そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナーの冨士野喜子さん監修のもと、20代の貯金額の平均値や生活費、効率よくできる貯金方法を解説します。この記事を読めば、貯金に対する考え方が変わるかもしれません。
※この記事では、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査」のデータをもとに、単身世帯および二人以上世帯の20代の金融状況について解説しています。なお、この記事で紹介する貯金額は、運用や将来の備えとして蓄えられた預貯金のことで、日常的に出し入れする生活費用としての預金は含みません。
※この記事は、2022年 6月30日に公開した内容を最新情報に更新しています。
この記事の監修者
冨士野 喜子(ふじの よしこ)
ふじのFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー。
教育出版会社、外資系生命保険会社を経て2012年にFPとして独立。金融商品を取り扱わないFP事務所として、幅広い世代からの相談対応を行っている。近年は、子ども向けマネー講座、資格取得講座の講師として、金融教育に力を入れている。プライベートでは3児の母。
20代の貯金額の平均値・中央値はいくら?

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20代の人は、どのくらい貯金をしているのでしょうか。まずは、20代の貯金額の平均値や中央値を解説します。
20代の平均貯金額は161万円
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2024年に行った「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」1)によると、20代の平均金融資産(※)の保有額は161万円です。このうち、預貯金が占める金額は91万円でした。しかし、多くの人がこれほどの金額を貯金できているわけではありません。
同調査によると、金融資産を全く持っていない人は36.6%も存在します。100万円未満の人が26.3%いるため、これらを合わせると6割以上になります。平均値から考えると、少し驚く数字ではないでしょうか。平均値を取る場合、極端に大きい、または小さいデータが含まれると結果が影響されます。そのため、必ずしも実態どおりの数値が出るとは限らないのです。
※:金融資産とは、運用や将来の備えとして蓄えられた預貯金、株式、保険などのことを指します(不動産や貴金属、現金、生活費用としての預貯金は含まない)
20代の貯金額の中央値は15万円以下
より実態に近い数値を知りたいなら、中央値を確認しましょう。同調査によると、20代の金融資産保有額の中央値は15万円です。これは預貯金を含めたすべての金融資産の金額なので、預貯金のみの金額はさらに低くなるでしょう。
中央値とは、データを小さい順に並べた時に、ちょうど真ん中にくる値です。平均値とは異なり、中央値は外れ値(極端に大きいもしくは小さい値)の影響を受けないので、より実態に近い数値を把握できます。
つまり、実際には多くの20代が15万円程度の金融資産しか保有していないということです。20代の多くがあまり貯金できていないことがわかるでしょう。
20代の生活費はいくら?

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これから貯金をしようと思っている場合、はじめに生活コストがどれくらいかかるのかを知ることは重要です。以下では、20代の生活費やライフイベントにかかる費用を解説します。
20代一人暮らしの生活費
20代は、一人暮らしを始める人が多い年代でしょう。そこでここでは、一人暮らしの生活費について紹介します。総務省の2024年の「家計調査」2)によると、34歳以下の単身者の平均消費支出は月17万6,366円です。
20代のみのデータがないため、実際の数字と多少の差はあるかもしれませんが、1つの目安としては参考となる数字です。
ひと月あたりの支出の内訳は、以下のとおりです。
〈表〉ひと月あたりの平均支出額(34歳以下の単身者世帯)
項目 | 金額 |
---|---|
住居 | 40,146円 |
食料 | 40,734円 |
光熱・水道 | 8,999円 |
被服及び履物 | 7,804円 |
家具・家事用品 | 4,580円 |
保健医療 | 8,423円 |
交通・通信 | 18,446円(うち通信費5,789円) |
教育娯楽 | 24,230円 |
交際費 | 9,696円 |
その他支出(雑費など) | 13,308円 |
住居については、社宅や実家暮らしなどの理由で自己負担がない人も含まれた金額のため、やや低くなっています。一般的に、家賃の支払いは給与の1/4~1/3を目安にするといわれています。新卒の初任給は20万円前後なので、20代で一人暮らしをしている人の家賃はおおよそ5〜7万円だと考えられます。
20代のライフイベントにかかる費用
20代で迎える可能性のあるライフイベントにかかる費用も考えてみましょう。結婚と出産、マイホームの購入に分けて解説します。それぞれの大まかな費用は、以下のとおりです。
- 結婚:約454万3)
- 出産:約50万円4)
- マイホームの購入:約3,600万~5,300万円5)
結婚の費用は、結納・婚約から新婚旅行までにかかった費用の総額です。
出産の費用には、主に病院での入院費や分娩料などが含まれています。ただし、出産育児一時金を利用すれば、一児につき50万円が支給される6)ので、負担を軽減できます。
マイホームの購入費用は中古・新築、地域によって大きく変わるので、目安程度に考えておくとよいでしょう。
20代は貯金しなくてもいい? 今が貯め時な理由

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「20代はまだ若いから、貯金しなくてもいいんでしょう?」
「収入も安定していないし、今は貯金をしないでおこう」
上記のような考えを持つ人も、きっといることでしょう。確かに、20代は収入がまだ低いのでほかの年代と比べて貯金は難しいかもしれません。
しかし、20代は貯金を始めるのに適した年代であるといわれています。20代はまだ家族やマイホームを持つ人が少なく、お金の使い道を比較的自由に決められるためです。結婚や出産などのライフイベントのあとは、家族のためにお金を使う場面も増えてくるでしょう。
特に、実家暮らしの人は一人暮らしの人よりも生活費を抑えられるため、今のうちに貯金をしておくことが得策です。また、20代はほかの年代よりも退職までに長い時間が残されているため、コツコツと投資をすれば将来のための費用を効率よく準備することも可能です。
以下の記事では、貯金がゼロの状態から資産形成をする方法を徹底解説しています。若いうちからしっかり貯金や資産形成をしたい人は、ぜひご覧ください。
【関連記事】貯金ゼロから始める20代の貯金術について、詳しくはコチラ
20代が効率的に貯金・節約する方法5選

