病気や怪我で急な入院などが必要になった時、高額な医療費の支払いに頭を抱えてしまう人も多いのではないでしょうか。そんな時に役立つのが「高額療養費制度」です。1カ月にかかる医療費の自己負担額が上限を超えた際、超過した分の金額が戻ってくる制度です。

しかし、高額療養費制度は治療にかかった全費用を対象としているわけではなく、対象外になる費用もあります。なかには高額療養費制度を頼りにして民間の医療保険に加入しない人もいますが、対象となる範囲をしっかりと理解していないと、意外な落とし穴にはまるかもしれません。この記事では、ファイナンシャルプランナーの柳澤美由紀さん監修のもと、高額療養費制度のしくみや計算方法、対象外になる費用などについて解説します。

この記事の監修者

柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)

家計アイデア工房代表。株式会社FPフローリスト 取締役。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。CFP®。「専門知識と真心で、日本の家計を元気にする」を使命に活動し、個人向けFP相談、マネーセミナーのほか、新聞や雑誌など多くのメディアで活躍中。著書に『老後のお金の「どうしよう?」が解決できる本』(講談社)など。ほか多数。
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高額療養費制度とは?

画像: 画像:iStock.com/ itakayuki

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まずは、高額療養費制度とはどのようなものなのかを解説しましょう。

高額療養費制度とは、1カ月に支払う医療費の自己負担額が上限を超えた際、超過分の払い戻しを受けられる制度です。国民健康保険(以下、国保)や社会保険(以下、社保)などの公的医療保険制度における給付のひとつで、国保・社保問わず、健康保険に加入している人なら誰でも利用することが可能です。なお、自己負担額の上限は年齢や所得によって異なります。

そもそも日本では保険医療機関にかかる時、公的保険適用内の治療や診察であれば、健康保険証を提示することで、自己負担額を3割に抑えられます(現役世代の場合)。

しかし、高額な医療費が発生するがん治療などの場合、3割負担であっても経済的なダメージは大きいものです。そこで自己負担額に上限を設定し、患者が治療に専念できるようにしたのが、高額療養費制度です。

たとえば、1カ月にかかった医療費(すべて保険適用)が100万円だった場合をシミュレーションしてみましょう。まず、窓口で支払わなければいけない金額は、3割負担なので30万円です。ただし、高額療養費制度では、自己負担額の上限が定められています。仮に、上限が9万円だったとすると、この制度を利用すれば、差額となる21万円の払い戻しをあとから受けることが可能です。

〈図〉高額療養費制度のしくみ(例)

画像: 高額療養費制度とは?

対象外になるケースは? 適用されるのは「保険診療」のみ

画像: 画像:iStock.com/ andrei_r

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そんな便利な高額療養費制度ですが、対象外になる費用もあります。高額療養費制度の対象となる範囲について見ていきましょう。

結論から言うと、高額療養費制度の対象になるのは「保険診療」の医療費に限られます。それ以外はすべて対象外と考えてください。

では、保険診療とはどのようなものを指すのでしょうか。大前提として、医療機関で治療や診察を受ける際には、「保険診療」「自由診療」「先進医療」、そして「混合診療」という4つの区分が存在します。1つずつ解説していきましょう。

医療機関の治療区分① 保険診療

保険診療とは、国保や社保といった公的医療保険の対象となる医療のことです。疾患に応じて検査や治療、投薬などの内容が定められており、それらの医療を受けた場合は保険診療に該当します。もちろん、入院時にかかる入院基本料なども含まれています。

前述の通り、保険診療の場合は、医療機関の窓口で健康保険証を提示することで、自己負担額を実際にかかった医療費の3割(現役世代の場合)に抑えられます。残りの7割については、国保なら国が、社保なら加入している協会や組合が、それぞれ負担するしくみになっています。

医療機関の治療区分② 自由診療

自由診療とは、公的医療保険の対象にならない医療のことです。公的医療保険では、厚生労働省によって認可された検査や治療のみが対象になります。言い換えれば、認可されていなければ、対象とはならないのです。

