ただ、より多くの人が育児しやすい環境を整えるため、2022年4月に育児・介護休業法が改正され、これまでよりも育休の開始時期や期間を自由に設定できるようになりました。また、2025年にはさらに改正が予定されています。
そこでこの記事では、最新の制度内容を踏まえて、現在の男性の育休取得期間の平均はどれくらいなのか、男性の育休がいつから取得開始できるのか、また取得できるのはどのくらいの長さなのか、その期間について法改正で変わるポイントも含めて詳しく解説します。
※この記事は、2022年2月2日に公開した内容を最新情報に更新しています。
男性の育休期間について、すぐに確認したい場合は以下のまとめをチェック!
▼この記事のまとめ
- 男性の育休取得期間の平均は46.5日(610社対象調査より)
- 育休を取得している男性のうち、期間が2週間未満の割合は約40%
- 基本的に、男性の育休取得期間は、出産予定日から子どもが1歳になる誕生日の前日までで、2回に分割できる
- パパ・ママ育休プラスを利用すれば、1歳2カ月まで延長が可能
- 産後パパ育休(出生時育児休業)を利用すると、出生後8週間のうち、4週間分を2回に分割して取得することも可能
そもそも育休とは
育休の期間について説明する前に、まずは「育休」がどんな制度なのかおさらいしておきましょう。
「育休」とは、育児・介護休業法によって定められた休業制度のことで、正式には育児休業といいます。これに対し、よく聞く育児休暇とは、各企業が定める育児のために取得できる休暇のことを指します。
以下、この記事では「育児休業=育休」として解説していきます。
基本的に育休は男女を問わず、企業に働いている人であれば誰でも取得することができる制度で、原則として1年間取得することができます1)。この期間中、一定の条件を満たすと「育児休業給付金」の支給を受けることができるなど、金銭的な補助も受けられます。
育休のメリットを最大限に享受するには、どんな制度なのか、またどんな手続きが必要なのか把握しておくことが大切です。以下の記事では育休制度について詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
【関連記事】男性の育休に関する様々な制度や、メリットについて詳しくはコチラ
参考資料
男性の育休取得期間の平均はどのくらい?
それでは、実際に男性が取得している育休期間がどれくらいなのかを見ていきましょう。
厚生労働省イクメンプロジェクトの「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によると、男性の育休平均取得日数は46.5日でした2)。これは610社を対象としたアンケート調査なので、参考値ですが、平均期間は1カ月強と考えていいかもしれません。
一方で、厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」3)によると、育休を取得した男性のうち、育休期間が「5日未満」だった人の割合は15.7%、「5日~2週間未満」の人は22.0%。つまり、およそ40%が2週間未満となっているのです。
男性の育休取得率は約3割
また、同調査によれば男性の育休取得率は30.1%です。令和3年度の調査では13.97%、令和4年度の調査では17.13%だったため、ここ数年で確実に増加していっていることがわかります。
〈図〉男性の育休取得率の推移
政府は2025年までに育休取得率50%の達成を目指しています。令和5年度は取得率が大幅に増加したため、今後も順調に取得率が伸びていくと予想できます。
一方、取得しているとはいえ、取得期間についてはまだ十分ではないといえるでしょう。
2022年の法改正は、「これまでの制度では職場への影響を気にして、育休を長期間取得できない」といった声を反映したものです。後述する育休の分割や、産後パパ育休の創設により、2023年度以降、取得期間は少しずつ延びてきています。
男性が育休を取得できる期間はいつからいつまで?
男性の育休期間は、原則として1年間
それでは、男性はいつからいつまで育休を取得できるのでしょうか?
