歯科の場合は、公的医療保険が適用されず、全額が自己負担となる「自由診療」を提案される場合も多いため、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。
公的医療保険が適用される範囲や、自由診療を受けるメリット・デメリットについて、歯科医師・江上一郎先生監修のもと解説します。
この記事の監修者
江上 一郎(えがみ いちろう)
歯学博士(専門は口腔衛生・歯科口腔外科)。日本歯科医師会会員。日本口腔衛生学会永年会員。日本口臭学会口臭認定医。日本糖尿病協会会員。江上歯科(大阪市北区。歯科、歯科口腔外科、口臭外来、予防歯科、小児歯科)院長。「口腔は全身の健康の玄関」「口腔ケアのカギは唾液」を掲げ、地域医療、自治体や学校、メディアで口腔ケアを啓発する。著書に『すべての不調は口から始まる』(集英社新書)がある。
歯医者における保険診療・自由診療の違いとは?
保険診療と自由診療の自己負担額の違い
まずは、歯科を受診する前に知っておきたい、保険診療と自由診療の違いについてご説明しましょう。
公的医療制度が充実している日本の場合、公的医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など)に加入している人であれば、日本全国どこでも診療(診察や治療)にかかる費用の大半を保険で賄うことができるようになっています。
公的医療保険が適用される範囲で受けられる診療を「保険診療」と呼びます。会社員が加入する健康保険や、フリーランスなどが加入する国民健康保険の場合は、診療にかかる費用の3割を負担するのが原則です。また保険診療の場合、診療費に消費税はかかりません。
一方、歯科で受けられる診療の中には、公的医療保険が適用されないものもあります。
その場合には、診療にかかる費用は、すべて自己負担となります。これを「自由診療」と呼びます。自由診療の場合には、診療費に消費税がかかる点にも注意が必要となります。
〈図〉保険診療・自由診療の自己負担額の違い
保険適用の判断基準は「必要最低限」の診療かどうか
保険診療になるか自由診療になるかを判断する基準は、厚生労働省が承認している診療方法や素材、薬を使った治療であるかどうかです。
公的医療保険は、加入者全体と国で医療費を支え合うしくみになりますから、必要最低限の範囲を超える費用や内容の診療は、平等性を欠くため認めることができない、と考えても良いでしょう。
〈図〉保険診療の範囲の基礎的な考え方
公的医療保険の範囲で認められていない主な診療は、以下の3つです。
(1)「病気」ではない場合の診療
公的医療保険は、あくまでも病気やケガの診療費を補償するものです。そのため、ホワイトニングのように見た目を良くすることなどが目的の治療は、保険診療の適用範囲外となります。その際には、診察料も保険診療の適用範囲外となる場合が多い点に注意しましょう。
(2)高額な素材を使う治療
たとえば、虫歯などによる歯の欠損を補う際に用いる素材は複数種類あり、セラミックなどの素材を使う治療は、保険診療の適用範囲外となります。また、現在のところインプラント(デンタルインプラント)も保険診療の適用範囲外となります。
(3)特殊な機器を用いる診療
マイクロスコープやレーザー機器など、最新の医療機器を用いる診療は、保険診療の適用範囲外となる可能性があります。
なお、保険診療の範囲となる場合と自由診療になる場合の詳細については、後ほど詳しく解説します。
保険診療・自由診療のメリット・デメリット
歯科で診療を受ける際には、歯科医からの提案で、保険診療と自由診療の選択を求められる場合があります。その際に気になるのは、保険診療と自由診療とを比較した場合のメリット、デメリットでしょう。
保険診療のメリット:費用が安く抑えられる
保険診療を利用するいちばんのメリットといえるのは、医療費の自己負担を低く抑えられることです。
会社員が加入する健康保険や、フリーランスなどが加入する国民健康保険の場合は、診療にかかる費用の3割が自己負担です。たとえば診療費が1万円の場合には、3,000円を支払えばよいことになります。
保険診療のデメリット:“必要最低限”の診療しか受けられない
一方で、保険診療のデメリットといえるのは、厚生労働省が定めた “必要最低限”の範囲の診療しか受けられないことでしょう。
たとえば、抜けた歯を補う方法として、入れ歯とインプラントがありますが、このうち、インプラントは保険診療の適用範囲外となります。
なぜなら、入れ歯でも、食べたり噛んだりするために必要最低限の機能を補うことができるからです。インプラントは、入れ歯より機能性は高いものの、コストがかかります。
同様に、入れ歯の場合でも、使用する素材や装着具の種類によって、必要最低限の範囲を超えていると判断された場合には、保険診療の適用範囲外となります。
