子どもの教育資金を準備するための学資保険。保険料を支払うことで確実に教育資金を確保できる保険ですが、元本割れのリスクやインフレに弱いことなどを理由に「おすすめしない」という意見に迷う人もいるのではないでしょうか。

この記事では、子どもの教育資金づくりの方法を悩んでいる人に向けて、ファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、学資保険についての正しい知識を伝え、代わりとなる選択肢も説明します。

この記事の監修者

タケイ 啓子(タケイ ケイコ)

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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「学資保険はおすすめしない」といわれる理由とは?

画像: 画像:iStock.com/Svitlana Barsukova

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学資保険に加入することを「おすすめしない」という人は、つぎのデメリット3つを理由に考えているでしょう。

理由①途中解約をすると元本割れする

学資保険は満期より前に解約をすると、“元本割れ”が起きます。預貯金の場合、途中でやめても損をすることはありませんが、解約返戻金が支払った保険料より下回り、元よりも少ないお金しか手元に戻らないリスクがある、ということです。

理由②インフレに弱い

インフレが進むと、金利が上がるため、貯蓄に有利です。しかし、学資保険は固定金利で運用するため、インフレの恩恵を受けることができません

また、インフレが起きると、物価が上昇します。これに合わせて賃金が上がる可能性もありますが、その保証があるわけではなく、保険料の支払いが家計の負担となる恐れがあります

理由③保険会社が破綻しても全額補償されない

金融機関が破綻した場合、預貯金は預金保険機構により一般預金等は元本1,000万円まで全額保護されます。一方、保険会社が破綻した場合には「生命保険契約者保護機構」が、破綻した保険会社に代わり、保険金や給付金の支払いをしてくれますが、補償の範囲は責任準備金の9割までです。あり得ない可能性かもしれませんが、ここにも元本割れするリスクがあります。

つまり「学資保険はおすすめしない」と考える人には、途中解約や保険会社の破綻などによって元本割れするリスクを恐れるケースが少なくないでしょう。また、学資保険以外の方法で着実に教育資金を準備している人も「学資保険はいらない」と考えているのではないでしょうか。

【関連記事】大学の学費を払えない時のリスクは? 6つの対処法。詳細はコチラ

そもそも学資保険とは? しくみを簡単に説明

画像: 画像:iStock.com/SB

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学資保険とは、子どもの教育資金を準備することを目的とした貯蓄型保険です。その多くは大学進学のタイミングに給付することを想定して販売されています。一般的に子どもの出生予定日以前から就学前に加入し、子どもが契約時に定めた年齢になると祝い金や満期保険金を受け取ることができます。

コツコツ自分で貯金するのは苦手…という人にとっては、確実に子どもの教育資金をつくることができるという点で安心でしょう。

学資保険は、契約者(親など)に万が一のことがあった場合、保険料の払い込みが免除になります。ただし、保険契約はそのまま継続され、学資金を受け取ることができるところが、学資保険の大きな特徴です。たとえ1年分しか保険料を支払っていなくても、契約者に万一のことがあれば、その後の保険料は免除され、子どもの年齢に応じた学資金が受け取れるのは、大きな安心です。

一方、子どもが成長するまで契約者が健在で、保険料を予定どおりすべて支払った場合、受け取れる学資金は保険料の100~108%前後といわれています。

契約者が支払った保険料の総額に対して受け取ることのできる「満期保険金 + 祝い金」の割合を、返戻率(へんれいりつ)といいます。一般的に返戻率が100%以上を超えるのが、学資保険の特徴のひとつです。ただし、複数の特約を付けると、返戻率は100%を下回る場合もあるので、注意が必要です。

保険料や加入のタイミングなどについて知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】学資保険とは? 保険料や選び方などの詳細はコチラ

子どもの教育資金、いくら用意すれば十分?

子ども1人を幼稚園から大学まで行かせた場合、すべて国公立でも教育費の平均金額はおよそ1,000万円といわれています。

日本政策金融公庫の調査1)によると、高校1年から大学4年までの入学費用と在学費用の累計は、942万5,000円となっています。

〈図〉入学先別の高校入学から大学卒業までにかける費用 (子ども1人当たりの費用〈年間平均額の累計〉)

画像: ※1:高校の費用は、国公立・私立を合わせた全体の平均で、入学費用も含む。 ※2:高専・専修・各種学校、私立短大は、修業年限を2年として算出。

※1:高校の費用は、国公立・私立を合わせた全体の平均で、入学費用も含む。
※2:高専・専修・各種学校、私立短大は、修業年限を2年として算出。

高校卒業後の入学先学校別に詳しく見ると、私立大学に入学した場合の累計金額は、文系で951万6,000円、理系で1,083万4,000円、国公立大学では743万円でした。

