近年、天気予報などで「観測史上最高の気温」という言葉をよく聞きます。真夏日や熱帯夜の増加に伴い、気をつけないといけないのが“熱中症”。子どもや高齢者はもちろん、若く健康な人まで誰がかかってもおかしくない病気です。

この記事では、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長の谷口英喜先生の監修のもと、「熱中症の翌日」をメインテーマとして、熱中症対策について解説します。熱中症の基本や予防法に加えて、熱中症になってしまった翌日はどう過ごせばいいのか? 気温の高い場所にいた翌日に熱中症になることはあるのか? といった疑問を解決していきます。いざという時の対処法を知っておくことは、自分や周りの人の命を守ることにつながるでしょう。

この記事の監修者

画像: 【医師監修】「熱中症」は翌日まで続くもの?症状&予防法を知って対策しよう!

谷口 英喜(たにぐち ひでき)

医師。済生会横浜市東部病院 患者支援センター長兼栄養部部長。
1991年、福島県立医科大学医学部を卒業。専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。著書に『はじめてとりくむ水電解質管理』『経口補水療法ハンドブック-熱中症、脱水症に役立つ 脱水症状を改善する「飲む点滴」の活用法』など。
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熱中症ってどんな病気?

画像: 画像:iStock.com/ yamasan

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そもそも熱中症とは、どのような病気なのでしょうか。改めて、症状や原因を把握しておきましょう。

3段階に分けられる「熱中症の症状」

熱中症の症状は、自分で自覚して対処できる軽度のものから意識を失ってしまうような重度のものまで様々です。それらの症状が、重症度によって3つの段階に分類されています。

重症度分類がされる理由は、症状ごとの対処を明確にするためです。Ⅰ度、あるいはⅡ度のうち軽い症状であれば家庭や学校、職場などでも対処できますが、Ⅱ度のうち重い症状が出ていればすぐに病院へ行く必要があります。また、Ⅲ度の症状が出た場合には救急車を呼んで対処しなければなりません

〈表〉熱中症の重症度分類

分類重症度症状
Ⅰ度軽度
脱水症がメイン(熱は出ない)
・脳の水分が不足する
(めまい、立ちくらみ)
・消化器の水分が不足する
(食欲低下、吐き気、腹痛)
・筋肉の水分が不足する
(こむら返り、つる、痛い)
Ⅱ度中等度
高体温がメイン(熱が出る)
Ⅰ度の症状に加え
・脳に行く血液が熱くなる
(頭痛、吐き気、嘔吐)
・全身への血液が熱くなる
(全身倦怠感、疲れ)
Ⅲ度重度・異常高体温(40度近い)
・意識障害、けいれん、血圧低下
・多臓器不全
出典:谷口英喜著『経口補水療法ハンドブック
-熱中症、脱水症に役立つ 脱水症状を改善する「飲む点滴」の活用法』
(日本医療企画)

もし周囲の人が熱中症になってしまったら、症状を見て重症度を判断し、適切な対応をとるようにしましょう。

熱中症が起こるメカニズム

熱中症は、炎天下でのみ発症するとは限りません。気温や湿度の上昇といった体の外側で起こる要素(外的因子)と、運動による体温の上昇といった体の内側で起こる要素(内的因子)の2つが体に影響を与えることで、体温が上昇し、熱中症を引き起こしてしまうのです

〈図〉熱中症の外的因子と内的因子

画像: 熱中症が起こるメカニズム

人間は通常、上の図のような「外的因子」「内的因子」によって体温が上がる状況に置かれた時に、汗をかいたり、皮膚表面から空気中に熱を逃がしたりすることで体温が上がりすぎないように調節することができます。うまく調節できていれば、体温を36~37度に保てるため熱中症にはなりません。

しかし、そういった状況に置かれた時に、水と塩分の補給、暑い場所※からの避難ができないと、体温が上がり、大量の汗をかき、体内の水や塩分が減ってしまいます。そうすると脱水症状が起こってしまい、汗をかけなくなり、更に体温が上がる…というループに陥ってしまうのです。

※以下、「暑い場所」は熱中症の外的因子がある場所のことを指します

熱中症になった場合の対処法

画像: 画像:iStock.com/ kieferpix

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熱中症への対処方法は、重症度によって異なります。Ⅰ度やⅡ度の軽い症状の場合は以下の対処法を自分や周囲の人が行うことで回復が見込めますが、Ⅱ度の重い症状が出ている場合は病院へ行く手配、Ⅲ度の場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

▼熱中症の対処法

  • 涼しい場所へ避難する
  • 服をゆるめて、通気性を良くする
  • 氷枕や保冷剤を首筋やわき、足の付け根に当て、体を冷やす
  • 水と塩分を補給する

特に大事なことは、「涼しい場所へ避難する」と「水と塩分を補給する」です。熱中症になってからの水と塩分の補給にもっとも適した飲み物は、経口補水液です。飲んでから10分程度で体内に吸収されるため、回復を早めることができます。経口補水液がない場合は、スポーツドリンクが良いでしょう。とにかく早く飲むことが大切です。

