昨今、男性の育休取得が度々話題となりますが、実際の取得率は約1割程度に留まっています。また、取得率だけでなく取得する期間についても、まだまだ女性と比べると短いのが現状です。

ただ、より多くの人が育児しやすい環境を整えるため、2022年4月に育児・介護休業法が改正され、これまでよりも育休の開始時期や期間を自由に設定できるようになりました。

そこでこの記事では、最新の制度内容を踏まえて、現在の男性の育休取得期間の平均はどれくらいなのか、男性の育休がいつから取得開始できるのか、また取得できるのはどのくらいの長さなのか、その期間について法改正で変わるポイントも含めて詳しく解説します。

※この記事は、2023年7月21日に更新しています。

男性の育休期間について、すぐに確認したい場合は以下のまとめをチェック!

▼この記事のまとめ

  • 男性の育休取得期間の平均は41日(141社対象調査より)
  • 育休を取得している男性のうち、期間が2週間未満の割合は50%以上
  • 基本的に、男性の育休取得期間は、出産予定日から子どもが1歳になる誕生日の前日までで、2回に分割できる
  • パパ・ママ育休プラスを利用すれば、1歳2カ月まで延長が可能
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)を利用すると、出生後8週間のうち、4週間分を2回に分割して取得することも可能

この記事の監修者

藤井 亜也(ふじい あや)

ファイナンシャルプランナー(CFP、FP1級)。独立系FPとして幅広い年代のお客様の相談に対応。一人一人に心を込めて、最適なプランを提案しライフプランを実現。個別相談、セミナー、執筆・監修など幅広く活動中。著書『理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方』(三恵社)、ラジオ番組『未来のためのお金のハナシ』(FM川口)。

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そもそも育休とは

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

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育休の期間について説明する前に、まずは「育休」がどんな制度なのかおさらいしておきましょう。

「育休」とは、育児・介護休業法によって定められた休業制度のことで、正式には育児休業といいます。これに対し、よく聞く育児休暇とは、各企業が定める育児のために取得できる休暇のことを指します。

以下、この記事では「育児休業=育休」として解説していきます。

基本的に育休は男女を問わず、企業に働いている人であれば誰でも取得することができる制度で、原則として1年間取得することができます1)。この期間中、一定の条件を満たすと「育児休業給付金」の支給を受けることができるなど、金銭的な補助も受けられます。

育休のメリットを最大限に享受するには、どんな制度なのか、またどんな手続きが必要なのか把握しておくことが大切です。以下の記事では育休制度について詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

【関連記事】男性の育休に関する様々な制度や、メリットについて詳しくはコチラ

男性の育休取得期間の平均はどのくらい?

画像: 画像:iStock.com/ Yuji_Karaki

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それでは、実際に男性が取得している育休期間がどれくらいなのかを見ていきましょう。

厚生労働省イクメンプロジェクトの「男性育休推進企業実態調査2022」によると、2022年度の男性の育休平均取得日数は41日でした2)。これは141社を対象としたアンケート調査なので、参考値でしかありませんが、平均期間は1カ月強と考えていいかもしれません。

一方で、厚生労働省の令和3年度雇用均等基本調査3)によると、育休を取得した男性のうち、育休期間が「5日未満」だった人の割合は25.0%、「5日~2週間未満」の人は26.5%。つまり、50%以上が2週間未満となっているのです。

また、同調査によれば男性の育休取得率は13.97%です。令和元年の調査では7.48%、令和2年の調査では12.65%だったため、割合としてはまだ少ないものの、確実に増加していっていることがわかります。

一方、取得しているとはいえ、取得期間についてはまだ十分ではないといえるでしょう。

2022年の法改正は、「これまでの制度では職場への影響を気にして、育休を長期間取得できない」といった声を反映したものです。後述する育休の分割や、産後パパ育休の創設により、2023年度以降、取得期間は延びることが期待されます。

男性が育休を取得できる期間はいつからいつまで?

