「親の介護にはどのくらいのお金がかかる?」
「老後のための介護費用、どのくらい用意しておくべき?」
経験がないからこそ、介護に関して疑問を抱え、特に経済的な負担については不安を感じている人も少なくないでしょう。

そこで、この記事では、家族の介護に向き合う人や老後に不安を抱える人に向けて、介護者専門の事務所を運営する行政書士でファイナンシャルプランナーの河村修一さん監修のもと、介護にかかる費用について説明します。経済的な負担を軽減するために役立つ介護や医療の制度についても解説します。

この記事の監修者

河村 修一(かわむら しゅういち)

ファイナンシャルプランナー・行政書士。CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。

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介護にかかる費用の総額は平均581万1,300円

画像: 画像:iStock.com/golfcphoto

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老後の介護費用は、実際にどのくらいかかるものなのでしょうか。生命保険文化センターの調査1)によると、介護に要する月々の平均費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、平均8万3,000円でした。これに加え、住宅改修などの一時的な初期費用の合計が平均74万円とされています。

同調査では、介護期間についての回答は平均61.1カ月(5年1カ月)でした。「初期費用+月額の費用×介護期間」で試算すると、実際に介護を経験した人の介護費用は、平均して総額581万1,300円となります。

介護保険外のサービスに備える必要資金は平均3,321万円

画像: 画像:iStock.com/busracavus

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介護保険では多様なサービスを提供しています。しかし、高齢者に同居家族がいる場合には、家事代行は依頼できないなど、介護保険だけではカバーしきれないニーズもあります。こうした部分を埋めるサービスを提供している民間事業者もいますが、もちろん介護保険サービスを利用する場合よりも費用はかかります。

前述の生命保険文化センターの調査で「世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の公的介護保険の範囲外費用に対する経済的備え」を尋ねたところ、必要資金の総額は平均3,311万円でした。要介護状態で過ごす年数が不確定であることから費用を多めに見積もって用意する人が多いようです。民間の介護保険・介護特約の保険に入る人は、前回(2018年)調査14.1%に対し、今回(2021年)は16.7%と増加傾向にあり、自助努力で介護の資金を確保しようとする人が増えていることがわかります。

たとえば、東京海上日動あんしん生命保険の「あんしんねんきん介護R」は、積立タイプで所定の年齢までに保険料の受け取りが発生しなかった場合、支払った保険料を「健康還付給付金」もしくは「介護年金」として受け取ることができます。老後の安心を設計したい人は、ぜひチェックしてみましょう。

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老後資金シミュレーション
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介護の費用負担を軽くするための制度を活用する

画像1: 画像:iStock.com/kazuma seki

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家族の介護をする場合も老後に自分で介護を受ける場合も、できる限り介護の費用負担を軽くしたいもの。そこで、介護の費用負担軽減に役立つ制度を2つ説明します。

①高額介護サービス費

高額介護サービス費2)とは、介護サービス費の自己負担額が世帯合計(個人)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給することで自己負担を軽減する制度です。所得区分によって上限額は異なります。

区分負担の上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上14万100円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満9万3,000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満4万4,400円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税2万4,600円(世帯)
世帯全員が市町村民税非課税・前年の公的年金収入金額とそのほかの所得合計金額が80万円以下の方など2万4,600円(世帯)
1万5,000円(個人)
生活保護を受給している方など1万5,000円(世帯)

サービス利用費が上限額を上回った場合、該当者には自治体から「高額介護(介護予防)サービス費支給申請書」が送られてきます。一度申請を行えば、その後は申請をしなくても上限額を超えた場合には超過分が指定口座に自動的に振り込まれます。

②特定入所者介護サービス費(負担限度額認定証)

特定入所者介護サービス費3)とは、介護保険施設に入所している人などで、所得や資産が一定以下の人に対して、食費や居住費の一部を補助する制度です。利用には、市区町村に申請して負担限度額認定を受ける必要があります。

医療費の負担を軽くするための制度を活用する

画像: 画像:iStock.com/byryo

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介護費用と同様に高齢者の家計を圧迫しかねないのが医療費です。以下で医療費負担を軽減するための制度を3つ紹介します。できる限り活用しましょう。

①高額療養費制度

高額療養制度4)は、医療機関や薬局で支払った医療費がひと月で上限を超えた場合に、超えた分の金額を支給する制度です(入院時の食事負担や差額ベッド代は含みません)。上限額は年齢や所得などにより異なるので、確認しましょう。加入している公的医療保険に申請書を提出することで申請することができます。

②高額医療費貸付制度

便利な高額療養費制度5)ですが、審査から支給までに3カ月を要するのが難点です。高額医療費貸付制度は、このギャップを埋めるもので、申請先は加入している公的医療保険です。申請すると、当座の医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付することができます。その返済にはそれ以前に申請した高額療養費の給付金が使われ、残額がある場合には指定の金融機関に振り込まれます。

③高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度6)とは、世帯内の同じ医療保険制度の被保険者全員が1年間(毎年8月~翌年7月末)に支払った医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準値を超えた場合に超えた分を払い戻す制度です。自己負担限度額は、年額56万円(70歳以上の場合)を基本とし、医療保険各制度や所得、年齢区分で設定されています。

税金の控除を活用する

画像2: 画像:iStock.com/kazuma seki

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介護保険で支払った費用は医療費控除の対象となる場合があります7)8)。介護保険施設サービスの場合は、介護費、食費および居住費に関わる自己負担額(日常生活費や特別なサービスの費用は除く)の全額または半分、居宅サービスの場合は医療や看護が関わるサービスなどへの自己負担額は医療費控除の対象となります。忘れずに確定申告をすることで、負担を軽減しましょう。

制度を理解して、介護費用の負担を軽減しよう

画像: 画像:iStock.com/kokouu

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不確定のことが多い介護ですが、十分に資金を準備し、介護保険制度を理解すれば、不安なく備えることができます。突然、介護に直面せざるを得なくなった時は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、経験者などに相談して、まずは情報収集に努めましょう。

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