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20代の人が効率的に貯金を行うには、以下5つのポイントを押さえることが重要です。
以下では、それぞれ詳しく解説します。
①貯金専用の口座で貯金をする
給与振込用の口座と貯金用の口座は、可能であれば分けましょう。給与口座で貯金をしようとすると、生活費と貯金がそれぞれいくらなのかを把握しづらいため、ついついお金を使ってしまいがちです。貯金用の口座を給与振込の口座と別にすることで、貯金用のお金に手をつけないで済むでしょう。
貯金用の口座は、定期預金口座がおすすめです。定期預金口座なら一定期間お金を引き出せないため、半ば強制的に貯金ができます。ボーナスやまとまったお金が手元にある時に利用するとよいでしょう。なお、少額からでも預け入れすることができます。
また、毎月定額をコツコツ貯金していくなら「自動積立預金」がおすすめです。積立金額は手取りの10%程度を目安に設定すると無理なく継続できるでしょう。
②固定費を削減する
そもそも貯金するお金がない人は、まず固定費の見直しを行いましょう。家計をじわじわと圧迫する固定費には、以下のようなものがあります。
- 家賃
- 水道、光熱費
- 通信費
- 保険料
- 車のローン、駐車場代
- サブスク代 など
固定費の削減は、節約の中でも効果が大きいです。食費などの毎月増減する変動費よりも、固定費は一度見直しをすれば、毎月必ず支出が減るためです。
無理なく固定費を減らすには、その固定費の必要性を考えるとよいでしょう。不要なサブスクや、安いものに乗り換えてもサービスの品質が大きく変わらない携帯電話料金は、削減しやすい項目です。保険料や光熱費なども、一度契約しているプランの内容を確認してみましょう。
【関連記事】すぐにできる家計の見直し術について、詳しくはコチラ
③家計簿をつける

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貯金をする場合は、収入と支出のバランスを把握するために、家計簿をつけましょう。
毎月何にいくら使ったのか思い出せない人は多いのではないでしょうか。せっかく節約をしようとしても、どの項目にいくらかかったのかを把握できなければその効果は薄くなってしまいます。
継続して家計簿をつけるには、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
- 毎日つけなければいけないという意識を捨てる
- 細かい内訳は気にせずざっくり分類をする
- 計算しやすいよう1円以下は切り捨てる
- 銀行やクレジットカードと連携できる家計簿アプリを使う
家計簿と聞くと、1円単位で細かく記録するイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、最初から細かくつけようとすると、挫折の原因になります。まずは、ざっくりでもよいので、家計簿をつける習慣づくりが大切です。
また、家計簿は定期的に見直して、何にいくらお金を使っているかを確認しましょう。振り返ってみて、無駄だと思う箇所を見つけたら、その部分が節約の余地のある箇所です。
【関連記事】FPが教える! 袋分け家計簿のやり方について、詳しくはコチラ
④自炊をする
仕事が忙しいと、自炊する気が起こらず外食に頼りがちでしょう。しかし、頻繁に外食をすると、家計を圧迫します。コンビニやスーパーの弁当も、自炊に比べると割高です。
外食に頼りがちな人は、まず週に数回の自炊を始めてみましょう。自炊をすれば、外食より量の多い食事を安い金額で食べられます。
食べ物だけでなく、飲み物も自宅でつくるようにすればさらに節約効果は上がります。缶コーヒーやお茶をよく買う人は、水筒を持ち歩いてみましょう。缶コーヒーを1日1本飲む人なら、それだけで月3,000〜5,000円程度の節約効果を得られます。
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⑤資産運用をする
貯金方法とはやや異なりますが、資産を増やす上では20代のうちから将来のために株取引や資産運用をするのもおすすめです。特に、一人暮らしを考えていたり、結婚や出産を考えていたりする人は将来まとまったお金が必要になります。20代のうちからコツコツ資産運用を行い、資産を増やしましょう。
20代におすすめの資産運用方法は、以下の4つです。
- 投資信託
- 株式投資
- 国内債券取引
- 貯蓄型保険
資産運用をしっかり行えば、20代のうちに1,000万円を貯金することも可能です。以下の記事では、20代が貯金1,000万を貯めるための手段を解説しているので、併せてご覧ください。
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ライフプランに合わせて貯金をしよう

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20代のうちは給与が少なく、貯金は難しいと考える人も多いでしょう。しかし、20代はほかの年代よりも独身の人や子どもがいない人が多く、お金の使い道を自分で決めやすいため、貯金を始めるのに適した時期でもあります。実家暮らしの場合には生活コストも抑えられるため、より貯金もしやすいでしょう。
20代から貯金を始めたい人は、貯金専用の口座をつくり、家計簿をつけながら節約を始めてみましょう。資産に余裕ができたら、資産運用を始めるのもおすすめです。20代のうちから貯金するクセをつけ、将来の不安を解消しましょう。
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