新年や年度初めなど節目のタイミングで記帳を始めようと考える人が増える家計簿。しかし、「やはり苦手意識がある…」「長く続かない…」という人も多いのではないでしょうか。そこで、“挫折せず、効果も出る”というテーマのもと、ファイナンシャルプランナー・大木美子(おおきよしこ)が家計簿のつけ方を解説。家計簿をつける目的を再確認したうえで、その目的に合った書き方の手順を詳しく紹介します。過去に家計簿が続かなかった人は、改めて使い方を見直してみましょう。

この記事の監修者

大木美子(おおきよしこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、行政書士。
家計簿歴36年の中で培った経験と会計ベースの理論を家計簿に取り組み、家計管理に悩む人向けの相談業務を行う。新聞、雑誌への取材協力の他、講演、勉強会などの講師も務め意欲的に情報発信を行っている。FP資格取得問題集の執筆も手掛ける。現在は、家計簿インストラクター講座を開設し、「家族が笑顔で暮らせる家計管理」をモットーに、家計簿術の普及に奔走している。
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家計簿をつけるメリット

画像1: 画像:iStock.com/miya227

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家計簿をつけるメリットは、お金の流れを“見える化”できる点です。

お金が貯まらない人のなかには、支出額を正確に把握していない人が多くいます。わが家の食費は大体8万円と認識していても、実際はそれ以上使ってしまっている場合が多く見受けられます。

しかし、お金の流れを書き出し、記録することで、お金がない原因を認識できるようになるのです。

家計簿が続かない原因は、家計簿をつける目的とその手段(書き方など)が一致していないから

画像2: 画像:iStock.com/miya227

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家計簿をつけるのであれば、継続することが大事です。しかし、いざつけ始めても途中で挫折してしまう人もいます。その大きな原因は、「家計簿をつける目的とその手段(書き方など)が一致していないから」と考えられます。

家計簿を使用する多くの人は、“家計簿をつけること”が目的になってしまっているのです。これまで家計簿に挫折したことがある人は、次のように思ったことがあるのではないでしょうか?

  • 毎日つけなければならない
  • きちんと書かなくてはならない
  • 費目を正確に分けなければならない
  • ムダを減らさなければならない
  • 帳簿とお財布の現金を合わさなければならない
  • 日付順に書かなければならない

家計簿をつけ続けられない人は、真面目な人が多いです。「●●をしなければならない」という気持ちに押されて完璧を目指し、次第に家計簿をつけることが苦しくなり、結果的に挫折してしまいます。

多くの人が家計簿をつける目的は「貯金を増やす」「家計に余裕をもたせる」ことですよね。

本来、目的を達成できれば、費目の設定や書き方などはどうでもいいはずですが、手段にこだわることで手間が多くなり、労力を費やしてしまいます。結果として、家計簿が続かなくなってしまうのです。

家計簿をつけ始めたら、本来の目的を見失わないように気をつけましょう。

続けられて、効果も出る家計簿のポイント

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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家計簿が続かない理由については先ほど述べましたが、本記事では、手間を極力減らしても、きちんと貯金ができるようになる、または家計の収支バランスが整う家計簿のつけ方をお教えします。

ポイントは、「家計簿にかかる日々の手間を極力減らすこと」「自分の家計に合った家計簿を作り、活用すること」です。

日々の手間を極力減らすために、次のことを意識しましょう。

<家計簿の手間を減らす方法>

  • 意味のない事柄は記入しない(購入店名、購入品目名と金額 など)
  • 費目を細かく分けすぎない
  • 書き方にこだわらない(毎週末に残高を記入する、見栄えを気にして何度も書き直す など)

そして、効果が出る家計簿のためには、自分の家計に合った家計簿を作ることが重要です。以下のような家計簿のつけ方・活用の仕方をしましょう。

<効果が出る家計簿の作り方・使い方>

  • やりくり費の予算を立てる
  • 立てた予算内でお金を使えているかを確認する

家計簿で最大限効果を得るのであれば、事前に立てた予算をもとに、計画通りにやりくり費を使えているかどうかを確認する使い方をするべきです。すると、支出が収入を上回ることなく、バランスの良い家計運営ができるようになるでしょう。

予算を立てる前に、まずは家計の見直しを!家計の見直しについての基礎知識はコチラ

最初だけがんばろう。年に1回行う“仕込み”が肝心

ここからは、具体的な家計簿の書き方を紹介します。最初の“仕込み”さえしてしまえば、簡単に、確実に収支のバランスを整えられる家計簿を作ることができます。この仕込みは1年に1回行えばOK。それでは、具体的な方法を見ていきましょう。

家計簿の仕込みに必要なもの

・通帳
収支が記載されているすべての通帳を用意してください。

・家計簿
固定費・変動費・やりくり費をまとめて記入する家計簿です。
ご自身でノートに線を引いて作ってもいいですし、下記のテンプレートを参考にエクセルで作成して印刷し、ノートに貼り付けたりバインダーに綴じたりしてもいいでしょう。

画像: 家計簿の仕込みに必要なもの

(手順1)支出を固定費・変動費・やりくり費の3つに分ける

家計簿をつける際は、わが家の支出を固定費・変動費・やりくり費の3つに分けてみましょう。

固定費とは、毎月同額の支出があるもの(住居費、小遣い、生命保険料など)です。一方変動費とは、毎月支出があるものの、金額に変動があるもの(水道光熱費、ガソリン代、通信費など)。やりくり費は、前述以外の生活費で、手許でやりくりするもの(食費、日用品費、医療費など)です。