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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男性の育休期間は、原則として1年間

それでは、男性はいつからいつまで育休を取得できるのでしょうか?

男女ともに取得できるのは、原則として子どもが1歳になるまでの1年間です1)男性の場合には配偶者の出産予定日から、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で取得することができます。

女性の場合は出生後、8週間の産後休業の後に育休期間が始まるのに対し、男性は出生直後(または出産予定日)から育休期間が始まります。この違いを覚えておくとよいでしょう。

〈図〉夫婦の育児休業期間の違い

画像: 男性の育休期間は、原則として1年間

【2022年法改正】育休期間を2分割できるようになった

また、2022年4月に大幅に改正された育児・介護休業法によって取得できるタイミングに変化があり、これまでより柔軟に育休を取得することができるようになりました4)

改正前は、原則として育休期間を分割することができませんでしたが、男女ともに子どもが1歳になるまでの育休期間を2分割することができるようになったのです。これは、前述のとおり、「長期にわたって休業することによる職場への影響などを懸念して取得できない」といった声や「育休後の職場復帰をスムーズにしたい」という声を取り入れた改正となっています。

〈図〉法改正で可能になった、育児休業期間の分割取得例

画像: 【2022年法改正】育休期間を2分割できるようになった

【2022年法改正】「産後パパ育休」で産後直後にも取得できる

さらに今回の法改正により、2022年10月から産後パパ育休(出生時育児休業)という制度もスタートしました3)

それまであった「パパ休暇」という制度の代わりで、女性の産後休業の期間(出生後8週間以内)に、男性は最長4週間まで分割して2回休業できるようになったのです。

育休とは別に取得が可能なため、育休を2分割すれば、最大で4分割して育休期間が取れることになります。具体的な取得イメージを見てみましょう。

〈図〉産後パパ育休と育休取得のイメージ

画像: 【2022年法改正】「産後パパ育休」で産後直後にも取得できる

なお、産後パパ育休の期間は、育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象となっているほか、一定の条件を満たせば、就業も可能です。職場への配慮を考える場合、利用しやすい制度といえるでしょう。

また、産後パパ育休は休業2週間前までの申請で取得が可能である点も特長です。育休の場合、休業開始の1カ月前までに申し出を行わなければいけないのですが、産後パパ育休を利用すれば、出産予定日がずれ込んだ時でも、育休のスタート日をより柔軟に設定することができます。ただし、分割で2回取得する場合、申請は初回にまとめて行う必要があるのでその点は注意しましょう。

※「労使協定の締結」「休業前の合意」「就業可能日数等の上限あり」など。詳しくは厚生労働省のサイトでご確認ください。

男性でも最長2歳まで育休延長の申請は可能

ここまで育休期間は子どもが1歳になるまでであることを前提に説明をしてきましたが、保育施設に入所できないなどの場合は、男女問わず、最長で子どもが2歳になるまで延長することが可能です5)

育休延長に関しては、以下の記事で条件や手続きなどを詳しく紹介していますので、ご参照ください。

【関連記事】育児休業の延長はいつまで? 条件や手続き、申請書類や給付金についてまるっと解説

パパ・ママ育休プラスなら、1歳2カ月まで延長できる

なお、保育施設に入所できないといった状況でなくても、育休を延長できる制度もあります。それが「パパ・ママ育休プラス」です6)

パパ・ママ育休プラスは、夫婦両方が育休を取得することを条件として、原則子どもが1歳になるまでの育休を1歳2カ月になるまで延長できる制度です。

〈図〉パパ・ママ育休プラスの取得例

画像1: パパ・ママ育休プラスなら、1歳2カ月まで延長できる

注意点としては、1人あたりの育休取得期間は変わらず最長1年間となっているので、女性の育休開始日と男性の育休開始日をずらす必要があります。

パパ・ママ育休プラスの取得条件は以下のとおりです。

①配偶者が、子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
②本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
③本人の育児休業開始予定日は、配偶者が取得している育児休業の初日以降であること

