そんな、残念な未来を回避するにはどうすればいいのでしょうか? 激しいトレーニングではなく、習慣の見直しや簡単なエクササイズで、なんとかならないものか……?
中年太りのリスクが高まる10年後から逆算して、今日から変えられる日常の行動を指南する本連載。第2回目は、特に女性で悩みの多い「洋ナシ形肥満」や二の腕、お尻のたるみを防ぐためのポイントについて、パーソナルトレーナーの澤木一貴さんに伺いました。
お話を聞いた人
澤木一貴さん
パーソナルトレーナー。SAWAKI GYM代表取締役。1971年生まれ。大手フィットネスクラブトレーナー、整形外科病院でのスポーツトレーナー課主任などを歴任。現在は新宿区早稲田にパーソナルトレーニングスタジオをかまえ、指導にあたる。メディアや講演会を通じ、さまざまな健康情報も発信。
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女性は「皮下脂肪」がつきやすい
A子さんとB子さんは大学のサークル仲間。卒業から10年、同窓会で再会した2人の体型には、大きな差が生まれてしまいました。学生時代と服のサイズがほとんど変わらないA子さんに対し、B子さんは数サイズアップ。いつしか体型を隠す、ゆったりめのファッションが多くなっていました。特に、お尻、二の腕のたるみが悩みの種です……。
「脂肪には『皮下脂肪』と『内臓脂肪』の2種類があります。特に皮下脂肪は体型の変化に直結し、下半身に脂肪が多くつく『洋ナシ形肥満』とも呼ばれる状態になってしまいますね」(澤木さん、以下同)
なお、内臓脂肪は男性、皮下脂肪は女性の方がつきやすいといいます。そのため、後者の肥満は“女性型肥満”と言われることもあるそう。特に変化が表れやすいのが、「お尻」だといいます。
「若い頃はお尻や太ももは筋肉の張りがあって、ウエストはキュッとくびれた状態。しかし、年齢とともにお尻の大殿筋が衰え、足の筋肉も落ちて細くなっていきます。一方で、お腹周りは脂肪でパンパンになってしまいます。つまり、お尻が垂れ下がって、お腹だけポンと出ているようなフォルムになっていくんです。こうなると若い頃に普通に着られていた洋服が入らなくなっていきますし、残念ながら入っても以前のように似合わなくなってしまいます」
スイーツは食べてもOK!ただし「筋トレ後」を心がけて
A子さんもB子さんも甘いもの好きで、学生時代からスイーツを食べ歩いてきました。今も、ともに1日1回は糖分を摂取せずにいられない2人ですが、なぜ体型に差が出るのでしょうか?
ポイントは摂取する「タイミング」と「脂肪分の量」にあると、澤木さんは言います。
「体型が気になるけれど、どうしてもスイーツを食べたい。そんな時は“脂肪になりにくいタイミング”で摂るといいでしょう。ベストは筋トレ後です。筋トレをすると体内の筋肉に貯蔵されたグリコーゲン、つまり糖質が枯渇します。トレーニング後のカラダはタンパク質と糖質を欲しているため、栄養が筋肉にいきやすく、体内に貯蔵されにくいのです」
ジムに行った日のご褒美として、あるいはトレーニングを続けるモチベーションとして、「筋トレ後のスイーツ」をうまく使うといいかもしれません。その際、重点的に鍛えるべきは「大きい筋肉」なのだとか。
「大きい筋肉を鍛えた時の方が、より多くのグリコーゲンを消費します。上半身なら腕立て伏せ、下半身ならスクワットがオススメですね」
また、もうひとつのポイントは「脂肪分の量」にあります。なるべく脂肪分の少ないスイーツをチョイスすることが重要です。
「グリコーゲンと違い、脂肪は筋トレで消費することができません。ですから、なるべく脂肪が少ないもの、そして、できれば他の栄養素も補えるスイーツが望ましいですね。たとえばビタミン豊富なフルーツ、卵のタンパク質を摂取できるプリンなんてオススメです。羊羹もいいですよ。羊羹の糖質は疲労のリカバリーに効くということで、多くのアスリートが取り入れています。また、最近はプロテインパウダー入りのパンケーキミックスなどもある。けっこうおいしいんですよ」
ただし、これら脂肪少なめのスイーツも、やはり摂りすぎは禁物です。糖質は摂取すればするほど、「過剰に身についてしまう」といいます。糖尿病などのリスクも高まるため、1日1つ、厳選して楽しむのがいいでしょう。
お尻、二の腕のたるみを予防する日常エクササイズ
さて、B子さんの悩みでもある「お尻」、「二の腕」のたるみ。これを予防するための手軽なエクササイズを澤木さんに教えていただきました。
「まずはお尻。効果的なのはスクワットですが、『垂れ尻』を予防するためには、“正しくしゃがむ”ことが重要です。両足を肩幅程度に開き、背筋を伸ばしてまっすぐ立った状態から膝を90度近くまで曲げていきましょう。そして、股関節を深く曲げたところからしっかり伸ばします。これを意識してスクワットを行うと、ヒップアップの土台となる大殿筋、中殿筋が正しく鍛えられますよ」
スクワット運動が面倒なら、椅子に座る時、立ち上がる時、あるいは「しゃがむ」動作の際にこれを意識するだけでもトレーニングになるのだとか。
また、二の腕についても、ランチ休憩や仕事の合間にできるエクササイズがあるといいます。
「500mlのペットボトルを片手で持ち、身体の側面から後方へ向けて上げ下げしてください。やや前傾姿勢で、ひじを曲げた状態から後ろに伸ばしていくイメージですね。これを繰り返すだけです。上腕三頭筋(二の腕)が鍛えられ、引き締めることができますよ。慣れてきたら、1L、2L…とペットボトルの重量を上げていくといいでしょう」
好物を完全に断つ、毎日欠かさずジムに通うなど、急にストイックな習慣を身に着けるのは無理があります。その点、澤木さんが授けてくれた方法は「食べるタイミングを変える」、少しの意識づけで「日常を筋トレ化」するなど、実践しやすそうなものばかり。
まずはこれら、簡単なルールの実行から始めてみてはいかがでしょう?
イラスト:杉崎アチャ
この記事の著者
榎並紀行
編集者・ライター。水道橋の編集プロダクション「やじろべえ」代表。マネー、住まい・暮らし、グルメ、旅行、ビジネス系の取材記事・インタビュー記事などを手掛けます。
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