自由診療のメリット①:質の高い診療を受けられる
自由診療を利用する一番のメリットといえるのが、費用に見合った高いクオリティの診療を受けられることです。
たとえば、インプラントを入れ歯と比べると、「自分の歯に近い感覚で噛むことができる」「見た目がより自然」「周囲の歯に悪影響を与えにくい」といった、複数の利点があります。
虫歯などの理由で欠損した歯を補填する材料の場合でも、自由診療の素材を使えば、耐久性や審美性(見た目の良さ)、そして快適性が大きく向上します。
保険診療の適用範囲内で利用できる素材も、以前に比べて耐久性や審美性、快適性がずいぶんと高くなっていますが、それでも自由診療の素材には敵いません。
自由診療では全額が自己負担となりますが、長期的な視点で考えた場合、費用に見合う効果を得られる場合も多いといえるでしょう。
自由診療のメリット②:「病気」ではない悩みに対応できる
また、歯科における自由診療のメリットとしては、「病気」ではない「悩み」に対する診療を受けられることも、重要なポイントとなります。
たとえば、歯の着色や黄ばみを落とすための「ホワイトニング」と呼ばれる処置は、診察代を含め保険診療の適用範囲外となります。これは、歯の着色や黄ばみ自体は、「病気の原因」と認められていないためです。
しかし、人によっては自分の歯に着色や黄ばみがあることが、精神面での健康に影響を及ぼし、大きな悩みとなっている場合もあるでしょう。
同様に、歯科の範疇では「病気」として認められないものに、口臭の悩みがあります。
対面で人と接する仕事をしている方の場合には、口臭が業務の妨げになる可能性があるほか、自分の口臭を気にするあまり、人と接することが怖くなってしまうなど、メンタル面への影響があるため、治療したいと考える人も少なくないでしょう。
口臭の悩みを解消する「口臭外来」で行っている診療は、現在のところ基本的に保険診療の適用範囲外となります。そのため、医院によって費用に差がありますが、検査一式を含めた初診料は、3万円(税別)程度が目安となります。
自由診療のデメリット:医院によって費用にバラツキがある
このように、質の高い診療が受けられる自由診療ですが、費用面は慎重に考える必要があります。
治療によっては、数十万円〜数百万円と高額になる場合がある上、診療を受ける医院によって差が出る場合も少なくありません。
なぜなら、自由診療にかかる費用は、保険診療のように全国一律の料金ではなく、担当する医師や病院の裁量に任されているからです。
可能であれば事前にセカンドオピニオン等の比較検討を行い、納得がいく診療を受けることをおすすめします。
保険診療 or 自由診療? 保険適用の判定目安チャート
ここで、歯科で診察や治療を受ける際に、保険診療となるか自由診療となるかを判断するための目安となるチャートをご紹介しましょう。
もちろん歯科医によって例外はありますが、ある程度の判断をする際に役立つはずです。
〈図〉保険診療・自由診療の判断目安チャート
なお、特に虫歯(欠損)の治療では、程度によって治療法や用いる素材の選択肢が異なるため、自由診療の場合でも費用に大きな差が生じます。個別の診察や治療についての詳細は、次の項目で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
【治療・処置別】保険適用の可否&診療費の相場を解説
それでは、ここからは診療費の基本的な考え方を知るとともに、具体的な診療を挙げながら、保険診療になる場合と自由診療になる場合について解説していきましょう。
診療費の基本を押さえよう
まず、具体的な診療の費用に関して知る前に、おぼえておくと良いのが、歯科における診療費(歯科診療治療費)の考え方についてです。
大まかにまとめると、歯科診療治療費は、「診察料」(初診または再診)と「各種の処置や手術(検査も含む)」、そして「処置や手術に用いた薬や素材など」の合計と考えることができます。
〈図〉診療費の内訳
保険診療を選ぶか、自由診療を選ぶかによって全体の費用は大きく変わりますが、なかでも特に高額になる可能性が高いのは、いわゆる詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)などに用いる素材の費用です。
また、診察料や処置・手術料も、保険診療の適用範囲かどうかによって、費用が大きく変わります。
保険診療の場合は、厚生労働省が定めた基準があるため、同じ種類の診療であれば、全国どこでも医院の規模や医師の技量を問わず、一律の費用にすることが義務付けられています。ただし、処置や治療については、担当する医師の判断によって費用が多少変わる場合があります。
一方、自由診療については、費用はすべて診療を行う医師の判断にゆだねられています。つまり、同じ種類の診療でも、医院によって請求される金額に差が出るということです。また、保険診療の場合とは違い、自由診療にかかる費用には、消費税が加算される点にも注意が必要です。
