共働き夫婦がそれぞれどのくらいの割合で家事を負担しているのか、夫婦問題カウンセラーの高草木 陽光さん監修のもと紹介します。同時に、共働き夫婦が上手に家事を分担するコツや、家事の負担を減らす具体的な方法についてもまとめました。
「家事に疲れた……」「仕事から帰ったら何もしたくない……」そんなふうに思うことの多い人は、まずは義務感をひととき忘れて、心身を休めましょう。この記事を参考にどうすればうまく家事負担を減らせるか考えてみてください。
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共働き家庭の家事負担割合
共働き家庭では、育児や家事を夫婦で分担して行う場合が多いでしょう。しかし現実問題、その割合については夫婦間で平等というわけにはなかなかいかないようです。
家事負担割合の理想と現実
共働き家庭の家事分担については、「どちらも働いているのだから5:5が理想だ」と考えている人も多いでしょう。では、現実はどういった割合になっているのか、参考資料をもとに見ていきます。
以下は、内閣府の「令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査」1)のデータをもとに、共働き夫婦の家事時間をまとめたグラフです。
〈図〉共働き夫婦の1日あたりの家事時間(妻がフルタイムの場合)
〈図〉共働き夫婦の1日あたりの家事時間(妻がフルタイム以外の場合)
妻がフルタイムで働く家庭の場合は約2倍、妻がフルタイム以外で働く家庭の場合は、休みの日の時間で見ると約4倍、妻の家事時間が長くなっています。加えて、妻がフルタイムかフルタイム以外かに関わらず、休みの日の家事時間にも差があることが読み取れます。データから見ても、夫婦の家事時間に大きな差があることがわかるでしょう。
つぎに、家事の負担割合についてのデータを見てみましょう。こちらは夫婦がそれぞれ「自分が担っていると思う家事の割合」を回答したものです。
〈図〉共働き夫婦の家事負担割合
妻がフルタイムで働く家庭ではおよそ6:4(妻:夫 以下同)、妻がフルタイム以外で働く家庭ではおよそ8:2の割合となっています。妻がフルタイムで働く家庭では、時間で計算した割合よりも、感じられている割合のほうが夫の分量が多くなっています。このように、実際の家事時間での割合と、感覚での割合には差がある可能性もあるでしょう。
また同調査によると、子どもがいる家庭では育児に割く時間が増えることでトータルの家事時間も増え、特に妻側の「家事時間を減らしたい」と感じている割合が多くなる傾向があります。
共働きの子育て事情については、以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
【関連記事】共働きの子育ての実情とは? 少しでも育児の負担を減らす方法など詳しくはコチラ
家事負担割合に対する夫婦の満足度
2020年に株式会社クレハが行った「「共働き夫婦の家事シェア事情」に関する実態調査」2)によると、小学生以下の子どもがいる20〜40代の共働き夫婦の場合、家事・育児に対する満足度は以下のようになっています。
〈図〉共働き家庭の家事・育児に対する満足度
夫の84.0%が満足しているのに対し、妻の満足度は60.5%にとどまっています。夫に比べ妻のほうが不満を抱えていることが、データからも読み取れます。
夫婦間の認識のズレ
妻の満足度が夫よりも低い原因のひとつとして、夫婦間の認識のズレがあります。共働き家庭の家事について、耳にすることの多い「夫はやっていると思っているけど、できていない」(妻側の主張)、「十分やっているのに、妻が認めない」(夫側の主張)という意見はこの認識のズレによるものが多いでしょう。
夫自身が「十分やっている」と感じていても、前述のデータのように、夫は妻よりも家事時間が少ない傾向があるのは事実です。この認識のズレをなくすためには、十分な夫婦間の話しあいが必要でしょう。
家事分担が原因で夫婦喧嘩につながることも
夫婦喧嘩の原因として、最も多いもののひとつが家事分担に関することでしょう。前述したように、夫婦間の認識のズレが生じやすいため、どちらかが些細なことと思っていても喧嘩の引き金になる場合もあります。
