キャリアを切り拓くきっかけは人によって様々。今回お話を伺った林知佳さん(34)は、大失恋した時に占いにハマり、のちに自身も占い師になりました。さらに最近はYouTuberやアパレル事業にも挑戦中です。
大失恋で得た経験を武器に変え、複数の仕事を並行して行う「パラレルワーカー」として活躍するまでの道のりを聞きました。
今回のフクギョウ人 林 知佳(34歳)
- メインの職業:人材コーディネーター(業務委託勤務)
- サブの職業:占い師、YouTuber、アパレル事業など
- サブの職業の月収:約30万円
恋人と復縁したくて……占いに使ったお金は30万円
――メインとサブの仕事内容について、それぞれ詳しく教えてください。
メインの仕事は、人材紹介業です。新卒で保険会社に入社した後、人材系の企業を数社経験しました。今は在宅派遣事業を行っている企業と業務委託契約を結び、人材コーディネーターとして働いています。
サブの仕事は6年前からオンラインで行っている「占い師」ですね。相談者からメールや電話を受けて、その場で占ってアドバイスをしています。1年前から猫のYouTubeチャンネルも開設しているので、弱小ですが「Youtuber」でもあります。最近だと規模は小さいですが、アパレル業も準備中です。
――仕事内容は多岐にわたりますね。そもそも、なぜ「占い師」を始めようと思ったのでしょうか?
6年前、正社員として人材会社で働いていた時、大失恋がきっかけで占いにハマってしまって…(苦笑)。どうしても復縁したくて2、3カ月で30万円ほど占いに使いました。
――30万円も…それは会社員にとって大金ですね…。
そうですよね(笑)。電話をしながら占ってもらう「電話占い」に「10分 無料」というメニューがあったのでよく利用していたのですが…、10分で重い恋愛相談が終わるはずがありませんよね。つい長電話になり、積もり積もって30万円になってしまいました。私にとっては大金でしたね。
失恋をきっかけに占いを習得。オンラインで実績を積んでみたら…
――ちなみに、その彼とは復縁できたのでしょうか?
できませんでした……。でも、ある時ふと、自分自身で占いを始めてみるのも面白いんじゃないかなと思ったんです。ネットでタロットカードを購入して、YouTube動画を見たりして勉強しました。
ただ、占いの腕を上げるには実践が第一。なので、自分自身もユーザーとして利用していたスキルシェアサービスのココナラ(※1)に占い師として登録してみたんです。
※1 投稿者の「知識・スキル・経験」などを売り買いできるウェブサービス。デザインやイラスト制作から、林さんが行うような占いまで幅広く出品されている。
URL:https://coconala.com/
――趣味の範囲とはいえ、占い師としてお金を稼ぐには資格や試験などは必要ないのでしょうか?
占いサイトによっては登録する際にスキルをはかる審査がありますが、ココナラにはそのような審査制度はありません。それに当時は“無料お試し枠”というシステムがあって無料でも出品できたため(※2)、初心者でも登録しやすかったんです。
最初は稼ぐことが目的ではなかったので、昼休みや平日の夜などを活用し、1カ月に100件ほどをほぼ無料で行なっていました。試行錯誤の繰り返しでしたね。私は動きながら学んでいくタイプなので、実戦で占い方を身につけていった形です。
そうしたら、相談数の実績と評判が重なって、徐々に収益が出るようになってきて、数カ月後には月に7〜8万円ほど稼げるようになりました。いまでは基本土日と夜間の活動ですが、20〜30万円まで増えましたね。
※2 2018年4月まで、ココナラでは「無料お試し枠」で無料での出品を認めていたが、2020年5月現在、同形式でのサービスは終了している。
――月30万円はすごいですね! 占い師だけでも十分な収益だと思うのですが、人材の仕事も続けたのはなぜですか?
