この記事では、スポーツトレーナーの坂詰真二さんに、つらい肩こりの原因と、症状を軽減するストレッチを教えていただきます。たった数分で終わるストレッチなら、毎日続けられるはず。さっそく今日から始めてみましょう。
【INDEX】
肩こりの原因(1)目線を下げたPC・スマホ操作
肩こりの原因(2)長時間のデスクワーク
肩こりの原因(3)テクノストレス
肩こり解消ストレッチのポイント
①「首」の肩こり解消ストレッチ
②「僧帽筋上部」の肩こり解消ストレッチ
③「僧帽筋中部」の肩こり解消ストレッチ
微弱電流が筋肉を伸び縮みさせる「低周波治療器」
自重で筋肉をほぐすマッサージができる「筋膜ローラー」
ながらで使える定番アイテム「マッサージ器」
温感・冷感はお好みで「湿布」
肩こり予防法(1)1時間に1回、休憩をとる
肩こり予防法(2)PC画面の位置を上げる
肩こり予防法(3)好きな方法で体を動かす
肩こり予防法(4)腹筋を伸ばす…肩こり予防ストレッチ
肩こりの原因となる生活習慣
肩こりは、筋肉が緊張し、疲労することによって生じます。
“筋肉の緊張”と言うと、「肩にグッと力を入れている」状態を思い浮かべてしまいますが、立ったり座ったりといった一見リラックスした状態の時にも緊張している筋肉があります。それは、体が重力に引っ張られて倒れてしまわないように支える「抗重力筋」と呼ばれる筋肉です。
抗重力筋の代表例として、首の後ろにある「頸板状筋(けいばんじょうきん)」「頭板状筋(とうばんじょうきん)」、肩から背中にかけて広がる「僧帽筋(そうぼうきん)」、背骨に沿ってついている「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」などが挙げられます。その中でも「頸板状筋」「頭板状筋」「僧帽筋」が緊張し、疲労が蓄積することで、肩こりの症状が現れます。
現代人は、肩こりが生じやすい生活習慣を持っているといえます。その代表的な3つの生活習慣を以下で解説していきましょう。
肩こりの原因(1)目線を下げたPC・スマホ操作
パソコンやスマートフォンを操作する時は、斜め下または真下を見ることになります。人間の体には、目線を下げると反射的に頭が前に倒れる仕組みが備わっています。そして頭を前に倒すほど、抗重力筋にかかる負担が大きくなってしまうのです。
人間の頭は、体重の7~8%の重さがあります。体重50kgの人なら4kg程度なので、9ポンドのボウリングの玉くらいです。この重さを支えるため、抗重力筋に力が入ってしまうのです。その状態が長く続くと、肩や首のこりにつながります。
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肩こりの原因(2)長時間のデスクワーク
デスクワークは多くのエネルギーを消費する行動ではないので、大きな疲労を感じにくく、つい長く続けてしまいがちです。
農作業や手工業、家事労働などの体を動かす労働は疲労を感じやすいため、60~90分に一度休憩をとる習慣があります。規則的に休憩を取るということは、筋肉の緊張を和らげるとともに、過度の疲労を予防することにもなります。
実は大きな疲労を感じにくいデスクワークも長時間続ければ、緊張状態が続いた筋肉には疲労が蓄積します。オフィスでは一律に休憩時間が決められていないことが多いかと思いますが、筋肉の緊張を和らげて疲労の蓄積を防ぐためには、実は定期的な休憩をとることが望ましいのです。
肩こりの原因(3)テクノストレス
指先を集中的に使う、同じ部分に視点を合わせ続けるといった、パソコンやスマートフォンの操作ならではの動作によって、「テクノストレス」と呼ばれる心理的、生理的なストレスが生じるといわれています。
ストレスから体を守るためにアドレナリンというホルモンが分泌されますが、このアドレナリンには筋肉と心を緊張状態にする働きがあります。
また、人間はストレスがかかって緊張すると、肩が上がるようになっています。片腕の重さは体重の6.5%程度。肩が上がった状態になるということは、体重50kgの人なら3kg程度を肩で持ち上げているということになり、筋肉に負荷がかかるのです。
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座ったままできる!肩こり解消ストレッチ
上記で挙げた肩こりの原因となる筋肉の疲労は、筋肉が動かないことで起こる疲労という意味で「静的疲労」と呼ばれます。この静的疲労は、筋肉を動かすことで解消することができます。
筋肉を動かすには、大きく分けて「ストレッチ(自分で筋肉を動かす)」と「マッサージ(外部からの力で筋肉を動かす)」の2つの方法があります。ここでは、自分一人で実践しやすい「ストレッチ」をご紹介します。