家事分担に関する、妻と夫それぞれのよくある言い分には、以下のようなものが挙げられます。
妻の言い分
- 共働きなので、夫にも同じくらい家事をしてほしい
- 言わないと何もしてくれない
- 夫は家事を自分ごととして捉えていない
- 夫の家事手順は粗が多く、結局やり直さないといけない
- 妻が家事をするのが当然だという夫の態度がイヤ
- 夫は家事を部分的にするだけで、“流れ”として捉えていない
- 夫は複数の家事を同時進行できないので時間ばかりかかる
このように共働きの妻は、夫に対して「同じ割合で家事をしてほしい」「自分から進んで家事をしてほしい」といった希望を持っている場合が多いでしょう。
夫の言い分
- 自分のほうが稼いでいるので、家事は妻に多くやってほしい
- 仕事で疲れている
- 自分のペースで家事をしているのに急かされると何もしたくなくなる
- お互いにやりたくない家事やできないことは外注すればいいのに妻が反対する
- やってほしい家事があったら黙っていないで言ってほしい
- 指示や指摘は、もっとやさしく言ってほしい
- 妻は家事のやり方にこだわりがあるようで、間違うと怒られる。でも聞いても教えてくれないので、どうしたらいいかわからない
- 家事はしているが、妻と同じレベルを求められるのが苦痛
夫側によく見られる意見としては、「自分は仕事を頑張って金銭的な部分を負担しているから、家事は妻に負担してほしい」「家事をやる気はあるので、やり方やペースは多少任せてほしい」というものでしょう。
しかしながら前者については、女性の平均賃金が男性よりも低い3)中で「夫婦で同じだけ収入があれば家事も平等になる」というような考え方は、現実的ではありません。共働きであれば夫婦ともに仕事で疲れているのは同じです。喧嘩に発展しないためにも、それぞれの言い分は話しあいの上で解決していきましょう。
共働き家庭におけるお金と家事の関係
共働き家庭の家事負担のバランスを考える上で、避けては通れないのが、お金と家事の関係です。
たとえば夫が働いて稼ぎ、妻が家で家事をする、という専業主婦家庭であれば、妻のほうが家事を多く負担する家庭は多いかもしれません。しかし、共働きの場合は一概に「収入の割合と同じバランスで家事を負担する」と決めることはおすすめできません。その理由を説明していきます。
共働き家庭の年収
2021年の総務省統計局「家計調査 家計収支編」4)によると、共働き家庭の平均給与は、男性が月収45万6,579円(年収約548万円)、女性が月収15万9,732円(年収約192万円)と、夫婦間で大きな差があります。
これは、平均賃金が女性よりも男性のほうが高い3)ことや、妻は出産などで働けない時期があること、そもそも家事や育児のためにフルタイムで働けない場合があることなどが原因と考えられます。
このような状況の中で、単純に収入の割合に応じて家事負担を決めるというのは、公平とはいえないでしょう。
共働き家庭のお金事情については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】共働きの年収はいくら? 夫婦別の金額など詳しくはコチラ
参考資料
家に入れるお金と家事
共働きの家庭において、男女間の収入の差があることがわかりました。では、家に入れるお金と家事の関係はどのように考えればいいのでしょうか。
共働き夫婦の家計管理方法は、主に以下の3種類です。
①夫婦の収入をすべてまとめて管理する
②夫婦がそれぞれ決まった額を出しあって、その中で生活する
③家計の項目別に、決まったものをお互い負担する(妻が生活費、夫が家賃と光熱費、など)
②と③の家計管理方法の場合、負担している金額に応じて家事の割合を決めるという方法もあります。前述のとおり、女性が男性と同じだけ稼げる環境にない場合もあるため、一概に公平なやり方とはいえませんが、ある程度納得できる決め方だといえるでしょう。
とはいえ、当初そのように決めていたとしても、家事の負担割合はお金と違って可視化することが難しいでしょう。たとえば妻側からすると「自分は夫が入れる生活費の半額を負担しているが、夫は私の半分も家事をしていない」と感じることもあります。一方で、夫側からすると「自分は妻の倍も生活費を入れているのに、家事も手伝っている」と感じていることもあり、そういった不満を解消するためには、お互いが納得のいく家事分担が必要です。詳しくは後ほど説明します。
