そんな人に知ってほしいのが、つぎの仕事が見つかるまでの間、生活費として受け取れる失業保険です。この記事では、ファイナンシャルプランナーの中村賢司さん監修のもと失業保険の受給条件や受給期間、金額について解説していきます。正しく知って、失業時に上手に活用しましょう。
この記事では、ファイナンシャルプランナーの中村賢司さん監修のもと失業保険の受給要件や受給期間、金額について解説していきます。正しく知って、失業時に上手に活用しましょう。
※この記事は2020年8月21日に公開した内容を最新情報に更新しています。
INDEX
一般の離職者の場合【自己都合退職】
特定理由離職者の場合【自己都合退職】
特定受給資格者の場合【会社都合退職】
派遣社員・契約社員・アルバイト・パートが退職する場合【自己都合退職/会社都合退職】
65歳以上で退職する場合【自己都合退職/会社都合退職】
(1)【チャート診断】失業保険の受給資格をチェック
(2)受給資格の4つのポイントを解説
①賃金日額を計算する
②基本手当日額を計算する
③給付日数から支給総額を計算する
【注意点】賃金日額と基本手当日額には上限と下限がある
離職時の年齢が29歳以下
離職時の年齢が30〜44歳
離職時の年齢が45〜59歳
離職時の年齢が60〜64歳
(1)自己都合で退職した20代・元フリーターAさんの場合
(2)会社都合で退職した30代・元会社員Bさんの場合
(3)自己都合で退職した30代・元パートCさんの場合
①離職票を受け取る
②ハローワークへ行く
③待機する(7日or 7日+2カ月間)
④受給説明会に参加する
⑤求職活動をする
⑥失業の認定を受ける
⑦基本手当が口座に振り込まれる
ハローワークに行く必要がある
アルバイトをする場合はハローワークに申告する
不正受給はしてはいけない
(1)失業保険は何年働いたら受給できる?
(2)失業保険は手続き後、いつ振り込まれる?
(3)失業保険の受給中に就職が決まったらどうなる?
(4)就職促進給付とは?
(5)事業主と離職者で離職理由の主張が食い違った場合は?
(6)うつ病などで休職中の場合、そのまま辞めたらどうなる?
(7)失業保険の受給中の健康保険・年金保険料の支払いはどうなる?
(8)失業保険の受給中に再就職をした場合の再就職手当を受給する条件は?
(9)失業保険の受給中に年金を受け取ることはできる?
失業保険(失業手当)とは
そもそも失業保険(失業手当)とは、どのようなものなのでしょうか。基本的な情報を確認していきましょう。
失業保険は正式には雇用保険といい、この雇用保険に加入している人が失業や自己都合退職などの“特定の条件下”で受給できるお金のことを、失業手当(正確には基本手当)といいます。
失業した場合、つぎの仕事が見つかるまでの間は収入が途絶えてしまうことがあり、生活が安定しなくなる場合もあるでしょう。失業手当は、そんな時に生活費の心配をせず、つぎの仕事を安心して探すための手当なのです。
ただし、この失業手当は全員が受給できるものではありません。手当を受給するには、いくつかの条件があります。
失業保険の受給要件
では、失業手当を受給するには一体どのような条件があるのでしょうか。ここでは、失業期間中に継続して受給可能な、いわゆる失業手当である基本手当について解説します。
一般の離職者の場合【自己都合退職】
まずは自己都合で離職をした場合の基本手当の受給要件1)を見ていきましょう。
〈表〉基本手当の受給要件(自己都合退職する場合)
①就職しようとする積極的な意思と能力があり、努力していても職業に就くことができない「失業の状態」にある
②離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上ある
ただし、①の要件を満たしていても、ケガや病気、妊娠などで「すぐに働くことができない状態」である時には、自己都合退職者として基本手当を受け取ることはできません。なお、被保険者期間は、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1カ月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上あるいは80時間以上ある月を1カ月として計算します。
特定理由離職者の場合【自己都合退職】
特定理由離職者とは、期間の定めがある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した人を指します2)。また、以下のような理由で自己都合退職をした人も含まれます。
〈表〉特定理由離職者に含まれる範囲
- 身体能力の障害や減退、精神上の理由で離職した人
- 妊娠・出産・育児などで離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた人
- 父母の介護など、家庭の事情が急変したことで離職した人
- 結婚に伴う住所の変更、事業所の通勤困難な地への移転などの理由により、通勤が困難になって離職した人
- 企業の人員整理の制度に応募して離職した人
特定理由離職者の基本手当の受給要件は以下のとおりです1)。
〈表〉基本手当の受給要件(特定理由離職者の場合)
①就職しようとする積極的な意思と能力があり、努力していても職業に就くことができない「失業の状態」にある
②離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上ある