体に心地良い刺激が加わると、心身をリラックスさせる副交感神経が優位になるというメリットも。リラックスして緊張が解ければ、こり固まった肩や首もほぐれるでしょう。
肩こり解消ストレッチのポイント
ストレッチをする部位ごとに、筋肉を大きく伸び縮みさせる「動的ストレッチ」と筋肉をゆっくり伸ばす「静的ストレッチ」をセットで行なっていきましょう。「動的ストレッチ」で血流を良くしてから「静的ストレッチ」で筋肉の緊張をほぐすのがポイントです。
より心身をリラックスさせるため、ストレッチをしている最中はゆったりと呼吸をしてください。伸ばす筋肉を意識する必要はありません。気持ち良さだけを感じながら行いましょう。
ご紹介するストレッチには目安の時間や回数を記載していますが、時間が許せば、それぞれ2~3セット行うとさらに効果的です。
①「首」の肩こり解消ストレッチ
「首」の動的ストレッチ
椅子に深く腰掛け、背もたれに寄りかかります。足を肩幅に広げ、両手は膝の上に置きます。頭の重さに任せるように頭を前に倒しましょう。
2秒かけて、右ほほを右肩につけるつもりで頭を横向きに回していきます。その後、2秒かけて最初の状態に戻します。
また2秒かけて、左ほほを左肩につけるつもりで頭を横に回し、2秒で最初の状態に戻します。ここまでの動作を5往復繰り返しましょう。
【POINT】
頭を横に回す時、体は傾けないようにしましょう。上体は固定し、頭だけを振り子のように動かすイメージで行うと良いでしょう。
「首」の静的ストレッチ
椅子の真ん中に座って背もたれに寄りかかり、脚を大きめに開きます。片方の手で後頭部を掴むように持ち、腕の重さを利用して頭を斜め下に傾けて、10秒間静止します。目線は、頭を傾けている方の太ももに向けます。逆側も同様に行いましょう。
【POINT】
頭を傾ける時に、背中を丸めるのはNGです。背もたれに上体を預けたまま、頭だけを動かしましょう。
②「僧帽筋上部」の肩こり解消ストレッチ
「僧帽筋上部」の動的ストレッチ
椅子の真ん中に座り、足を肩幅に広げます。手は膝の上に置きましょう。2秒かけて、首をすくめるように肩を高く上げます。
2秒かけて肩をできるだけ下に下げます。この動作を5回繰り返します。
「僧帽筋上部」の静的ストレッチ
椅子の真ん中に座り、足を肩幅に広げます。右手は太ももの上におき、左手を椅子のヘリにひっかけます。
左腕を伸ばして肩を落としたまま右逆側に体を傾け、体重をかけていきます。首も軽く右に傾けた状態で10秒間キープしましょう。逆側も同様に行います。
【POINT】
椅子のヘリを握ろうとすると腕全体に力が入ってしまうので、親指以外の4本の指をひっかけるようにしましょう。また、肘が曲がってしまったり、肩が上がってしまったりすると僧帽筋が伸びないため、注意してください。
③「僧帽筋中部」の肩こり解消ストレッチ
「僧帽筋中部」の動的ストレッチ
椅子の真ん中に座り、足を肩幅に広げます。左右の指先が肩の端に触れるまで肘を曲げましょう。
2秒かけて、両肘を体の正面に向けます。できれば肘と肘が触れるようにしましょう。その後、2秒かけて元の状態に戻します。
元の状態に戻したら、2秒かけて今度は肘をできるだけ後ろに引きましょう。その後、2秒かけて最初の状態に戻します。ここまでの動作を5往復繰り返しましょう。
【POINT】
肘と肘を体の正面で合わせる時、背中を丸めるのはNGです。顔は正面に向けたまま、肩だけを動かすように意識しましょう。
「僧帽筋中部」の静的ストレッチ
椅子に浅く腰かけて、片方の脚を伸ばします。もう片方の脚は膝を曲げ、足の甲を伸ばした方の膝裏にひっかけます。どちらの脚を伸ばしてもストレッチの効果は同じなので、やりやすい方で行いましょう。
曲げた方の膝にぶら下がるイメージで、背中を丸めながら上半身を後ろに傾けて、10秒間静止します。
【POINT】
上半身に体重をかける時、背すじを伸ばすのはNGです。背中を丸めることで、僧帽筋を伸ばすことができます。
肩こり・首こりに効くグッズ
肩こりを解消するためには、上でご紹介したようなストレッチで筋肉を動かすことが大切です。ですが、「ストレッチをする時間がない」「ストレッチに加えて他の解消方法も実践したい」という場合はグッズを活用するのも1つの手です。数千円~数万円で手に入るものばかりですので、ひどい肩こり・首こりに悩まされている人は、参考にしてください。
微弱電流が筋肉を伸び縮みさせる「低周波治療器」
筋肉に低い周波数の電気を流すことで、こりの解消や痛みの緩和を図る「低周波治療器」。自分で動かなくても、電気が勝手に筋肉を小刻みに動かしてくれて、筋肉の緊張をほぐすことができます。EMSを採用した運動器具も、同様のしくみと効果といえます。
自重で筋肉をほぐすマッサージができる「筋膜ローラー」
