「育児休業給付金っていくらもらえるの?」
「どうやって計算すればいいの?」
など、育児休業給付金について疑問がある人は少なくないでしょう。特に支給額に上限と下限がある点は、あらかじめ知らないとあとで困ってしまうかもしれません。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・藤井亜也さん監修のもと、出産や育児に臨む人に向けて育児休業給付金について解説します。支給額の基礎知識に加え、2025年4月の制度変更についても説明するので、参考にしてみてください。

※この記事は、2023年8月28日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

画像: 育児休業給付金の上限を解説。2025年4月からは手取りの10割相当に?

藤井 亜也(ふじい あや)

ファイナンシャルプランナー(CFP、FP1級)。独立系FPとして幅広い年代のお客様の相談に対応。一人一人に心を込めて、最適なプランを提案しライフプランを実現。個別相談、セミナー、執筆・監修など幅広く活動中。著書『理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方』(三恵社)、ラジオ番組『未来のためのお金のハナシ』(FM川口)。

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育児休業給付金の上限は最大で月31万5,369円

画像1: 画像:iStock.com/MicroStockHub

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育児休業給付金の支給額は、休業開始時の賃金の67%(育児休業開始から181日目以降は50%)という計算式で算出されます。ただし支給額には上限があり、給付率67%の場合は31万5,369円、給付率50%の場合は23万5,350円です1)。毎月の額面給与が46万円以上の場合、上限額の支給となります。

なお、この支給上限額は毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとにしており、毎年8月1日に変更されることがあります。上述の支給上限額は2024年8月1日以降の金額です。

育児休業給付金の支給要件

画像: 画像:iStock.com/EdwinTani

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育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が原則1歳未満の子どもを養育するために育児休業(育休)を取得した場合、受け取ることができるお金です2) 。受け取るには以下の要件を満たす必要があります。

【育児休業給付金の支給要件】

  • 雇用保険に入っている
  • 1歳未満の子を養育するために育児休業を取得している
  • 育児休業開始前の2年間に、11日以上就業している月が12カ月以上ある
  • 育児休業期間中の各1カ月で、就業している日数が最大10日あるいは80時間以下

雇用保険に入っているのであれば、正社員だけではなく、パートなどの有期雇用労働者や派遣社員でも取得することができます。

育児休業給付金は原則として、会社が2カ月に1度の頻度でハローワークに支給申請を行い、育休中の従業員に2カ月分がまとめて支払われます。育休を取得している期間=給付金が支給される期間です

育児休業給付金の必要書類と申請手順

申請の方法は、まず育休開始予定日の1カ月前までに勤務先に申し出ます。以下が申請の必要書類です。

【育児休業給付金申請の必要書類】

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 育児休業給付受給資格確認票
  • (初回)育児休業給付金支給申請書
  • 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など
  • 母子健康手帳の写し
  • 育児休業給付金振込先の通帳の見開きのコピー

申請する人が勤務先から③の書類を受け取って必要事項を記入し、⑤と⑥を添えて勤務先に提出すると、勤務先が①②④を用意し、まとめてハローワークに書類提出・申請を行います。提出書類が多いので、もれがないように注意しましょう。

育児休業給付金の延長を行いたい場合

保育所などに入れなかったことなどを理由に、育休ならびに育児休業給付金の延長を希望する方もいるでしょう。

これまでは、保育所などの利用を申し込んだものの当面入所できないことについて、市区町村の発行する入所保留通知書などにより延長の要件確認が行われていました。しかし2025年4月からは、これまでの確認に加え、保育所などの利用申し込みが速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります3)。

それにより、育児休業給付金の延長申請をしたい場合には、勤務先に以下の書類を提出しハローワークへ申請してもらう必要があるため、延長を希望される方はチェックしておきましょう。

【育児休業給付金の延長申請に必要な書類】

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行った際の申込書の写し
  • 市区町村の発行する入所保留通知書や入所不承諾通知書

育児休業給付金の計算方法

画像: 画像:iStock.com/Xesai

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育児休業給付金の支給額は以下の計算式2)で算出します。

〈表〉育児休業給付金の支給額

育休開始から180日(6カ月)まで休業開始時賃金日額×支給日数(※)×67%(給付率)
育休開始から181日(6カ月)以降休業開始時賃金日額×支給日数(※)×50%(給付率)