①は一般的な離職者と変わりませんが、②の期間が異なります。
特定受給資格者の場合【会社都合退職】
特定受給資格者とは、企業の倒産や自分に理由がない解雇などで職を失った人を指します2)。一方的な減給やハラスメントが理由で退職した人もこれに含まれます。特定受給資格者の基本手当の受給要件は以下の2つで、特定理由離職者と同じです。
〈表〉基本手当の受給要件(特定受給資格者の場合)
①就職しようとする積極的な意思と能力があり、努力していても職業に就くことができない「失業の状態」にある
②離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上ある
派遣社員・契約社員・アルバイト・パートが退職する場合【自己都合退職/会社都合退職】
派遣社員、契約社員、アルバイト・パートなど、労働期間が定められた契約にもとづいて働く人を有期契約労働者といいます。有期労働契約とは、事前に定められた一定期間の労働に対する契約のことを指します。
有期労働契約の場合、契約期間の途中での退職か、契約期間終了による退職なのかによっても異なります。契約期間の途中で本人が退職を申し出た場合は自己都合、会社が契約解除した場合には会社都合となります。
また、契約期間終了後である場合には、雇用契約で契約更新の可能性を提示していたかどうかによって、「特定受給資格者」になるか「特定理由離職者」になるかが変わります。本人に更新の意思があり、雇用契約で「契約更新をする」としていたにもかかわらず、会社の都合で更新しなかった場合には、特定受給資格者になります。雇用契約で契約更新が明示されていないか、確約されていない場合には、特定理由離職者となります。
65歳以上で退職する場合【自己都合退職/会社都合退職】
多くの企業では定年退職制を採用しており、一般的に65歳になった時点で雇用契約をいったん終了としています。65歳以上でも基本手当を受け取れることもありますが、その場合には以下の要件を満たす必要があります。
〈表〉基本手当の受給要件(65歳以上で退職する場合)
①就職しようとする積極的な意思と能力があり、努力していても職業に就くことができない「失業の状態」にある
②離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上ある
③65歳になる誕生日の前々日までに退職している
③は民法第143条第2項3)によると、暦による期間の計算は「週、月または年の初めから期間を起算しない時は、その期間は、最後の週、月または年においてその起算日に応当する日の前日に満了する」と定義されます。つまり、日本の法律上、「人は生まれた日が1日目であり、1歳年を取るのは誕生日前日」ということです。
なお、65歳の誕生日以降に離職した場合には、基本手当を受け取ることはできませんが、高年齢求職者給付金4)を申請することができます。
ハローワークが定める失業保険の受給要件
ハローワークが定める基本的な受給要件5)は以下のとおりです。
①ハローワークに来所し、求職の申し込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
②離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12カ月以上あること。
特に①の要件については、なかなかイメージできない人も多いでしょう。
そこで、以下では基本手当を受給できる場合、受給できない場合を判別するために、確認すべきポイントをチャート形式で解説していきます。
(1)【チャート診断】失業保険の受給資格をチェック
まずは基本手当を受給する資格があるのか、受給期間はどれくらいになるのかを、チャートでチェックしてみましょう。
〈図〉基本手当の受給確認チャート
ここで重要なのは、以下の4つのポイントです。
〈表〉基本手当受給の4つのポイント
①働く意思・能力
②求職の意思
③雇用保険の加入期間
④離職理由(自己都合退職か、会社都合退職か)
これらを軸として、受給資格があるのかないのか、受給期間はどのくらいになるのかということが決まります。このチャートの内容について、ポイントごとに解説していきましょう。
なお、以下の記事では基本手当を受給できない場合について詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。
【関連記事】失業保険をもらえないケースとは? 詳しくはコチラ
(2)受給資格の4つのポイントを解説
続いては、失業保険を受給する際のポイントを確認していきましょう。
①働く意思・能力
そもそも基本手当を受給するためには、失業状態である上で「働く意思や能力」がなければいけません。つまり、つぎのような場合は、基本手当を受給できません。
〈表〉「働く意思や能力がない」とみなされる例
- ケガや病気ですぐに働くのが難しい人
- 妊娠・出産などですぐに就職するのが困難な人
②求職の意思
基本手当は、“つぎの仕事が見つかるまでの生活”を保障するためのものです。そのため、すぐにつぎの仕事先を見つけるつもりがない人は、基本手当を受給することができません。
