「生活費は、いくらに収めるべき?」
「どうすれば生活費を節約できるの?」
といった悩みもあるでしょう。この記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん監修のもと、2人暮らし夫婦の生活費の平均や内訳のバランス、生活費シミュレーションなどをご紹介します。併せて、節約テクニックについてもお伝えしていきます。
【注】この記事では、税金や社会保険料などを除いた“消費支出”のことを「生活費」と表現しています。家賃や水道・光熱費、食費などは含んでいますが、貯蓄や資産運用への投資金額などは含んでいないのでご承知ください。
※この記事は、2022年9月16日に更新しています。
この記事の監修者

氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
2人暮らし夫婦の生活費の平均は約28万円/月

画像:iStock.com/takasuu
まずは、2人暮らしの生活費の平均をご紹介しましょう。総務省の「家計調査年報(家計収支編)2021年」1)から、2人暮らし世帯のデータを参考に見ていきます。
【注】「家計調査年報」の調査対象には、持ち家がある世帯が含まれているほか、住宅ローンを消費支出に含めていないといった理由から「住居」の金額が低めになっています。
1カ月・1年間の生活費の平均は?
1世帯に住んでいる2人のうち、両方または世帯主のみが働いている勤労者世帯の調査結果を抽出し、全体の月額の平均を計算してみました。
20代から50代までの2人暮らし(勤労者世帯)全体の、毎月の実収入(額面月収)の平均は52万8,469円です。税金や社会保険料などの非消費支出は10万839円なので、実収入から非消費支出を引いた手取りの月収額は42万7,630円となります。
一方、生活費(税金や社会保険料などの非消費支出を除いた消費支出)の平均は28万2,807円となっています。
〈表〉2人暮らしの手取り月収と生活費の平均(20代~50代/勤労者世帯)
手取り月収(実収入−非消費支出) | 42万7,630円 |
---|---|
消費支出(生活費) | 28万2,807円 |
2人暮らしの場合、手取り月収の約66%が生活費にあてられています。この比率を、月収に対する生活費の割合の目安と考えてもいいでしょう。
ちなみに該当する統計資料がありませんが、2人暮らしの1カ月分の生活費の平均を12倍すると339万3,684円です。これを1年間の生活費の平均の目安と考えていいでしょう。
この10年間で2人暮らしの生活費はどう変わった?
この10年間で、2人暮らしの生活費の平均はどのように変わったのでしょうか? 同じく「家計調査年報(家計収支編)」の、過去10年分(2012年から2021年まで)のデータをまとめてみました。
〈図〉2人暮らしの手取り月収と生活費の過去10年間の推移

過去10年分のデータを見ると、2012年の生活費の平均が28万1,315円であるのに対し、2021年の平均は28万2,807円となっており、大きな変化はありません。一方、2012年の手取り月収の平均が37万7,904円であるのに対し、2021年の平均は42万7,630円と上がっています。
手取り月収に対する生活費の割合を計算すると、2012年は74%で2021年は66%と、生活費が占める割合が大きく下がったことがわかります。
これには、主に以下の2つの原因が考えられます。
①共働き世帯の増加
2人暮らし世帯の有業者率を、同じく「家計調査年報(家計収支編)」の2012年と2021年で比較したところ、2012年が1.44人なのに対し、2021年は1.52人となっています。つまり共働きの世帯が増えていることになり、世帯の収入が増加傾向にあることから相対的に生活費の割合が下がったと考えることができます。
②コロナ禍の影響
グラフを見ると、手取り月収に対する生活費の割合は、2020年以降に大きく下がっていることがわかります。これは、コロナ禍の影響により生活様式が変わったことも一因と考えられます。
たとえば生活費の内訳を比較すると「被服及び履物」の支出は、2012年が1万1,540円なのに対し、2021年は7,955円と減少。また、「教養娯楽」も2012年が2万6,907円なのに対し、2021年は2万3,424円と減少しています。これは、コロナ禍で外出の機会が減ったからと考えられます。
なお、一人暮らしから家族4人暮らしまで、すべての世帯の生活費の平均や内訳を知りたい人は、以下の記事も併せてご覧ください。
【関連記事】【人数別】世間の生活費の平均はいくら? 理想の内訳も解説!
参考資料
2人暮らし夫婦の生活費の内訳は?
続いて、2人暮らしの生活費の内訳を見てみましょう。「食料」が占める割合が24%と最も大きく、続いて「交通・通信」の費用が高くなっています。
〈表〉2人暮らし夫婦の手取り月収と生活費の平均(20代~50代/勤労者世帯)
手取り月収 | 42万7,630円 | |||
---|---|---|---|---|
消費支出(生活費) | 28万2,807円 | |||
生活費の内訳 ※赤字は全体の支出に対する割合 | 食料 | 6万7,170円 | 24% | |
住居 | 2万4,273円 | 9% | ||
水道・光熱 | 1万8,476円 | 7% | ||
家具・家事用品 | 1万1,829円 | 4% | ||
被服及び履物 | 7,955円 | 3% | ||
保健医療 | 1万3,452円 | 5% | ||
交通・通信 | 4万8,715円 | 17% | ||
教育 | 1,023円 | 0% | ||
教養娯楽 | 2万3,424円 | 8% | ||
その他の消費支出 | 6万6,492円 | 24% |
FPが教える! 2人暮らし夫婦の理想的な生活費の内訳バランスは?