具体的には、以下のようなパターンで育休を取得することが可能です。

① 夫婦が一緒に、長い期間育休を取りたい場合

1人あたりの育休期間が最長1年に収まる期間であれば、育休開始のタイミングをずらすことでパパ・ママ育休プラスが適用されます。

② 妻の復職のタイミングで、夫が交代して育休を取りたい場合

子どもが1歳になる誕生日の前日までに育休を開始すれば、夫婦で期間が被っていなくてもパパ・ママ育休プラスが適用されます。

〈図〉妻と夫の取得タイミングがズレる時のイメージ

画像2: パパ・ママ育休プラスなら、1歳2カ月まで延長できる

③ 祖父母などが子どもの面倒を見てくれる期間は、夫婦ともに働き、その後交代で育休を取りたい場合

同じく、子どもが1歳になる誕生日の前日までに育休を開始すれば、夫婦で期間が被っておらず、間が空いていてもパパ・ママ育休プラスが適用されます。

男性の育休開始時期は変更できる?

画像: 画像:iStock.com/Yue_

画像:iStock.com/Yue_

ここまで男性の育休がいつからいつまで取得できるのか、その期間について説明してきましたが、「出産予定日から」という開始のタイミングについて、「実際の出産日がずれた場合はどうなるのだろう?」と疑問に思う人もいるでしょう。

基本的には、育休の開始日は会社に申請することで変更が可能なため、繰り上げや繰り下げができます。出産予定日から実際の出産日が前後した際のそれぞれの場合について説明します。

出産予定日より前に出産した場合

会社に申請をすることにより、育休の取得開始日を繰り上げることが可能です。

しかし、申請の期限が「変更後の育休開始希望日の1週間前まで」と定められており、期限を過ぎてしまった場合には、申請を提出した日の翌日から1週間以内の期間で、会社側が開始日を指定することができます。

〈図〉男性の育休開始日繰り上げのイメージ

画像: 出産予定日より前に出産した場合

出産予定日より後に出産した場合

会社との相談次第で、育休の取得開始日を繰り下げることも可能ですが、繰り下げを行わない場合には、当初の出産予定日が育休の開始日になります。

この場合も「子どもが1歳になる誕生日の前日」までという育休の期間は変わらないため、最長で育休を取得すると休業が1年以上になることもあります。

ただし、育児休業給付金については出産日からが対象となるため、出産予定日から育休を開始していても、実際の出産日までの間は給付の対象とならない点に注意しましょう。

産後パパ育休を取得予定だった場合

前述で紹介した産後パパ育休は、出産直後の時期が対象となる制度です。そのため、出産が予定日からずれた場合には、産後パパ育休の1回目の対象期間も変更になります。出産の時期がずれた場合、基本は休業開始1週間前の申出で変更することが可能です4)

なお、対象となる期間は以下のとおりです。

  • 出産予定日より前に出産した場合
    出生日から出産予定日の8週間後までが対象
  • 出産予定日より後に出産した場合
    出産予定日から出生日の8週間後までが対象

法改正で取得しやすくなった育休を積極的に利用しよう

今回の法改正が実施されたのは、なかなか男性の育休取得が進まないという背景があります。そのため、改正ポイントである育休の分割取得や産後パパ育休の創設により、かなり取得しやすい環境が進んだといえるでしょう。

また、法改正では企業側に対して、労働者に育休取得を勧めることを義務化するなど、育休制度を利用しやすくするための配慮もされています。

男性が育休を取得すれば、夫婦で育児をしやすくなり、ワンオペ育児になる事態を避けることができます。ぜひ改正内容を把握した上で、自分たちのライフスタイルに合った育休を取得できるよう準備していきましょう。

【関連記事】男性の育休期間中の給与はどうなる? 詳しい解説はコチラ

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