求職の意思を示すためには、まずハローワークへ行きましょう。そこで簡単な手続きをし、「就職したいという積極的な意思」と「いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)」を示した上で、「積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にある」と認められた場合に給付の対象となります。
そのため、つぎのような人は原則として基本手当を受給できません。
〈表〉「求職の意思がない」とみなされる例
- 家事に専念するつもりの人
- 自営を開始、または開始するための準備に専念する人(※)
- 雇用保険の被保険者とならない短時間就労のみを希望する人
※:求職活動中に創業の準備・検討を行う場合は基本手当を受給できる可能性があります。
③雇用保険の加入期間
雇用保険の加入期間も、受給できるか否かを左右します。具体的には、つぎの表のとおりです。
〈表〉雇用保険の加入期間ごとによる基本手当の受給資格
雇用保険の加入期間 | 受給資格 | |
---|---|---|
A | 過去2年間で12カ月以上 | 基本手当の受給資格あり |
B | (Aの条件を満たしていない場合)過去1年間に通算6カ月以上(※) | |
C | A・Bの条件を満たしていない | 基本手当の受給資格なし |
なお、基本手当は一度受給すると、雇用保険の加入期間がリセットされます。加入期間がリセットされるとどうなるのか、詳しくは以下の記事で解説しています。
【関連記事】失業保険を一度もらうとどうなる? 利用時の注意点など詳しくはコチラ
④離職理由(自己都合退職か、会社都合退職か)
上記①〜③は受給できるか否かの判断材料でしたが、④離職理由(自己都合退職か、会社都合退職か)は、受給期間や支給開始日を左右します。
離職理由は「自己都合」か「会社都合」の2つに分けられ、具体的には以下のような違いがあります。
●自己都合退職
自己都合退職とは、その名のとおり「自分の都合で退職するケース」のことです。たとえば、結婚や出産、職場が原因ではない病気を理由とした療養、両親の介護のためなどの理由が、これにあたります。
●会社都合退職
会社都合退職とは、倒産による離職や、解雇による離職など「退職を余儀なくされた場合」を指します。
ハラスメント被害を受けた場合や、外的要因による精神的苦痛で働くことが困難となってしまった場合など、自分の意思に反して退職を余儀なくされたケースも「会社都合」となります。
なお、上記チャートとこれらのポイントについては、あくまでも目安です。受給資格の条件については、アルバイトを週20時間以上していないか、同一の事業所で離職と就職を繰り返していないかなど、より詳細に決まっているので、ハローワークでの審査結果が異なる場合もあります。
失業保険の受給期間
基本手当の受給期間は、雇用保険の被保険者期間と離職理由によって給付日数が変わってきます。所定給付日数は以下のとおりです。
(1)自己都合退職の場合
自己都合退職の場合は、離職時の年齢が65歳未満であれば何歳であっても、被保険者期間でのみ、給付日数が変わります。
〈表〉自己都合退職の場合の所定給付日数6)
離職時の年齢 | 被保険者期間 | ||
---|---|---|---|
1年以上(※)10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満の場合 | 90日 | 120日 | 150日 |
(2)会社都合退職の場合
会社都合退職の場合は、細かな年齢の区分けがあるほか、自己都合退職よりも給付日数が基本的に長く設定されています6)。
〈表〉会社都合退職の場合の所定給付日数6)
離職時の年齢 | 被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
基本手当を受給できる期間は、基本的に離職日の翌日から1年間のみです。手続きが遅れてしまうと、受給できる上限日数分を受給できない可能性も出てくるので、離職後すぐに手続きすることをおすすめします。
失業保険の受給額と計算方法
続いて、受給できる金額についてです。受給額は、基本手当日額(雇用保険で受給できる1日当たりの金額)と給付日数により決定され、以下のような流れで算出できます。
それぞれについて説明します。
①賃金日額を計算する
基本手当の金額を計算するには、まず基準となる賃金日額を計算しましょう。賃金日額は「退職する前の6カ月分の賃金額合計(賞与は除く)÷180日」で計算できます。
離職する半年前の給与が反映されるため、その間に欠勤や早退があった場合、もらえる金額が少なくなることには注意しましょう。
②基本手当日額を計算する
賃金日額を求めたら、基本手当日額を計算します。基本手当日額は、賃金日額のおおよそ50~80%になります(60~64歳は45~80%)。
詳しくは後述しますが、基本手当日額を算出する計算式は賃金日額と年齢によって変わります。
なお、給付率は賃金日額が低い人のほうが高くなります。これは生活できる水準を考えて設定されているため、低所得の人ほど手厚いサポートが受けられるようにするしくみのためです。
③給付日数から支給総額を計算する
支給総額は「基本手当日額×所定給付日数」で算出できます。所定給付日数は退職理由によって異なります。
退職理由による所定給付日数については、「失業保険の受給期間」で紹介しているので、参考にしてみてください。
【注意点】賃金日額と基本手当日額には上限と下限がある
基本手当日額は年齢区分ごとの上限額が定められています7)。現在は以下のとおりです。
