2024年12月2日の健康保険証の廃止にともない、今後は健康保険証の新規発行・再発行は行われなくなりました。そのため、「会社で社会保険に加入しているけれど、マイナンバーカードの保険証が必要になるの?」「マイナンバーカードを健康保険証として使う場合、今までの健康保険証はどうなるの?」と疑問に思っている人は少なくないでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの黒川一美さん監修のもと、社会保険に加入している人に向けて、マイナンバーカードの保険証を持つ必要があるのかについて解説します。また、マイナンバーカードと健康保険証を紐付けた場合に、加入している社会保険に何か影響があるのかなども説明します。

※本記事は2024年10月30日時点の情報を基に執筆しています。

※この記事は、2023年12月14日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

黒川一美(くろかわかずみ)

FPサテライト株式会社所属、ファイナンシャルプランナー。大学院修了後、IT企業や通信事業者でセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、お金を稼ぐ側から家計を守る側に立場が変わり、お金の守り方を知らなかったことを痛感。自分に合ったお金との向かい合い方を見つけるため、FP資格を取得する。資格取得後は、FPの勉強を通じて得られた知識をもとに、よりよい家計管理を求め試行錯誤の日々を過ごす。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。

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健康保険証は2024年12月2日に廃止(新規発行の終了)

2024年12月2日以降、現行の健康保険証は廃止され、新規発行・再発行が終了しました1)。廃止とはいえ、現行の健康保険証が直ちに使えなくなるわけではありません。詳しくは後述しますが、発行済みの健康保険証は、改正法の経過措置により、廃止日から最長1年間は使用可能です。政府は段階的にマイナンバーカードと健康保険証の一本化を進め、医療サービスのデジタル化と効率化を行います。

発行済みの健康保険証は最長2025年12月1日まで使用可能

前述したように、2024年12月2日以降、健康保険証の新規発行や再発行は終了しましたが、発行済みの健康保険証は最長で2025年12月1日まで使用できます2)

ただし、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している人は、健康保険証に記載されている有効期限まで現行の健康保険証が使用可能です。多くの場合、有効期限は2025年の7月または8月となっているはずなので、事前に確認しておきましょう。

なお、2024年12月2日以降、転職や引っ越しなどで健康保険証の切り替えが必要になった場合、新しい健康保険証は発行されません。マイナンバーカードの保険証に移行するか、後述する「資格確認書」の発行をすることになります。

マイナンバーカードがない場合などは「資格確認書」で受診可能

それでは、マイナンバーカードを持っていない人はどうすればよいのでしょうか。2024年12月2日以降、加入している医療保険者(健康保険組合や自治体など)から保険資格が確認できる「資格確認書」が送られてきます2)医療機関や薬局で「資格確認書」を提示することで、これまで通りの自己負担割合で診療を受けることが可能です。以下は、「資格確認書」交付の対象者です。

【「資格確認書」交付対象者】

  • マイナンバーカードを持っていない人
  • マイナンバーカードを持っているが健康保険証と紐付けていない人
  • マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れて一定期間経過した人や、カード本体の有効期限が切れた人

なお、資格確認書には有効期限があり、加入している医療保険者によって5年以内で設定されます。詳しい内容は、医療保険者へ確認しておきましょう。

マイナンバーカードの保険証(マイナ保険証)とは?

画像: 画像:iStock.com/ronstik

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マイナンバーカードの保険証は、マイナンバーカードの機能のひとつで、2021年10月から本格運用がスタートしました。「マイナ保険証」とも呼ばれています。

マイナンバーカードを保険証として利用するには、マイナンバーカードと健康保険証を紐付ける必要があります。これは、加入している健康保険が社会保険であっても、国民健康保険であっても同じです。詳しくは後述しますが、スマートフォンやコンビニエンスストアなどで簡単に紐付けることができます。

マイナ保険証の詳しい情報は、以下の記事で解説しています。気になる人は併せてご覧ください。

【関連記事】マイナンバーカードと保険証の紐付け方などについて、詳細はコチラ

そもそもマイナンバーカードとは?

