「老後の生活費はいくらかかる?」
「ゆとりある老後生活を送るのに必要な金額は?」
老後生活のための資金づくりは自助努力が必要といわれる昨今、若い世代でも老後の生活費が気になる人は少なくないでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、老後に備えたい人に向けて老後の生活費について解説します。年金や介護費用、保険など、老後の生活費に関連する項目についても説明します。

この記事の監修者

藤井 亜也(ふじい あや)

株式会社COCO PLAN 代表取締役社長
ファイナンシャルプランナー(CFP、FP1級)。独立系ファイナンシャルプランナーとして20代~90代と幅広い年代のお客様の相談に対応。一人一人に心を込めて最適なプランを提案し、多くのお客様のライフプランを実現。個別相談だけでなく、マネーセミナー、執筆・監修など幅広く活動中。著書に『今からはじめる理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方』(三恵社)がある。ラジオ番組『未来のためのお金のハナシ』(FM川口)毎週月曜16時から放送中。

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老後の生活費の平均額は?

画像: 画像:iStock.com/recep-bg

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老後の家計について具体的に想像がつかない人も少なくないでしょう。そこで、総務省「家計調査報告」1)から65歳以上の無職世帯の1カ月の家計収支を引用して説明します。

1人暮らし世帯の場合

65歳以上の1人暮らし無職世帯では、社会保障給付などで実収入が13万5,345円であるのに対し、支出は14万4,747円で、9,402円が不足する状態でした。

〈図〉65歳以上の単身無職世帯(高齢者単身無職世帯)の家計収支(2021年)

画像: 1人暮らし世帯の場合

消費支出で最も大きな割合を占めるのは、「食料」で27.4%。「交際費」(11.6%)を含む「そのほかの消費支出」が22.0%で続きます。「保健医療」(6.4%)は、「交際費」(11.6%)や「交通・通信」(9.2%)などよりも少ない割合でした。

2人暮らし世帯の場合

2人暮らし世帯のうち世帯主が65歳以上の無職世帯では、社会保障給付などで実収入が23万6,576円であるのに対し、支出は25万5,100円で、1万8,524円が不足する状態でした。

〈図〉65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支(2021年)

画像: 2人暮らし世帯の場合

消費支出で最も大きな割合を占めるのは、1人暮らし同様に「食料」で29.3%でした。一方、「交際費」(9.2%)を含む「そのほかの消費支出」(20.7%)や「住居」(7.4%)は1人暮らしより家計を占める割合が若干低いという結果でした。「保健医療」(7.2%)は2人分であることから、1人暮らしよりもやや多いということがわかります。

なお、実収入を世帯主の年齢階級別にみると、65~69歳の世帯は27万1,086円、70~74歳の世帯は24万8,556円、75歳以上の世帯は23万9,876円でした。同調査によると、消費支出は65~69歳の世帯が26万1,123円と最も多く、年齢階級が上がるにつれて支出額が下がっています

ゆとりある老後の生活費は月額14万8,000円の上乗せ

画像: 画像:iStock.com/mykeyruna

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一方、ゆとりある老後生活を送ろうと思うと、生活費は平均的な家計収支に比べ、いくら程度の上乗せが必要なのでしょうか。生命保険文化センターの調査2)によると、ゆとりある老後生活のための上乗せ額の平均は月額で14万8,000円でした。

その使い道は、「旅行やレジャー」が60.0%で最も高く、「日常生活費の充実」(48.6%)、「趣味や教養」(48.3%)、「身内とのつきあい」(46.2%)が順に続きます。

調査では交際費や遊興費を念頭に置いているいる人が多いようですが、実際には、治療費や通院費、介護費など、リスクに対する費用を考慮して、生活費を多めに見積もっている人も少なくないでしょう。ただし、多くの人が退職直後に長期の海外旅行や自宅のリフォームなど、大きな出費をして、早々に退職金を使い果たす傾向にあります。ゆとりある老後を送るためには、退職金の使い方も計画的に考えるのが賢明でしょう。

老後に必要なお金は公的年金だけで大丈夫?

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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前述の「家計調査報告」を参考に、収入が社会保障給付だけの平均的な家計収支で生活した場合を試算してみます。以下のように、1人暮らしの場合は2万4,727円、2人暮らしの場合は3万8,581円が、ひと月あたり不足する状態になります。

65歳以上の単身無職世帯の場合
社会保障給付12万470円-(非消費支出1万2,721円+消費支出13万2,476円)=-2万4,727円

65歳以上の夫婦のみの無職世帯
社会保障給付21万6,519円-(非消費支出3万664円+消費支出22万4,436円)=-3万8,581円

仮に老後生活が85歳まで続いた場合、65歳からの20年間で、1人暮らしの場合は総額593万4,480円、2人暮らしの場合は総額925万9,440円不足します。もちろん上記はあくまで試算です。老後の生活に備えるためには、まずは年金制度と自分の受給額を理解することが重要でしょう。

年金制度について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】老後の年金はいくらもらえる? 受給額やしくみの詳細はコチラ

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老後資金シミュレーション
老後資金シミュレーション

老後のための貯蓄額、平均は2,000万円以上

画像: 画像:iStock.com/CatLane

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総務省の調査3)によると、2人以上世帯の世帯主の貯蓄額は、60~69歳で2,537万円、70歳以上で2,318万円でした。一方、全国の60歳以上の男女を対象とした内閣府の調査4)によると、貯蓄総額(※)は、「100万円~500万円未満」が18.8%で最も多く、「2,000万円以上」が15.6%で続きました。