〈図〉固定費・変動費・やりくり費の分類

画像: (手順1)支出を固定費・変動費・やりくり費の3つに分ける

このように分類することで、家計簿でお金を見える化した際に、3つのうちのどこが家計を圧迫しているか把握できるようになります。

ちなみに、貯金を目的に家計簿をつけようとしている人は、貯金額を固定費として扱うと、貯金分をきちんと確保したうえでやりくり費の予算立てができるのでおすすめです。

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(手順2)収入欄に、収入を記入する

画像: (手順2)収入欄に、収入を記入する

ここから家計簿の出番です。まず、家計簿を用意して、当月の収入を書き入れてください。こちらには手取り金額を記入するようにしましょう。特に昇給などの予定がない方は、1年分記入してOKです。

(手順3)固定費欄に、転記していく

画像1: (手順3)固定費欄に、転記していく

続いて、固定費の欄を埋めていきます。昨年1年間にかかった固定費を通帳で確認し、費目名を埋めていってください。

固定費の金額は年間通して同じです。月々の費目ごとの金額と合計金額は、1月から12月まで同じ金額を書き入れてください。

画像2: (手順3)固定費欄に、転記していく

固定費の合計金額が出せたら、収入(①)から固定費の合計(②)金額を引いた額を③欄に記載しましょう。

(手順4)変動費欄を埋めていく

画像1: (手順4)変動費欄を埋めていく

次に、昨年度の変動費の金額を通帳で確認し、1年の合計額を12カ月で割っておおよその月平均を算出します。電気代・ガス代などの変動費は季節によって支出額が異なるかと思いますが、毎月一定額とみなして予算化してしまうのです。

そして、家計簿に費目と金額、合計金額欄(④)を1年分埋めていきます。月平均が1万4,500円くらいなのであれば、記入額は1万5,000円にしておけばよいでしょう。変動費は費目全部を合わせて考えてもよいですし、細かく算出したい方は、費目ごとの代金の平均単価を出していただいてもOKです。

画像2: (手順4)変動費欄を埋めていく

(手順5)やりくり費欄を記入する

画像: (手順5)やりくり費欄を記入する

続いて、やりくり費の欄を記入します。ここまでの流れで固定費・変動費は一定になっています。

やりくり費も12カ月同じ金額になります。これで、1カ月に使用できるやりくり費の予算が確定しました。

ここまで記載できたら、家計簿の仕込みは終了。あとは1カ月ごとに、予算内でやりくり費を使えたかを確認するのです。

仕込みさえ完了すれば、家計簿をつけるのは月に1回だけ!

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

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家計簿の仕込みが完了したら、あとは毎月のやりくり費をメモして、その合計額を家計簿に月1回転記するだけです。

毎月のやりくり費のメモ方法

1カ月のやりくり費を記入するメモには、食費・日用品費・その他といった費目ごとに支出金額を記入します。

〈図〉メモのイメージ

画像1: 毎月のやりくり費のメモ方法

費目は人によって異なりますが、「食費」「日用品」は固定で設けておきましょう。この2つの費目以外は「その他」でまとめてしまい、頻繁に使う費目があれば新たに項目を設けます。費目は作りすぎないことが大切です。毎週かかるものでなければ「その他」で十分です。

画像2: 毎月のやりくり費のメモ方法

やりくり費は、こういった簡単なメモで管理できます。おすすめなのは、冷蔵庫などにも貼れるメモを使用することです。冷蔵庫にメモを貼っておくことで、目につきやすくなるほか、日常的に手軽に記入できます。

月に1回、やりくり費を家計簿に記入

画像1: 月に1回、やりくり費を家計簿に記入

ここで、再び家計簿の出番です。1カ月が過ぎたら、やりくり費メモの費目と各金額を転記していきます。

画像2: 月に1回、やりくり費を家計簿に記入

やりくり費の合計(⑥)を出したら、想定していたやりくり費(⑤)との差額を計算して記入しましょう。この差額を見ることで、やりくり費の金額は妥当か、家計の収支のバランスが取れているかが分かります。すると、次月以降はこのままで問題ないのか、見直しが必要かを考えることができるのです。

以上が、家計簿の書き方になります。このような家計簿のつけ方をしていけば、手間が最小限であるため家計簿をつけることが億劫にならないほか、人によってはお金が手許に残らない原因もしっかりと認識できるようになるでしょう。

効果的な家計簿の使い方

ご紹介した家計簿の書き方をした結果、やりくり費の過不足が生じるでしょう。しかし、この現象を確認し、修正していくことが、よい家計管理につながります。

まず、2〜3カ月ほど試してみて、“足りないか・余るか”を確認してみましょう。そうすると、「必要なやりくり費はいくらなのか」がわかってきます。

もし、やりくり費が足りない場合は、固定費と変動費の見直しを行いましょう。逆に、やりくり費が多い場合は、預貯金に割り振ってもいいでしょう。この作業を繰り返していくことで、自分の生活に合った予算を設定できるようになるのです。

【補足】昨年までの収支データがない場合

ひとり暮らしをこれから始めるケースなど、家計データがない場合には、1年間は様子見として、全て実額を記入するようにしましょう。2~3カ月様子を見てすぐに始めたい方もいるかもしれませんが、1年間の実績をベースにしないと季節変動に対応できず、予算設定が狂ってしまいます。

何度挫折しても大丈夫! 家計簿は「はじめよう」と思った時にスタートしよう

みなさん忙しいので、とにかくお金のことを考える時間を減らそう、というのが私の家計簿における考え方です。家計簿は継続することが大事です。家計簿に対する考え方を明確にし、続けられる方法さえ知れば、挫折することなく家計簿をつけることができるはずです。

何度か家計簿を挫折した人も、今回お教えした方法でまた再挑戦してください。

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