〈表〉賃金日額と基本手当日額の上限額(年齢別)
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
---|---|---|
29歳以下 | 1万3,890円 | 6,945円 |
30〜44歳 | 1万5,430円 | 7,715円 |
45〜59歳 | 1万6,980円 | 8,490円 |
60〜64歳 | 1万6,210円 | 7,294円 |
下限額に年齢は関係ありません。現在、賃金日額の下限額は2,746円、基本手当日額の下限額は2,196円です。
なお、賃金日額は厚生労働省が実施する「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減でその金額を変更しています。これに伴い、基本手当日額の算定基準が変わり、支給額が途中で変わる場合がある点に注意しましょう。
【年齢別】基本手当日額の目安
前述のように基本手当日額の計算式は収入と年齢によって異なります。以下を参考にしてみましょう7)。
基本手当を受給した場合、その金額が年収に含まれるのか気になる人もいるでしょう。以下の記事で詳しく説明しているので、併せて参考にしてみてください。
【関連記事】失業保険は年収に入る? 確定申告の要否や扶養に入る基準について、詳しくはコチラ
離職時の年齢が29歳以下
離職時の年齢が29歳以下の場合、基本手当日額の計算式と目安は以下のとおりです。
〈表〉基本手当日額の目安
賃金日額 | 給付率 | 計算式 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
2,746円以上5,110円未満 | 80% | 80%×賃金日額 | 2,196~4,087円 |
5,110円以上1万2,580円以下 | 80〜50% | 80%×賃金日額-(80%-50%)×{(賃金日額-5,110円)÷7,470円}×賃金日額 | 4,088~6,290円 |
1万2,580円超1万3,890円以下 | 50% | 50%×賃金日額 | 6,290~6,945円 |
1万3,890円(上限額)超 | ― | 6,945円(上限額) | 6,945円(上限額) |
離職時の年齢が30〜44歳
離職時の年齢が30〜44歳の場合、基本手当日額の計算式と目安は以下のとおりです。
〈表〉基本手当日額の目安
賃金日額 | 給付率 | 計算式 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
2,746円以上5,110円未満 | 80% | 80%×賃金日額 | 2,196~4,087円 |
5,110円以上12,580円以下 | 80〜50% | 80%×賃金日額-(80%-50%)×{(賃金日額-5,110円)÷7,470円}×賃金日額 | 4,088~6,290円 |
12,580円超15,430円以下 | 50% | 50%×賃金日額 | 6,290~7,715 円 |
15,430円(上限額)超 | ― | 7,715円(上限額) | 7,715円(上限額) |
離職時の年齢が45〜59歳
離職時の年齢が45〜59歳の場合、基本手当日額の計算式と目安は以下のとおりです。
〈表〉基本手当日額の目安
賃金日額 | 給付率 | 計算式 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
2,746円以上5,110円未満 | 80% | 80%×賃金日額 | 2,196~4,087円 |
5,110円以上1万2,580円以下 | 80〜50% | 80%×賃金日額-(80%-50%)×{(賃金日額-5,110円)÷7,470円}×賃金日額 | 4,088~6,290円 |
1万2,580円超1万6,980円以下 | 50% | 50%×賃金日額 | 6,290~8,490 円 |
1万6,980円(上限額)超 | ― | 8,490円(上限額) | 8,490円(上限額) |
離職時の年齢が60〜64歳
離職時の年齢が60〜64歳の場合、基本手当日額の計算式と目安は以下のとおりです。
〈表〉基本手当日額の目安
賃金日額 | 給付率 | 計算式 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
2,746円以上5,110円未満 | 80% | 80%×賃金日額 | 2,196~4,087円 |
5,110円以上1万1,300円以下 | 80〜45% | ①80%×賃金日額-(80%-45%)×{(賃金日額-5,110円)÷6,190円}×賃金日額 ②0.05×賃金日額+4,520円 ①②のいずれか低い方の金額 | 4,088~5,085円 |
1万1,300円超1万6,210 円以下 | 45% | 45%×賃金日額 | 5,085~7,294円 |
1万6,210円(上限額)超 | ― | 7,294円(上限額) | 7,294円(上限額) |
受給期間や受給額をケース別にシミュレーション
ここまで受給要件や給付日数、受給額について説明してきましたが、結局いくらもらえるのかが知りたいという人もいるでしょう。
そんな人のために、この章では具体的なケースを挙げて、基本手当の受給可否と金額について解説します。
