この記事では、ファイナンシャルプランナー・タケイ啓子さん監修のもと、付加年金について徹底解説します。加入条件や申し込み方法、メリット・デメリットなどをわかりやすく説明します。
なお、年金制度については下記の記事で解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
【関連記事】年金制度とは?公的年金と私的年金の種類やしくみ、保険料などをわかりやすく解説
※この記事は2024年4月15日に更新しています。
この記事の監修者
タケイ 啓子(たけい けいこ)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
付加年金とは
付加年金とは、国民年金の定額保険料に加えて、付加保険料を支払うことで、将来の老齢基礎年金の受給額を上乗せできる制度です1)。加入できるのは、国民年金保険料納付の免除や猶予を受けていない第1号被保険者(65歳未満の任意加入被保険者を含む)で、国民年金基金との併用はできません。
付加年金の申し込み先は住んでいる地域の市区町村役場もしくは年金事務所です2)。付加保険料は月額400円で、納付は申し込んだ月分からです。納付期限は翌月末日(休日・祝日の場合は翌営業日)ですが、納付期限を経過した場合も期限から2年間は付加保険料を納めることができます。
参考資料
厚生年金でも活用できる? 付加年金の加入条件
では、どんな人が付加年金に加入できて、どんな人が加入できないのでしょうか。
【付加年金に加入できる人】
- 国民年金第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
【付加年金に加入できない人】
- 厚生年金の被保険者(第2号被保険者)
- 第2号被保険者に扶養される家族(第3号被保険者)
- 国民年金保険料納付の免除や猶予を受けている人
- 国民年金基金の加入者
付加年金に加入できるのは、国民年金第1号被保険者に限られます3)。厚生年金の被保険者(第2被保険者)や国民年金の第3号被保険者は付加年金に加入することはできません。また、国民年金保険料納付の免除や猶予を受けている人、国民年金基金の加入者も付加年金への加入はできません。
厚生年金と国民年金の違いについて、もっと知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。
【関連記事】わかりやすく解説! 厚生年金と国民年金の違いや特徴を比較
いくらもらえる?付加年金の受給額をシミュレーション
付加年金でもらえる年金額は、200円×付加保険料納付月数です。この金額が年金の年額に上乗せされます。仮に20歳から60歳まで付加保険料を支払った場合は以下のようになります4)。
20歳から60歳まで付加保険料を支払った場合(2024年4月1日以降)5)
200円 × 納付月数480カ月=9万6,000円
81万6,000円(※)+9万6,000円=91万2,000円
※:毎月の定額保険料(令和6年度は1万6,980円)を40年間納めた場合、67歳以下の人が受け取る老齢基礎年金額
途中で付加保険料の納付をやめても、支払った期間の保険料分は老齢基礎年金額に上乗せされます。支払い期間の長さに限らず、年金受給を始めた時から亡くなるまでこれは変わりません。たとえば2年間、付加保険料を支払った場合、以下のようになります。
2年間だけ付加保険料を支払った場合(2024年4月1日以降)5)
200円×24カ月=4,800円
81万6,000円+4,800円=82万800円
2年間の付加保険料は400円×24カ月=9,600円なので、65歳から老齢基礎基金を受給する場合、67歳になった時点で支払った保険料を付加年金として全額回収できる計算になります。
年金の受給額についても知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。
【関連記事】年金はいくらもらえる?計算方法や老後資金の増やし方も徹底解説
付加年金のメリットとデメリット
付加年金にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。以下でそれぞれについて説明します。
付加年金に加入するメリット
付加年金に加入するメリットはつぎの5点です。
【付加年金に加入するメリット】
- 保険料が低額で家計の負担になりにくい
- 2年で納付した保険料を付加年金として回収できる
- 税制優遇措置がある
- 途中でやめることができる
- 老齢基礎年金の繰下げ受給をすると付加年金も同率で増額される