そのため、以下の各項目でご紹介している費用の目安は、保険診療、自由診療の両方とも、あくまでも参考程度にご確認いただくようにお願いいたします。
(1)診察料(初診、再診など)
保険診療 or 自由診療 | ・基本は保険診療の範囲内 ・セカンドオピニオン、自由診療による治療のための診察は自由診療となる場合が多い |
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費用相場 | ●保険診療の場合(3割負担) ・初診料:850円程度、再診料:170円程度 ●自由診療の場合 ・医院によって異なる |
歯科に限らず、治療を行うためには毎回の診察が欠かせません。そのため初診、再診を問わず、基本的に診察料は保険診療の適用範囲内となります。
ただし、他の医師による診察結果に対して、別の意見を求めるための診察を受ける「セカンドオピニオン」については、医院によって自由診療の範囲とする場合があります。
また、ホワイトニングや歯列矯正など、歯科では「病気」として認められない種類の治療を受けるための診察も、自由診療の範囲となる場合が多いようです。
保険診療での歯科の診察料は、時間外診療など特殊な条件がなければ、初診料の自己負担額(3割)は850円程度、再診料は170円程度となります。
自由診療の診察料は、診察の内容や対応する医師の判断によって異なるため、目安をあげることは難しいのですが、多くの場合、自由診療の診察料は検査料とあわせて請求しているようです。たとえば江上歯科の口臭外来の場合なら、検査にかかる費用をあわせた初診料は3万円(税別)となっています。
(2)検査料(歯周病検査、レントゲン検査など)
保険診療 or 自由診療 | ・虫歯治療や歯周病検査など、大半は保険診療 ・自由診療による治療のための検査は、自由診療となる場合が多い |
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費用相場 | ●保険診療の場合(3割負担) ・基本検査:600〜900円程度(歯数による) ●自由診療の場合 ・医院によって異なる |
歯周病検査や、虫歯(欠損)治療のためのレントゲン検査など、歯科で行う検査の大半は保険診療の適用範囲内となります。
検査の範囲や内容によって費用は異なりますが、たとえば歯周病の基本検査なら保険診療の適用範囲内ですから、歯の数によりますが、600円から900円程度の自己負担額(3割)で受けることができます。
なお、インプラントや口臭解消などの目的で行う検査の場合は、自由診療の扱いとなる可能性もあります。自由診療の検査料は、医院ごとに異なりますのでご注意ください。
(3)虫歯(欠損)の治療
保険診療 or 自由診療 | ・処置や治療にかかわる費用は、保険診療 ・素材の費用は、自由診療になる場合がある |
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費用相場 | ●軽度の虫歯(簡単な詰め物/インレー) ・保険診療の治療:1,000円~3,000円程度/本 ●中度の虫歯(大きな詰め物) ・保険診療の素材費例:2,000円~4,000円程度/本 ・自由診療の素材費例:ハイブリッドレジン、セラミック5~10万円程度/本 ●重度の虫歯(被せ物) ・保険診療の素材費例:4,000円~7,000円程度/本 ・自由診療の素材費例:メタルボンドポーセレン10万円程度、オールセラミック10万円/本、ジルコニア13万円程度/本 ●重度の虫歯(ブリッジ) ・保険診療の素材費例:12,000円~2万円程度/ブリッジ3本(1歯欠損)の場合 ・自費診療の素材費例:メタルボンドポーセレン10万円程度/本、ジルコニア13万円程度/本 |
虫歯の治療にかかる費用は、欠損の度合いによって大きく変わります。処置や手術にかかる費用は、基本的に保険診療の適用範囲内となりますが、いわゆる詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)に用いる素材の費用は、自由診療の範囲になる場合があります。
〈図〉詰め物(インレー)と被せ物(クラウン)の違い
① 軽度の虫歯(簡単な詰め物/インレー)
歯のいちばん表面にあるエナメル層が溶かされている程度の軽い虫歯なら、レジン(樹脂)または金属(パラジウム)を詰める程度で簡単に治療することができます。
前歯、奥歯によって費用が異なりますが、ほとんどの場合保険診療の適用範囲内となります。素材まで含めた治療費の目安は以下の通りです。
保険診療の費用(自己負担3割)の目安 |
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1本あたり1,000円~3,000円程度 ※別途、検査料などが必要な場合もある |