マイナンバーカードとは、マイナンバー(※)が記載された顔写真付きのカードのことです。マイナンバーのほかに、氏名、住所、生年月日、性別などが記載されています。

マイナンバーカードは、本人確認書類として利用できるほか、コンビニで公的な証明書を取得したり、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」を通じて各種行政手続きを申請できたりと、様々な行政サービスにも利用できます。また、2025年3月24日からは運転免許証と一体化させた「マイナ免許証」の運用が開始されるなど、マイナンバーカードの活用が進んでいます3)

マイナンバーカードの取得はあくまでも任意ですが、マイナポイント付与による普及促進の効果もあり、2024年10月30日現在、全国の保有枚数は9,388万977枚に達し、人口に対する保有率は7割以上となっています4)

※:2016年に日本国内で導入された国民識別番号制度。日本の住民票を持つ全住民に付番される12桁の番号のことで、番号正式名称は「個人番号制度」といいます。

社会保険の場合でもマイナ保険証への切り替えは必要?

画像1: 画像:iStock.com/Prostock-Studio

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社会保険に加入している場合、マイナンバーカードと保険証を紐付ける必要はあるのでしょうか。

現在、マイナンバーカードと保険証の紐付けや保険証としての利用は任意です。またマイナンバーカードの発行自体も任意とされています。ただしマイナンバーの登録は義務付けられています。

しかし、2025年12月1日以降は、現行の健康保険証は使用できなくなります。紐付けは任意とはいえ、政府はマイナンバーカードの発行と同時に健康保険証としての利用を推奨しています。

ちなみに、2024年10月30日現在、マイナンバーカードと健康保険証の紐付け数は7,627万2,065件で、保有枚数に占める割合は8割を超えています4)

社会保険の場合、マイナンバーカードと保険証を紐付けたらどうなる?

画像2: 画像:iStock.com/Prostock-Studio

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社会保険に加入している人が、マイナンバーカードに保険証を紐付けした場合について解説していきます。現行の健康保険証の取り扱いや、保険料はどうなるのか確認していきましょう。

【2025年12月1日まで】マイナンバーカードと保険証を紐付けても現行の健康保険証も使える

マイナンバーカードに保険証を紐付けしても、2025年12月1日までは、現行の健康保険証も今までどおり使うことができます。

2023年4月より、医療機関・薬局にマイナンバーカードの保険証への対応(オンライン資格確認の導入)が原則義務付けられました。一方で、政府はマイナンバーカードの保険証に対応できる施設を増やすため、補助金などの支援を行いました。厚生労働省によると、2024年9月29日現在、マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関・薬局は全体の93%です。以下は、マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関ごとの割合になります5)

〈表〉マイナンバーカードの保険証に対応している医療機関の割合5)

病院医科診療所歯科診療所薬局
99.1%92.9%89%96.9%

多数の医療機関・薬局でマイナンバーカードの保険証が利用できますが、まだ対応していない施設も一部ありますので注意しましょう。

マイナンバーカードと保険証を紐付けても保険料や保障内容は変わらない

社会保険に加入している人が、マイナンバーカードと保険証を紐付けても、保険料や保障内容は変わりません。繰り返しになりますが、マイナンバーカードの保険証は、マイナンバーカードに健康保険証の機能が付くだけなので、加入している社会保険には何の影響もありません。

退職や転職をした時はマイナンバーカードの保険証も変更手続きが必要?

転職や退職をすると、今までの健康保険の資格を喪失し、新たな健康保険へ加入をすることになります。その際、新しく加入する医療保険者への加入の届出は必要です。

ただし、マイナンバーカードと健康保険証の紐付けが完了している場合は、転職・退職にともなう再度の登録や変更手続きは不要です6)

マイナンバーカードと保険証の紐付けをしていない場合

2024年12月2日の健康保険証の廃止にともない、新規での健康保険証の発行もなくなります。そのため、転職・退職時にマイナンバーカードと保険証の紐付けが完了していない場合は、以下のいずれかの手続きが必要になります。

  • マイナンバーカードと保険証の紐付け
  • 「資格確認書」の発行

転職後や退職後にマイナンバーカードを健康保険証として使用する場合は、新しい医療保険者への加入手続きに加え、マイナンバーカードと保険証の紐付けも行います。なお、新しい医療保険者の加入手続きは、マイナンバーカードが紐付けされている場合も、紐付けしていない場合も必要です。

