「老後に戸建てに住むと大変なことは?」
持ち家の購入を考えながら、老後の住まいについて、疑問と不安を抱えている人も少なくないと思います。
この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、老後にマンションと戸建てに住む場合のそれぞれのメリットとデメリットを説明します。さらに、マンション住まいで後悔しないための対策も解説するので、参考にしてください。
マンションと戸建て、老後に住むならどっち?
不動産流通経営協会の調査1)によると、45歳以上の人は老後の住まいに対し、「金銭面の負担が軽い(手元にお金を残せる)こと」「コンパクトサイズであること」「生活利便性の高さ」を重視しているといいます。また、「45歳以上での住み替え経験あり」と「45歳以上での住み替え意向あり」の合計は、全体で50%を超えており、現役時代と老後の住まいは別、と考える人が半数以上いることがわかります。
では、老後の住まいに適しているのは、マンションでしょうか?持ち家でしょうか? 続いて、それぞれのメリットとデメリットを説明します。
老後にマンションに住むメリット
老後にマンションに住むメリットはつぎの3つです。以下でそれぞれについて詳しく説明します。
セキュリティがしっかりしている
戸建ての場合には、セキュリティサービスに自分で加入する必要があり、それなりの費用がかかります。一方、マンションの場合、オートロックや監視カメラなどがついているところを選べば、そのための費用が生じることなく、ある程度の安全性を確保できます。
利便性がいい立地に住みやすい
老後の暮らしでは、自転車や自動車での移動が年々、難しくなるもの。駅や商店街に程近い立地を選べば、苦労なく日々の買い物や用事をすませることができるでしょう。
掃除やメンテナスが楽
マンションでは、エントランスをはじめとする共用部分は管理会社が掃除やメンテナンスを行います。自分が所有する部屋の内部だけを気にかければいいので、日常の手間も費用も戸建てに比べ、少なくすみます。
老後にマンションに住むデメリット
一方、老後に戸建てではなく、マンションに住むことのデメリットはつぎの2つです。以下でそれぞれについて詳しく説明します。
住宅ローン以外に管理費や維持費がかかる
マンションでは管理費や修繕積立金、駐車代・駐輪代など、戸建てには必要ない費用が毎月かかります。特に近年、人件費や材料の高騰により、管理費や維持費が年々上がる傾向にあります。今後の支出として資金を多めに見積もったほうが安心でしょう。
間取りや立地が生活に合わなくなる
たとえば4人家族用に住まいを購入した場合、老後の夫婦2人暮らしや1人暮らしには間取りや広さに住みづらさが生じるかもしれません。持ち家であれば間取りを変えることも可能ですが、マンションでは難しいでしょう。また、若い時には便利に思えた繁華街や駅前の立地が、老後には騒がしく感じたり、病院や介護施設に行きづらかったり、という可能性も考えられます。
老後に戸建てに住むメリット
では、戸建ての場合はどうでしょう。戸建てに住むメリットはつぎの3つです。以下でそれぞれについて詳しく説明します。
老後の生活に適したリフォームができる
マンションに比べ、間取りを含めた大きなリフォームがしやすいのが戸建ての大きなメリットでしょう。2つある子ども部屋を合わせて客間にする、要介護状態になってバリアフリーにするなど、ライフスタイルに合わせた住みやすさを追求することができます。
資産として活用することができる
マンションに比べ、戸建ては資産として活用しやすいのが特徴です。家を担保にお金を借りたり、売却して介護施設に入る資金を用意したり、といった活用法が考えられます。
他人とコミュニケーションが発生しやすい
ご近所付き合いが発生しやすいのもマンションとの違いです。家族以外に話し相手を確保するのは、若い頃には容易でも老後には意外と難しいことがあります。世間話程度でも近所に家族以外の話す相手がいるというのは、老後の生活では貴重といえるでしょう。
老後に戸建てに住むデメリット
戸建てに住むデメリットはつぎの3つです。以下でそれぞれについて詳しく説明します。
セキュリティが低い
セキュリティが低いのが戸建ての大きなデメリットです。高齢者の1人住まいは空き巣や強盗などに狙われやすい上、マンションに比べて戸建てのほうが侵入も容易でしょう。セキュリティ会社のサービスを利用する手もありますが、その分、費用がかかります。
掃除やメンテナンスが大変
マンションに比べ、戸建ての場合は、外壁や庭などのメンテナンスも自分でする必要があります。メンテナンスにかかる費用はもちろん、手配の手間もかかるのがマンションにはないデメリットといえます。
売却や相続がしづらい
老人ホームや介護施設へ入所するために、元気なうちに住まいを活用して資金づくりをするのならさておき、子どもに相続をする場合にはマンションよりも手間が生じます。特に子どもに住む意思がなかったり、子どもが複数いたりする場合には、家族の話し合いが必要でしょう。
老後のマンション住まいで後悔しないための対策
老後にマンション住まいで後悔しないためには、マンション住まいのデメリットを理解した上で、それらをカバーする対策をしておくのがよいでしょう。つぎの4つが対策となります。
①老後の住みやすさをしっかり想像する
現時点での住みやすさだけではなく、年をとった時の住みやすさについても考慮に入れましょう。たとえば、歩行が困難になった場合でも移動しやすい構造か、病院などにアクセスしやすい立地条件か、経年でメンテナンスの必要が生じる部分が少ないか、などです。若いうちには負担にならないことが、老後には労苦に変わる可能性を十分に考慮して、物件を選びましょう。
②支払いの資金計画とライフプランを重ねて検討する
子どもの進学や自身のキャリアプランなどによって、経済的な山谷が発生する可能性があるでしょう。そうしたタイミングを念頭に置きながら、現役時代のうちに住宅ローンを完済することができると、老後の生活が安心です。
③資金は余裕を持って確保する
前述したように住宅ローン以外に管理費や維持費がかかります。その上、これらは不測の値上がりをする恐れがあります。老後の生活を不安なく送るためには、余裕をもって資金を確保することをおすすめします。
④リースバック可能な物件を選ぶ
老後の資金繰りが苦しくなった場合の万が一に備え、リースバック(自宅売却後に売主と賃貸契約を結ぶことで、元の住まいに住み続けるしくみ)がしやすい物件かどうかを精査しましょう。また、マンションのリースバックやリバースモーゲージ(自宅を担保に生活資金を借り入れる高齢者向けのローン)は銀行によって扱いが異なるので、その点も考慮の上で資金繰りに臨むのが得策です。
マンション住まいは、賃貸と分譲、どちらがよい?
マンションに住まう手段としては、購入するほかに賃貸も考えられます。賃貸の場合、物件を自由に住み替えできるのが最大のメリットです。ただし、高齢になると、マンションを借りること自体に困難が生じる恐れがあります。分譲マンションなら、そういった心配は不要です。資産として活用することができるのがメリットですが、固定資産税など、賃貸の場合には必要がない費用が毎月かかります。
老後に賃貸住宅を借りる時に注意すべき点を詳しく知りたい人は、以下の記事でわかりやすく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
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メリットとデメリットを理解して、自分に合った選択をしよう
マンションにも戸建てにもそれぞれメリットとデメリットがあります。それらを理解した上で、無理のない資金計画ができる選択肢を選ぶのが安全です。老後に備えて住み替えをする場合には、それに加えて、老後の生活をきちんと具体的に想像して、改めて選択基準を検討すると、後悔が少なくなるでしょう。