男女ともに取得できるのは、原則として子どもが1歳になるまでの1年間です1)。男性の場合には配偶者の出産予定日から、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で取得することができます。
女性の場合は出生後、8週間の産後休業の後に育休期間が始まるのに対し、男性は出生直後(または出産予定日)から育休期間が始まります。この違いを覚えておくとよいでしょう。
〈図〉夫婦の育児休業期間の違い
【2022年法改正】育休期間を2分割できるようになった
また、2022年4月に大幅に改正された育児・介護休業法によって取得できるタイミングに変化があり、これまでより柔軟に育休を取得することができるようになりました4)。
改正前は、原則として育休期間を分割することができませんでしたが、男女ともに子どもが1歳になるまでの育休期間を2分割することができるようになったのです。これは、前述のとおり、「長期にわたって休業することによる職場への影響などを懸念して取得できない」といった声や「育休後の職場復帰をスムーズにしたい」という声を取り入れた改正となっています。
〈図〉法改正で可能になった、育児休業期間の分割取得例
【2022年法改正】「産後パパ育休」で産後直後にも取得できる
さらに、2022年10月から産後パパ育休(出生時育児休業)という制度もスタートしました4)。
それまであった「パパ休暇」という制度の代わりで、女性の産後休業の期間(出生後8週間以内)に、男性は最長4週間まで分割して2回休業できるようになったのです。
育休とは別に取得が可能なため、育休を2分割すれば、最大で4分割して育休期間が取れることになります。具体的な取得イメージを見てみましょう。
〈図〉産後パパ育休と育休取得のイメージ
なお、産後パパ育休の期間は、育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象となっているほか、一定の条件(※)を満たせば、就業も可能です。職場への配慮を考える場合、利用しやすい制度といえるでしょう。
また、産後パパ育休は休業2週間前までの申請で取得が可能である点も特長です。育休の場合、休業開始の1カ月前までに申し出を行わなければいけないのですが、産後パパ育休を利用すれば、出産予定日がずれ込んだ時でも、育休のスタート日をより柔軟に設定することができます。ただし、分割で2回取得する場合、申請は初回にまとめて行う必要があるのでその点は注意しましょう。
※:「労使協定の締結」「休業前の合意」「就業可能日数等の上限あり」など。詳しくは厚生労働省のサイトでご確認ください。
男性でも最長2歳まで育休延長の申請は可能
ここまで育休期間は子どもが1歳になるまでであることを前提に説明をしてきましたが、保育施設に入所できないなどの場合は、男女問わず、最長で子どもが2歳になるまで延長することが可能です5)。
育休延長に関しては、以下の記事で条件や手続きなどを詳しく紹介していますので、ご参照ください。
【関連記事】育児休業の延長はいつまで? 条件や手続き、申請書類や給付金についてまるっと解説
パパ・ママ育休プラスなら、1歳2カ月まで延長できる
なお、保育施設に入所できないといった状況でなくても、育休を延長できる制度もあります。それが「パパ・ママ育休プラス」です6)。
パパ・ママ育休プラスは、夫婦両方が育休を取得することを条件として、原則子どもが1歳になるまでの育休を1歳2カ月になるまで延長できる制度です。
〈図〉パパ・ママ育休プラスの取得例
注意点としては、1人あたりの育休取得期間は変わらず最長1年間となっているので、女性の育休開始日と男性の育休開始日をずらす必要があります。
パパ・ママ育休プラスの取得条件は以下のとおりです。
【パパ・ママ育休プラスの取得条件】
①配偶者が、子どもが1歳に達するまでに育児休業を取得していること
②本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前であること
③本人の育児休業開始予定日は、配偶者が取得している育児休業の初日以降であること
具体的には、以下のようなパターンで育休を取得することが可能です。
① 夫婦が一緒に、長い期間育休を取りたい場合
1人あたりの育休期間が最長1年に収まる期間であれば、育休開始のタイミングをずらすことでパパ・ママ育休プラスが適用されます。
② 妻の復職のタイミングで、夫が交代して育休を取りたい場合
子どもが1歳になる誕生日の前日までに育休を開始すれば、夫婦で期間が被っていなくてもパパ・ママ育休プラスが適用されます。
〈図〉妻と夫の取得タイミングがズレる時のイメージ
③ 祖父母などが子どもの面倒を見てくれる期間は、夫婦ともに働き、その後交代で育休を取りたい場合
同じく、子どもが1歳になる誕生日の前日までに育休を開始すれば、夫婦で期間が被っておらず、間が空いていてもパパ・ママ育休プラスが適用されます。
