そこで、日々の生活のなかでできる水道代の節約術を、節約アドバイザーの和田由貴さん監修のもと、ご紹介します。すぐにでもできるテクニックばかりなので、ぜひ実践してみてください。
なお、世の中の水道代の平均に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。地域別での相場もご紹介しているので、「ウチの水道代は高いのかな?」と思った人は、併せて読んでみてください。
※この記事は、2022年8月30日に更新しています。
※この記事では、「上下水道料金」を「水道代」と表現しています。
この記事の監修者
和田 由貴(わだ ゆうき)
節約アドバイザー・消費生活アドバイザー・家電製品アドバイザー・食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。「節約は、無理をしないで楽しく!」をモットーに、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。
水道代が最もかかる場面は?
具体的な節約方法をご紹介する前に、まずは水道代を節約するためには、どのような場面で積極的に節水するべきかを考えてみましょう。
日常生活のなかで水を使う機会はいろいろありますが、使用量が多い場面を知ることで、節約のポイントが見えてきます。
使用水量の4割を占めるのは「お風呂」
以下のグラフは東京都水道局の調査から導き出されたもので、使用される水量が多い日常場面が示されています。
〈図〉家庭での水道使用量の割合
最も水を使うのは「お風呂」です。お風呂は毎日のことですし、湯船にお湯を溜めたり、シャワーを使ったりすることから、その水量の多さに納得できるのではないでしょうか。特に一人暮らしで料理や洗濯を頻繁にしない人の場合などは、炊事や洗濯の割合が減り、さらにお風呂による使用量の割合が増加します。
続く2番目は「トイレ」です。トイレの水を「大」で流すと、平均15~16Lもの水が使われます。1日数回トイレに入ることを考えると、想像以上の水の使用量になっているかもしれません。
参考資料
【基本編】水道代節約のためには何をしたらいい?
それでは、水道代を節約するにあたって押さえておきたい基本を確認していきましょう。水を使う場所にかかわらず、少し意識するだけでも節約につながります。
基本1:小まめに水を止める
水を使わない時は止める。これは水道代節約の鉄則です。
蛇口を最大まで開いておくと、1分間で12L程度の水が流れます1)。歯を磨いている間、お皿を洗っている間、髪を洗っている間など、水やお湯を出しっぱなしにしてしまうことがかなりの無駄遣いになっている可能性があります。そういった場合、水を小まめに止める習慣をつけるだけで、水道代を節約できます。
基本2:ガス代もかかる「お湯の使いすぎ」に注意する
実はお湯の価格は水に比べて約3倍高いといわれています。
その理由は、お湯を沸かすためにガス代もかかってしまうからです。水の使用量を気にしていても、その水をお湯として使っていた場合、「水道代」だけではなく「ガス代」にも影響が出てしまいます。「節約」を目的とするなら、お湯の使用量を減らすということもポイントになってきます。
注意したいのは、「ぬるいお湯」でも、沸かしていることに変わりはないということです。たとえば、キッチンや洗面所に多い混合水栓(レバーを傾ける向きで水とお湯が切り替わるタイプの蛇口)は、真ん中にしていてもぬるいお湯が出てくる場合があります。意図していなくても、(水の3倍のお金がかかる)お湯を使っているということがあるのです。
それでは続いて実践編です。家庭で使う水量が多い順に場面ごとで節約ポイントをご紹介していきます。
【実践編】お風呂での節約ポイント
ここからは、家の中の場所ごとに水道代の節約ポイントを確認していきましょう。まずは、前述したように最も家庭の中で水の使用量が多い「お風呂」です。
「浴槽」と「シャワー」を“正しく”使い分ける
浴槽にお湯を溜めるか、シャワーだけで済ませるか、どちらのほうが節約になるのか悩む人も多いと思います。判断のポイントは、シャワーをどのくらい使うか、です。
シャワーを最大の水量で流し続けると、16分間程度で浴槽1杯分のお湯が流れます(一般的な浴槽200Lの場合)。そのため、一人暮らしで16分間より短い時間しかシャワーを使わず、お湯に浸からないのであれば、シャワーだけにしたほうが節約になります。