高校卒業以前の学費についてはどうでしょうか。文部科学省が実施した調査によると2)、以下のとおりです。

〈図〉学校種別・公立私立別学習費総額合計

画像: ※1:金額は,各年度の各学年の平均額の単純合計。※高等学校は共に全日制。

※1:金額は,各年度の各学年の平均額の単純合計。※高等学校は共に全日制。

同調査では、学校教育に支払う学費だけではなく、学校外活動のために支出した費用も加えたものを「学習費」として算出しています。

幼稚園から高等学校まですべて国公立を選んだ場合は、この2つの調査を基に計算すると、学習費・学費の総額は1,055万6,201円になります。一方、幼稚園から大学まですべて私立を選んだ場合には、文系で2,528万2,502円、理系では2,660万502円になります。つまり、子どもの進路によっては、2,500万円以上の教育資金を用意する必要があるということがわかります。

【関連記事】教育費の平均はいくら? 大学までの賢い貯め方、詳細はコチラ

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教育資金を貯める選択肢は? 4種類を紹介

画像: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

このように子ども1人の教育資金は大学卒業までにおおよそ1,000万円かかるとすると、計画的に準備をする必要があるでしょう。堅実に教育資金を用意する方法としては、以下の4タイプが考えられます。

①預貯金で準備する

生活費をまかなう普通口座とは別に、教育資金用の預金をする方法です。意識的に貯金ができるのであれば、満期日まで引き出しできない代わりに普通預金より金利がいい「定期預金」や、それよりも金利は悪いものの自由が効く「積立預金」、好金利の「ネット定期」などがおすすめです。

一方、なんとなく口座にお金が貯まるものの、なかなか意識的な貯金ができていないのであれば、自動的に貯金できるしくみを活用するのも一手です。毎月の給与から一定額が天引きされて積み立てられる「財形貯蓄」や、普通口座から定期的に指定金額が預入される「自動積立定期」などが選択肢として考えられます。

  • 定期預金
  • 積立預金
  • ネット定期
  • 外貨預金
  • 財形貯蓄
  • 自動積立定期

②金融商品を運用する

普段から資産運用を行っている場合は、教育資金を貯める目的の運用も行ってはいかがでしょう。「つみたてNISA」でリスクをおさえた投資信託など、堅実な運用を心がけるのがおすすめです。

  • 個人向け国債
  • つみたてNISA
  • 投資信託

③保険に加入する

貯金だけで貯める自信がないけれど、リスクを恐れる慎重派には、保障も付く保険がぴったりでしょう。学資保険以外では、必要に応じて解約しやすい「低解約返戻金型終身保険」や「外貨建て終身保険」がおすすめです。

「変額保険」は死亡保険金が最低保障額に設定されているため、資金の運用に応じて解約返戻金が変動します。運用がうまくいくと解約返戻金が増やせる可能性がありますが、逆に減ってしまうリスクもある点を踏まえる必要があります。

  • 低解約返戻金型終身保険
  • 外貨建て終身保険
  • 変額保険

▶︎参考になる保険例(新変額保険)はコチラ

④制度を活用する

貯金や資産運用する余裕がなく、今後の収入増加も期待しづらい場合には、「奨学金制度」や通常よりも金利が低い国の教育ローン「教育一般貸付」などを活用するのも一手です。

  • 教育一般貸付
  • 奨学金制度

教育資金の貯め方についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】教育費の貯め方おすすめ3選! 具体的な方法の詳細はコチラ

学資保険が必要な人は? それ以外の選択肢と比較検討しよう

教育資金を貯めるのに、学資保険を唯一の手段として検討するのではなく、ほかの手段と比べてみましょう。たとえば、貯金や金融資産の運用などを普段からしていない場合、むしろ学資保険のほうが最適という可能性もあります。

もしも現時点でまとまった貯蓄がなく、性格的にも計画的な貯金を苦手にしているのなら、貯金という手段に頼るのは不確実でしょう。その上、金融資産の運用はリスクが怖いという場合、貯蓄の目的が子どもの教育資金であれば、確実にその教育資金を積み上げることができる学資保険に加入することが賢明かもしれません。子どもの大学入学までに用意したい金額を検討し、ベストの選択肢を選びましょう。

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