共働き家庭の家事で、妻がつらくなる理由
これまで紹介したように、共働きの家事分担では、妻側の負担が大きい傾向にあり、不満を感じたり、ストレスをためてしまったりすることが多くなっています。妻が「つらい」と感じることが多いのは、なぜなのでしょうか。解決策を考えるためにも、理由を紐解いてみましょう。
名もなき家事が多い
代表的な「家事」には、「料理・洗濯・掃除」などがあります。それでは「料理」に含まれるのは、どこまででしょうか。
たとえば普段あまり料理をしない夫が「料理を担当する」と言った場合、作っただけ、あるいは片付けまで、ということが多いのではないでしょうか。一方普段から料理を担当している妻は、日々の食材の買い出しや食費の管理、調味料のストックの把握、食材の賞味期限の管理、家族の栄養管理、適切な時間に食事がスタートできる環境づくり、といったことまで考えて動いていることもあるのです。
同じ家事をとっても、主に担っている人とそれ以外の人では、負担感がまったく違います。これは、そのほかの家事についてもいえることです。
たとえば、「ご近所付き合い」「衣替え」「郵便物を取って管理する」「資源ごみをまとめて捨てる」といった様々な細かい家事は山のようにあります。
このような多くの家事は、そもそも「誰がやる」という話しあいが行われることもなく、当たり前に妻が行う場合も多く、負担につながっていきます。
罪悪感を抱いてしまう
共働き世帯が専業主婦世帯を上回ったのは、1997年のことです5)。現在家庭を築いている人の多くは、専業主婦家庭や、女性が家事をするのが当たり前の家庭で育っているのではないでしょうか。
こうした子ども時代の環境などが、「自分が家事をやらないと」という強迫観念につながってしまうこともあります。結婚をするということは、夫婦で新たな家庭を築くということですし、そこに生まれた子どもは、夫婦が同じように責任を持ち、扶養していくべき存在です。
妻だけが家事や育児を担う理由はないにも関わらず、妻自身がそう思い込んでしまうことから、負担を軽くすることができず、つらい気持ちやストレスばかりがたまっていってしまうこともあるのです。
参考資料
夫の行動が結婚前と変わる
稀な事例ではありますが、中には、結婚前に「家事は分担するから、仕事を続けてほしい」と言っていた夫が、結婚後に「家事に専念してほしいから仕事を辞めてほしい」と言い出したり、当たり前のように妻に食事や掃除といった家事を求めるようになったりすることもあります。こうした夫の変化も、妻の負担が増えてしまう要因のひとつです。
家事分担がうまくいっている共働き家庭はどうしている? 上手な家事分担方法
ここまで共働き家庭の家事問題について紹介しましたが、一方で世の中には、夫婦でうまく家事を分担し、円満な家庭を築いている共働き夫婦もたくさんいます。家事の負担をうまく分担するためには、どうすればいいのでしょうか。その方法を紹介します。
家事を「見える化」している
どのくらいの家事をしているのかがはっきりしないと、お互いに「自分はたくさん家事をしている」と主張して、実情が見えなくなる可能性が高いでしょう。
まずは、やらなければいけないと思っている家事を夫婦で書き出してみてください。その上で、どのくらい時間がかかるか、どのくらいの頻度で行うか、今は誰がやっているのか、といったことを書き入れていくと、実際にやらなければいけない家事と負担を可視化できます。
以下は、内閣府の男女共同参画局が配布している「○○家作戦会議」の中のチェックリストです。家事の「見える化」に役立つでしょう。
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/pdf/sakusenkaigi_03.pdf
分担表を活用している
あらかじめ家事の分担表がつくられていれば、どちらが行うかでもめることはありません。家事を「見える化」したら、次に、誰がそれを行うのか、分担表をつくってみてください。
スケジュールを共有している
適切な家事分担を行うためには、お互いのスケジュールの共有も大切です。