自分の体重を使ってマッサージを行う「筋膜ローラー」も、こり解消の効果が期待できます。こりを感じている箇所を重力を利用してゴロゴロすることで、筋肉の緊張をほぐすことができます。
ながらで使える定番アイテム「マッサージ器」
首や肩の辺りを叩いたり揉んだりするマッサージ器も有効です。テレビを見たり本を読んだりしながら使うことができるので便利です。
温感・冷感はお好みで「湿布」
筋肉の炎症を抑えたり血管を拡張させて、鎮痛する作用が期待される「湿布」も、選択肢の1つ。僧帽筋の辺りに貼ると、肩こり解消につながるでしょう。
「温湿布」と「冷湿布」がありますが、基本的な効果は同じです。貼った瞬間にあたたかく感じるか、ひんやり感じるかの違いなので、好みで選んで問題ありません。
肩こりになる前に!実践するべき予防法
肩こりを解消することも大切ですが、もっと重要なのは肩こりを起こさないことです。そして、予防のためには、以下に挙げる予防法を継続することが大切です。
日常的に取り入れられるものばかりなので、なかなか肩こりが解消されない、解消してもすぐに肩こりになってしまう…という人はぜひ意識してみてください。
肩こり予防法(1)1時間に1回、休憩をとる
1日中デスクワークをしている人は、定期的に休憩をとりましょう。40~60分に1回はデスクから離れて、1,2分でも良いので軽く体を動かすのが理想的です。休憩時に、先ほど紹介したストレッチ や下記で紹介する肩こり予防ストレッチを行うのもオススメです。
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肩こり予防法(2)PC画面の位置を上げる
デスクワークをしている人の中でも、ノートPCを使っている人は特に注意が必要です。ノートPCは画面が低い位置にあるため、使っていると目線が下がりやすく、頭が前に傾きがちです。そんな状態を解消するためには、専用のスタンドなどを使って画面の位置を高くすると良いでしょう。
肩こり予防法(3)好きな方法で体を動かす
ストレスによって溜まったアドレナリンは、体を動かすことで解消することができます。ただし、苦手なことだと余計にストレスが溜まってしまうので無理な運動は逆効果です。
走ることが好きであればランニングが手軽で効果的ですが、ランニングに抵抗があるという場合はウォーキングでも十分です。歌いながら踊る、といった方法でも、アドレナリンは解消されます。
肩こり予防法(4)腹筋を伸ばす…肩こり予防ストレッチ
姿勢を正して頭を前に傾けずに座ることも、肩こりの予防になります。ですが、デスクワークなどをしている時に背すじを伸ばした状態をキープするのは難しいですよね。実は、背すじを伸ばすには、一般的に腹筋と呼ばれる「腹直筋(ふくちょくきん)」が柔軟であることが必要なのです。
頭が前に傾き、背中が丸まっている…いわゆる「姿勢が悪い」状態では、腹直筋は収縮してこり固まっています。そうした状態が続くとさらに姿勢が悪くなり、腹直筋が収縮する…といった悪循環に陥ってしまうことで、肩こりの症状が酷くなってしまうのです。
裏を返せば、腹直筋をしっかり伸ばして柔らかくすることは、肩こりの予防になるということ。先ほど「1時間に1度は休憩をとるようにする」という肩こり予防のポイントを挙げましたが、その休憩のタイミングで行うのに最適な「腹直筋を伸ばすストレッチ」をご紹介しましょう。
肩こり予防ストレッチ
踵を肩幅に開き、足をハの字状に内側に向けた状態で立ちます。
腰に手を当てて骨盤を持つように前に傾け、おしりを突き出すような体勢をとります。そのまま、胸を張って肋骨を高く上げましょう。あごを上げて、目線は斜め上に向けます。
そのまま腕を後方に伸ばし、親指を上に向けましょう。この状態で10秒間静止します。
【POINT】
背すじを伸ばすには、腹直筋など体の前面をしっかりと伸ばすことが大切です。そのためには、ストレッチ器具を活用するのもOK。クッション状の器具の上に寝ることで、重力を利用して体の前面を伸ばせるものなどがあります。
「ストレッチ」も「予防」も“習慣化”が大切
日々の予防とストレッチで、肩こりは解消することができます。まずは、デスクワークやスマホの操作をしている時の自分の姿勢を振り返ってみるところからスタートしましょう。
ストレッチは即効性がある運動ですが、逆に効果が失われるのも早いのです。週に1回じっくり1時間行うよりも、数分間でも毎日行う方が効果的。さらに1日に3回、4回と回数を多く行う方が高い効果が得られます。心地よさを感じながら習慣化して行いましょう。繰り返すほどに効果が見えてくるはずですよ。
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