(1)自己都合で退職した20代・元フリーターAさんの場合
〈表〉Aさんの失業時の状況
年齢 | 25歳 |
---|---|
退職時の雇用形態 | アルバイト |
離職理由 | 自己都合 |
退職時の給料 | 20万円/月 |
雇用保険 | 加入 |
被保険者期間 | 2年間 |
まずは、基本手当を受給するための条件を見てみましょう。基本手当を受給するには、雇用形態は関係ありません。正社員ではなく、アルバイトや契約社員であったとしても雇用保険に加入していれば、基本手当は受給できます。Aさんは雇用保険に2年間加入しているので、十分条件を満たしていることがわかります。
では、ここで先ほど紹介した失業保険の受給額の計算式に自己都合で退職したAさんの例を当てはめてみましょう。なお、今回の所定給付日数は28日と仮定します。
〈表〉Aさんの受給額の算出
①賃金日額を計算する(※1)
20万円×6カ月÷180日=6,666円(賃金日額)
※1:退職する前の6カ月分の賃金額合計(賞与は除く)÷180日
②基本手当日額を計算する
80%×6,666円-(80%-50%)×{(6,666円-5,110円)÷7,470円}×6,666円=4,916円(基本手当日額)
③給付日数から支給総額を計算する
4,916円×28日=13万7,648円
※:1円未満は切り捨て。
以上により、失業保険の受給額は13万7,648円。Aさんは自己都合退職なので、受給が開始されるのは7日間+2カ月後となります。
(2)会社都合で退職した30代・元会社員Bさんの場合
〈表〉Bさんの失業時の状況
年齢 | 35歳 |
---|---|
退職時の雇用形態 | 正社員 |
離職理由 | 会社都合 |
退職時の給料 | 50万円/月 |
雇用保険 | 加入 |
被保険者期間 | 15年間 |
Bさんも雇用保険に15年間加入しているため、すぐに働ける状態であれば、もちろん条件を満たしています。
〈表〉Bさんの受給額の算出
①賃金日額を計算する(※1)
50万円×6カ月÷180日=16,666円(賃金日額)
※1:退職する前の6カ月分の賃金額合計(賞与は除く)÷180日
②基本手当日額を計算する(※2)
7,715円(基本手当日額)
※2:16,666円は上限額15,430 円超えのため、計算式は適用されず基本手当日額は年齢の上限額となる。
③給付日数から支給総額を計算する
7,715 円×28日=21万6,020円
※:1円未満は切り捨て。
30〜44歳の賃金日額の上限は1万5,430円のところ、Bさんの場合は上限を超えた1万6,666円となっています。そのため、基本手当日額は上限額の7,715円が適用となります。
受給は、会社都合による退職のため7日間の待機期間(※)後にスタートします。
※:ハローワークでは「待期期間」といいます。記事内では待機期間と記載します。
(3)自己都合で退職した30代・元パートCさんの場合
〈表〉Cさんの失業時の状況
年齢 | 35歳 |
---|---|
退職時の雇用形態 | パート |
離職理由 | 自己都合 |
退職時の給料 | 15万円/月 |
雇用保険 | 未加入 |
被保険者期間 | - |
このケースに関しては、雇用保険に未加入のため、残念ながら基本手当を受給することはできません。
なお、従業員数が5人未満の会社に勤めている人や、週20時間未満のパートタイマーの場合は、雇用保険に加入していない可能性があります。
雇用保険に加入しているか否か心配な人は、今一度、雇用契約書に記載があるか、給与明細で雇用保険が引かれているかを確認してみましょう。
失業保険の手続きに必要な書類
前述のとおり、基本手当を受給するためにはいくつかの条件を満たしている必要があります。
では、具体的に基本手当を受給したい時には、どのような手続きが必要なのでしょうか。基本手当を受給するためには、まずはハローワークに行って手続きをする必要があります。その際、持っていくものは以下のとおりです8)。
〈表〉基本手当の受給手続きに必要なものリスト
- 雇用保険被保険者離職票
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、住民票のいずれか)
- 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 証明写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
必要な書類を準備できたら、基本手当を受給するための手続きをしましょう。手続きは以下の流れのとおりです。
〈図〉申請から受給までの流れ
手続きの流れが把握でできたら、続いては失業保険の申請から受給までの詳しい内容について確認していきましょう。
失業保険の申請から受給までの流れ
失業保険の基本手当は、申請から受け取るまでに早くても1カ月以上かかります。なるべく早めに手続きをするようにしましょう。以下は、手続きの詳しい内容になります。
〈表〉申請から受給までの流れ
①離職票を受け取る
まずは、退職した会社から離職票を受け取りましょう。大抵の場合は、事前に離職票が欲しい旨を伝えておけば、退職から2週間程度で郵送されます。しかし、会社によっては発行に時間がかかるので、なるべく早めに手続きをお願いするほうが得策です。
②ハローワークへ行く