また、マイナンバーカードと健康保険証を紐付けしない場合は、「資格確認書」を発行する必要があります。資格確認書は、新たに加入した医療保険者から自動的に送られる場合もありますが、原則的に申請にもとづいて発行されます7)。公的医療保険が利用できない期間を作らないためにも、加入と同時に発行申請しておく方が安心でしょう。

転職時や退職時のマイナンバーカードの保険証の取り扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人はご覧ください。

【関連記事】転職時のマイナンバーカードの保険証の手続きについて、詳細はコチラ

マイナンバーカードと保険証を紐付ける方法

画像: 画像:iStock.com/loveshiba

画像:iStock.com/loveshiba

社会保険に加入している場合でも、マイナンバーカードと保険証を紐付けることができます。手続きは、スマートフォンやパソコン、コンビニでも可能です。ここでは、スマートフォンを使った紐付け方を紹介しますので、参考にしてみてください。

スマートフォンでマイナンバーカードと保険証を紐付ける手順8)

①スマートフォンに「マイナポータルアプリ」をインストールする
②アプリを起動後、「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」の画面から「利用を申し込む」をタップし、申し込みページを開く
③「マイナポータル利用規約」を確認し、「同意して次へ進む」をタップ
④「保険証等利用登録」の画面で「申し込む」をタップ
⑤数字4桁の暗証番号を入力し、スマートフォンでマイナンバーカードを読み込む
⑥申込完了

医療機関や薬局の窓口に設置されている顔認証付きカードリーダーでも手続きが可能ですが、スムーズな受診のためにも、あらかじめ紐付けしておくことをおすすめします。

マイナンバーカードの保険証を使うメリット・デメリット

画像: 画像:iStock.com/78image

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最後にマイナンバーカードの保険証を利用した場合のメリットとデメリットを紹介します。現行の健康保険証と比べて便利になったことや、不便になったことを確認してみましょう。

マイナンバーカードの保険証を利用するメリット

マイナンバーカードの保険証を利用すると、以下のようなメリットがあります。

  • 過去の診療情報などが自動で連携される
  • 高額療養費の「限度額適用認定証」が不要になる
  • マイナポータルから医療情報を確認できる
  • 確定申告の医療費控除手続きが簡単になる
  • 健康保険証の切り替えが短縮される

上記のなかでも、高額医療費の「限度額適用認定証」が不要になるのは、大きなメリットです。以下の記事で詳しく解説していますので、気になる人は併せてご覧ください。

【関連記事】マイナンバーカードの保険証について、詳細はコチラ

マイナンバーカードの保険証を利用するデメリット

マイナンバーカードの保険証を利用する場合のデメリットは以下になります。

  • マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れると、保険証の利用ができない
  • システムの不具合が発生した場合、利用できないことがある

デメリットに関しては、段階的に改善されています。たとえば、以前はマイナンバーカードを紛失した時には、再発行まで1~2カ月程度かかっていましたが、2024年12月からは大幅に短縮され、最短5日程度で手元に届くようになりました2)

なお、マイナンバーカードを紛失して手元にない時に、医療機関を受診したい場合は「資格確認書」が必要です。加入している医療保険者に「資格確認書」の交付申請をするようにしましょう9)

マイナンバーカードの保険証のデメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。気になる人は併せてご覧ください。

【関連記事】マイナンバーカードのメリットやデメリットについて、詳細はコチラ

いずれはマイナンバーカードの保険証が必要になる可能性も

現在、社会保険に加入している人に限らず、マイナンバーカードと健康保険証の紐付けや利用は任意です。しかし政府としては、2024年12月2日以降は、現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードの保険証に移行する方針を示しています。遅かれ早かれ、マイナンバーカードの保険証への切り替えが必要になる可能性はあるということです。

また、マイナンバーカードの保険証は現行の健康保険証と比べると、自身の医療情報をすぐに確認できたり、高額療養費の申請の手間が省けたりと、利便性は高くなります。運用面についても、徐々に改善が進んでいるため、健康保険証の廃止を機会に、マイナンバーカードの保険証への移行を検討するのもいいかもしれません。

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