「来週は、○曜日と○曜日が遅くなる」「今月は7日が早出で、20日から25日は繁忙期で残業になりそう」など、お互いのスケジュールを細かくすり合わせておけば、どの日に誰が家事をするのが適切か、計画を立てやすくなります。
共働きの家事が楽になる! 即実践できる時短テク
共働きの場合、家事にかけられる絶対的な時間がそれほど多くないので、そもそもの家事負担を減らす工夫も効果的です。すぐに実践できるテクニックを紹介します。
時短家電を活用する
自分たちですべての家事をやる必要はありません。最近では、新三種の神器として、家事の手間を減らせる「ロボット掃除機」「食器洗い乾燥機」「ドラム式洗濯乾燥機」が挙げられるなど、便利な時短家電がたくさんあります。共働きの強みは収入が多いということでもあるので、生活を助けてくれる家電は積極的に取り入れて、家事に時間をかけない暮らしを目指しましょう。
冷凍食品やミールキットを活用する
カット済みの野菜や味付きの肉類など、手間を減らして料理ができる冷凍食材や、炒めたり煮たりするだけで完成するミールキットなどは、忙しい日の調理の手間や、メニューを考える手間を大幅に削減してくれます。「料理は一から作らないと!」と気負わずに、使えるものは使いましょう。
速乾性&シワになりにくい服を買う
アイロンが必要な服や、乾くのに時間がかかる服、手入れの大変な服は、忙しい共働き家庭にとっては負担になることもあります。普段の通勤や日常生活で着る服は、できるだけ手入れがいらない素材のものを選びましょう。
洗濯物をたたむのはセルフ方式にする
洗濯物を取り込んだあとたたむのは、家族それぞれにやってもらうと手間が省けます。家族の人数分の専用カゴを用意して、分類までを洗濯担当者がやり、その後は各人のタイミングで行いましょう。うまく定着すれば、洗濯のひと手間を減らせます。
100均グッズを活用する
100円均一には、家事を楽にしてくれるグッズがたくさんあります。たとえば、詰め替え用のシャンプーパックをそのまま入れて使えるシャンプーボトルや、排水口のぬめりを防止してくれるアイテム、調味料を必要な分だけ効率よく取り出せるケースなどです。
このようなグッズの活用も、細かい家事時間の削減につながるでしょう。
共働き夫婦が円満に家事を分担するコツ
最後に、上手に家事を分担して、夫婦円満に暮らすためのコツを3点紹介します。すぐにできることなので、ぜひ実践してみてください。
感謝を伝える
お互いに感謝の気持ちを持つことは、夫婦円満の秘訣です。家事に限ったことではありませんが、ちょっとしたことでも「ありがとう」という気持ちを持ちましょう。また、言葉で感謝を伝えることも大切です。
2人とも何もしてはいけない日をつくる
時には「家事をせず、休む」日もつくりましょう。お互い仕事で忙しい中、家の用事も行うわけですから、息抜きもしないとストレスがたまってしまいます。
子どもがいて難しい場合は、同じ日ではなく別の日に、それぞれ休むようにしてもいいでしょう。
話す習慣をつける
日常的に会話が多い夫婦は、お互いの意思の疎通がうまくいきやすいでしょう。家事についての希望や、大変なことなども話しやすくなります。
面と向かって話す時間をとりにくい場合は、SNSやチャットツールなどを活用するのもおすすめです。
まとめ
お互いの物理的なサポートももちろん大事ですが、それよりも大事であるにも関わらず、多くの夫婦に足りていないことは「精神的なサポート」(感情に寄り添う・思いやり)です。
決して難しくはないシンプルなこと……日頃の感謝の気持ちを言葉に出して伝える、相手の話に耳を傾けるなど、いわゆる「コミュニケーション・対話」こそが重要なのに、そのコミュニケーションの重要性を軽く見ている夫婦も少なくないため、本来の夫婦にとって大切なことである「気持ちに寄り添う“姿勢”」を見失っている人も多いのです。
結婚した時は「好きな人と一緒に幸せな家庭を築きたい」と考えた人がほとんどでしょう。お互いを大切に思う気持ちを忘れずに、笑顔で過ごせるように話しあいの時間を持ってみてください。家庭は2人で守るものですから、協力しあって、お互いが暮らしやすい環境を整えましょう。
この記事を読んでいただくことで、共働き夫婦が本当に重視しなければいけない“本質”に気がついてくれる人が増えたらいいなと思っています。