国内での実例が少ない海外の治療や、まだ実績が十分ではない最先端の医療などは、自由診療の扱いになるケースが多いです。

たとえば、がんの免疫治療は海外では高い効果が認められていますが、国内では実例が少なく保険診療にはならないものが大半です。また、病気やケガの治療であるかどうかも重要で、歯列矯正やレーシックなども自由診療に該当します。

自由診療の医療費は、原則として全額自己負担になります。これは、診察や検査、入院などの治療に付随する基礎部分の費用も同様です。また、医療費は医療機関ごとに自由に設定できるため、高額になる傾向があります。

医療機関の治療区分③ 先進医療

先進医療とは、自由診療のなかでも高度な医療技術を用いた治療で、有効性や安全性を厚生労働省から認められたもののことです。たとえば、がんの陽子線治療や重粒子線治療などは多くの場合、先進医療に該当します。

先進医療では、手術や治療といった医療技術に関する費用は全額自己負担となりますが、公的医療保険の対象となっている診察・検査・投薬・入院などに関しては、保険適用内となります。先進医療以外の自由診療の場合、これらの費用は保険適用外なので、これは大きなメリットと言えるでしょう。

〈図〉先進医療を受けた場合の治療費の例

画像: 医療機関の治療区分③ 先進医療

医療機関の治療区分④ 混合診療

混合診療とは、先に説明した保険診療と自由診療を組み合わせた医療のことです。海外では認められている場合もありますが、日本では原則禁止となっている方法です。

禁止されている理由はふたつあり、まずひとつめに、「本来保険診療の範囲で十分なはずなのに、自由診療との併用を認めることで不当な金額が発生する恐れがあること」。ふたつめに、「安全性や有効性が確認されていない自由診療の範囲の医療が、保険診療と併せて実施されてしまう恐れがあること」が挙げられます。

そのため、現在の日本では保険診療と自由診療が組み合わされた医療を受ける場合には、保険診療部分も含めてすべて「自由診療」とみなされることとなっています。

しかしながら、例外として併用が認められている範囲もあります。前述の「先進医療」がこの最たるものであり、他にも「差額ベッド代」や「時間外診療」などもこの中に含まれています。

高額療養費制度の対象になるのは「保険診療」のみ

高額療養費制度の対象になるのは、このうち「保険診療」の医療費です。自由診療はもちろんのこと、先進医療の医療技術に関する費用も、高額療養費制度の対象外になります。

また、入院時に個室を希望した際に発生する「差額ベッド代(特別療養環境室料)」や、洗濯のために利用したコインランドリーの料金、部屋のテレビを視聴するために購入したテレビカードの料金など、入院にかかった生活費に対しても保険は適用されません

▼入院の際にかかる費用について、詳しくはこちら

なお、高額療養費制度の対象になる費用に関しては、病院の領収書を見るとすぐにわかります。多くの場合、保険診療の費用とそうでない費用は区分されているからです。病院により記載方法に差はありますが、「保険区分」「保険区分外」などと記載されていることが多いです。わからなければ、病院に確認してみましょう。

画像: 高額療養費制度の対象になるのは「保険診療」のみ

がん治療・出産で高額療養費制度を利用する場合

同一の病気や症状であっても、治療法などが違えば、高額療養費制度の対象になるケースとならないケースが出てきます。なかでも代表的なのは、がん治療と出産です。どのような場合に高額療養費制度の対象外になってしまうのか、それぞれ見ていきましょう。

がん治療における対象範囲

画像: 画像:iStock.com/ Mark Kostich

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診察、検査、投薬、入院といった保険診療の部分は、高額療養費制度の対象となります。一方で重粒子線治療、陽子線治療、免疫治療、未承認の抗がん剤など、先進医療の医療技術にかかった費用や自由診療の範囲の費用は高額療養費制度の対象外です。

厚生労働省中央社会保険医療協議会の令和元年6月時点でのデータ1)によると、陽子線治療にかかる先進医療の平均額は約269万8,000円、重粒子線治療の平均額は約337万2,000円と高額です(総合計金額を、年間実施件数で割って計算)。高額療養費制度の適用外となると、経済的には大きな痛手になるでしょう。