2つの調査を併せて考えると、一定数の人が老後の資金として2,000万円以上を用意していることがわかります。

老後のための貯金について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】老後のための貯金、いくら必要? 金額や資金づくりの詳細はコチラ

※配偶者と同居している場合は、夫婦の貯蓄額の合計

住まいによっても生活費は変わる

画像: 画像:iStock.com/Seiya Tabuchi

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前述の「家計調査報告」では、生活費に「住居費」が含まれていましたが、住まいによってかかる金額の内容は大きく変わります。以下でそれぞれの場合について説明します。

戸建ての持ち家の場合

住宅ローンや固定資産税があるのはもちろん、戸建ての場合は、マンションと異なり外壁や庭などのメンテナンスの費用も自分で負担する必要があります。また、セキュリティ対策にも注意する必要があります。これをカバーするためにセキュリティ会社などのサービスを利用する場合、その費用も発生します。

分譲マンションの場合

戸建て同様に、分譲マンションの場合も住宅ローンや固定資産税があります。加えて、管理費や修繕積立金、駐車代・駐輪代など、戸建てには必要ない費用が毎月かかります。特に近年、人件費や材料の高騰により、管理費や維持費が年々上がる傾向にあります。今後の支出として資金を多めに見積もったほうが安心でしょう。

賃貸住宅の場合

賃貸住宅の場合は、持ち家と異なり、住宅ローンや固定資産税の支払いはありません。住居のメンテナスは基本的に大家が行う点も賃貸住宅ならではの特徴です。毎月の費用としては、家賃、管理費、駐車代・駐輪代などがかかります。一方、資産性がないため、資金不足に陥った時に住まいを資産として活用できません

老後の住まいの経費について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】老後はマンションだと後悔する? 戸建てとの違いや物件選びの詳細はコチラ

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老後の医療費や介護の費用はいくら?

画像: 画像:iStock.com/Nikada

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厚生労働省の調査5)によると、令和2年度の人口1人当たりの国民医療費は、65歳未満は18万3,500円、65歳以上は73万3,700円でした。この数字から、65歳以上の高齢者となると、それまでより大幅に医療費がかかることが推察できます。

さらに要介護状態になった場合、費用はどのくらいかかるものなのでしょうか。生命保険文化センターの調査6)によると、介護に要する月々の平均費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、平均8万3,000円でした。これに加え、住宅改修などの一時的な初期費用の合計は平均74万円とされています。

同調査では、介護期間についての回答は平均61.1カ月(5年1カ月)でした。「初期費用+月額の費用×介護期間」で試算すると、実際に介護を経験した人の平均の介護費用は、総額581万1,300円となります。

介護の費用について知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】介護にかかる費用はいくら? 負担を軽減する方法の詳細はコチラ

老後に必要なお金が足りない場合の準備方法は?

画像: 画像:iStock.com/eggeeggjiew

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若いうちから老後のための資金づくりに取り組む場合、まず運用税が非課税である「つみたてNISA」や「iDeco」などが考えられます。老後の資金運用は、「お金を減らさないこと」が大切です。ほかの金融商品を選ぶ場合でも、安定運用できるかを基準に考えましょう。

老後になっても働くことができるように、キャリア形成や人とのつながりを整えておくのも一手です。わずかでも収入があれば安心できる上、社会とつながりを保つことは老後の生活に潤いをもたらします。他人とのコミュニケーションは、認知症防止をはじめ、心身の健康にもポジティブな影響を与えるでしょう。

老後の経済的なリスクに備えるという意味では、保険への加入が有効です。選ぶ保険によっては、医療費や介護費の不足分を補ったり、老後の生活資金をまかなったりすることに役立ちます。おすすめの保険はつぎの6つです

  • 個人年金保険
  • 終身保険
  • 変額保険
  • 医療保険
  • がん保険
  • 介護保険

老後の資金づくりを早めに考えるのであれば、公的年金に上乗せ保障する役割を持つ「個人年金保険」や、途中で解約をした場合でも所定の解約返戻金を受け取ることができる「終身保険」などが選択肢として挙げられます。株式や債券を中心に資産運用を行い、実績によって保険金や解約返戻金が増減する「変額保険」も老後の資金づくりに役立つでしょう。

また、「医療保険」や「がん保険」、「介護保険」などは病気や要介護状態になった時の資金不足を補うのに必要でしょう。最近では貯蓄性を備えたものも増えています。

たとえば、東京海上日動あんしん生命保険の「あんしんねんきん介護R」は積立タイプの保険で、所定の年齢までに給付金の受け取りが発生しなかった場合、支払った保険料を「健康還付給付金」もしくは「介護年金」として受け取ることができます。老後の安心を設計したい人は、ぜひチェックしてみましょう。

以下の記事では、老後のために必要な保険の解説をしているので、併せてご覧ください。

【関連記事】老後に保険は必要?プロの回答はコチラ

老後の資金づくりに早めに取り組もう

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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高齢者の生活費の実態を見ると、年金だけでは明らかに不足することがわかります。住まいによっては老後にも大きな費用がかかる上、医療や介護の費用は金額の目安はわかるものの、どんなタイミングでいくら必要になるかは予測不能です。

こうしたことから考えると、早めに老後の計画を立て、保険の加入を含め、資金づくりに取り組むのが合理的といえるでしょう。また、住宅ローンや保険料などは、老後の支出を抑えるため、現役のうちに支払いを終えておくのがおすすめです。

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