離職票を受け取ることができたら、前述の基本手当の受給手続きに必要なものリストで紹介したものを持ってハローワークに行きましょう。雇用保険被保険者証、離職票をもとにハローワークで条件を満たしていることが判断され、受給資格が決定されます。また、この時に初回の説明会の日程と会場も決まります(説明会については④で説明します)。
③待機する(7日 or 7日+2カ月間)
受給資格の決定から初回説明会までの間には、待機期間が7日間6)あります。この期間は、失業状態の確認を行うことが趣旨となります。
つまり待機期間は、アルバイトであっても働くことができません。もしアルバイトをした場合は、その日数分が待機期間として延長されます。また、待機期間中に求職活動をすることは可能ですが、この期間中は求職活動の実績としてカウントされないので注意してください。
なお、会社都合で退職した場合は待機期間7日、自己都合で退職した場合は待機期間7日+給付制限期間2カ月が設定されています。給付制限期間中は、基本手当が受給できないため覚えておきましょう。
ただし、給付制限期間中のアルバイトは可能です9)。雇用保険加入要件を満たす「1週間の所定労働時間が20時間以上」「同一の事業主に31日以上雇用されることが見込まれる」アルバイトの場合は就職と判断され、基本手当が受給できなくなりますので注意しましょう。
また、1回目の離職日から5年間のうちに3回以上自己都合による退職をしている場合には、給付制限期間が3カ月になる点も注意が必要です10)。
④受給説明会に参加する
②で示した初回の説明会に参加します。初回の説明会では、基本手当の受給やハローワークの使い方などについて詳しい説明が行われます。雇用保険受給資格者のしおりなど、最初にハローワークへ行った際に説明された必要な持ちものを持参しましょう。
説明会に参加すると、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」の2種類の書類が配布されます。
⑤求職活動をする
ハローワークの窓口で職業相談や職業紹介を受けるなど、求職活動をスタートさせます。基本手当はつぎの職を探す人に給付されるものであるため、28日間ごとに失業状態であることを認めるための認定日が設定されています。基本的には、この28日間で最低でも2回以上は求職活動をする必要があります11)。なお、求職活動として認められる活動は以下のようなものです。
- 求人への応募
- 職業相談やセミナーへの参加
- 国家試験や資格試験の受験
認定日は、②の受給資格の決定から28日後に初回認定日が設定され、その後28日間ごとにつぎの認定日が設定されます。ただし、自己都合退職で給付制限期間がある場合には、給付制限期間明けの認定日が2回目の認定日となります。
なお、求職活動のスケジュールは、会社都合退職と自己都合退職で異なります。
〈図〉会社都合退職の場合の求職活動スケジュール例
会社都合退職の場合、初回の認定日までの期間に1回以上求職活動をする必要がありますが、初回の受給説明会が求職活動1回としてカウントされるため、加えて求職活動を行う必要はありません。2回目以降から28日間ごとに2回以上求職活動をしましょう。
〈図〉自己都合退職の場合の求職活動スケジュール例
自己都合退職の場合は、2回目の認定日までに合計で3回以上求職活動を行う必要があります。ただし、会社都合退職と同じく初回の受給説明会が求職活動1回としてカウントされるため、実際に必要な求職活動は2回となります。
参考資料
⑥失業の認定を受ける
基本手当の給付を受けるためには、前述のように原則として28日間に1度、失業の認定を受ける必要があります。「失業認定申告書」に求職活動の状況などを記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに、指定された認定日にハローワークに行って提出しましょう。
認定日にハローワークに行かないと、対象期間中の基本手当を受給できなくなってしまいます。もし急用などで行けなくなった場合には、あらかじめその旨を担当の窓口に連絡して、指示を仰ぎましょう。
⑦基本手当が口座に振り込まれる
失業が認定されたら、約1週間後に28日分の基本手当が振り込まれます。なお、退職理由によって初回の受給日が異なります。自己都合による退職の場合は7日間の待機期間に加え、2カ月間の給付制限が設けられるので、初回の基本手当は約2カ月半後です。一方で、会社都合による退職の場合は、待機期間が終了した直後から受給を開始できます12)。
基本手当の所定給付日数をすべて消化するまで、求職活動と失業認定、基本手当の受給を繰り返します。
注意点として、以下のような不正受給をすると、ペナルティーが課せられます。
〈表〉不正受給の例
- 求職活動の実績について虚偽の申請をする
- アルバイトなどをしていたことを隠す
- 就職や自営を開始したことを申告しない
給付が停止されるだけでなく、基本手当の返還や不正に受給した金額の2倍の納付が命じられます13)。
手当を受給できる期間は、原則離職日の翌日から最長1年間です。失業の認定と受給を繰り返しながら、自身に合ったつぎの職業を見つけましょう。
失業保険のメリット・デメリットを解説
失業保険で基本手当を受け取ることにデメリットは生じるのでしょうか。ここではメリットとデメリットをそれぞれ説明します。
失業保険のメリット