さらに注意しないといけないのは、高額療養費制度は「1カ月の医療費のうち、自己負担額の上限を超えた金額」に対して適用されることです。

がん治療は長期にわたって行われることが少なくありません。1カ月の医療費はそこまで高額ではないけれど、自己負担上限額にギリギリ満たない支払いが数カ月、数年続く…ということもありえます。経済的な負担という意味では、この点は注意していくべきでしょう。

出産における対象範囲

画像: 画像:iStock.com/minianne

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通常の出産(自然分娩)は病気ではありません。そのため、自然分娩によって治療となる行為が発生しない場合には、高額療養費制度の対象外になります。

一方で、「帝王切開」「吸引分娩」「鉗子分娩」「骨盤位分娩」など、治療となる行為が発生する場合は、高額医療費制度の対象になります。「妊娠中毒症」や「切迫早産」の治療も同様です。

ちなみに、出産にかかる費用を軽減する制度としては「出産育児一時金」があります。これは公的医療保険に加入している世帯が、生まれた子ども1人につき原則として42万円の給付を受けられる制度です。自然分娩はもちろんのこと、妊娠85日以上の流産や死産、人工中絶も対象になります。

ほかにも、産休中に給料が支払われなかった場合に利用できる「出産手当金」や、子どもが15歳になる年度の3月末まで支給される「児童手当」などの制度もあります。生まれてくる子どものためにも、出産時にはしっかりと確認しておきましょう。

▼妊娠・出産時にもらえるお金の制度について、詳しくはこちら

自己負担限度額の計算方法

高額療養費制度を利用した場合に、自分の自己負担額の上限はいくらなのか気になるでしょう。前述の通り、この金額は年齢や所得によって異なります。70歳未満の現役世代の場合、所得による区分と計算方法は以下の通りです。

〈図〉1カ月の自己負担限度額(70歳未満)2)

所得区分自己負担限度額
(年収※1の目安)(実際の区分)(計算式)(目安の金額)※2
約1,160万円~社保:標準報酬月額83万円以上
国保:総所得901万円超
252,600円+(
総医療費-842,000円)×1%
約27万円
約770万~1,160万円社保:標準報酬月額53万~79万円
国保:総所得600万~901万円
167,400円+(
総医療費-558,000円)×1%
約18万円
約370万~770万円社保:標準報酬月額28万~50万円
国保:総所得210万~600万円
80,100円+(
総医療費-267,000円)×1%
約9万円
~約370万円社保:標準報酬月額26万円以下
国保:総所得210万円以下
57,600円
住民税の非課税者35,400円
※1 額面金額。
※2 あくまで目安の金額のため、この表の条件に当てはまる場合の正確な数字ではありません。正確な金額については計算ください。

所得区分をわかりやすくするために目安の年収を記載していますが、実際は年収によって区分が分かれるわけではありません。国保の場合は年間総所得(70歳未満は課税所得、70歳以上は旧ただし書き所得)、社保の場合は報酬標準月額によって、どの区分の計算方法になるかが決まります。

また、自己負担限度額の超過分を計算する際には、複数の医療機関でかかった費用を合算することも可能です。ただし、70歳未満の場合、それぞれの医療機関でかかった1カ月の医療費が2万1,000円以上でなければ、高額療養費制度の対象にはなりません。

たとえば、病院Aで5万円、病院Bで5万円を支払った場合は合算できますが、病院Bで1万円しか支払わなかった場合は、病院Bを自己負担額として含めることはできません。

なお、自己負担額の計算は医療機関ごとに行われるため、内科と外科の合算で2万1,000円以上になった場合なども、高額療養費制度の対象になります。とはいえ、同じ医療機関であっても入院と外来、医科と歯科は分けて計算されるので注意が必要です。

高額療養費制度の手続き

では、実際に高額療養費制度を利用する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは高額療養費制度の申請方法や期限などについて紹介します。