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2人暮らし夫婦の家計は、子どもの教育費や育児の費用がない分、比較的余裕がある場合が多いでしょう。たとえば、その分の余裕を趣味に使っているケースもあるはずです。
しかし、現在は子どもがいなくても、将来的には子どもがほしいと考えている場合もあるでしょうし、そうではなくても老後のために準備は早くするに越したことはありません。余裕があるうちに、しっかり将来への備えをしておいたほうがいいのです。
そのために実践していただきたいのが、生活費の見直しです。具体的には、将来へ備える分をあらかじめ考慮に入れて、収入に対する生活費の割合を決めることから始めましょう。ここでは生活費だけに注目するのではなく、毎月の手取り月収に対する支出の理想的なバランスをご紹介します。
〈表〉2人暮らし夫婦の理想の支出バランス(監修者作成)
費目 | バランスの目安 |
---|---|
住居(家賃/住宅ローン) | 手取り月収の20~25% |
食費 | 手取り月収の15%以内 |
通信費 | 1万~1万5,000円程度 |
水道光熱費 | 1万5,000~2万円程度 |
交通費 | ライフスタイルや収入に応じて調整 |
保険料 | |
雑費(日用品費など) | |
小遣い | |
不定期な支出 | 手取り月収の10%程度 |
貯蓄 | 手取り月収の10%以上 |
①住居(家賃/住宅ローン):手取り月収の20~25%
前述の「家計調査年報」1)では、「住居」の金額が低めになっていますが、手取り月収の20~25%が、家賃や住宅ローン(マンションの管理費や修繕積立金を含む)を無理なく支払える範囲だといえます。ちなみに、国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」2)によれば、住宅ローンの平均返済額は全国平均で約11万6,000円、三大都市圏平均で約14万円となっています。
②食費:手取り月収の15%以内
手取り月収に対して食費が占める割合は15%以内が適切といわれています。ただし、外食を多くしたい、食の質にこだわりたいなど、ライフスタイルによって食費のバランスは、ある程度調整してもいいでしょう。
③通信費:1万~1万5,000円程度
「家計調査年報」1)によれば、2人暮らしの「通信」の費目の平均額は1万3,515円となっています。スマホの格安通信プランを利用すれば、1人あたり5,000円程度に抑えることが可能です。なお、自宅で利用するインターネット回線も加えると、1万5,000円程度となります。
④水道光熱費:1万5,000~2万円程度
「家計調査年報」1)によれば、「水道・光熱」の費目の平均額は1万8,476円ですから、だいたい2万円以内を目安と考えればいいでしょう。
⑤不定期な支出:手取り月収の10%程度
冠婚葬祭にかかる費用や帰省費用、家具家電の買い替えなど、毎月ではなく不定期であるものの年単位でみれば発生する可能性が高い支出については、毎月積み立てをしておくと家計の管理がしやすくなります。金額は手取り月収の10%程度が目安となります。年末に余った金額を貯蓄にまわすことも可能です。
⑥貯蓄:手取り月収の10%以上
将来子どもを育てることや、老後の備えを考えると、少なくとも手取り月収の10%は貯蓄にまわしたほうがいいでしょう。あらかじめ割合を決めておけば、給与が振り込まれた時点で「先取り貯金」もしやすくなります。
⑦交通費、保険料、雑費、小遣い
交通費、保険料、雑費、小遣いは、ライフスタイルによって調整が必要になる支出といえます。具体的な目安がある費目を先に計算してから、残りの金額で配分を考えるといいでしょう。
【関連記事】夫婦二人の生命保険料の平均は? 共働きや片働き・年代ごとに分けて解説!
参考資料
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【手取り30万円】2人暮らし夫婦の生活費シミュレーション