※:原則30日間を1単位として計算する。

賃金日額とは、原則、育児休業開始前の6カ月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額を指し、ハローワークへの申請時に事業主が提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」に記されています。休業を開始した日以前の2年間に完全な賃金月が6カ月に満たない場合は、賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上である6カ月間に支払われた賃金の総額で計算します。

育児休業給付金の計算方法や支給額についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】育児休業給付金の計算方法について、詳しくはコチラ

【2025年4月から】給付金の受給額が手取り10割相当に

2025年4月に改正雇用保険法が施行され、「出生後休業支援給付金」が新設されます。

出生後休業支援給付金とは、「共働き・共育て」の推進を目的に、育児休業中の収入減をカバーする給付金制度4)です。子どもの出生後8週間以内(女性の場合は産後休業後8週間以内)に、本人と配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が育児休業給付金に上乗せして支給されます

育児休業給付金(給付率67%)と出生後休業支援給付金(給付率13%)を合わせて受給すると、最大28日間は賃金額面の80%(手取りで10割相当)の給付金を受給できるようになるのです。

ただし前述したとおり、育児休業給付金には上限があります。2024年8月1日以降の支給上限額は約31万円(給付率67%の場合)ですが、月収46万円の場合にこの支給上限額となります。月収が46万円を超えてくると、手取り10割相当の受給にはならないという点は、認識しておく必要があるでしょう。

育児休業給付金のお金に関するよくある疑問

画像: 画像:iStock.com/Maks_Lab

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振込日や税金など、育児休業給付金のお金に関するの「よくある疑問」について、以下で解説します。

Q1育児休業給付金はいつ振り込まれるの?

育児休業給付金は原則として2カ月に1回、会社が支給申請を行います。初回の申請は育休開始から2カ月経過後、4カ月を経過する日の属する月の末日までです。

支給申請を行うと、支給の可否と支給額が記載された「育児休業給付金支給決定通知書」が交付され、会社から自宅に届きます。そして支給決定日から約1週間〜10日後に指定した口座に振り込まれます。振込日は特に日付が決まっているわけではありません。

Q2育児休業給付金から税金や社会保険料は引かれるの?

育休期間などにおける社会保険料の免除要件は2022年10月1日に改正されました。これ以降に育休を開始した場合、開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの社会保険料は免除になります5)。また、ボーナスについては、賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える期間を取得した場合に限り、免除の対象となります。

また、育児休業給付金は非課税のため、所得税はかからず、翌年度の住民税算定額にも含まれません。収入が給付金だけで給与所得がなければ、雇用保険料も発生しません

Q3育児休業期間中のボーナスはもらえる?

原則として、育休期間中であっても、ボーナスは支給されます。ただし、就労していた場合と同額が支給されない可能性があります。ボーナスの対象となる算定期間や評価基準は会社によって就業規則で定められているので、支給要件を確認しましょう。

また、給与が年俸制でボーナスが給与の一部として支払われる場合、ボーナス額と給与が明確に区分できないため、“一定額以上の給与を受け取った”とみなされて、育児休業給付金が減額される恐れがあります。年俸制の人は注意しましょう。

Q4 2025年4月の育児・介護休業法改正は、育児休業給付金に影響はある?

画像2: 画像:iStock.com/MicroStockHub

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2022年・2023年に改正された育児・介護休業法ですが、2025年4月にも改正が予定されています。

今回の改正は、育休取得率を上げるための企業の手続き義務設定、残業免除の対象の拡大、育児のためのテレワーク導入の努力義務化、子どものための看護休暇制度の拡充などを目的として行われます6)

そのため、本改正は育児休業給付金の支給額には影響がありません。ただし、子育てにおいて休暇を取得しやすくなることで、育児休業給付金を申請する人が増えることが考えられます。

育児・介護休業法の改正についてもっと知りたい人は、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】育児・介護休業法の改正内容について、詳しくはコチラ

年収が多いほど支給上限額の影響を受ける

画像: 画像:iStock.com/maroke

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育休期間中は給付金が出るとはいえ、支給上限額が決まっているため、年収が多い人ほど、就労している期間に比べて、収入が減ってしまうことになります。だからといって早急な復帰を目指しても、保育施設探しなどで育休を延長せざるを得ない場合もゼロとはいえません。経済的に困らないように、産休や育休に入る前にその期間の資金繰りを計画的に考えたり、配偶者と交代で育休を取ったりするなど、工夫するのが得策でしょう。

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