逆に、熱中症になった場合に、飲まない方が良いものは「アルコールを含む飲み物」「コーヒーや緑茶など、カフェインを含む飲み物」「牛乳」です。カフェインの利尿作用は脱水を促すだけでなく、交感神経を刺激して脈拍や血圧を上げるため、症状を悪化させる危険性があります。牛乳は、含まれているたんぱく質に体温を上げる作用があるためNGです。

〈図〉熱中症になってから飲まない方が良い飲み物

画像: 熱中症になった場合の対処法

Ⅱ度の重い症状が出ている場合は急いで病院へ行く手配をし、Ⅲ度の症状が見られる場合はすぐに救急車を呼びましょう。車や救急車を待っている間に上記の対処法を行います。症状の見分けがつかない場合は、以下のサインでⅡ度の重い症状以上かどうかを判断すると良いでしょう。

▼熱中症の症状が進んでいるサイン

  • 新品のペットボトルのキャップを自分で開けることができない
  • ペットボトルの飲み物を自分で飲むことができない

※もともと握力が弱い人は、ペットボトルの飲み物を自分で飲めるかどうかのみで判断

体温が異常に上昇すると、脳に影響が出て、体に力が入らなくなることがあります。上記のサインが出ている時は、体に力が入っていない証拠。このサインが見られたら、Ⅱ度の重い症状以上の熱中症になっている可能性が高いです。逆に、自分で飲み物を飲める状態であれば、焦って救急車を呼ばずに、まずは上述した「対処法」を行うと良いでしょう。

熱中症が重症化した場合の危険性

画像: 画像:iStock.com/ gyro

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熱中症の危険性は、一時的な体調不良だけではありません。Ⅱ度の重い症状以上の熱中症になると、熱によって臓器障害が起こり、熱中症から回復した後も後遺症が出ることがあるのです。

特に中枢神経(脳)は、一度障害が起きてしまうと治らないことが多いと言われています。熱中症になったことで、記憶力や集中力の後遺症を一生背負うことになってしまったというケースも報告されています。

万が一熱中症になっても、Ⅰ度で食い止められるよう、素早く対処することが重要だと言えるでしょう。

持病がある人はⅠ度でも病院で受診するべき

糖尿病や腎臓の病気など持病を抱えている人が熱中症になった場合は、Ⅰ度の症状だったとしても、かかりつけの病院で診てもらいましょう。体温の異常な上昇によって、臓器に負荷がかかり、持病が悪化する危険性があるからです。

暑い場所で活動した「翌日」に熱中症になることはある?

熱中症は、暑い場所にいる時にだけ発症するとは限りません。暑い場所でスポーツや草むしりなどの活動をした翌日に症状が出る場合もあります。

暑い場所での活動から24時間は要注意

画像: 画像:iStock.com/imacoconut

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先述したように、熱中症は体内の水と塩分が減少し、体温調節ができなくなることで起こります。暑い場所での活動中や活動後に水と塩分を補給しないと、体温調節が十分にできない状態で過ごすことになり、数時間後に熱中症になるということが起こりうるのです。

暑い場所で活動した後でも、一晩眠れば大丈夫…と考えてしまう人は多いでしょう。しかし、睡眠をとっている間にじわじわと熱中症が進行する場合もあります。暑い場所にいた時から「24時間」が熱中症になる可能性がある目安と考え、油断せず熱中症の症状に警戒することが大切です。

また、夏場の体調不良の原因が実は熱中症だったということもありえます。例えば、熱中症の症状に腹痛があります。夏場だと、まずは食あたりや水の飲みすぎが原因と考えてしまいそうですよね。しかし、前日に暑い場所で活動していて熱中症になっていた…というケースもあるのです。

夏場に体調不良を感じたら、過去24時間以内に暑い場所で活動しなかったかを振り返ってみてください。思い当たるなら熱中症の可能性があります。すぐに水と塩分を補給しましょう。特に子どもや高齢者は熱中症になりやすいので、家族や周りの人は要注意です。

活動後の熱中症を防ぐには、十分な休養と水分補給・栄養補給が重要

画像: 画像:iStock.com/RyanKing999

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暑い場所での活動後、しっかりと水や食事をとり、体を休ませることで、翌日の熱中症を回避できます。

体力が残っていたとしても、体を動かさずに休養することが大切です。人の体は少し動いただけでも体温が上昇するため、熱中症のリスクを上げることにつながってしまいます。

また、寝室の温度や湿度が高いと、寝ている間に熱中症を引き起こしてしまうことがあります。普段から気をつけるべきではありますが、暑い場所にいた日は特に、エアコンや扇風機を活用して寝室の温度や湿度を適切に保つことを意識しましょう。

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熱中症になった翌日は仕事や学校を休むべき?