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それでは、ここまでに提案したバランスを踏まえて、2人暮らし夫婦の生活費をシミュレーションしてみましょう。ここでは、例として20代2人暮らし夫婦で手取り月収約30万円の世帯でシミュレーションします。
〈表〉2人暮らし夫婦(手取り月収約30万円)の生活費シミュレーション
手取り月収 | 約30万円 |
---|---|
住居(家賃/住宅ローン) | 8万円 |
食費 | 4万5,000円 |
通信費 | 1万円 |
水道光熱費 | 1万5,000円 |
交通費(自動車維持費含む) | 1万円 |
保険料 | 1万円 |
その他(日用品や小遣いなど) | 4万円 |
不定期な支出 | 3万円 |
貯蓄 | 6万円 |
20代の2人暮らし夫婦と考えた場合、子育てやマイホームの準備期間にあたることが多いので、貯蓄にまわす金額を20%程度確保しました。また、お付き合いの機会も年齢に応じて増えることを考え、不定期な支出を10%程度としています。
通信費にはスマホ代のほか、自宅で利用するインターネット回線の費用も含んでいます。交通費1万円では自動車の維持管理費などがまかなえない場合には、住居費や小遣い、不定期な支出などと調整してもいいでしょう。
2人暮らし夫婦が実践したい、5つの節約術

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2人暮らし夫婦が押さえておきたい節約術をいくつか、ご紹介しましょう。
節約術①各種の控除や制度を活用する
国や自治体などが用意している控除や制度を利用し、納める税金の額を減らすのは、節約の基本となります。
たとえば、もしマイホームを購入している場合には住宅借入金等特別控除のほか、住民税の節約につながる生命保険料控除やふるさと納税、老後資金の積み立てにも役立つiDeCoなどが挙げられます。
【関連記事】結婚で税金が安くなるって本当? 共働きの場合は? FPが解説するメリット&税金対策
節約術②通信費、ネットサービスの見直しをする
現代の暮らしに欠かせないスマホ代や動画配信などのネットサービス代は、家族会員(家族アカウント)の契約をすることで、個別契約よりも安くなる場合が多いです。個別にサービスを利用している場合は、契約形態を見直してみましょう。
節約術③保険の見直しをする
結婚式を挙げたばかりで生活防衛資金が十分でなかったり、病気やケガなど、万が一の支出に備えたいと考えたりしている夫婦の場合、民間の保険の加入や見直しを検討しましょう。ただし、必要以上の保障内容にする必要はありません。もしすでに加入している保険の保障が手厚すぎると感じたら、保険の見直しを行い、節約につなげましょう。なお、医療保険や生命保険など、民間の保険に加入していると、生命保険料控除を受けられるメリットがあります。
節約術④家計簿アプリを活用する
生活費のやり繰りが上手な人たちに共通する傾向として、家計簿アプリを使い収支を小まめにチェックしていることが挙げられます。データの共有ができる家計簿アプリなら、夫婦で一緒に収支のチェックを行うことも可能です。何にどれくらいお金を使っているのかが「見える化」できれば、節約しやすくなるでしょう。
節約術⑤シニア夫婦向けのサービスも活用してみよう
たとえば、50歳以上から利用できるJR東日本の「大人の休日倶楽部」のように、一定年齢以上の男女が利用できるお得なサービスを夫婦で活用すれば、レジャー代などの節約につながります。このほか、夫婦向けの特典があるサービスなどを一緒に調べてみましょう。
暮らしに余裕がある2人暮らし夫婦こそ、早めの将来設計を心掛けよう

画像:iStock.com/kokoroyuki
2人暮らしの夫婦で、特に共働きの場合は収入に余裕があるため、ついつい生活費の管理がルーズになってしまいがちです。将来のことを考えて、余裕があるうちにしっかりと家計を管理し、貯蓄にまわすお金をつくっておきましょう。
そのための第一歩は、夫婦一緒に家計の管理を行い、ライフプランについても定期的に話し合うことです。2人の明るい未来のためにも、家計は夫婦で管理するもの、という意識を忘れないようにしましょう。