② 中度の虫歯(大きな詰め物)
エナメル層の下にある象牙質層まで達した虫歯は、レジンでは補えない場合もあります。その際、詰め物に金属(パラジウム)を選べば、保険診療の適用範囲内となります。前歯、奥歯によって費用は異なります。素材の目安は以下の通りです。
保険診療の素材の費用(自己負担3割)の目安 |
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1 本あたり2,000円~4,000円程度 |
パラジウム以外の素材を選ぶ場合、素材の費用は保険診療の適用範囲外(自由診療)となるため、全額自己負担となります。素材ごとの費用の目安は、以下の通りです。
自由診療で選べる素材の費用の目安 |
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●ハイブリッドレジン、セラミック:5~10万円程度(税抜/1本あたり) 歯先に透明感があるなど、自然の歯に近い見た目となる素材です。歯垢や着色にも強く、耐久性も高いです。 ●ゴールド:時価(税抜/1本あたり) 主に奥歯の詰め物として選ばれます。自然の歯に近い硬さなので、対合する歯を痛めないほか、金属アレルギーが起こりにくいといったメリットがあります。 |
③ 重度の虫歯(被せ物/クラウン)
歯髄にある神経まで達しているような重度の虫歯の場合、神経を取り除いてから、土台をつくり、そこに被せ物(クラウン)をする必要があります。
重度の虫歯になると、神経を取り除いたあとで歯の根の中を清掃する治療(根管治療)が数回にわたり必要になる場合もあるため、保険診療でも治療費に幅があります。
そこで、ここでは治療費については割愛し、被せ物の素材ごとの費用の目安を紹介しましょう。
保険診療で選べる素材の費用の目安 |
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●ハードレジン前装冠:7,000円程度/本 主に前歯の治療で用いる素材です。見た目を白くできるメリットがあります。 ●金属冠(パラジウム):4,000円~5,000円程度/本 主に奥歯の治療で用いる素材です。ハードレジンに比べ耐久性に優れています。 ●CAD/CAM 冠:5,000円~6,000円程度/本 周囲の歯が全て健在な場合の小臼歯、第一大臼歯に限られます。白い歯ですが、割れやすいという欠点があります。 |
自由診療で選べる素材の費用の目安 |
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●メタルボンドポーセレン:10万円程度(税抜/1本あたり) 金属にセラミックを吹き付けた特殊な被せ物です。耐久性に優れているほか、自然の歯に近い色をしているというメリットがあります。 ●オールセラミック:10万円程度(税抜/1本あたり) 歯先に透明感があるなど、自然の歯にもっとも近い見た目となる素材です。金属アレルギーの方に適しています。歯垢や着色にも強く、耐久性も高いです。 ●ジルコニア:13万円程度(税抜/1本あたり) オールセラミックよりさらに、透明度も耐久性も高い素材になります。 |
④ 重度の虫歯(ブリッジ)
抜いた歯の左右の歯を削り土台にして、橋渡しのような形で大きな被せ物をする処置です。
保険診療の場合、基本的にパラジウムを用いますが、前歯や支台となる第一大臼歯の場合には、「ハードレジン」と呼ばれる白い樹脂のコーティング素材を用いることも可能です。
保険診療で選べる素材の費用の目安 |
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●ハードレジン前装冠:2万円程度(ブリッジ前歯3本の場合) 前歯から第一小臼歯まで、見た目を白くできるメリットがあります。 ●金属冠(パラジウム):12,000円~15,000円程度(税込/ブリッジ全体) ハードレジンに比べ金属色のままですが、耐久性に優れています。 |
自由診療で選べる素材の費用の目安 |
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●ジルコニア:13万円程度(税抜/1本あたり) 歯先に透明感があるなど、自然の歯にもっとも近い見た目となる素材です。歯垢や着色にも強く、耐久性も高いです。ブリッジの場合は、通常3本分の費用になります。 ●メタルボンドポーセレン:10万円程度(税抜/1本あたり) 金属にセラミックを吹き付けた特殊な被せ物です。耐久性に優れているほか、自然の歯に近い色をしているというメリットがあります。ブリッジの場合は、通常3本分の費用になります。 |
(4)入れ歯(部分入れ歯/総入れ歯)
