条件は各自治体によって異なりますので、詳しくは自治体のホームページや窓口で確認してみましょう。

人間ドックの費用が割引される民間の医療保険もある

民間の生命保険会社が販売する保険商品の中には、たとえば提携している医療施設で予約をした場合に限り、人間ドックを割引価格で受けられる特典やキャンペーンを用意しているものがあります。加入している保険会社に確認をしてみましょう。3)

人間ドックを予約すると、ポイントが貯まるサービスもある

このほか、「MRSO」など人間ドックや健診の予約サービスを提供するウェブサイトのなかには、受診金額に応じてポイントを付与するしくみを設けているものもあります。上手に活用すれば、人間ドックをお得に利用できるでしょう。

人間ドックを利用する最大のメリットは受診で得られる「安心感」

実施や受診についての法的義務の有無や費用など、健康診断と人間ドックにはいくつかの違いがありますが、人間ドックのメリットとして大きいのは、受診したことで得られる「安心感」です。

人間ドックの受診を検討される人の多くは、自分の健康になんらかの不安を抱えています。特に、がんや脳卒中といった遺伝リスクがある病気になった人が血縁者にいる場合は、その不安が大きなものになるはずです。

気になる病気に対応する人間ドックを受診すれば、早期発見ができるのはもちろん、問題がない場合には、そのことを検査結果の数値で確認できるので大きな安心を得ることができるでしょう。健康や将来への不安を少なくしたい働き盛りなら、自分への投資としても、ぜひ定期的な人間ドックの受診を検討してください。

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