一方、家族がいて明らかにシャワーを使う時間が16分間を上回るようであれば、浴槽にお湯を溜めて、髪を洗う時はシャワー、体を洗う時は浴槽のお湯といったように使い分けると、節約につながります。
経済産業省のデータ2)によると、毎日1分間、45℃のシャワーを使う時間を短縮した場合、年間の節約額は以下になるといいます。
〈表〉45℃のシャワーを1分間短縮した場合の年間の節約額
水道代 | 約1,140円 |
---|---|
ガス代 | 約2,070円 |
合計 | 約3,210円 |
毎日たった1分間シャワーを止めるだけで、年間3,000円ほど節約できるのです。止める時間を延ばせればさらなる節約につながります。
浴槽のお湯は「人が入ってちょうどいい量」にする
人が入った時にあふれるほどのお湯を浴槽に溜めておくのは、節約の観点からするともったいないことです。意外に見落としがちですが、人が入っていない状態では「少ない」と感じる程度の水の量でも十分な場合が多いものです。
前述したように、お風呂は最も使う水量の多い場面ですし、お湯は水の3倍コストがかかります。常にお湯を使うお風呂で節水を意識するだけでも、水道代だけでなくガス代までもが大きく変わるでしょう。
【実践編】トイレでの節約ポイント
そもそもトイレはお湯を使わないので、水道代だけでガス代はかかりません。水道代の節約ポイントは、以下の2点です。
洗浄レバーの「大」「小」は“正しく”使い分ける
トイレの洗浄レバーを「大」「小」どちらに傾けるかで、流れる水の量が変わります。もちろん「小」のほうが少ないので節水にはなるのですが、気をつけたいのはどちらを使うかの基準です。
「大」「小」の判断基準は、実は「液体以外を流すかどうか」なのです。つまり、トイレットペーパーを流す際は基本的には「大」を使う必要があります。
このような基準になっているのは、詰まりのリスクを抑えながら節水するためです。「大」を使うと、1回に15~16Lもの水が流れるのですが、それは下水管の先までトイレットペーパーを流す必要があるからです。節約を意識するあまり、使い分けを間違え、修理代がかかるようなことがあっては意味がありません。
建て替えなどのタイミングでは「節水タイプ」トイレを選ぶ
もし、家を建てたり住み替えたりといった住居の大きな変化があるなら、節水タイプのトイレを選択しましょう。トイレ自体の性能によって、日常的に節約できるようになります。
【実践編】キッチンでの節約ポイント
キッチンで消費される水のほとんどは、洗いものに使われています。特に油汚れのひどい食器は、汚れをすっきり落とせることから、お湯を使っている人も多いのではないでしょうか。ここで節水すること、お湯をなるべく使わないことを意識すると大きな節約になります。
「すすぎ」を意識して使う水を最小限にする
まず意識したいのは、洗剤の使用量を減らすことです。食器洗いでは「すすぎ」に最も水を使うため、少ない洗剤でサッと洗うことが節水につながります。
これと同時に、食事で使ったお皿を重ねないことを意識しましょう。たとえば、ハンバーグが乗っていたお皿に茶碗を重ねてしまうと、茶碗の底に油汚れがつくことになります。そうなると、本来はサッと洗うだけでよかった茶碗の裏側まで洗剤でしっかり洗うことになり、すすぎに使う水の量が増えてしまうのです。
また、油汚れを落としやすくする裏ワザもあります。うどんやパスタの茹で汁は、溶け出したでんぷん質が油汚れを吸着するという作用があります。茹で汁を取っておいて、油汚れのひどい食器を浸けておくと、ある程度の汚れを落とすことができます。
ちなみに、食器を洗う時は、蛇口の設定を“ストレート”より“シャワー”にしたほうが、広範囲に水が当たり洗いやすくなるだけでなく、出てくる水の量が少なくなるので節水につながります。
家族が多い家庭は「食器洗い乾燥機」の導入を検討する
家族と一緒に暮らしていて洗いものの量が多い場合は、食器洗い乾燥機を取り入れることもおすすめです。人の手で洗うと、つい水を出しっぱなしにしたり、すすぎに時間がかかったりして水道代がかかりやすいのですが、食器洗い乾燥機なら使う水の量は一定で、水を流しっぱなしにすることがないからです。
なお、手洗いと食器洗い乾燥機における水道光熱費の比較データは以下のように出ています。3)
〈表〉手洗いと食器洗い乾燥機の年間水道光熱費の比較
洗い方 | 年間でかかる水道・ガス代 |
---|---|
手洗い | 25,560円 |