熱中症の可能性がある時は、水分・栄養補給と休養が最優先。では、熱中症になった日の翌日も、引き続き体を休めた方が良いのでしょうか。

回復していたら活動してOK

画像: 画像:iStock.com/torwai

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I度やII度の軽い熱中症になってしまった翌日でも、ふらつきや食欲低下、吐き気といった症状がおさまっていれば、普段通りに活動して問題ないといえます。判断の目安は、いつも通りの食事と水分補給が自分でできるかどうかです。

体力が回復していれば、スポーツなどの激しい活動をしても大丈夫です。ただし、水と塩分の補給や適度な休憩といった熱中症対策を、欠かさないようにしましょう。

翌日になってもふらつく、食欲が湧かないといった場合は、熱中症が完全には回復していない証拠。もう1日休養しながら様子を見ましょう。

症状が継続する場合は熱中症以外の可能性あり

画像: 画像:iStock.com/taa22

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自分で対処ができるⅠ度の熱中症であれば、水分・栄養補給をして十分な休養を取ることで、長くても24時間程度で回復するでしょう。もし、1日以上経っても症状が改善しない場合は、熱中症以外の疾患を疑う必要が出てきます。

炎天下での活動中に起きた体調不良を熱中症と自己判断したものの、症状が長引き、病院で診てもらったら脳梗塞だった…というケースもあります。24時間経過しても症状が続く場合は、早めに病院で受診しましょう。

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“マスク時代”の夏の熱中症予防はどうしたらいい?

画像: 画像:iStock.com/yamasan

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熱中症は、予防を心がけることで避けられる病気です。一年中危険性はありますが、特に夏場はしっかりと対策をして過ごしましょう。コロナ禍でマスクをして過ごす夏は、特に注意が必要です。

「快適に過ごす」ことが熱中症予防になる

基本的な予防法は、Ⅰ度の熱中症になった際の対処とほぼ同じと考えましょう。

▼熱中症予防の基本

  • 水と塩分をこまめに補給する
  • 快適な環境で睡眠を取る
  • 気温や湿度の高い場所で活動しない

これらのことを意識するだけでも、熱中症のリスクを下げることができます。また、「室内を涼しく保つ」「暑さ調整がしやすい衣服を着る」「暑さ指数が高い日は屋外で活動しない」など、快適に過ごそうとすることが熱中症予防につながります。

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「マスク着用」が熱中症につながる理由

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

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コロナ禍で、夏場でも外出時にマスクを着用することが増えました。マスクの着用によって、熱中症の危険性は高まります。考えられる理由は以下の3つです。

(1)水分が飲みづらい
マスクを着用したままでは、当然飲み物が飲めません。また、現在は人前でマスクを外すことがためらわれる状況なので、水分補給を怠りがちになってしまいます。

(2)喉の渇きに気づきにくい
マスクの内側は湿度が高くなるため、喉の渇きに気づきづらくなってしまいます。そのことで、飲み物を飲むという行動にもつながりにくくなります。

(3)呼吸による放熱がしにくい(子どものみ)
子どもは汗や皮膚表面からの放熱だけでなく、呼吸で体内の熱を外に逃がすことで、体温調節しています。マスクを着用していると、マスクの内側に呼吸の熱がこもってしまうため、体温調節しづらくなってしまいます。

マスクをしている間は「水分補給」を意識

画像: 画像:iStock.com/recep-bg

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それでも、マスクをせずに過ごすことはできません。熱中症を回避するためには、以下のことを意識しましょう。

・気温の高い場所で激しい運動などの活動をしない
そもそも、気温や湿度の高い場所で激しい運動などの活動をすることは避けましょう。ましてや、マスクを着用したままではとても危険です。危険な環境に身を置かないことが、最も重要です。

・水分補給を心がける
こまめな水分補給を心がけましょう。喉が渇いたと感じる前に飲み物を飲むようにしてください。「30分に1回は水を飲む」など時間を決めて、その時間になったら必ず水分補給を行うのが良いでしょう。

意外に思われるかもしれませんが、熱中症予防のために水分として摂取する分には、コーヒーや緑茶などのカフェインが入った飲み物でも問題ありません。コーヒーや緑茶を飲み慣れている人であれば、利尿作用による脱水もそこまで心配しなくて良いでしょう。

※あくまでも予防としての摂取が問題ないということなので、熱中症になってからは飲んではいけません

・子どもはマスクを外す時間を設ける
子どもはマスクをしているだけで体温調節に支障が出てしまうため、家族や周りの大人がマスクを外す時間を作ってあげましょう。マスクをしていない状態がベストと考えて、人ごみを避けた場所でなるべく多くの時間、マスクを外してください。

「自分は熱中症にならない」という油断は禁物!

画像: 画像:iStock.com/NanoStockk

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熱中症は、健康な人でも発症する危険性のある病気です。一方で、しっかりと予防すれば、確実に回避できる病気でもあります。天気予報をチェックして暑い日は活動しない、こまめに水と塩分を補給するといったことを徹底するだけで、自分や家族の命を守れるのです。

「自分は熱中症にはならない」と油断せず、これからの暑い季節を乗り切りましょう。

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