保険診療 or 自由診療 | ・保険診療の適用範囲内で製作することは可能 ・見た目と快適さが高いものは自由診療となる可能性が高い |
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費用相場 | ●保険診療の素材費用例(1床) ・部分入れ歯3,000~2万円程度、総入れ歯1~2万円程度 ●自由診療の素材費用例 ・部分入れ歯 15~25万円~程度、総入れ歯 25~50万円程度〜 |
入れ歯(義歯)について、基本的な機能を備えた物であれば、保険診療の適用範囲内で製作することができます。ただし、見た目の良さと快適さを求めると、自由診療の範囲内になる素材を利用することになります。
保険診療の適用範囲内となる義歯は、装着具(バネ)が金属製なので見た目が目立つほか、義歯の素材も樹脂なので耐久性に劣り、装着感も気になる場合が多いようです。
保険診療で選べる素材の費用の目安 |
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●ハードプラスチック製の部分入れ歯:3,000~2万円程度(1床) ●プラスチック製の総入れ歯:1~2万円程度(1床) |
一方、自由診療で選べる入れ歯になると、目立たないバネを選んだり、耐久性や装着感の良い素材を選んだりすることが可能になります。
自由診療で選べる素材の費用の目安 |
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●フレキサイト(部分入れ歯・総入れ歯):15~30万円程度(税抜) 金属のバネを使わない部分入れ歯なので、目立ちにくいのが特徴です。入れ歯を薄くつくることもできるので、装着感にも非常に優れています。 ●コバルトクロム:部分入れ歯;20~25万円程度(税抜)/総入れ歯;25~30万円程度(税抜) コバルトクロムという金属を使った部分入れ歯です。プラスチックに比べ薄くつくれるので装着感が良くなるほか、熱があごに伝わりやすいというメリットもあります。 ●チタン:総入れ歯;30~35万円程度(税抜) チタンという金属を使った入れ歯です。コバルトクロムに比べ、さらに薄く軽量につくれるので装着感が良くなるほか、熱があごに伝わりやすく、アレルギーも起こりにくいというメリットがあります。 ●ゴールド:部分入れ歯・総入れ歯;50万円~80万円程度(税抜) ゴールドの性質上、金属の味がしない、顎にピッタリとフィットするので装着感が良いなどのメリットがあります。 |
(5)インプラント
保険診療 or 自由診療 | 自由診療 |
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費用相場 | 医院によって大きく異なるが、目安は30万円〜40万円程度/本 |
ブリッジや入れ歯に比べ、ほぼ自然の歯と同様の感覚で使用できるのが、インプラント(デンタルインプラント)です。自由診療となるため、費用が高額になるのはもちろん、歯肉切開や顎骨の切削手術など、抜歯後にも手術を行う必要があるほか、治療期間も長くなるといったデメリットがあります。
インプラントの費用は、医院によって大きく異なるようですが、目安としては治療費を含め、1本あたり30万円〜40万円程度(上部の歯は別途)と考えておけば良いでしょう。
(6)抜歯(親知らずなど)
保険診療 or 自由診療 | ・基本的に保険診療(困難な手術の場合は別) |
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費用相場 | ・700〜1,800円程度/本 |
親知らずに限らず、抜歯の処置は基本的に保険診療の適用範囲内となります。
抜歯の処置にかかる費用は、歯の種類(歯根の数)によって異なりますが、1本あたり700円~1,800円程度の自己負担額(3割)となります。
これに、麻酔料などプラスアルファの費用が加算されることになります。なお、親知らずが横に生えているなど、骨を削る難しい手術を必要とする場合は、CT撮影等これ以上の費用がかかります。
(7)定期検診
保険診療 or 自由診療 | ・歯周病の予防目的であれば保険診療 ・審美目的だと自由診療 |
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費用相場 | ●保険診療の場合(3割負担) ・3,000円程度 ●自由診療の場合 ・5,000円〜1万円程度 |
歯周病の予防が目的となる定期検診であれば、基本的に保険診療の適用範囲内となります。その際の自己負担額(3割)は、だいたい3,000円前後です。レントゲン検査が必要な場合には、追加で1枚1,200円程度の費用が加算されます。
自由診療で定期検診を受ける場合の費用は、医院によって異なりますが、5,000円から1万円程度が相場と考えてもよいでしょう。