食器洗い乾燥機 | 16,990円 |
節約額 | 8,570円 |
食洗機自体は3万円ほどで購入できるものもあるため、3~4年ほどで元が取れるといえそうです。
【実践編】洗濯の節約ポイント
洗濯は、トイレと同じく基本的にお湯を使うこともないため、過度に気にしなくてもいいといえます。水道代の節約方法は限られていますが、方法を間違えるとかえってお金がかかってしまうこともあるので、注意が必要です。
お風呂の水の再利用は「洗い」のみにする
最近の洗濯機はお風呂のお湯を汲み取るポンプがついていることが多く、手軽に残り湯を再利用できます。もちろん、残り湯の再利用は水道代の節約には効果があります。
ただし、残り湯の再利用には注意点があります。「洗い」でのみ使い、それ以外では使わないようにしましょう。基本的に洗濯機は「洗い」「すすぎ」「再すすぎ」という工程を踏みます。洗濯洗剤には落とした汚れの再付着を防ぐ成分が入っているので、洗剤が満ちている状態の「洗い」では残り湯の汚れも服に付着しません。しかし、「すすぎ」は洗剤が入っていない状態なので、ここで残り湯を使うと服に汚れが付着してしまうのです。
そういった状態で衣類に汚れが残ってしまい、頻繁に買い換えることになっては意味がありません。残り湯を使うのは「洗い」の工程までにしておきましょう。
ちなみに、お風呂の残り湯に夜のうちから洗濯洗剤を少量入れておくことで、雑菌が繁殖しにくくなるという裏ワザもあります。「洗い」のみに使う場合でも汚れや雑菌が気になる人は、ぜひ試してみてください。
「小まめな洗濯」より「まとめ洗い」を意識する
節約の観点からすると、洗濯機は容量の「8割」くらいの洗濯物を入れるのが最も効率的です。
家族が多いと洗濯物もあっという間に溜まりますが、一人暮らしや二人暮らしなどの洗濯物が少ない家庭であれば、容量の8割くらい溜まってから洗濯したほうが節約になります。たとえば、白物を洗う日と色柄物を洗う日に分けると洗濯物をまとめておきやすく、効率的に洗濯できるでしょう。
ここまで家庭の場面別での水道代の節約方法をご紹介しましたが、水道代が高くなってしまう原因について、より詳しく知りたい人は以下の記事を読んでみてください。
ホームセンターや100均で手に入る! 水道代節約おすすめグッズ3選
ここまで様々な節約方法をご紹介しましたが、節約グッズに頼ることで、使い方を変えずに簡単に水道代を節約することも可能になります。水道を使う場面別でおすすめグッズをご紹介します。
【お風呂・キッチン】洗いやすさ×節水を実現できる「泡沫アダプター」
蛇口に取り付けることで水に細かな泡が含まれ、水はねしにくくなるアダプター。洗い心地が柔らかくなるだけでなく、空気を含むことで出る水の量が減るため、節水にもつながるグッズです。
既存の蛇口にすぐ取り付けられるので、賃貸物件でも取り入れられます。ネット通販でも数百円程度から購入できます。
【お風呂】使い方を変えずに節水できる「節水シャワーヘッド」
スーパーやホームセンター、ネット通販で手軽に購入できるシャワーヘッド。おすすめは、ヘッドの近くに止水ボタンがあり、水を出したり止めたりしやすいものです。小まめに水を止めることで、節水しやすくなります。最近は水圧が強く、使い心地は通常のものと遜色ない節水タイプのシャワーヘッドもたくさん販売されています。
取り付け方も簡単です。基本的に、既存のシャワーヘッドを回して取り外し、節水シャワーヘッドを付けるだけで使用できるようになります。
【キッチン】食器の汚れを落とす器具「キッチンスクレーパー」
シリコンやプラスチックでできたヘラのような形状で、食器や調理器具についた汚れを落とすためのキッチングッズです。このキッチンスクレーバーであらかじめ油汚れなどを軽く落としておくだけで、すすぎの時間を短くできます。100均などでも購入可能なので、チェックしてみてください。
不要な布や紙で油汚れを拭き取る方法もありますが、スクレーパーならゴミも出ないので、環境に対してもやさしいグッズといえるでしょう。
節約術を“習慣化”して無理せず節約しよう
水道代は、派手なテクニックで大幅に節約できるものではありませんが、心がけひとつで日常的に続けられるものばかりです。
小まめに水を止めるなど、最初は意識する必要があるでしょう。しかし、毎日続けることで、それが習慣になっていくはずです。1日の節約額は少なくても、積み重ねていくことで着実に節約になるので、ぜひ取り組んでみてください。