占い師を本業にする気はなかったからですね。もともと正社員志向でしたし、占いは趣味の延長だったので、「仕事」という意識が薄かったんです。収益が出てから数年間は、「自分のスキルってお金になるんだ、ラッキー」という程度でした(笑)。
けれど、占いの稼ぎは、人材コーディネーターとしてフリーランスになるに当たって、後押ししてくれる存在になりましたね。2年前にフリーランスになった時は、「知佳ちゃんならできるよ!」という周囲の応援と、占い師としての収益が支えになり、踏ん切りがつきました。
仕事の相乗効果を生む
――林さんは、その後も仕事の幅を広げています。YouTubeやアパレル事業まで始めた理由はなんでしょうか?
一番の理由は、目の前の「やりたいこと」をやっていたら、仕事の種類が増えてしまっただけなのですが…(笑)。キャリア視点で考えると、仕事の可能性を広げるためではありますね。
YouTubeチャンネルの開設は、「林知佳」という人間に興味を持ってもらうための仕掛けです。人材業界や占いの「よくある悩み」について発信することで、どちらの悩みにも答えられる人であることを知ってもらうことができます。
それに、人材コーディネーターと占い師は、相談者の悩みを聞いて解決に導くという点では同じ。私のパーソナリティーも知ってもらえれば、相談もしやすくなりますよね。
じつは占いで相談に来た人に、私が働いている人材サービスを紹介することもあったんです。そんな風に、動画を通じて、どちらかに興味を持ってくれた人が、別の仕事にも興味を持ってくれるようなことが増えていき、仕事の可能性が広がっていけばいいな、と思っています。
――では、アパレル業は?
自分の職域を広げる挑戦ですね。たまたま現地で知り合ったケニアのアーティストさんがいるのですが、彼の作品を扱う予定です。まったく知らない世界ですが、通訳など、いろんな人の助けをもらいながら進めています。売上金はケニアに寄付できればと思っていて、利益よりも繋がりを大事にしたいと思っています。そしてなにより、この仕事での繋がりが別の場所で生きればいいですね。
パラレルワークをするコツは、「ギブアップすること」
――楽しそうではあるのですが、仕事量は当然多くなりますよね。苦労することもあるのでは?
働きっぱなしで疲れてしまう時はありますね。「私、一日中働いてるなあ…」ってふと放心状態になることもあって(笑)。だから、全部自分でやろうとはしないように意識しています。「これはできない」「苦手だからお願いしたい」と、ギブアップして、他人に任せられることは外注しちゃいます。例えば、マーケティングなどの部分は友人にギフト券を渡してお願いすることもあります。
――いい意味で少し力を抜くことがうまく続けるコツかもしれませんね。
8〜9割のことは自分でやり、残りの1〜2割は得意な人に任せると、複数の仕事を同時進行していても、それぞれの仕事のパフォーマンスは落ちにくいと思います。
林 知佳(34)が考える、「パラレルワーカーに向いている人」とは?
――最後に、林さんが思う「パラレルワークに向いている人」とはどのような人かを教えてください。
まずは「やりたいこと」があるというのが大前提として必要だと思います。ただでさえ忙しい中、興味がないものに新たに取り組むのは難しいものです。人によるとは思いますが、「お金」目的での複業はつらいと思いますよ。
また、「脳内の切り替えが得意な人」も向いていると思います。私の場合、自分の中に事業部がいくつかあって、それを切り替えるような感覚で仕事をしています。並行してプロジェクトは走っていますが、「目の前のことを1つずつやりきる」というのが前提ですから。
最後に、「自分を高めるシステムを作れる人」ですね。私の場合、「ケニアに行く!」「毎日noteを更新する!」などとSNSで公言して、自分を追い込んで達成する、というシステムを作っています。強制力が生まれますし、達成できると、また何かをやろうという意欲が湧きます。自分を高める循環システムに自分を落とし込んでいくんです。ただ、これは私の場合なので、自分に適した方法を見つけることが大切だと思います。
――二足のわらじならぬ三足、四足のわらじで働くパラレルワーカー。かなりハードな働き方をイメージしていましたが、「やりたいこと」を軸にしながら、働き方を工夫してバランスを保てば、自分の能力もキャリアも効率的に高めていけそうですね。今日はありがとうございました!
この記事の著者
橋本岬
1991年生まれ。ファッション誌の編集を経てフリーランスへ。2018年からフリーライターを続けながら、シューマツワーカー広報に。主にIT業界、女性の働き方について書いています。
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