高額療養費制度の申請方法

〈図〉高額療養費制度の申請方法

画像: 高額療養費制度の申請方法

・国保の場合

国保に加入している人の場合、高額療養費制度が適用される金額分の医療費が発生した際には、自治体から自宅宛に申請書が送られてくることがほとんどです。

この申請書は高額療養費制度が適用になった月のおよそ3〜4カ月後に送られてくる場合が多く、送られてきた申請書を窓口または郵送にて提出すれば手続きが行えます。

自治体によっては申請書が自動的に送られてこない場合もあるため、あらかじめ電話などで問い合わせておくのが確実でしょう。

・社保の場合

社保に加入している人の場合も、申請方法は主に2つのパターンが存在します。会社経由で手続きを行う方法と、自分で申請書を提出する方法です。

一般的には、従業員の社会保険を管理する総務部などの部署を経由して申請を行います。そのため、高額療養費制度を申請したい場合は、まずは会社に確認を取りましょう。会社によっては、入院や手術が決まった段階で総務部などから高額療養費制度に関する案内が本人に届けられたり、自動的に申請が行われていたりするケースもあります。

一方で、個人的に申請が必要になることもあります。その場合、健康保険証に記載されている協会けんぽの支部や健康保険組合に、申請書を提出するのが一般的です。申請書はほとんどの場合、協会や組合の公式サイトでダウンロードできます。

申請に必要な書類一覧

画像: 画像:iStock.com/SARINYAPINNGAM

画像:iStock.com/SARINYAPINNGAM

申請に必要な書類は、自治体や協会、組合などによって異なります。基本的には、高額療養費制度の申請書のほかに、健康保険証、医師の診断書、身元確認書類、医療機関の領収書などが必要になります。ほかにも負傷原因届や傷病届、マイナンバーが確認できる書類などを求められることもあります。自分が加入している機関の公式サイトや、電話であらかじめ確認しておきましょう。

〈表〉高額療養費制度の申請に必要な書類

  • 高額療養費制度の申請書
  • 健康保険証
  • 身元確認書類
  • 医療機関の領収書
    など

申請から払い戻しまでは3カ月以上かかる

画像: 画像:iStock.com/Valerii Evlakhov

画像:iStock.com/Valerii Evlakhov

申請書を提出すると、確認や審査などが実施されます。この審査は、医療機関から医療保険機関に提出する保険診療の請求書の確定後に行われるため、一定の時間を要します。一般的には、申請から払い戻しを受けるまでに3カ月以上かかることが多いです。

申請の期限は2年以内

高額療養費制度の給付を受ける権利には、有効期限があります。診療を受けた月の翌月1日から2年以内に申請しないと、有効期限が切れてしまうのです。逆に、この期限を過ぎていない場合は、過去に遡って高額療養費制度の利用申請を行うことができます。

窓口での自己負担額を減らせる「限度額適用認定証」

画像: 画像:iStock.com/TommL

画像:iStock.com/TommL

このように私たちの暮らしを助けてくれる高額療養費制度ですが、見逃せない弱点もあります。それは、実際の給付までに3カ月以上のタイムラグが発生することです。医療機関での支払い時点では、3割(現役世代の場合)の医療費を全額自己負担しないといけないので、一時的に多額のキャッシュが減ってしまいます。あとから払い戻されるとはいえ、大きな負担になるでしょう。

そこで、事前に入手しておきたいのが「限度額適用認定証」です。健康保険証と併せて提示することで、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額を超えていても、その超過分は支払わなくて済みます。

簡単に言うと、窓口での支払いにも自己負担限度額が適用されるのです。非常に便利なので、入院などが決まった時には事前に申請しておきましょう。

〈図〉限度額認定証を発行し、利用するまでの流れ

画像: 窓口での自己負担額を減らせる「限度額適用認定証」

限度額適用認定証の申請方法

では、限度額適用認定証はどのようにして入手できるのでしょうか。ここからは申請方法を紹介します。

・国保の場合

自治体の窓口で申請を行います。自治体によっては、公式サイトから申請書をダウンロードし、必要書類と併せて郵送すれば申請できることもあります。必要書類としては、健康保険証や本人確認書類、マイナンバー確認書類などが挙げられます。

・社保の場合

加入している協会や組合の窓口で申請を行います。協会や組合によっては、公式サイトから申請書をダウンロードし、必要書類と併せて郵送で申請できることもあります。健康保険証が必要な場合もあります。

限度額適用認定証の有効期限

限度額適用認定証は、基本的に病気やケガで入院・手術などが決まり、必要になった際に都度申請する制度であるため、有効期限が定められています。

この有効期限は、申請書に記載した療養予定期間をもとに、入院期間などに応じて決められます。

最長で申請書を受け付けた月の1日から1年間が期限となっています。多くの機関では7月末を更新のタイミングとしているため、申請から1年が経っていなくても更新の時期がくれば期限切れとなってしまいます。それ以降も利用したい人は再申請を行いましょう。