保険料が低額で、しかも2年間で納付した保険料が付加年金として回収できるのは大きな魅力です。途中でやめることができる点も安心材料といえます。
付加年金に加入するデメリット
付加年金に加入するデメリットはつぎの6点です。
【付加年金に加入するデメリット】
- 20歳から60歳まで加入しても年額9万6,000円が上限である
- 65歳前に亡くなった場合、納付した付加保険料は返金されない
- 65歳で年金の受給が始まって2年経過せずに亡くなった場合、保険料が回収できない
- 確定拠出年金の拠出限度額から国民年金の付加保険料分が控除される(後述)
- 給付額が確定しているため、インフレヘッジができない
- 老齢基礎年金の繰上げ受給をすると付加年金も同率で減額される
デメリットは経済的なものがほとんどですが、保険料が低額である上、運用リスクはないことから、家計に負担を与えたり、さほど大きな損にはなったりしないとも考えられます。
付加年金はどこで申し込む? 加入手続きを解説
付加年金の加入申し込み先は、住んでいる地域の市区町村役場か年金事務所です。日本年金機構のウェブサイトなどで国民年金被保険者関係届出書(申出書)を入手し、必要事項を書き込んだ上で郵送することで申し込むことができます。
自治体によっては、デジタル申請に対応しているところや窓口に直接出向いての手続きができるところもあります。付加年金に加入したい人はまずは市区町村役場に問い合わせるのがおすすめです。
付加年金の4つの注意点
ここでは、付加年金の注意点を解説します。
サラリーマンは基本的に加入できない
付加年金の加入条件は、国民年金の第1号被保険者であることです。会社員であるサラリーマンで厚生年金の被保険者(第2号被保険者)は、付加年金には加入できません。
付加年金と国民年金基金は併用できない
付加年金と国民年金基金は重複して加入することができません。ただし、付加年金は途中でやめることができるので、付加年金で保険料を一定期間支払ってからやめて、国民年金基金に切り替えれば、両方で年金額に上乗せをすることは可能です。
国民年金基金についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。
【関連記事】付加年金と国民年金基金、どっちが得? 詳しくはコチラ
付加年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)は併用できる
付加年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)は併用することができます。ただし、付加年金と併用する場合のiDeCoの掛金上限額については注意が必要です。iDeCoの掛金は1,000円単位で設定するため、両者を併用する場合には、iDeCoの掛金上限額は月額6万8,000円ではなく、6万7,000円となります。
付加保険料はさかのぼって納付できない
付加年金の保険料はさかのぼって支払うことはできません。ただし、付加年金を申し込んでいて納付期限を過ぎた場合には、期限から2年間は付加保険料を納めることができます。
付加年金のよくある疑問についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく説明しているので併せてご覧ください。
【関連記事】付加年金の「よくある疑問」にわかりやすく回答。詳しくはコチラ
就職して厚生年金になったら、付加年金はどうなる?
付加年金が利用できるのは、国民年金の第1号被保険者です。厚生年金の被保険者は利用することができません。ここでは、企業などに就職をして、国民年金から厚生年金に切り替わった時、付加年金はどうなるのかを説明します。
やめる手続きは必要ない
国民年金から厚生年金への変更を年金事務所が把握した時点で、付加年金をやめる処理が行われます。つまり、自分で付加年金をやめる手続きをする必要はありません。
年金額への影響
支払った期間の保険料分は、老齢基金年金の受給額に反映されます。また企業を退職して、国民年金に戻った場合、付加年金に再加入することも可能です。
経済的負担が軽い付加年金を活用しよう
付加年金は保険料が月額400円と経済的負担が軽いのがいちばんの魅力です。国民年金基金と併用できないのが難点ですが、iDeCoや個人年金保険をはじめ、ほかの金融商品との併用は可能です。自営業やフリーランスの人は老齢基礎年金受給額の上乗せに活用してみましょう。
個人年金保険やiDeCoについて、もっと知りたい人は以下の記事で詳しく説明しているので、併せてご覧ください。