(8)マウスピースの作製
保険診療 or 自由診療 | ・歯ぎしりなどの治療目的なら保険診療 ・スポーツなどが目的の場合、自由診療 |
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費用相場 | ●保険診療の場合(3割負担) ・5,000円程度 ●自由診療の場合 ・1~2万円程度(税抜) |
歯ぎしりや顎関節症の治療目的でマウスピースを作製する場合、その費用は保険診療の適用範囲内となります。素材によって費用に差が出ますが、5,000円程度の自己負担額(3割)が目安といえるでしょう。
スポーツ用など、治療以外の目的でマウスピースを作製する場合には、自由診療の範囲となります。こちらも素材によって費用に差が出ますが、だいたい1~2万円程度(税抜)が目安といえるでしょう。
(9)ホワイトニング
保険診療 or 自由診療 | 自由診療 |
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費用相場 | オフィスホワイトニング10,000円程度 ホームホワイトニング3万円程度 |
見た目を良くしたいなど、治療以外の目的で行うホワイトニングは、基本的に自由診療の範囲となります。
ホワイトニングには、通院して行う「オフィスホワイトニング」と、歯科が提供する必要な器具(マウスピースなど)や薬液を使い、家庭で行う「ホームホワイトニング」の2種類があります。
費用の目安は、オフィスホワイトニングが1回あたり10,000円程度、ホームホワイトニングが必要な器具(上下顎トレー)は約3万円程度、薬液は1本2,000~3,000円程度(濃度による)となります。ホームホワイトニングの場合は、薬液を定期的に購入する必要があります。
歯医者を受診する際によくある保険のギモンQ&A
最後に、歯科を受診される人から質問を受けることが多い、保険関連の疑問について、まとめてお答えしましょう。
Q1.歯の種類(位置)によって保険診療が適用されない場合はあるの?
虫歯の治療の場合、インプラントを選んだり自由診療の範囲となる素材を選んだりしなければ、前歯や奥歯といった歯の種類を問わず、保険診療の適用範囲内となります。
Q2.全身麻酔など、大規模な歯科手術を行う場合、保険は適用されるの?
全身麻酔をかけるような大規模な手術をする場合でも、基本的に保険診療の適用範囲内となります。ただし、手術や全身麻酔の目的がインプラントの場合は、自由診療の範囲となります。
Q3.歯医者を掛け持ちすると、保険が適用されない場合があるってホント?
いわゆる「セカンドオピニオン」で他の歯科医の診察を受ける場合には、保険診療の適用範囲外となる可能性があります。
また、他の歯科医院で作成した入れ歯や被せ物(クラウン)を、別の歯科医院で直してもらう場合にも、作成してから一定期間内だと保険診療の適用範囲外となる可能性があります。入れ歯は作成してから6カ月以内、被せ物は作成してから2年以内が目安となります。
Q4.歯医者では、保険診療でもクレジットカード払いができるの?
診療費のクレジットカード決済に対応するかどうかは、医院の判断にゆだねられています。自由診療の場合のみクレジットカード決済に対応しているという医院は多く、保険診療もクレジットカード決済に対応している医院は、ごく少数に限られるようです。
Q5.事故で歯医者に通う場合、治療費は民間保険から下りる?
歯科の治療費を民間保険で補償できるかどうかは、契約している保険会社の判断次第といえます。自動車事故で被害を受けた場合には、補償される可能性が高いですが、それ以外の事故の場合には、まず保険会社に相談してみると良いでしょう。
なお、その他の病気やケガの場合と同様に、保険金を申請する場合には、歯科医の診断書が必要となります。診断書の作成料は自由診療の範囲となりますので、ご注意ください。
自由診療を検討する場合には、まず予算を決めてから相談しよう
全額が自己負担となる自由診療を提案される場合が多い歯科を受診する際には、治療費がどれくらいになるのか想像できず不安を感じることも多いと思います。
そこでおすすめしたいのは、受診する前に、ある程度の予算を想定しておくことです。たとえば、「前歯の治療に20万円までなら出せる」と決めておけば、自由診療の素材を提案された場合にも、判断をつけやすいのではないでしょうか。
世界的にみても日本の歯科の技術はとても高く、保険診療の適用範囲内で受けられる治療でも、生活に不便を感じることはほとんどありません。その上で、見た目や使い心地の良さを求めたい場合に検討するのが自由診療といえます。
確かに治療費は高額になりますが、それだけの価値は十分にありますので、懐事情だけでなく長期的なライフプランもあわせて考えたうえで、予算をご検討ください。