失業保険の最大のメリットは、経済支援を受けられることで求職活動に集中できることです。一定額が定期的にもらえるので、お金の心配をすることなく、仕事の内容や条件を吟味することができるでしょう。
また、失業保険の受給資格を持っていると、失業中に公共職業訓練を受けたり、再就職した際に再就職手当を受け取ったりすることができます1)。これらは基本手当をもらっていなくてもかまいませんが、受給資格の手続きをハローワークで行う必要があります。
失業保険のデメリット
基本手当を受け取ると、それまでの雇用保険の加入期間がリセットされるのが最大のデメリットです。
基本手当の給付日数は雇用保険の加入期間に応じて決まります。加入期間が長いほど給付日数が多くなり、受給できる金額も高くなります6)。そのため、加入期間をリセットしたくない場合には受給を控えるほうがいいでしょう。ただし、離職後1年以内に転職先の雇用保険に加入できれば、加入期間の引き継ぎが可能です。
また、60歳以上で老齢厚生年金を受給している人は注意が必要です。基本手当を受け取ると、年金を減額されたり、支給が一時停止されたりする場合があります。
失業保険を受給する時の注意点
繰り返しになりますが、失業保険を受給する時に特に注意すべき点を確認しましょう。
ハローワークに行く必要がある
基本手当を受け取るには、まずハローワークで基本手当の受給手続きを行う必要があります。また、28日間ごとの失業認定日にハローワークに行かないと、対象期間中の基本手当を受給できなくなってしまうので注意しましょう。
アルバイトをする場合はハローワークに申告する
基本手当の受給中にアルバイトをする場合は、収入の有無を問わず、ハローワークへの申告が必要です14)。失業認定日に「失業認定報告書」を提出することで申告したことになります。また、所定労働時間は週20時間未満、1日の労働時間4時間未満がルールです。これを超えると「就職している」とみなされ、基本手当が支給されない恐れがあります。
なお、受給資格を得てから7日間の待機期間中にアルバイトや副業をすると、基本手当の受給開始が遅れる可能性があります。この期間のアルバイトは避けたほうがいいでしょう。
参考資料
不正受給はしてはいけない
前述のように不正受給を行うと、基本手当の給付が停止されるだけではなく、ペナルティーも課せられます。失業認定報告書には偽りなく、事実を記入しましょう。
失業保険に関する「よくある疑問」
ここからは、基本手当の受給に関する疑問を紹介しながら解説していきます。
(1)失業保険は何年働いたら受給できる?
基本手当の受給には、前述のように、離職した日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して満12カ月必要です。なお、倒産や解雇などで離職した場合は、離職した日以前の1年間に被保険者期間が通算して満6カ月あれば受給資格を得ることができます。
(2)失業保険は手続き後、いつ振り込まれる?
前述のように、失業が認定されたら、約1週間後に28日分の基本手当が振り込まれます。ただし、退職理由によって初回の受給日が異なります。自己都合による退職の場合は初回の基本手当は約2カ月半後です。一方で、会社都合による退職の場合は、待機期間が終了した直後から受給を開始できます12)。
(3)失業保険の受給中に就職が決まったらどうなる?
就職が決まった時は、就職日の前日までの失業の認定を受けるために就職日の前日に来所し、失業認定申告書と再就職先の事業主に証明を受けた「採用(内定)証明書」を提出します15)。一定以上の給付日数を残して就職した場合には、再就職手当や常用就職支度手当といった給付を受けることができる場合があるので、ハローワークで確認しましょう。
参考資料
(4)就職促進給付とは?
基本手当について調べていくうちに、就職促進給付という言葉を見つけた人もいるでしょう。
この給付は、基本手当とは違い、想定よりも早くに就職先が決まった場合にもらえる給付金のことです。具体的には、再就職手当(後述)、就業促進定着手当、就業手当などがあります16)。
就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた人が引き続きその再就職先に6カ月以上雇用されたものの、その期間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合に受け取ることができるものです。
一方、就業手当は、基本手当の受給資格がある人が再就職手当の支給対象とならない形態で就業した場合に基本手当の支給残日数が所定給付日数1/3以上かつ45日以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。
詳しくは就職が決まった際にハローワークで相談してみましょう。
参考資料
(5)事業主と離職者で離職理由の主張が食い違った場合は?
会社を自分の意思で退職した場合は、自己都合退職として届出が作成されます。
しかし、たとえば上司との人間関係や、ハラスメントが原因で精神的苦痛を負い、退職を決断した場合には会社都合退職との判定に覆る場合もあります。この場合、事業主と離職者の意見をどちらも聞いた上で、最終的に判定するのは、管轄するハローワークです。
もし離職理由に食い違いが起こった場合、判定には客観的資料が必要となるため、医療機関の発行した診断書などを用意しましょう。
(6)うつ病などで休職中の場合、そのまま辞めたらどうなる?