参考資料
【2025年法改正】男性の育休取得率の目標設定と公表が義務づけられる
2025年4月1日から育児・介護休業法が改正され、特定の企業に対し、育休取得率に関する以下の手続きが義務づけられます7)。
〈表〉(2025年4月施行)育児・介護休業法の主な改正ポイント
数値目標の設定 | 従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定が必要 |
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育休取得等の状況把握 | 従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に育児休業取得状況や労働時間の状況について把握が必要(PDCAサイクルの実施) |
育休取得状況の公表 | 従業員数300人超の企業は、育児休業等の取得状況の公表が必要(※) |
※:公表する数値は前年度の数値です。「①育児休業等の取得割合=育児休業等をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数」「②育児休業等と育児目的休暇の取得割合=育児休業等をした男性労働者の数+育児目的休暇を利用した男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数」の割合のどちらかを公表しなければなりません。
従業員100人超の企業は、育休の取得状況を把握し、数値目標を設定しなければなりません。また、従業員300人超の企業は、状況把握や目標設定に加えて、育休取得状況の公表が必要になります。育休取得率の公表は、現行制度では1,000人超の企業に対して義務づけられていますが、対象が拡大されます。
企業側への義務化が進むことで、今後より育休を取得しやすい社会になっていくことが期待されます。
また、このほかにも男女問わず、残業免除の対象の拡大、育児のためのテレワーク導入の努力義務化、子どものための看護休暇制度の拡充なども行われる予定です。詳しくは以下の記事で紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
【関連記事】男性の育休は何日まで取れる?取得するメリットや育休中の給与について解説
男性の育休開始時期は変更できる?
ここまで男性の育休がいつからいつまで取得できるのか、その期間について説明してきましたが、「出産予定日から」という開始のタイミングについて、「実際の出産日がずれた場合はどうなるのだろう?」と疑問に思う人もいるでしょう。
基本的には、育休の開始日は会社に申請することで変更が可能なため、繰り上げや繰り下げができます。出産予定日から実際の出産日が前後した際のそれぞれの場合について説明します。
出産予定日より前に出産した場合
会社に申請をすることにより、育休の取得開始日を繰り上げることが可能です。
しかし、申請の期限が「変更後の育休開始希望日の1週間前まで」と定められており、期限を過ぎてしまった場合には、申請を提出した日の翌日から1週間以内の期間で、会社側が開始日を指定することができます。
〈図〉男性の育休開始日繰り上げのイメージ
出産予定日より後に出産した場合
会社との相談次第で、育休の取得開始日を繰り下げることも可能ですが、繰り下げを行わない場合には、当初の出産予定日が育休の開始日になります。
この場合も「子どもが1歳になる誕生日の前日」までという育休の期間は変わらないため、最長で育休を取得すると休業が1年以上になることもあります。
ただし、育児休業給付金については出産日からが対象となるため、出産予定日から育休を開始していても、実際の出産日までの間は給付の対象とならない点に注意しましょう。
産後パパ育休を取得予定だった場合
前述で紹介した産後パパ育休は、出産直後の時期が対象となる制度です。そのため、出産が予定日からずれた場合には、産後パパ育休の1回目の対象期間も変更になります。出産の時期がずれた場合、基本は休業開始1週間前の申出で変更することが可能です4)。
なお、対象となる期間は以下のとおりです。
- 出産予定日より前に出産した場合
出生日から出産予定日の8週間後までが対象
- 出産予定日より後に出産した場合
出産予定日から出生日の8週間後までが対象
法改正でさらに取得しやすくなる育休を積極的に利用しよう
度重なる育休関連の法改正の背景には、なかなか男性の育休取得が進まないという事情があります。しかしながら、2022年の法改正から、だんだんとその状況も変わりつつあり、今まさに日本全体で育休に関する意識改革が進んでいる最中です。
男性が育休を取得すれば、夫婦で育児をしやすくなり、ワンオペ育児になる事態を避けることができます。ぜひ改正内容を把握した上で、自分たちのライフスタイルに合った育休を取得できるよう準備していきましょう。