そのほかに、1年以内に期限が切れてしまう例としては、退院後の通院を考慮せず、申請書の療養予定期間の欄に入院期間だけを記載してしまうケースが挙げられます。この場合、退院後も高額な医療費が見込まれるにも関わらず、退院した翌日から限度額適用認定証が無効になる場合もあるので、再申請の手間がかかります。退院後も継続を希望する場合は、申請書にその旨を記載しておくことを忘れないようにしましょう。

さらに自己負担額を軽減する3つのしくみ

画像: 画像:iStock.com/zakokor

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高額療養費制度には、自己負担額をさらに軽減してくれる嬉しいしくみも存在します。それぞれ紹介していきましょう。

① 世帯合算

高額療養費制度では、同じ公的医療保険に加入している家族なら医療費を合算し、自己負担額を計算できます。子どもが学生などで一人暮らしや寮生活をしている場合も、扶養家族として同じ公的医療保険に加入しているなら、合算の対象となります。

ただし、別々の公的医療保険に加入している人同士の合算はできません。たとえば、共働き家庭で夫が国保、妻が社保に加入している場合などが該当します。また、どちらも社保に加入している場合でも、協会や組合が異なると、合算はできないので注意が必要です。

〈図〉世帯合算の例3)

画像: ① 世帯合算

② 多数回該当

過去12カ月以内で3回以上、高額療養費制度を利用した場合、4回目からは「多数回該当」という扱いになり、毎月の自己負担額の上限がさらに下がります

たとえば、70歳未満の場合、総所得210万円以下(国保)または標準報酬月額26万円以下(社保)の人の自己負担限度額は5万7,600円ですが、多数回該当が適用されると、4万4,400円になります。

〈図〉多数回該当の上限金額4)

画像: ② 多数回該当

③ 高額医療・高額介護合算療養費制度

1年間で公的医療保険と介護保険の両方を利用した場合、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用できる可能性があります。

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、1年間であまりにも高額な医療費と介護費がかかった場合に、それを軽減するための制度です。8月から翌年7月までの医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、定められた上限金額を超えた分の払い戻しが受けられます。高額療養費制度の場合は月額での計算ですが、こちらの制度では年額での計算となるため、注意しましょう。

また、こちらの制度の適用となるのは、高額療養費の対象となる医療費と高額介護サービス費の対象となる介護サービス費のみです。差額ベッド代や介護保険の対象外の介護費用は対象外となります。世帯合算も可能ですが、別々の公的医療保険に加入している人の合算はできないので気をつけましょう。

高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担額の上限も、年齢や所得に応じて異なります。70歳未満の内容は以下の通りです。

〈図〉高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額5)

所得区分(年収※1の目安)自己負担限度額(年額)
年収約1,160万円以上
(課税所得690万円以上)
212万円
年収約770万円〜約1,160万円
(課税所得380万円以上690万円未満)
141万円
年収約370万円〜約770万円
(課税所得145万円以上380万円未満)
67万円
年収約156万円〜約370万円
(課税所得145万円未満)
60万円
住民税非課税世帯34万円
※1 額面の金額

高額療養費制度だけでなく、貯蓄や保険加入でいざという時に備えよう

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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高額な医療費を大幅に軽減する高額療養費制度は、知らないと損をするしくみです。しっかりと頭に入れておき、手術や入院などの際には忘れずに申請しましょう。一方で、自由診療や先進医療など、高額療養費制度の対象外となるケースもあります。高額療養費制度をあてにして自由診療で高額な治療を受けても、後から対象とならなかったと気づくこともあり得るので注意が必要です。

また、病気や怪我による高額な医療費に備えるなら、日々の貯蓄はもちろんのこと、生命保険や医療保険といった各種保険に加入するのも有効な選択肢のひとつです。万一の時にしっかりと医療の助けを借り、自分や家族の健康を守れるよう、万全な態勢を整えておきましょう。

▼保険の種類別、役割と特徴について詳しくはこちら

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