うつ病などによる休職を経て退職する場合には、休職中は傷病手当金、退職後は失業保険の基本手当が受給できます。
傷病手当金とは、休職中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度のことです。被保険者が会社を休んでいる間、事業主から休職手当などの十分な報酬が受けられない場合に支給される制度です。
傷病手当金を受け取るには、①勤務できなかった期間を含む賃金計算期間(賃金計算の締日の翌日から締日の期間)の勤務状況を勤務先に証明してもらうこと、②療養担当者(医師など)に病名などを証明してもらうことの2つが必要です。
この傷病手当金は、基本的には在籍期間中に欠勤した分の生活を保障するための制度です。そのため、勤務先を退職したあとは、いくつかの条件に当てはまっている場合のみ、継続して傷病手当金を受け取ることが可能です17)。
退職後は、先に説明している失業保険の基本手当を受け取るための受給手続きを行いましょう。ただし、基本手当は「病気で働けない」という状態では受給することができません。「受給期間の延長手続き」を活用することも可能なので、近くのハローワークで相談してみるといいでしょう。
【関連記事】うつ病で退職する際に失業保険は利用できる? 傷病手当との違いなど詳しくはコチラ
【関連記事】病気で働けない時に入院したら…費用が払えない時はどうする? 頼りになる制度はコチラ
参考資料
(7)失業保険の受給中の健康保険・年金保険料の支払いはどうなる?
失業した場合の健康保険には3つの選択肢があります。①任意継続被保険者になる、②国民健康保険に加入する、③家族の被扶養者のいずれかです。
①は、被保険者でなくなった日までに継続して2カ月以上の被保険者期間があり、被保険者でなくなった日から20日以内に届け出る必要があります。これは2年間の期限があり、これまで会社が支払ってくれた分の保険料も自分で支払う必要があるので、経済的に不安がある場合には厳しい選択肢かもしれません。
②を選ぶ場合は、退職後14日以内に自治体の窓口で手続きをします。国民健康保険の保険料は前年の収入をもとに算出されるため、前年の年収によっては保険料が高額になる可能性があります。ただし、自治体によっては、失業期間中の保険料は減免されたり、一時猶予されたりするところもあります。お住まいの市区町村役場で確認してみましょう。
働く家族がいる場合に限られますが、③が最もお金がかからない選択肢です。ただし、失業保険の受給中には家族の扶養に入れないケースもあります。詳しくは以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。
【関連記事】失業保険受給中、扶養に入ったらどうなるの? 詳しくはコチラ
一方、国民年金の保険料は収入額にかかわらず、毎月納める必要があります。ただし、経済的に保険料の支払いが難しい場合には、未納のままにせず、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度18)を活用することがおすすめです。保険料の免除や納付猶予を承認された期間は、年金の受給資格期間に算入されます。ただし、将来の年金額を計算する時は、免除期間は保険料を納めた時に比べて1/2になってしまうので、就職したら追納したほうがいいでしょう。
参考資料
(8)失業保険の受給中に再就職をした場合の再就職手当を受給する条件は?
再就職手当とは、基本手当の受給資格の決定を受けたあとに早期の再就職を促進するための制度です。再就職手当の給付を受けるには、以下8つの要件をすべて満たす必要があります9)。
〈表〉再就職手当の受給要件
①就職日の前日までの失業の認定を受けたあとの基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上ある
②就職先に1年以上勤務することが確実であると認められる
③待期満了後の就職である
④離職理由による給付制限を受けた場合、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものである
⑤離職前の事業主に再び雇用されたものではない(離職前の事業主と密接な関係にある事業主への就職も含む)
⑥就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていない
⑦受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたわけではない
⑧原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用である
なお、再就職手当の金額は、就職前日までの基本手当の支給算日数で給付率が異なります16)。
〈表〉再就職手当の給付率
支給日数が所定給付日数の2/3以上残っている場合
→基本手当日額×所定給付日数の残日数×70%
支給日数を所定給付日数の1/3以上残っている場合
→基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%
なお、再就職手当に係る基本手当日額には、上限額があります。現在は、59歳以下は6,290円、60〜64歳は5,085円です16)。
(9)失業保険の受給中に年金を受け取ることはできる?
年金と基本手当は同時に受給することはできません。年金をもらっている人がハローワークで求職の申し込みをすると、実際に失業保険の給付を受けたかどうかに関係なく、求職の申し込みをした月の翌月から受給が終了するまでの間、年金が全額支給停止されます19)。在職による年金の支給停止に加え、年金の一部が支給停止されます。併給調整について詳しくは、日本年金機構の各年金事務所へお問い合わせください。
参考資料
失業保険を上手く活用して、理想のキャリアを目指そう
やむを得ない理由などで会社を退職し、今後の転職活動に対して「つぎの仕事が決まるまでの金銭面が心配…」「新しい仕事を探したいけど、現職を続けながら仕事を探すのは難しい…」と大きな不安や悩みを抱いている人も多いでしょう。
しかし、悲観的になる必要はありません。雇用保険に加入している場合には、失業時の生活を支えてくれる様々な手当が用意されています。制度を上手く活用して、理想のキャリアを歩みましょう。